リリなの短編倉庫集   作:オウガ・Ω

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赤心寺で修業を始めて二年、僕はいつものように沖師匠と山籠もりをしていた。指導は厳しいけど楽しいし赤心少林拳の技を、神髄はまるで昔から知っているように馴染んでいくのがわかる


そんなある日の夜、義経師匠が仕留めた熊…赤カブトを切り分け焼いていた時だった



「ミツキ、武闘家、拳法家の拳は何のためにあるかわかるかな?」



「え?えっと戦う為ですよね」


「確かにそうかな。でもオレや義経を含めた武闘家、拳法家は拳を交える事でしか会話が出来ない……拳とは己自身の魂を現す……つまりは魂と魂を拳に乗せ語る為のものなんだ……そして魂を極めれば」



「お、沖師匠!熱いですよ」



僕の前でいきなり火の中にかざしていた熊肉が刺さった鉄櫛を掴みとった。火傷の痕すらも無いことに驚いた……コレも修行なのかなと思いながら火の中へ手を伸ばした


「あ、熱!」



「ははは、まだまだだね…さあ食べるんだ。たくさん食べて立派な武闘家、拳法家に、魂を拳に宿せるようになるんだ」



「は、はい」



差し出された熊肉にむしゃぶりつく…匂いはキツいけど塩故障がしっかり利いてて美味しい…明日は義経師匠と熊退治……頑張ろう。そして赤心少林拳を極めてみせる




スペシャルストーリー ミツキの災難(後編)

朝日が住宅街を照らし鳥達がさえずる中、ある住宅にある一室。カーテンのすき間からさす朝日がベッドを照らす…もぞもぞと毛布がのけられボサボサの寝癖がついた金髪にまだ開ききってないまぶたを擦りながら体を起こし大きく背伸びしあくびをした

 

 

 

「……んにゅ~メガネ、メガネ~」

 

 

 

もそもそと毛布から抜け出しぼうっとしている頭でメガネを手探りで探し、指先が目的のモノに触れそのままかけると声が響いた

 

 

 

《おはよう主よ》

 

 

 

「ん~IXAもおはよう~ってココ何処だっけ?」

 

 

 

《………ここはスバル・ナカジマ嬢《肉食獣》の自宅《住処》だ。主の家が貰い火し灰燼となったのを忘れたのかの?》

 

 

 

「………ああ、そうだった~……」

 

 

まのびしながら言葉を漏らすのはバイトして買い揃えた画材一式、こっそり集めた至高の聖典《またの名をエロ本》ごと住む家を火事で失った画家志向のStヒルデ魔法学院中等部学生のミツキ・カーディフ、それにため息をつきながらあいうつのはアキツキインダストリアル謹製にして《未知の災害に対応する勇敢なる者》として先行試作された全身装甲装着型デバイス《IXA》。二人がいるのはスバル・ナカジマの自宅にある空き室、焼け出されたミツキの仮の住まい

 

スバルの薦め《食べる気満々、下心満載かつ一線を超えるつもり》もあり『まな板の上の鯛』な状態で一日目の朝を迎えたミツキ…普段ならばリオが鍵を開けて《壊して》入って朝の天元突破な生理現象《朝立ち》をみて真っ赤にしながらメモリブレイクされて起きるのとは違い穏やかな目覚めに少しばかり物足りなさ……ゲフンゲフン……枕の違いで目覚めも違うんだなと感じながらベッドからおり深く深呼吸する

 

 

 

「コォォ………」

 

 

赤心少林拳基礎《馬歩》に構え、目を閉じ息を吸い込んで吐くミツキの周りにキラキラとしたナニかが見える…赤心少林拳特有の呼吸法は外功法…天地神明に溢れる気を内に取り込み循環させ整える効果を持つ

 

 

「オォォォ……………」

 

 

コレは五年間師事した沖一也、義経両名から一番最初に教わったモノ…身体中の神経、気脈、経絡へ丹田で練り上げた気を流し馬歩を解いて目を開けた

 

 

「うん、コレでよし……IXAは?」

 

 

《チェック1、オーラサーキット異常なし、チェック2、リンカーコア正常、チェック3、変身システム異常なし……チェック4、Intercept X Attacker《ver:Ⅸ》operation.system…good.cndition!…………主とのリンクおよび自己診断完了ぞ》

 

 

IXAの言葉を耳にしながら指を握り開きし全身に気が満ちているのを実感した時、おなかがく~と鳴る…時計をみるとちょうど7:00。リビングに降りようと扉を開けた……しかしソコには

 

 

「……むう~ティア、そこをどいてよ~味見なんてしないから~起こすだけだから」

 

 

「どくわけないでしょうが!未成年者略取の現行犯で逮捕させる気なの!」

 

 

 

「あ、おはようございます。スバルさん、ランスターさ………ん……」

 

 

 

ドアノブに手をかけようとしてワイシャツにタイトスカート姿のティアナに床へ押さえ込まれる水色薄手のタンクトップにホットパンツ姿のスバル…床に押し付けられた柔らかな豊かな胸、タイトスカートから覗くムッチリとした太ももに加え見えた黒の魅惑のトライアングル…くんずほぐれつな、端から見たら百合としか見えない光景。ミツキの頭から眠気が一気に吹き飛んだ

 

 

 

「……あ、ち、違うのミツくん!コレはティアが!!」

 

 

「……スバルさん、恋愛ってのは自由だから…何も見てないから、 し、失礼しました~」

 

 

 

「こ、こら!待ちなさい!あたしはスバルとはそんな関係じゃ無いんだから!!」

 

 

「………いや、でも…そこまでムキにならなくても、応援してますから…「「い・い・か・ら・話をききなさああああああい!!」

 

 

 

あらぬ誤解を受け顔を真っ赤にしたティアナの叫びが爽やかな朝の空気にこだました

 

 

 

特別話 ミツキの災難(後編)

 

 

 

 

 

「ごめんなさいランスターさん、なんか勘違いして…」

 

 

 

「べつにいいわよ。わかってくれれば充分だし…」

 

 

 

「そうだよ。あたしとティアは親友だけどそんな関係じゃ無いし。さ、誤解も解けたし朝ご飯食べよっかミッくん、ティア」

 

 

ランスターさんからスバルさんとの関係についての弁解を聴き納得した僕の前にエプロン姿のスバルさんが笑顔でコーンスープ、ベーコンエッグ、サラダ、こんがりキツネ色のトーストが山盛られた皿が並んでいく

 

 

「はい、ミッくん」

 

 

 

スープを一口…ほのかな甘みとしっかりした味に目が冴える。自然と手がトーストに伸びベーコンエッグを挟み食べる…一瞬、雷が落ちた…美味しい

 

ベーコンからでた旨味と半熟の黄身、白身が深みを増した味…サラダも食べるとしゃきしゃきして瑞々しいレタス、スプラウト、リーフ、クルトンの食感がたまらなくいい

 

 

「ミッくん、どうかな?口にあうかな?」

 

 

「スゴく美味しいです。あの、おかわりいいですか?」

 

 

「ホント!?、ありがとうミッくん。さ、まだおかわりは沢山あるからドンドン食べてね(やったあ!ギン姉に料理教わって良かった~まずは胃袋を落としてからじゃないとメインディッシュ《ミッくん》は食べれないからね)」

 

 

な、何だろ寒気がした…風邪でもひいたかな?ならたくさん食べて元気にならないといけないかな。スバルさんからおかわりのベーコンエッグ山盛りを焼きあがったトーストに挟んで食べていく。でも何故かランスターさんが唖然となりながら見てる

 

 

「カーディフくん、そんなにたくさん食べきれるの?」

 

 

 

「え?食べきれますけど?」

 

 

「………そ、そう(な、なんか似てるわね…アキツキくんと……)」

 

 

「あれ?ティア。今日は仕事はないの?」

 

 

「…………今日と明日はお休みよ」

 

 

 

「そうなのティア?最近仕事が忙しかったみたいだしひさしぶりにゆっくりできるじゃない」

 

 

「ぜんぜんっよくな~~いわよ!せっかく捜査していた事件をいきなり《中止しろ》って本局から通知が来たのよ!!半年間かけてやっと証拠と遺留品が集まりかけてた矢先にコレってあり得ないわよ!!わたしの捜査に費やした時間《半年間》を返せ~~!!」

 

 

 

うが~!と声を上げたランスターさんの言葉から悔しさがにじみ出てる…確かに止めろって言われたら頭にくるのも仕方ないよね。でもぷく~て頬を膨らまてるのをみるとなんか可愛いな。最後のベーコンエッグに手をかけた時だった

 

 

 

「そ、そうなんだ……でも何を調べていたの?」

 

 

 

「……十字架仮面イクサのことよ…スバルも知ってるわよね。真夜中に現れて人を襲う変な怪物と戦う《正義の味方》の噂ぐらいは」

 

 

 

「ん、けほ……けほっ!!」

 

 

 

「ミッくん?どうしたの?」

 

 

 

「な、何でもないです。少しむせっただけだから……」

 

 

 

慌ててスバルさんから僕に差し出した水が入ったコップを受け取り飲み干した……ランスターさん、お探しの十字架仮面はアナタの前にいます。半年前にIXAを渡されたときに結城博士とアンリさん(結城博士の奥さん)から僕の事《十字架仮面イクサ》を調べまわっている執務官がいるって聞いたけどまさかランスターさんだったなんて

 

 

でも証拠なんて残してないはずは…

 

 

 

「ティア、十字架仮面イクサの遺留品ってなにがあるの?」

 

 

「クロスミラージュ、最初に現れた現場から見つかった遺留品を出してくれるかしら」

 

 

《yes、master…》

 

 

 

「コレなに?」

 

 

 

 

カード型デバイス《クロスミラージュ》さんから投影されたモノ…破けた銀色の容器に青い液体が白いキャップに付着した何かにスバルさんが怪訝な表情を浮かべるけど、僕はコレが何かを知っている…あいようしている絵の具が入った容器。でもコレだけじゃわからないはずだよね?うん

 

 

 

「コレは絵の具を入れる器よ。で絵の具の成分を分析したら管理外世界、なのはさん達の故郷でしか採れないラピス・ラズリを使ってるらしいの。でもコレは数年前からミッドでも流通してるものだから誰でも手に入れやすい。憶測だけど十字架仮面イクサは画家、もしくは絵に関わる職業についてるか、趣味をもってるかもしれないのよ、最初の事件以降にも遺留品が見つかってる」

 

 

 

………ヤバい、ヤバイ!絵の具だけでよくここまで人物像を掴むのさ!?冷や汗が流れていく僕の前でさらなる遺留品がだされてく

 

 

絵筆、デッサン粘土、木炭、キャンパスの切れ端…思い出してみればガイストが現れて、絵を描いてる時にあわててポケットに入れたまま向かった際に落としてしまったんだ…無くしたと思ってベッドの下、本棚の後ろ《聖典収容スペース》、部屋中探して見つからないわけだよ

 

 

「でも、画家もしくはそれを扱う職業だけじゃわからないから確証もないけど一応は候補に入れているんだけど、1ヶ月前に現場に居合わせた目撃者に会った時に新しい証言があったの…十字架仮面イクサが『セキシンショウリンケン』って言葉を口にしていたって」

 

 

 

……………まずい、まずい、まずい!?聞かれていたああああああ!?で、でもルーフェンに生まれた赤心少林拳はあまり知られていない流派だし50年以上前に廃れた拳法だから…わかんないから安心だよne

 

 

 

「で、セキシンショウリンケンってワードをユーノさんがいる無限書庫で調べたら《ルーフェン三大拳》の一つ《赤心少林拳》またの名を《龍殺しの拳》とも呼ばれてたのがわかったのよ」

 

 

む、無限書庫おおおお!?なんでルーフェンの三大拳の事まで書かれてるのさ?それに龍殺しの拳って初耳なんですけど!?ま、まあ義経師父ならば平気で龍殺しやりそうだけど……

 

 

 

「そうなんだ十字架仮面イクサさんって凄いんだね~この前、あたしとリオちゃんも助けてくれたし」

 

 

 

「ほんと!いつ?どこで十字架仮面イクサにあったのよ!話しなさい!!今すぐ全部!!」

 

 

 

「ちょっとティア、ドコでって…アヴァロン区アキツキモールの近くだけど…」

 

 

 

「やっぱり、十字架仮面イクサが現れるのはクラナガンに集中しているのね…今までは1ヶ月に三回現れていたのに四回も出てきた……出現した地点は丁度、円を結ぶように広がってる…もし予想通りなら……スバル、今日と明日は暇よね?」

 

 

 

「そ、そうだけど…ひさしぶりに休み貰えたし…まさかティア?」

 

 

 

「なら、一緒に十字架仮面イクサを捜すのを手伝って「いいよ」……え、いいのスバル?」

 

 

 

「だってあたしとリオちゃん、ミッくんを助けてくれた事も含めてお礼いってないし。ひさしぶりに組めるしいいよ」

 

 

 

「ありがと、じゃあさっそく今日の夜からやるわよ……カーディフくん、どうしたの?顔色が悪いみたいだけど?」

 

 

 

「な、なんでも無いです……じ、じゃあ僕も何か手伝いましょうか?」

 

 

 

「じゃあミッくんにはお夜食作ってもらおうかな~愛情たっぷり込めてね(いやミッくんだけでも充分美味しいかも…それか逆に食べられたりして、薄明かりで外でするのもいいけど。初めてはスイートルームでフカフカの柔らかいベッドで…)えへへへ」

 

 

「あんまり気にしたらダメよ、カーディフくん何かあったら、わたしにすぐ言いなさい……いい加減戻りなさい!バカスバル!!」

 

 

 

「は、はい…ランスターさん」

 

 

 

……ランスターさんの右斜め上チョップが綺麗にスバルさんの頭に決まり現実に戻ってすぐに話し合いが始まった………大きなたんこぶをさすりながら夜の何時に向かうかを決めてから朝食を再開して食べ終わった

 

 

 

でも、どうしょう…十字架仮面イクサは目の前にいるんです…あとで聞いたんだけどランスターさんは執務官だって聞いて驚きながら火事で焼けだされた僕の新しい家を探し、保険会社や父さんと母さんとの連絡をつけてるうちに夜の時間になった…アヴァロン区アキツキモール付近に来たんだけど

 

 

「ミッくん、離れちゃダメだよ…」

 

 

 

「スバル、カーディフくん困ってるでしょうが!」

 

 

……僕の腕に抱きつくように腕を絡め少し上目使いで囁くスバルさん…む、胸が腕に挟まって柔らかくてそれに顔も近いし女の子の匂いと柔らかさがイヤってほど強く意識する…ランスターさんがなんども離れるように言うけど逆に強く抱きしめてくるから胸の鼓動が伝わってくる

 

 

今、僕たちがいるのは数日前にスバルさんとリオちゃんがガイストに襲われそうになった場所の近く…一応IXAは起動させばれないようにガイストセンサーを展開しいる、最近出現率が不定期になってるから油断出来ない

 

でも最大の問題が…

 

 

 

「十字架仮面イクサさん、まだ現れないかな~(ミッくんって暖かいなあ~それに筋肉も無駄なくついて引き締まってるし……もし押し倒されたら……いまは堪能しなきゃ匂いをまずは)」

 

 

 

「まだに決まってるわよ……もう少し張っとくわよ。今までのパターンならば今日でも姿を表すはず」

 

 

……………近くにランスターさん、それに僕の腕に力強く抱きつくスバルさんがいるからガイストが現れたら変身が出来ない。もし僕が十字架仮面イクサだとバレたら……いや、なんとか手を考えなきゃって思ったら辺りの空気が重くなった

 

ま、まさか…ガイスト!?

 

 

 

「な、なによあれ?人?まさかアレが」

 

 

 

「ティア、あれは私たちを襲った怪物だよ!早く逃げなきゃ!!」

 

 

 

 

『フ~フ~…………アキャアアアアアア!!』

 

 

 

 

黒いもやがはじけ現れたのは腰だめに叫ぶ鎧を纏った黒い猿《ガイスト》だ。当たって欲しくない予想が当たってしまった…何とかして二人を逃がさないと、でも今のままじゃ変身が出来な…

 

 

『ホアキャアアアアアアア!!』

 

 

 

「く、クロスミラージュ!セットアップ!!」

 

 

 

「…ティア!いくよブリッツキャリバー!!」

 

 

 

僕から離れ守るようにスバルさん、ランスターさんがバリアジャケットを纏い立っている…

 

 

 

「ひさしぶりにいくわよスバル、速攻で決めるわよ!!」

 

 

 

「もちろん、だって後ろにはミッくんがいるからね……そこから動いたらだめだよ、絶対に!ウィングロード!」

 

 

笑顔を向けて拳をアスファルトに叩きつけ無数の光の道が人気の無いビルに伸びていく上を滑るように移動していく。その様子をガイストはじっとみている…徐に髪の毛?を抜きフッと息をかけ赤いシミが目立つ幅広の刃がついた真っ黒な棒に変化させ構えた…まずい武器を持つガイストは今までのとは違う

 

 

「喰らいなさい!クロスファイヤー……シュート!!」

 

 

声が響いた方をみると無数の球体を浮かばせるランスターさんの声と同時に射出された光球が猿ガイストに襲いかかる。全方位からくるそれを刃がついた棒で弾き返していく…歪な笑みを浮かべ地を蹴ると光の道を駆けていくのをみてランスターさんは再び球体を周囲に展開し、打ち放つけど器用に回避し間合いをつめ大きく振りかぶり振り下ろす。でも刃が当たる寸前でランスターさんが消えた

 

 

「アキャ!?……」

 

 

 

「油断大敵だよ!おおりゃあああ!!一撃必倒ディバイインッバスタアアアア!!」

 

 

気配に気づいた猿ガイストが振り返った時にはすでに遅く、腰だめに構えたスバルさんの右拳リボルバーナックルが高速回転、火花を散らしながら胴へ叩き込まれまばゆい閃光が溢れ耐えきれず吹き飛ばされ開発中のビルの外壁を貫いた…構えを解いたスバルさんの隣にランスターさんが駆け寄ってきた

 

 

「やったよ、ティア……ミッくんももう大丈夫だよ」

 

 

 

「…っ!……まだよスバル!!」

 

 

 

「ホアキャアアアアアアア!キャアアアアアアアア!!」

 

 

ビルの外壁の向こうから勢いよく黒い固まり…猿ガイストが全身から禍気を炎のように纏いスバルさん、ランスターさんに突っ込んでくる……僕はとっさに煌気《オウキ》を全身に漲らせ地を蹴り光の道を走り出し間に割って入った

 

 

「ミ、ミッくん/カーディフくん!!」

 

 

猿ガイストの禍気《ガツキ》を纏った棒に打ち据えられ踏みとどまれずに光の道から弾き飛ばされ地面に落ちて山積みの段ボールがある場所へ落ちたのをスバル、ティアナが気を取られたのをみて猿ガイストは全身から禍気を溢れ出させクモの糸のようなモノへ変化させ絡めとるとビンット拘束された

 

 

「な、なによコレ!?」

 

 

 

「う、動けない…え、うそ…また」

 

 

 

身体に纏わりついた蜘蛛の糸?に触れた部分からバリアジャケットが解け落ちていく光景に声を上げるティアナ、スバルに猿ガイストが目を細めよだれを垂らしながら近づき、ティアナの前にたち解け落ちた胸に手を起きなぞっていく…未知の感覚におぞましさを感じ身をよじらせるも喜ばせるだけだ

 

 

『ほ、ほ、ほ、ほ、ほあきゃ、ほあきゃ~』

 

 

 

「や、やめ……ん…は…」

 

今の時点でバリアジャケットが解け落ち白のレース下着とブラが見え、興奮したのかさらに声を上げ指をしゃぶりあげ不快感溢れる指で瑞々しい太ももにおき、つぅと滑らせ上へと伸びショーツのクロッチに迫ろうとする

 

 

「い、いや……いや」

 

 

 

「ティア!く、このほどけない…」

 

 

 

必死に拘束を解こうとするスバルにチラリと一瞥する、お前は後だという風に再び目的の場所へ手を這わせようとした時だった……

 

 

 

『レ・デ・ィー・イ・ク・サ・フ・ィ・ス・ト・オ・ン……』 

 

 

 

電子音声が木霊し、辺りに太陽のような光が溢れ出した

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

ーーーーーーーー

 

 

 

「いたたた、さすがに相殺しきれなかったか……いまはソレよりスバルさんとランスターさんを…いくよIXA!」

 

 

 

『承知した主よ!』

 

 

 

段ボールの山から這い出し立ちIXAを右手に握りしめ構えた…土埃が煙幕のようになっている今なら、僕は目を閉じ赤心少林拳の型を素早く取り両腕を正面にIXAナックルと共に突き出す…丹田から全身の経絡、神経に《煌気》を流し込ませる。心臓の音が強く脈打つ…

 

 

『レ・デ・ィー・イ・ク・サ・フ・ィ・ス・ト・オ・ン……』 

 

 

IXAナックルに魔力と共に流し込む鼓動が響きカッと目を見開き気を解放させ腰にIXAベルトが瞬間展開すると同時に力強く差し込み胸の中で叫んだ         

 

 

       

 

 

!! 

 

 

       

 

         

        

正面に量子化されたIXAが現れ重なる…煌氣が物質化しアーマーが形成、純白の装甲が要所要所を覆い最後に十字架を模した仮面が装着…僕のもう一つの姿に変わると迷わず血を蹴り上げ、ランスターさんを襲う猿ガイストの顔面に正拳を叩き込み怯んだ隙を見逃さず胴回し蹴りを胴へ突き入れ吹き飛ばした

 

 

 

『ホアキャ!?』 

 

 

 

「え?ま、まさか十字架仮面?」 

 

 

 

『……コレで逃げられるはずだ、早く離れろ』

 

 

「あの!ミッくんがさっき私たちを庇って…」

 

 

『彼なら私が助けた…今、助けを呼びにいってもらっている…!?』

 

 

 

 

二人を縛り上げていた魔が禍氣縛鎖を煌氣で消滅させ離れるように促す。一応ボイスチェンジャーで声を変えてるから大丈夫のはず…風を斬る音が聞こえとっさにランスターさん、スバルさんを抱きかかえ地を蹴り離れた、さっきまでいた場所がクレーター状に広がり砕け中心にはさっきの猿ガイストが目を血走らせながら睨んでいる

 

 

 

ー主、奴はどうやらランスター嬢を喰らおうとしていたのを邪魔され血が上ってるようじゃー

 

 

 

ーそうだね………でも今までのガイストとは格が違う……闘勝戦佛級の眷族かも知れない………あれをG・フェッスルを使わないとー

 

 

 

「ち、ちょ、離しなさいよ……どこさわってんのよ!?」

 

 

 

「あ、あのおろしてくれませんか十字架仮面イクサさん」

 

 

 

『?あ、すまない………悪いけど少しだけ寝ていて…』 

 

 

 

「え?な、なにを……あれ……」

 

 

 

「十字架仮面イクサさん、あなたにお…礼……を」

 

 

 

抱き抱えたままスバルさん、ランスターさんに《陽煌氣》を少しだけ流し眠らせ壁に背を預けるように眠らせると猿ガイストに向き直る…獲物を横撮りされて悔しいという氣がビシビシ装甲越しに感じながら構えた時、猿ガイストが槍を構え飛びかかり刃と棒を目にも止まらぬ早さで脚、脇腹、首、肩へ狙い突き入れてくる。それを紙一重で右へ左へ後ろへ引きながら交わし、突き出した槍の柄を掴み勢いよく上へと持ち上げ地面にたたきつけた

 

 

 

『キャアオオ!キャアオオ?』

 

 

ふらふらと立ち上がると、今度は腰だめに構え殴りかかってきた…武器を使っていた時よりキレが違う…腕で受けると装甲越し痛みが伝わる…それ以上に拳と蹴りから感じるのは………やっぱりガイストは

 

 

 

『ガイスト、いやかつては名のある武闘家、拳士であったとアナタの拳より見受けます!』

 

 

 

『ホアキャ!』

 

 

『こうして相対するは何かの縁…武闘家としての宿命《さだめ》なのでしょう!しかし今のあなたの拳は、魂は泣いている!先のランスターさん、スバルさんへの行いは本意では無いと…望んでいないと!』

 

 

 

『ホア……ホアキャ………』

 

 

 

拳速が僅かに落ちる…猿ガイストの瞳に涙が浮かんでいる…拳と蹴りを交える度に魂の言葉が響いてくる。ならば僕が取るべき道は一つだ…左にあるホルダーから銀色のフェッスルを手にし突き出された拳を拳でうちあう…凄まじい衝撃波が生まれビルの窓が砕け壁に亀裂が入り落ちていく中で地を蹴り空へ飛ぶ…月が煌々と輝き背にしグラビティ・フェッスルを装填、重力波が音色共に流れ猿ガイストの周りの重力を倍加し身動きを止めるのをみて脚を突き出した加速し落下し、煌氣が足に集まり輝き始めた

 

 

       

 

 

 
    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       

 

 

 
      

 

 

 

!! 

 

 

 

 

黄金の煌めきが月の光を背に受け加速、猿ガイストの胴を捉え蹴りが刺し貫き反対側へ抜けアスファルトを粉砕し、やがて止まり振り返る…大きく貫かれた猿ガイストがゆらりと振り返る。身体のいたるところから黄金の氣が溢れ出し消滅しながら手のひらに拳をあて一礼してきたのを見て、僕も返した…かすかに笑みを浮かべながら光が天に登っていく

 

 

『………あなたの魂に幸あれ…』

 

 

 

再び一礼してスバルさん、ランスターさんを寝かしつけている場所に走り出した…でも一部始終をみている第三者がいるなんて僕は知らなかったんだ

 

 

 

 

「赤心少林拳、惰弱な拳だな……クズ拳士の魂も役に立たなかったな~」

 

 

《そうだなあああ…まあ、今は手の内を探るのが先決だあああああ》

 

 

 

 

「まあ、ガイストの素材はまた集めればいいからな……あひゃははははは」

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後…

 

 

 

 

「えと、ここかなIXA?」

 

 

 

《間違いなかろうて、しかし良かったの主よ。ご母堂に感謝だの》

 

 

 

今、僕がいるのは20階建てマンションの前…あの日、ランスターさん、スバルさんは病院で目を覚まして検査をして異常無しって診断されて退院した。でもスバルさんが何でかわからないけど僕のベッドに潜り込んできた下着姿で………目を覚ましたらキレイな肌と引き締まったウェストから緩やかなヒップライン、太もも、それにすごく柔らかくていい匂いがする胸に力いっぱい頭を抱かれて身動き取れなくて、ランスターさんが助けにきてくれなきゃ学院に遅刻してしまうとこだった

 

 

学院にいったらリオちゃんから全力タックルうけて泣かれてタカヤくんに呆れられながら仲裁してもらったり、僕の洗濯物が無くなってたり、スバルさんがベッドに潜り込んできたり、リオちゃんが黒リオちゃんになったり、バイト先でパフェを奢って機嫌なおしてもらったり……とにかく濃い一週間だった

 

 

ガイストがでなかったのは救いだったけど…そうしてるうちに母さんから連絡が来て知り合いの家に厄介になることが決まって、それを伝えたらスバルさんはすごく落ち込んでいた

 

 

 

ー……やっぱり味見を……ー

 

 

 

 

味見って何だろ?仕事があるから見送りが出来ない事に泣いてたけど…とにかく、今日からここが僕の新しい住まいになるし、同居人は母さんの仕事の知り合いらしいんだけど…あらかじめ渡されていたカードキーとルームナンバーをフロアで打ち込んでエレベーターを乗り継いで部屋の前に来た…チャイムを鳴らすけど誰も出ない。一応、母さんから話は付いてるらしいからいいかな

 

 

「お邪魔しま………………なにコレ!?」

 

 

 

脱ぎ散らかした黒い制服、ブラシ、ストッキング、私服、カバン、エトセトラ、エトセトラ……あまりの惨状に空いた口が閉じない。確か母さんが『その人は仕事が忙しいらしいから部屋が少し散らかってるけど気にしないであげてね』って言ってたけど

 

 

その時、後ろで扉が開く音がして振り返ってしまった。ソコにいたのは

 

 

 

「カ、カーディフくん?なんであたしの家に?」

 

 

シャワーを浴びてタオルを巻いただけの姿のスバルさんの親友で執務官のティアナ・ランスターさんがいたんだ…どんどん顔が真っ赤になって僕に近寄ると肩を思いっきり掴んだ

 

 

「ち、違うの!これはたまたま散らかっただけで…いつもこうじゃないのよ!!」

 

 

「あ、あの、ランスターさん、そんなに揺らさないで…でないと…あ!?」

 

 

 

ランスターさんの身体に巻かれていたタオルがシュルリとほどけ床に落ちた…ほんのり赤い肌と共に豊かな胸、ヒップ、太ももが目に焼き付く…ランスターさんの顔をみると今にも火を噴きそうなほど真っ赤になり瞳を潤ませている……ヤバい、と、とにかく謝らないと

 

 

「ランスターさん、その…なにも僕は……」

 

 

 

「き、きゃああああああああああああ!!」

 

 

 

「ジンドグマ!?」

 

 

顔を真っ赤にしながら僕の顔面にキックが綺麗に入った…何かを見えた気がと思いながら脱ぎ散らかした黒い制服、三角形の黒い何かの感覚、もし義経師匠、沖師匠が見たら未熟者といわれそうだと思ったのを最後に意識がぷっつりと途絶えた

 

 

 

 

 

 

 

スペシャルストーリー ミツキの災難《後編》

 

 

 

了!

 

 


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