喪われたルーフェン武術《赤心少林拳》を駆使し、嵐のように戦い、風のように去る…彼の正体はだれにもわからない
ただその特徴的な仮面から十字架仮面、現れる前に聞こえた名前らしい電子音声から十字架仮面イクサと呼ばれるようなった
タカヤたち魔戒騎士たちの戦いの裏で繰り広げられるもう一つの光と闇の戦い
十字架仮面イクサ、彼の正体は………
守りし者異聞ー十字架の仮面ー
「う、く……」
黒く濁った雲が空を覆い、激しい雨が降りしきる中でた小さな、苦痛にも似た声が響く
白かった白衣は雨に濡れ、泥水が染みこんでいる…近くには車椅子が倒れている。おそらくは少年のモノだろう。必死に這い蹲りながら何度も立ち上がろうともがく身体には包帯が巻かれ血がうっすら滲んでいる
「…かな…い……みぎ足が、ひだり腕が……指が…うごかない…」
ー先生、ミツキは…ー
ー…一命は辛うじて取り留めました。ですが以前のような生活は送れないことは覚悟してください。特に身体を酷使するような運動……慣れ親しんだ★☆◎◐◑は二度と出来ないでしょうー
……あの事件に巻き込まれるも奇跡の生還を果たし辛いリハビリを毎日続けていた、そんなある日だった両親と医師のいる診察室に来て耳に入った言葉は少年が同門の年下の幼なじみと一緒に暖めてきた夢を、まるで薄氷を割るように無慈悲に砕いた…気がついた時には病院から車椅子使い雨が降りしきる中を走らせていち。だが石につまずき椅子ごと倒れ今に至る
…自由自在に繰り出せていた技、動きがもう出来ない《魔力》すらも高められない
それでも諦めず、力を振り絞り立とうとするもぬかるんだ地面に足を取られ再び倒れた。口いっぱいに泥と鉄の味が広がるのをかんじながら仰向けになる。冷たい雨が顔にあたり、身体から熱を容赦なく奪っていく。瞳から涙が溢れ出しながら否が応でも悟った
もう自分に春光拳は使えないと
「あは、ははは……ごめん……ちゃん……一緒に…夢はも……う」
意識が朦朧としながらつぶやいたのは同門の子に対しての謝罪…もう一緒に夢を叶えられない…意識が遠のきかけた時、少年の身体が誰かに抱きかかえられた
「だ、れ……」
『………………』
霞む目でとらえたのは赤い瞳に銀と黒の不思議な服を来た異形。やがて意識を失った少年と共にその場から歩き出した
新暦74年、身体の自由と夢を失った少年は《赤い瞳の異形》との邂逅を果たした……
守りし者~異聞~《十字架の仮面》
新暦79年、秋
カーテンを締め切った室内…あたりには無地のキャンバスがおかれた架台と小さな台の上には絵の具と木炭が無造作に置かれ、壁には有名画家の絵を模写したのが埋め尽くし、その下に置かれたベッドにはスケブが何冊も広げられカオスな状況。そのときベッドの上で何かが動く
「んにゅ……」
毛布がもぞもぞ動きたし手、足がのび最後に顔を覗かせるのはボサボサの金髪にやや整った顔立ちの少年《ミツキ・カーディフ》がゆっくりと目を開ける
眠い…ぼうっとしながらあたりをみながら目をこする、明け方まで絵を描き続けたせいもあるけど……
「………あと五分………ん」
柔らかい毛布にくるまり寝る…ん~やっぱり二度寝って最高だね~昔だったら…まあいいか
「ミツ兄!朝だよ………ってまだ寝てる」
ドアを開け入るなり大きなため息をつく少女は散らかり放題の部屋の主ミツキのベッドへ歩き思いっきりゆらし始める
「ミツ兄~起きて朝だよ!起きてったら~起きて~」
「………あと四分………」
「もう~!いい加減おきなさあああい!」
なかなか起きないミツキに起こり強引に毛布をひっぺはがした少女の動きがぴたりと止まる。目の前にはグシャグシャの金髪にのほほんと幸せな顔で眠るミツキ…しかし少女の視線はアル部分をとらえている
男ならば必ず起きる朝の生理的反応…天高くそびえるエレベスト、天元突破なドリルにも負けない剛直が布越しにそそり立つ光景にみるみるうちに真っ赤になり知らす知らずのうちにセットアップ。背後に龍が猛狂わせた
「き、キャアアアア!」
「ギ、ぎャアアアアア!!」
渾身の一撃が天高くそびえるエレベストへ突き刺さる……メモリブレイクにも匹敵する破壊力を秘めた拳が粉砕し爽やかな朝に叫び声が響き渡った
★★★★
「あ、あのリオちゃ……」
「……何ですか、ミツキお兄さん」
(うう?まだ怒ってる?………)
休日の街中を歩くミツキとリオ…だが雰囲気が重い、今朝の一悶着があったせいもあるがそれだけではない
男にとって最大の弱点をメモリブレイクされ気絶した
直後、ミツキの本棚を整理していたリオが散らばっていた本を片付けていた時に何気なく手に取った参考書からカバーが外れ出てきたのは
《ドキドキ!巨乳ミニスカチャイナ娘の秘密のトレーニング♡》
と銘打たれた大人向けな本、パラパラめくるとムチムチした太ももを露わにしこれでもかと言わんばかりに胸を強調した黒髪ロングな八重歯っ娘が妖艶なポーズをとる姿にフツフツと怒りが沸き立つリオ
(そんなに、そんなに胸が大きいのが好きなの!)
持つ手が震える…さらにページをめくり真っ白になる。オーバーニーにタンクトップに大胆にカットされたホットパンツ姿に、ハチマキをまき、ひざを突き人差し指を唇にあてにっこり笑みを浮かべるモデルのページも胸がこれでもかと強調されているのをみて不機嫌さはさらに増し、目を覚ましたミツキが慌てて取り上げるがもう遅く今に至るわけだった
(ま、まいったな…久しぶりに黒リオちゃんになってる。機嫌が治るまでしばらくかか……そうだ!あそこに連れて行こう!!)
「あの~リオちゃん」
「……なんですかミツキ・お兄さん(怒)」
「な、なにも聞かずついてきて」
半ば強引に手をつなぎ歩き出すミツキに驚きを隠せないリオ…やがてある店《カフェマムマダール》の前に来ると迷わず中へはいる、芳しく香ばしい香りが二人を包んだ
「いらっしゃ………ミツキちゃんじゃない!その子は?もしかして彼女?」
アロハシャツにハーフパンツ、めがねが目立つ中年の男性の言葉に慌てて手をパタパタさせる
「マ、マスター、か、彼女じ「彼女のリオ・ウェズリーです!」………ってリオちゃんなにいってるのさ!?」
「ミツキちゃんもすみにおけないねぇ~はい、コレは可愛い彼女さ…リオちゃんには私からの特別ドリンクをプレゼント」
席に座った二人の前に置かれたのはエナジーロックシードをモチーフにしたグラスに蒼いソーダがシュワシュワと泡立ち涼しさを醸し出す…だがそれよりも気になるもの、二つの吸い口があるハートを模したストローが差し込まれている
「「…………………」」
(ど、どうする?ぼくはただ、リオちゃんの機嫌をなおそうと、ここの絶品スイーツ《ガイム!フルーツバスケット》をご馳走しょうとしたのに…マスターは気を使ってくれたんだろうけどリオちゃんもぼくみたいなのと同じドリンク飲むのイヤだろうし!?)
(こ、これって……マスターさん…まだ早いよ…でもせっかくのチャンスを無駄にできないよね)
ほんのり頬を赤くするリオちゃん、唇がストローに触れる真剣に僕をみる目…自然とストローに口をつけようとした時、グラスがきえた?
「ん、ん、ん………はあ~美味しい」
聞き慣れた声に僕は顔を向けた先には救助隊の制服に身を包んだ蒼い髪が目立つ女の人が一気飲みし満足そうな顔でテーブルにグラスをおいた
「な、ナカジマさん?なんでココに!?」
「なんでって?おなか空いたからマスターのスペシャルナポリタン食べに来たんだ。そしたら店にミツ君の姿が見えたから」
「だ、だからって飲むのは……」
「あ、ごめんね。喉が乾いてたからつい♪」
かわいらしくテヘペロするのは、救助隊の隊舎にある託児所の絵を描きに行った時に出会ったスバル・ナカジマさん。たまに絵のモデルになってくれるけど何故か僕のベッドの上でシーツ巻いた姿になるから目のやり場にすごく困る。ナカジマさんって身体付きがいい(鍛え抜かれた意味)。前にストライクアーツの動きを見せて貰ったときはドキッてなった
「…せっかくミツ兄とジュース…もう喉は乾いてないんですよね?コレから私とミツ兄は買い物にいくんで、ゆっくり食べてくださいね」
「あ、今日は午後からお休みなんだ。それにミツ君にモデル代を貰う日だし。甘くて白い濃厚なのをたくさん…」
「ち、ちょ!ナカジマさん!?なんか誤解するからやめて!?リオちゃんもコレはアイスの事だからね!?」
「モデルってスバルさんを?昨日も?甘くて白い濃厚!?……ミツ兄、どういう事か説明してくれるよね」
「あ、あのう……(あう?ヤバい黒リオちゃんになってる………こういう時は素直に話さないとマズい)」
まるで浮気がバレた夫のように戦々恐々するミツキ…とりあえず何故スバルに絵のモデルを頼むようになったかと、先ほどの聞く人によってはマズいワードに関しての経緯も必死に説明していく
「ふふ、青春ね~」
とその光景を見ながらスバル用に特製ナポリタン《ドッガハンマー盛り》を作り上げていくマスターだった
☆☆☆☆☆☆☆☆
「あ、あの…リオちゃん、ナカジマさん」
「なにミツ兄?あ、コレ可愛いい♪」
「ん~わたしはやっぱりコレかな。ミツ君。どう似合うかな?」
「だ、たがら二人とも、ここから早くでようよ!下着売り場から!?」
ナカジマさん、リオちゃんは僕の声に耳を貸さない。アレから説明をして問題解決したと思った。ナカジマさんとリオちゃんがまるで示し合わせたように僕を引きずり歩き出した
向かったのは複合型モールアキツキ、ソコにあるランジェリーショップ《グレイス》へ連れて行かれ、逃げようにもがっちりと手を胸元あたりに腕を組まれ逃げられない…何故かわからないけどリオちゃんは大人モード(といっても僕と同じくらい)だし。それに動いたら二人の胸が、ささやかだけど膨らみかけな胸と圧倒的ボリュウムな柔らかさを手に感じてしまう
「ねえねえミツ君は黒と水色、どっちが好き?」
「ミツ兄は白だよね!昔から大好きだもんね」
……ナカジマさんの手には黒、水色のブラにショーツ、リオちゃんは爽やかな白地にレースが編まれたモノが手にある……一瞬だけど二人の下着姿が浮かんでしまう。ヤバいなんかクラクラしてきた…昨日はアレが出てきたから寝不足だし、リオちゃんのメモリブレイクのダメージが抜けきらない…それになんか二人とも仲がいつの間にか良くなってるし?
「……水色と白かな」
「……じゃあ着てみようかな。ミツ君、一緒に来て、見て欲しいから」
「そうですねスバルさん、ミツ兄、私のを見てくれる?」
……ぐいぐいと試着室に引っ張られるのを必死に抵抗する。周りの人は止めてくれないし。それどころか…
「両手な花ね~しかも可愛い子、染めがいがあるわね」
「男の甲斐性を見せなさ~い。さてタカヤちゃんの彼女たちにもあげなきゃね」
……スッゴく物騒なのと、友達と似た名前が聞こえた氣が?一瞬、力が抜け二人が後ろに倒れそうになる、危ないと思った瞬間には二人の後ろにまわり抱き抱えるようにそのまま倒れた。目の前がチカチカする…でも真っ暗だ。それに甘酸っぱい匂い、左手に何か柔らかいのと右手、指先が溝にはまりじんわり湿ってるのを感じた
「んん…息かけないで…強くもんじゃ…やあ…」
「こすら、ない…で……ミツに、ぃ」
ま、まさか…おそるおそる首を動かし目の前が明るくなり見えたのは水色のショーツ、さらにギギギと目を向けた先、右手をみるとリオちゃんのスカートがはだけ下着の前に右手が入って濡れた感じがする、左手を見たらナカジマさんの制服…シャツからあふれた胸を鷲掴みしてる!?
「わ、わ、わ、ご、ごめん!ナカジマさん、リオちゃん」
なんとか二人から離れたけど、お店の店長さんにこってりと叱られ、あっという間に夜になった…さっきからナカジマさん、リオちゃんは僕の顔を見ようとしない。何度か話しかけようとしたけど無視された……あんなことしたら怒るよね
(ミツ兄のバカ…あんな所じゃなくて、ムードが大事なのに。で、でも…少し気持ちよかったかも…コロナやリンナにあの本をまた借りなきゃ。スバルさんと一緒に確実に落とさなきゃ)
(ミツ君、意外と大胆だよ。胸をあんなに揉んで抓るなんて……それに嗅がれちゃったし触れたし。変じゃなかったよね。一応下着変えてきたから大丈夫…リオちゃんと一緒に確実に外堀を埋めて…)
…はあ、やっぱり怒って…その時、あたりの空気が変わった。まさかコレはと慌てて時計を見たら夜の9時を回ってる…二人もこの異様さに何か気づいたみたいだ。悪い氣が形をなしオーブに変わりまるで卵が割れるように砕けた
「な、ナニあれ!?」
「猪?」
猪と鎧武者を組み合わせたキメラが涎をダラダラ流しながら雄叫びをあげ、かけだしまるで弾丸のように突進してくる、狙いが二人だとわかった時、突進してくる猪?の前に立ちはだかる
「「ミツ君/ミツ兄!?」」
『プギャアアアア!!』
僕をそのまま殴りつけ壁へ吹き飛ばした。コンクリートに大きな穴が穿たれ中へ落ちた
「よくもミツ君を……マッハキャリバー!」
「……いくよ、ソルフェージュ」
ミツキが吹き飛ばされたのをみてセットアップする二人…しかし猪?は目を歪ませリオへ突進をかける。迎え撃つように雷神装で加速、スバルのウイングロードを走りながら蹴り轟雷砲を顔面へと撃ち込む、ぐらりと体勢が崩れた。同時に背後から回り込んだスバルが構えていた
「いくよ、ディバィン…バスタアアア!!」
零距離からの砲撃が追い討ちといわんばかりに胴へと決まり光に飲まれた…勝ったと確信した二人。しかし何かが飛び出した。粘液まみれの触手がリオとスバルの身体をがんじ絡めに巻き取る
「く、ふりほどけな…え!?バリアジャケットが溶けて」
「な、なんで……や、やあ」
『プギ、プギギギギ』
粘液まみれの触手に触れた部分からバリアジャケットが溶け出す音、とともに響いた声。二人の前には倒したはずの猪?の姿。涎を地面に垂らし歩く姿に嫌悪感が生まれなんとか逃げようともがく。猪?が肌とバリアジャケットから下着を覗かせるスバルの前へ近づき、その手が迫ろうとした時だった
『レ・デ・ィー・イ・ク・サ・フ・ィ・ス・ト・オ・ン……』
デバイスとは違う電子音声が響き、足音が聞こえてきた。猪?は何かに脅えるように身震いをし始めた
「な、なにあれ」
リオ、スバルの目に映ったのは白い全身装甲に身を包み、十字架を想わせる仮面で頭部を覆い隠した姿…二人に無言で近づくと触手を素手で撫でた。瞬く間にバラバラと千切れ落ち霧散、バリアジャケットも瞬く間に修復された事に驚く二人に背を向け猪?とある構えをとり対峙する
(あれって春光拳?それに誰かに)
『………………』
『プギャアアアア!』
再び突進してくる猪?。逃げようともせず立つ白い全身装甲の戦士に体当たりする。微かに身体が動くも根が這ったように動かない。スバルの目にはしんじられないものがうつる。なんと顔面を片手でつかみ突進してきた猪?を止めていたからだ
『……ハアッ!』
掴んだ顔を地面に叩きつけ、軽くバウンドした身体を足刀を叩き込みミツキが跳ばされたであろう場所とは真逆の方向へ吹き飛ばす姿にリオは誰かの姿と重ねている。日々鍛錬をする彼にせがみ、照れながら見せた蹴りや拳は間違えるはずもない
「……………ミツ兄?」
『……………』
『プギギギギ、プギャアアアア!!』
小さく漏れた声に応える事なく、猪?が吹き飛ばされた方へ視線を向けた時、再び無数の触手が今度は全方位から襲いかかる。力が入らず思わず目を背けようとしたスバル、リオの目に信じられない光景が広がる
手を正面、まるで花を包むような構えを取りながら襲いかかる触手をすべて弾き返し間合いを詰めていく。彼の姿を見てスバルは姉ギンガとゲンヤから聞いた話思い出していた
ー十字架仮面?ー
ーああ、最近な夜の街、クラナガンに現れるヘンな怪物を倒す謎のヒーローだと。白い全身装甲にでっけぇ十字架みたいな仮面をつけてるらしいんだー
ーそれにストライクアーツとは違う、格闘技…ルーフェン武術ですでに廃れた赤心少林拳を使ってるらしい……でも助けられた人たちは名前らしいのを聞いたみたいなの…たしかー
「……十字架仮面イクサ……」
すべてをいなし終えた姿に思わずつぶやいた。彼、イクサは深く深呼吸する…するとどうだろう。あたりに不思議な輝きが粒子のようにその体に集まる。何故かわからないがスバル、リオは暖かさを大きな何かに包まれるような心地よさを感じ取りまぶたが閉じていく…
『………………少しだけ眠ってて…』
微かに聞こえた優しく憂いを秘めた声を最後に二人が目を閉じたのを見てイクサは構え、氣を全身に満ち溢れさせる…身体の全神経に氣を循環させ両拳に力を集中するのを見た猪?も間合いを詰め構えた
『……………こい骸須斗《ガイスト》…二人が目をさます前に終わらせる…』
『ピギ!!』
二人同時に駆け出し、猪?は今までとは違い両手に牙を模した大剣を構え身体を捻り大きく振りかぶる。迫る刃を意に介さないと言わんばかりにイクサは刃に手を添え真ん中からへし折る。続けて二撃目が頭を捉えた。普通なら臆する攻撃…しかしイクサはそれを見せることなく体を沈めた。ナニもない空を切る刃が通り抜けた時、深く沈めた拳に黄金の輝きが満ち溢れさせる収束、堅く握られた拳が振るわれた!
『……赤心少林拳!二連双拳突き!!』
『ピギグガアアアアアア!!』
顔面に一撃、ぎゅるると体が回り続けざまにピンポイントで再び顔面を捉え殴り抜きまるでゴム玉みたいに跳ねながら地面へ落ちふらふらと立ち上がる猪?…いや骸須斗ーガイストーの顔面に黄金の光が走り全身にヒビが入る
『バギング…デグゥ……ハアアアア…フウウウウ…ビュウガアアアアアアアアアアアーーーーーーーーーー』
悶え苦しみ断末魔の叫びをあげながら骸須斗ーガイストーは黒い霧へ変わり霧散するのを見届けるイクサ。その手を腰にあるイクサナックルをはずすと装甲が瞬く間に消える。現れたのはスバル、リオの想い人ミツキ・カーディフ。まるで哀悼の意を表すかのよう静かに頭を下げ眠り続ける二人を軽々と背負うと歩き出した
☆☆☆☆☆☆☆☆
「……ん、わたし…」
「あ、起きましたねナカジマさん」
「ミ、ミツ君!?ここは?」
「ここは、その、陸士隊の隊舎の医務室です」
「ミツ君!大丈夫なの?どこも痛くない?」
「あ、痛くないですよ。白い鎧をつけた人に助けてもらったんです…その人にリオちゃんと一緒にここまで送って貰ったんですよ…」
「そっか~でもミツ君や、わたしたちを助けてくれた十字架仮面イクサさんにお礼を言いたいけど居ないんじゃ仕方ないよね…あれ?おかしいな…急に」
安心感と同時にきたのは恐怖。もしあのまま助けが来てくれなかったら…身体がガクガクふるえ出す。その手を暖かなぬくもりが包んだ。ミツキが手をまるで花を護るように包んでいた。不思議なまでに暖かで包まれ安心感が胸を満たしていく
「もう、大丈夫ですよナカジマさん。今はゆっくり寝てください。さっきもリオちゃんも震えてて…」
ミツキの隣に寝ているリオ。その手はしっかりと服の裾を握りしめ離そうとしないのをみて少しだけ気が緩んだのかウトウトし始めた…
「うん、そうする……年上なのに心配させてごめんね……」
「あ、気にしないで……僕もいつも絵のモデルしてもらったりしてるからお互い様ですよ…あの、手を」
「ごめん、少しだけ、こうさせて……寝る…ま…」
やがて穏やかな寝息を立て眠るスバルに優しい笑みを向け立とうとしたミツキ、しかし手をしっかり握られリオから服の裾をつかまれ立てず、無理に離すといけないと想い椅子に腰掛けた
胸元にある重みを感じながら思うは先ほどの骸須斗。今までなら週一から週二しか現れなかった。それなのに一週間で二回目の出現は何か意図を感じていた
(……………骸須斗……今度、オキ師父、ヨシツネ師父に聞いてみないと。あとイクサのメンテナンスを結城博士に……)
ミツキ・カーディフ…彼が何故《ガイスト》と戦うのか、そして仮面ライダーイクサとなる力を持ち、廃れた赤心少林拳を使えるのかは誰も知らない
ただ今は、二人を見守るだけの普通の少年の姿しかソコにはなかった
ただ………
「ノーヴェ、チンク、ギンガ、ウェンディに続いてスバルもだと……クイント~また娘が嫁にいっちまう。今度は絵描きの卵で将来は有望らしいんだが…ングングング…マスター!おかわり!!」
「俺たち救助隊のアイドルをとりやがって、ハアアアア…マスター!俺たちにもクレ!!」
「はい、はい……ゲンヤさん。飲みすぎたら娘さんたちに迷惑かかるよ?」
「……ば~ろう、やってられるか~ングングング、おかわり!!」
と、陸士隊メンバーを誘いBARーZEROーで飲みつぶれた隊員たち、そしてなぜかスバルをねらっていた救助隊のメンツを交えての自棄酒パーティーが行われていたとか
守りし者ー異聞ー十字架の仮面
了