インフィニット・ストラトス 虹の彼方は無限の成層圏(一時凍結) 作:タオモン3
これは束さん?かなって
そんなこんなの第三話です。
束サイド
少し前、いっちゃんがいつもの様に星を見に外に出て行った。
何かあったら心配なのでクーちゃんに少ししてから迎えに行かせた。
自分でいけばいいんだけど、私はある物を造るので手が空いていなかった。
「よ~し、後はいっちゃんのバイタルデータを入れれば8割方は完成かな」
ディスプレイ画面に映る白いIS。いっちゃんの専用機《白桜姫》
ISっていうのは略称で、正式名はインフィニット・ストラトス。簡単に言うと私が14歳の時に作った宇宙に行くためのマルチフォーム・スーツ。私は何を思ったのか、そんなものを作った。
理由?宇宙に行ってみたかったからかな。
近年、宇宙進出に停滞化したこともあって正直、画期的な発明したかなって思ったよ。
私、こんなんでも天災って世間だと言われてるからね。
けどね、開発当時は注目を浴びるどころか、見向きもされなかった。
所詮は子供の作った玩具、なんて言われちゃった。
だから私は親友とある事件を起こしたんだ。
世界を変えてしまった事件。
今思えば、若気の至り……なんだと思う。
日本を射程にしてるミサイルが配備してある軍事基地のコンピュータをハッキングして、全弾日本に発射。私の開発したⅠS一号に乗った親友に、バーンと全部撃墜したもらい最高のデモンストレーションを披露した。
ついでに鹵獲しようと動いた、アメリカや自衛隊のイージス艦と戦闘機も無力下した。
これで、分かってくれたかなって当時は思った。
でも、後さき考えない行いだったと今では後悔している。
それからいろいろあって、ISのコアを467個、世界にばら撒いて行方をくらました。
まぁ、意外と近くにいるけどね。
キーボードを打ち終えて、時計を見た。
クーちゃんを行かせてから、かれこれ1時間。
う~ん……それにしても遅いな。
いっちゃんが星を見る場所はここから徒歩で20分くらいにところ、だけどクーちゃんなら10分ぐらいで追いつくはずだけど……何かあったのかな。
「私も行ってみるかな」
そう思いながらいると、ドアが開く音がした。
「クーちゃん、いっちゃんお帰り~。遅いから束さん心配してたぞ♪」
「遅くなって申し訳ありません、束様」
「いいよ、いいよ……ってその背に背負ってる子は?」
「森の中で倒れていた巨大なロボットの中にいました」
え?ロボット?
クーちゃんの言っていることがよく分からないでいると、いっちゃんも誰かに手を貸しながら歩いてきた。
宇宙服のようなものを着た、女の子。
だれ?
「ただいま、束さん」
「おかえり、いっちゃん。そっち子は?」
「え~とこの人は……」
「ユウキ・キサラギといいます。一夏ちゃんとクロエちゃんに森の中で………」
「ストーップ!まずはクーちゃんが背負っている子をベッドまで運んでから。クーちゃんその子を奥まで運んで」
「わかりました」
「後、君も休んで」
「けど……」
「そんなフラフラな状態の人は休みなさい。話はそれから。いっちゃん、この子も運んであげて」
「うん、わかった」
ふたりを運んだ後、いっちゃんとクーちゃんに再度確認したら……
「つまり、森の中に20メートルくらいのロボットが二体倒れていて、あの二人はその中に居たと」
「うん、だいたいそんな感じ」
愕然とした。
森の中に、それも目と鼻の先にそんなものがあるなら、なんで気が付かなかったのか。
ここの居を構えて、2年ほどになるけど、そんなものはなかったはず。
そもそも20メートルクラスのISが完成したって話は聞いたことないし、まして最近落ちたのだったらレーダーに反応があるし、いっちゃんの話だとその線は薄いか。
「う~ん……あの子たちから話を直接聞くしかないかな。今日は遅いし、いっちゃんもクーちゃんも早く休みなさい」
「はい」
「うん、分かった」
ユウヤサイド
目が覚めると薄暗い部屋のベッドの上にいた。
体が重い。重力がある。
コロニーか、艦の医療室か?
いや、ノーマルスーツを着たままいるから違う。
どこかに運び込まれ拘束されたか。
「此処は……」
体を起こして部屋の中を見渡す。
監視カメラの類は見当たらない。
右腰のホルスターを確認すると拳銃はそのままだ。
ここに運んだ奴は、身体検査が雑なやつで助かった。
ホルスターから拳銃を抜き、扉を少し開けて、安全を確認してから全開にした。
部屋から出てみるとそこは電子機器が散乱してあった。
「本当にどこなんだ……」
研究所?いや、それにしては警備が無く、静かすぎる。
「おや~気が付いたんだね。君」
「っ!!」
反射的に拳銃を声がした方向に向けた。
そこにはウサギ耳のようなものを付け、大昔の童話に出てきそうな青いワンピースを身に纏った場違いな女がいた。
「あんたは?」
「私?私は篠ノ之束。世間じゃ天災なんて揶揄されてるけど、しらない?」
頷いた。
あいにく、そんな奴の名前は知らない。
「それに名乗るなら、まずは自分からじゃないの?」
頬を膨らませながら篠ノ之束は言った。
歳は20代前半ぐらいに見えるが、まるで子供のようだ。
「ユウヤ・キサラギだ。篠ノ之束、ここは何処だ?」
「此処?此処は束さんの秘密のラボなのだ♪君ともう一人、確かユウキっていったけ?」
「ユウキがここに居るのか?!何処に!」
「今は奥の部屋で休んでるよ。身体的な疲労があったからね」
「そうか……礼を言う」
「そういうなら、それをしまってくれるかな?恩人にそんな物騒なもの向ける人は、束さんは嫌いだな」
ホルスターに拳銃を入れた。
無害とまではいかないが、危険はないだろう。
それよりも……
「篠ノ之束」
「う~ん、なんだい」
「アクシズはどうなった?」
そう。アクシズは地球に落ちたか、落ちなかったのか。俺はサイコ・フレームの光に包まれてからの記憶がない。
此処に五体満足に存在していることは、落下はしなかった可能性が高い。
しかし、
「アクシズ?なにそれ?」
「小惑星アクシズに決まっているだろ。ネオ・ジオン軍が地球に落とそうとした」
「あのさ……君、頭大丈夫?」
なぜか、かわいそうな人を見るような眼差しで返された。
「……質問を変える。今は何年の何月何日だ?」
「西暦20XX年の○月△日だっけ?」
「西暦20XX年?!」
唖然とした。
100年以上も過去にいるのか?
いったい俺たちに何があったんだ。
一夏サイト
「ん……朝……」
枕もとにある目覚まし時計を見ると6時過ぎ。
昨日は遅かったからちょっと寝過ごしちゃったな。
わたしはパジャマから普段着に着替えて、リビングに向かう。
ここでの料理はわたしがしている。
束さんは栄養ドリンクとカロリーメイトしか食べないし、クロエさんはゲル状のものを作ってしまう。
束さんは気にしないで食べていたけど、わたしには無理。
クロエさんには悪いけどあれは人の食べるものじゃない。
「あれ?」
リビングの明かりがついていた。
クロエさんかな?
でも、いい匂いがする。
「あ、おはよう一夏ちゃん」
昨日森の奥に倒れていたロボットに乗っていた人――ユウキさんがクロエさんのエプロンをつけ、鍋を持って台所に立っていた。
「なにをしているのですか?」
「これ?朝ごはん。昨日のお礼にね。ちょっと冷蔵庫の中の物を使わせてもらったけどだめだったかな?」
鍋の中は野菜スープだった。野菜が溶けていい匂いがする。
わたしは首を横に振るとユウキさんはニコリと笑った。
「体の方はもう大丈夫ですか?」
「うん、お陰様でね。ぐっすり寝たらよくなったよ。本当にありがとう一夏ちゃん」
「い、いえ、わたしはなにも……ただ、ユウキさんから不思議な感じが……」
「不思議な感じ?」
しまった。
「えっと……その……」
私は逃げるように俯いた。
不思議な感じって変だよね……やっぱり。
でも、
「不思議な感じか……そうだね。一夏ちゃんはどう感じたの?」
「え?」
私は顔を上げた。
「僕は一夏ちゃんから温かい何かを感じたよ。一夏ちゃんは?」
「わ、私もユウキさんからそんな感じがした……と思う」
曖昧にしか答えられなかった。
ユウキさんみたいな人と会ったことなんてなかったから。
「……そっか。なら僕たち似てるのかもね」
ユウキさんは優しく微笑んだ。
まるで……そう、お母さんみたいな優しい笑顔。
私はいつの間にか頬が熱くなっていた。
「あ……お、お手伝いします。何をすればいいですか?」
「そうだね、あとはパンとタマゴを焼くぐらいかな」
「はい!まかせてください!」
ユウキさんといると安心する。
これが温かいっていうのかな。
私は急いでエプロンをつけて台所に入った。