やはり俺の日常はまちがっている。   作:黒甜郷裡

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その2 由比ヶ浜結衣

小町との一悶着を終えた俺は部屋のベッドに腰掛け小町の顔を見る。

…寝てるとこんなに無邪気な顔をしているのにな…。

そういえば俺もよく目を閉じているとイケメンだと言われるな。流石兄妹。いや、俺のはただ目が腐ってるだけですね。はい。これがギャップってやつか。

などと他愛もないことを考えながらベッドから腰を上げ、寝衣から着替える。

ちゃんと部屋から出てだよ?小町の前で着替えるなど恐怖しかないからな。突然目を覚ましたらと思うと気が気でない。

 

身支度を整え携帯を手に取り家を出る。はぁ…

中学の頃は1日中部屋でごろごろできていたというのに、俺がこんなに健全な生活を強いられるようになろうとは…。

ん?まさかこれが雪ノ下の更生の効果なのか?なんだよこれがリア充になるってことなのか?

そうか…俺はいつのまにかりリア充になっていたのか……。

いや、違うな。だって友達いないし。ぼっちだし。

QED証明完了。

 

 

その2 由比ヶ浜結衣

 

家を出て少し歩くと見知った顔が現れる。

 

「あー、ヒッキーだー。」

 

早速お出ましか…。

 

ヤンデレっ子その2由比ヶ浜結衣。

俺と同じクラスであり、奉仕部のムードメーカー的存在である。奉仕部に入ったのをきっかけに俺にやたらと絡んでくるようになった。危害を加えてくるかどうかという面では1番安全な部類に入るだろう。

 

「…ッキー、ヒッキー‼︎聞いてるの?」

 

っと。思考の海に潜っていると由比ヶ浜が不満を顔に滲ませながら問いかけてくる。どうやらサブレの散歩の途中らしい。…お前んちこっち方面じゃないだろう。散歩ってこんな遠くまで来んの?

 

「お、おう。悪いな、ちょっと考え事してただけだ。」

「…目の前にわたしがいるのに、一体何を考えてたの?わたしっていう赤い糸で結ばれた相手がいるのに「お前のこと考えてたんだよ。」へ?……」

 

…嘘は言ってないからな。

 

「……なぁんだ。てっきりわたしのこと無視してるんじゃないかと思ったよそうだよねヒッキーは優しいからわたしのことを無視したりなんかしないよねそうだなぁ…わたしは将来はヒッキーのためなら料理だって頑張るよあぁでもヒッキーが専業主婦になりたいっていうならわたしはそれに従うよだってヒッキーのためだもんヒッキーのためならわたしはなんだってできるんだから。」

 

ちょっと⁉︎息継ぎなしで長文やめて。ほんと怖いから。

そう、こいつの中ではすでに俺たちは将来を誓い合った仲らしい。思考がエスカレートするのはヤンデレでは当たり前のことかもしれないがどうしてそうなった。

あとハイライトさんちゃんと仕事して‼︎俺は働きたくないけど。働いたら負けだ。

 

「ちょ、ちょっと落ち着けって。な?サブレの散歩中みたいだし、俺はもう行くか「まって。」…なんだよ。」

 

早いところこいつから離れて誰にも見つからないところに行きたいんたが。

 

「じゃあ一緒に散歩しようよ。その方がサブレも喜ぶし、わたしももっとヒッキーといたいし。」

 

「い、いや。ほら、俺は今日アレがアレだから。」

 

咄嗟とはいえなんだこれ。

こんなので誤魔化せるか?

 

「……ヒッキー、何言ってるの?ヒッキーに予定なんかないじゃん友達いないしあぁ別にこれはヒッキーのことをバカにしてるとかじゃないんだよ傷ついてたらごめんねこれはただヒッキーがそういう時は決まって用事がないしわたしをおいて女の子と遊びに行くわけがないしそれにもしそうだとしたら「と、戸塚だよ。今日の朝早くから一緒にテニスしようってなってんだよ。」…へぇ。」

 

こっわ。

いくらなんでも戸塚を引き合いに出せばこいつも納得せざるを得ないだろう。

 

「……わたしにそんなウソつくんだね。知ってる?彩ちゃんは今日の朝から家族で旅行に行くから遊ぶのは無理なんだよそんな風にウソをつくなんてわたしのことが嫌いなの?そんなわけないよねだってわたしがヒッキーのことを好きなのと同じくらいヒッキーもわたしのことが大切なんだもんでもウソはだめだよねウソをつく悪いヒッキーには罰を与えないとねあぁ心配しなくても大丈夫だよわたしはヒッキーが怖がることはしないからヒッキーを傷つけたりなんかしないよこれはわたしたちのために必要なことなんだから。」

 

やっばい。このままだと確実に何かされる。由比ヶ浜の性格上暴力的なことはないだろうが暴走したらどうなるか分からない。

ほら由比ヶ浜、そのどす黒いオーラ抑えて。サブレ超震えてるから。

っていうか戸塚旅行行ってるのか…いいなぁ。俺も戸塚と旅行行きたい。

 

「な、なあ由比ヶ浜。その、嘘をついたのは悪かった。でも、お前のことが嫌いってわけじゃなくて。その……なんだ。お前可愛いから一緒にいると恥ずかしいからというか…。とにかく、そういうことだ。」

 

どうだ…?

 

「ふぇっ⁉︎えへへ、ヒッキーが可愛いって言ってくれた…。…そっか、恥ずかしかっただけなんだね。ならしょうがないかな。ヒッキーは恥ずかしがりやさんだなぁ。」

 

よかった…なんとかなったよう「でも。」ん……嫌な予感が…

「ウソはだめだよね…。ってことで一緒に散歩してくれたら許すよ。」

 

やっぱりただではすまんか…

まあそれぐらいで済むのならいい方だろう。

 

「はぁ…分かったよ。一緒に行けばいいんだろ?」

 

「よしっ。じゃあ行こう‼︎サブレ、待たせてごめんね?お詫びに今日はヒッキーが散歩に連れていっくれるよ。」

 

そう言って由比ヶ浜は俺にリードを差し出してくる。

流れるようなその動作に俺は思わずリードを受け取ってしまう。

 

「おい、ちょっと待て。一緒に行くとは行ったがなんで俺がリードを…って由比ヶ浜さん⁉︎とっ、いきなりなにしてんの⁉︎そんなはしたない子に育てた覚えはありませんよっ⁉︎」

 

あろうことか俺がリードを受け取ったことを確認すると由比ヶ浜が抱きついてきた。当たってる。その立派なメロンが当たってるから。べっ、別に柔らかいなぁとか考えてなんかないんだからねっ!

 

「んー…?ヒッキーに抱きついてるだけだよ?ほら、わたしもくっつけるしヒッキーも柔らかいでしょ?うぃんうぃんってやつだよ。」

 

そう言いながら俺に身をすり寄せてくる由比ヶ浜。実際その通りだから反論できねぇ。悔しい、感じちゃう。…俺がやってもキモいだけだな。

 

「えへへー。ヒッキーヒッキー♪」

 

こいつらヤンデレ集団はみんながみんな可愛いからタチが悪い。この可愛さに何度騙されたことか。

っていうか由比ヶ浜さん。近い。超近い。なんか匂い嗅いでるし。ええい。離れろ柔らかいいい匂い.

 

「クンクン。ヒッキーのにお……い?

 

突然黙り込む由比ヶ浜。急なテンションの落差についていけず思わず狼狽えてしまう。

 

「ど…どうした?由比ヶ「ヒッキー?どうして女の子の匂いがするの?朝から一体何をしてたの?あぁ、そうか小町ちゃんか いくら兄妹だからってさすがにベタベタしすぎだよ?そろそろシスコンもなんとかしたほうがいいよ?…小町ちゃんなら結婚できないからって思ってたけどヒッキーを襲わないとは限らないし…やっぱりヒッキーを監禁しなきゃいけないのかな?でもヒッキーの嫌がることはしたくないし…。」

 

なんか後半はボソボソ言ってたけどこの距離だから全部きこえちゃってるんですよねぇ。

なんで匂いとか分かるんだよ。犬なの?いや、確かにガハマさんは犬っぽいけども。

っていうかやっぱりってなんだ。監禁とかマジで怖いからやめてください。普段からこんなこと考えてんの?

 

このままこうしているとさすがにまずい。そのうち小町も俺がいないことに気がつくだろうし。他のやつに見つかっても傷害事件になりかねん。別にもう1人の俺がどうとかそういうわけではない。…本当だよ?

 

「な、なぁとりあえず散歩行こうぜ。サブレが可哀想だ。あと、俺が恥ずかしいからくっつくのは無しだ。」

 

「うー……。まぁヒッキーが嫌がることはしたくないし…。それじゃあいこっか?ごめんね?サブレ。」

 

俺が言うと由比ヶ浜は俺から離れる。サブレよ、ごめんな。今からちゃんと散歩するからな。

……願わくば、せめて散歩の間は誰にも出会いませんように…

そう祈りながら俺は歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2話目になります。
ヤンデレになっている気がしない…
ガハマさんは無邪気な感じなのでどうにも書きづらいです。早くいろはすやゆきのんを出したいですね。
年末年始はあんまり投稿できない気がします。

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