やはり俺の日常はまちがっている。   作:黒甜郷裡

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その1 比企谷小町

今日も今日とて朝日は昇り部屋を少しずつ暖めていく。だが所詮冬の寒さの前では焼け石に水である。

俺は暇つぶし機能付き目覚まし時計のアラームの音に悪態をつきながらも目を覚ます。時刻は午前5時。せっかくの休日、本当は2度寝と洒落込みたい所であるが、布団の誘惑を押しやって周りを確認する。大丈夫、自分の部屋だ…別に知らない天井だとかそんなことはない。1度は言ってみたいが実際に起きたら絶対テンパるよねあれ。

……部屋に異変はない。

どうやら今日は大丈夫なようだ。

いつから俺の日常はこんなホラーチックになってしまったんだ…思わず溜息が出てしまう。

扉に鍵がかかっていることを確認すると少しだけ気が楽になった。

どうして俺がここまで自分の部屋でにいるのに周りを警戒しているか、それは……

 

気がつけば俺の周りはヤンデレばかりになっていたからである。

 

 

まずは比企谷小町。

俺の最愛の妹であり、俺の周りのヤンデレっ子の1人である。

昔からブラコンではあったがそれでも普通より仲の良いごく普通の千葉の兄妹といったところだった。

それが俺が高校に入ってからというもの、家では常にくっついてくるし、外出しようものなら彼女のように振舞ってくる。極め付けには夜に部屋に入ってきて、隙あらば俺を襲おうとしてくる始末である。

 

ガチャガチャ

 

突然何者かがドアを開けようとする。

「……お兄ちゃん、なんで鍵かけてるの…?

小町を入れてくれないの……?小町のこと、嫌いになっちゃったの……?」

 

件の妹である。

小町よ、鍵をかけてる理由は主にあなた方なんですがねぇ。

そうでなくてもプライバシーってものがあるだろう。俺のプライバシーなんてあってないようなもんだけど。

 

いつも通りなら部屋に来るということは、まず間違いなく俺を襲いにかかってくるはずだ。

とりあえず小町の興奮を落ち着かせるために俺は声をかける。

 

「い、いや、俺は小町こと大好きだから「だったら開けてよ。小町を受け入れてよ。」…それはあくまで妹としてだ。」

 

間髪いれずに食いついてくる小町。なんでこんな冷たい声が出るんだよ。怖い。あと怖い。一色といい、冷たい声は女の子の標準装備なの?雪ノ下も冷たい眼差しを向けてくるし、俺の周りの女子はみんな氷タイプなの?

 

 

「どうして……?どうしてお兄ちゃんは小町を受け入れてくれないの?…兄妹でも小町たちは千葉の兄妹だから大丈夫だってお兄ちゃんいつも言ってたよね?

それに今、いろはさんのこと考えてたよね?雪乃さんもかな?いろはさんがいるから駄目なのかな?雪乃さんが邪魔なのかな?じゃあ2人がいなくなったら……そしたらお兄ちゃんは小町を受け入れてくれるのかな?」

 

底冷えのするような声で小町は言う。そうか、小町が氷タイプ最強だったのか……

それと、俺たちは千葉の兄妹でも健全な方だ。

 

マジで洒落にならん。

こうなっては小町が行動を起こすのは時間の問題だ…

 

ガチャ

 

俺は意を決して鍵を開ける。

するとすぐに扉が開き、

 

「やっと小町を選んでくれたんだね。小町的にポイント最高だよ、お兄ちゃん。」

 

と、先ほどまでとは打って変わって明るい声の小町が部屋に入ってくる。

その手には黒い鉄製であろう手錠が握られている。

 

「こ、小町、とりあえずその手に持ってる手錠を置こうか。な?」

 

なんとかしてあの手錠を小町の手から遠ざけようとなるべく平常通りの声色で話しかける。

 

…だが、

 

「駄目だよ。お兄ちゃんはちょっと目を離すとすぐに他の女のところに行っちゃうんだから。お兄ちゃんは優しいからすぐにいろんな子を助けちゃって…。お兄ちゃんの魅力は小町が、小町だけが知っていればいいのに…。……こんなことなら部活なんかすぐに止めさせればよかったかなぁ。そうすれば、あんな泥棒猫達にお兄ちゃんとの時間を奪われることもなかったのに…。ぽっと出のくせにお兄ちゃんに媚び売って……。」

 

俺の妹がこんなにヤンデレなわけがない。

と、頭の中で現実逃避を試みるもハイライトの消えた小町の目によってすぐに現実に引き戻される。

 

とりあえずはなんとかして小町を無力化しなければ。

 

「小町、ちょっといいか?」

そう言い俺は小町に抱きつく。

 

「お、お兄ちゃん?あ、あのヘタレなお兄ちゃんが急に、だ、抱きついてくるなんて…」

 

煙が出るほど顔を真っ赤にして狼狽える小町。

 

そう、何を隠そうこの妹。自分からは嬉々として襲いかかる癖に、咄嗟の反撃なんかには免疫がないようでいつもこれで気絶してしまう。

 

「……………」

 

…やったか?

フラグじゃないよね?

 

「さ、流石に毎日反撃にあえば耐えられるよ。」

 

顔を真っ赤にしながらも意識を手放さない小町。

やっぱりフラグでしたね。説明すると確実にうまくいかないのは某カードゲーム然りこの世の真理なんですかねえ?

 

なんて言ってる場合じゃない。

このままでは俺は千葉の兄妹エンドになってしまう。

どうするどうするどうする。

 

……あまり気は進まないがやるしかない。

 

「小町」

 

抱きついた姿勢のまま耳元で囁く。

 

「んっ…なっ…なにかな、お兄ちゃん。漸く小町のことを「小町」ひゃっ⁉︎」

小町の言葉を遮るようになるべく低い声を出すことを心がける。

案の定小町は動揺している。

今しかないっ‼︎

 

「小町……愛してる。」

 

…どうだ?

 

「にゃっ…なっ…………ふみゅう……」

 

 

ふぅ、なんとかなったようだ。

流石、CV江口拓也は伊達じゃないな。コポォ?そんなものはなかったんだ。

 

とりあえず小町を俺のベッドに寝かせる。それとなく同時に時刻を見ると、まだ5時半を示している。

 

まだこれは俺、比企谷八幡の日常の一部であり、小町とのやりとりは俺の1日の序章に過ぎない。

 

 

 

 

 

 

 




初投稿になります。
文章を書くのって難しいですね。
不定期の更新になると思いますが、よろしくお願いします。
誹謗中傷は書かないで頂けると幸いです。

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