Toloveるダークネス ~トランス兵器編~   作:野獣君

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やっと臨海学校が終わります


臨海学校 終結

旅館のカーテンの隙間から朝の日差しが零れる。時刻は5時半。起床時間までまだ時間がある。

 

「散歩でもするか……」

 

体を起こそうと布団をめくり上げると二人の少女が隣で寝ていた。

 

「え?なんで?」

 

彼は焦りながらもゆっくり記憶を辿っていく。クロと一緒にラコスポを倒したあと頭が真っ白になったまでは覚えているがそこから先は全く覚えていなかった。

 

「でもなんで芽亜とヤミが…………ん?なんだこれ」

 

机においてあったメモ用紙にはドクターミカドの字でこう書かれていた。

 

「七原君へ。今回あなたが倒れた原因は過労。つまりトランス能力の乱用。もう少し使っていたら身体だけではなく精神にも影響があったかもしれない。こちらの方でも出来る限りの治療はしました。今日は最終日なので学校に着き次第、私の診療所に来なさい。それと芽亜さんやヤミちゃんはあなたを心配してくれています。モモさんやナナさんも同様です。必ずお礼を言うように。御門先生より。」

 

思えばどうやら上半身に包帯を巻いてくれたようだ。

 

「そっか……みんな心配してくれたんだな」

 

思わず涙が出て来てしまった。死にかけたわけでもないのにこんなに心配してくれる人は他にはいない。改めて俺は幸せ者なんだなと強く思った。

 

「どうして泣いているのですか?」

 

突然ヤミが聞いてきた。どうやら少し前に起きていたらしい。

 

「どうして……か。平たく言えばみんなが俺を心配してくれたことかな」

 

「たったそれだけですか?」

 

「ああ。それだけだ。俺は人から信頼されることはあっても心配されることはなかった。お前だってそうだろ?ずっと孤独だったからこそちょっとの優しさがとてもありがたく思えてくるんだ。」

 

「なるほど……納得しました」

 

「だから……ありがとな……ヤミ」

 

そう言うとヤミは顔を赤くして布団に潜ってしまった。

 

「今、言うことですか?」

 

「悪い。でも今じゃないと駄目な気がしてさ……」

 

「では……お礼として今度たい焼きを奢ってください……50個ほど……」

 

「おいおい。50は勘弁してくれよ」

 

「冗談です……。でも奢るのは確定ですから」

 

「はいはい。わかったよ」

 

その後芽亜も起こし、三人で旅館の食堂へと向かった。朝食の時間も迫っているせいか、かなり混雑していた。

 

「先に朝飯とってきていいよ。席はとっておくから」

 

「じゃあお願いねー」

 

二人と一旦別れたあと空いている席がないか探していると五つ空いている席があった。

 

「ここで待つか……」

 

座り始めて数分も経たないうちに教師二人がこちらへやって来た。

 

「相席してもいいかしら」

 

「ええ。どうぞ」

 

「ごめんね。七原君空いている席が見つからなくて……」

 

「大丈夫ですよ」

 

「早速だけど昨日何があったのか教えてちょうだい」

 

「ミカド!」

 

「いいんですよ。ティアーユ先生」

 

大夢は御門先生に思い出せる範囲で説明した。

 

「なるほどね……それは恐らく……」

 

「え?」

 

「やっぱりなんでもないわ。続きは診療所で説明するわね」

 

そう言って御門先生とティアーユ先生は席を離れて行ってしまった。その直後芽亜とヤミがやって来た。

 

「ヒロ君ドクターミカドとなに話してたの?」

 

「そう言えばティアもいましたね。何を話してたのですか?」

 

「別に大したことじゃないよ」

 

「本当に?昨日あんなことがあったのに」

 

「怪しいですね……」

 

「本当に大したことじゃないよ。じゃ、俺先に部屋に戻ってるから」

 

そう言って大夢はさっさと部屋に戻ってしまった。芽亜とヤミは互いに顔を見合わせたまま大夢の後ろ姿を見送ることしかできなかった。

 

 

数時間後バスで彩南町へと出発した。バス内は行きと同じように雑談を楽しむ者、疲れを睡眠で癒す者、携帯ゲームに勤しむ者など様々だった。因みに大夢は行きと同じで一番後ろの席でメンバーもモモ、ナナ、芽亜、ヤミと同じだった。

 

「芽亜、俺暫く寝るから彩南に着いたら起こしてくれ」

 

「うん、わかった」

 

芽亜にそう告げると大夢はすぐに寝てしまった。

 

「よほど疲れたのかな……」

 

「まぁ、そっといといてあげたほうがいいんじゃないか?」

 

「そうみたいね」

 

「…………。」

 

あれから小一時間が経ち彩南の町が姿を表したところで大夢が起きた。

 

「ん……もう彩南か……」

 

周りを見渡しても起きている生徒はヤミぐらいしかいなかった。

 

「寝なかったのか?」

 

「私には短時間の睡眠というのは必要ないことですから」

 

「そっか。でもしっかり寝ないと駄目だぞ?」

 

「あなたに心配されるほどではありません」

 

「はいはい。わかってるよ」

 

彩南高校に着いたときには大半の生徒が目を覚まし帰宅の準備をしていた。

 

「芽亜、俺は寄るとこがあるから先に帰ってて」

 

「うん……」

 

起きたばかりで眠いのか、目を擦りながら返事をした。

 

生徒の点呼が終わり、一斉解散になった。大夢は人混みに押し流させながらもなんとか校門についた。

 

「さて、行くか……」

 

学校から診療所まではかなりの距離があるため、トランスで行くことにした。

 

「え?なんで?」

 

突然トランスの翼が消えてしまった。なんとか地面には降りたが歩きで行くことになってしまった。

 

診療所に着いたときには辺りは暗くなり始めていてこの診療所もより一層不気味に見えた。

 

「ドクターミカド。入りますよ」

 

「…………。」

 

返事がない。不審に思いながらもドアノブを捻るとなにやら強いエネルギーが体全体に伝わってきた。

 

「また何か変な実験でもしてんのかな……」

 

エネルギーを感じた方向に行くと案の定変な実験をしていた。

 

「あら、来てたのね」

 

「さっき来たばっかりですよ。一応呼び掛けはしましたが」

 

「ごめんなさい。周りがうるさくて聞こえなかったわ。まぁいいわ。それよりこのカプセルの中に入ってくれる

?」

 

「わかりました」

 

カプセルの中に入ると海の中で息ができるような状態になった。

 

「ドクターミカド。これは一体?」

 

「これはトランス兵器専用回復カプセルよ。以前ヤミちゃんも怪我したときこの中に入ってたわ」

 

「そう言えば今日トランスが全く使えないんですが」

 

「恐らくそれは疲労ね。このカプセルは疲労回復とトランス能力の回復が目的なの。あと10分そのままね」

 

「今日はお静さんはいないんですか?」

 

「買い出しに行ってるからいないわ」

 

 

10分が経ち、カプセルから降りると、

 

「疲れがない……」

 

試しにトランスも使ってみるが全く支障はない。

 

「すごいですね」

 

「ティアが製作したのよ」

 

「ティアーユ先生が?」

 

「ええ。トランス兵器研究所にあった培養カプセルを一から改造して作ったの。あの子生物以外にも機械に強くてね」

 

「そうなんですか……」

 

大夢はまじまじとカプセルを見つめる。あの先生はこんな質の高いものを作れるのかと、心底感動してしまった。

 

「もう遅いから、そろそろ帰りなさい。治療代は今回はいいわ。私から呼び出したから」

 

「ありがとうございます」

 

大夢は御門先生先生に一礼してから診療所を後にした。

 

「あっ。芽亜に連絡入れないと……」

 

「私ならここにいるよ」

 

「お前……付いてきてたのか……ヤミもいるし」

 

「文句があるんですか?」

 

「そういうことじゃねぇよ。それより帰るぞ」

 

すると突然大夢の頭上に巨大な岩が飛んできた。

 

「ヒロ君!危ない!」

 

「ヒロム!」

 

大夢は振り向き様に右手を素早く刀にトランスさせて岩を切り裂いた。岩は木っ端微塵に砕けちった。

「ヒロ君大丈夫?」

 

「切り裂いたからなんとか大丈夫だ。それにしても上から仕掛けるかよ普通」

 

そう言いながら真っ黒な空を見上げる。空には星が点々としていて晴れているせいか、月も見える。

 

「(今の攻撃……恐らく銀河でも彼しか……)」

 

「ヤミお姉ちゃんどうしたの?」

 

「なんでもないですよ」

「それならいいんだけど……」

 

「二人とも何やってんだ。置いてくぞ」

 

なんだかんだで俺たちの思い出の1つとなった、臨海学校は終了した。

 

 

 

 

 




ティアーユ先生の「機械に強い」というのはオリ設定です。あと次回オリキャラ出したいと思います

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