臨海学校もいよいよ2日目の夜になろうとしていた。生徒達は一日中海ではしゃいで疲れているはずなのにむしろさらに盛り上がってるようにも見えた。何故なら、これから男女が二人一組でペアになって肝試しが行われるからだ。
「それでは今から肝試しのペアをくじ引きで決めまーす!各クラス男女それぞれでくじを引き同じ番号同士がペアになります!」
みんなが前に置かれた抽選箱に一列に並んだ。そして大夢の番が回ってきた。
「(まぁ、誰とでもいいよな。じゃあこれで)」
「ヒロ君何番?」
「42番。芽亜は?」
「16だよ。42番は確かヤミお姉ちゃんだっかな」
「そうなんだ。てかお前順番早いからもう行ったほうがいいんじゃないか?」
「そうだね。じゃあ行ってくるね」
芽亜を見送ってからヤミを探しに向かった。彼女をなんとか見つけたものの、ヤミは浮かない顔をしていた。
「ヤミ!やっと見つけた。お前番号いくつだ?」
「?42ですが。」
「じゃあ行くぞ。もうすぐ俺達なんだ」
「え?」
ヤミは訳のわからないといった顔をしながら大夢に手を引っ張られるままに肝試しに出発した。
とにかく暗かった。先が見えない道を歩くというのは少し抵抗があった。出発地点から約1キロ歩いたところの境内がゴールである。距離としてはさほど長くないのだがところどころ特殊メイクに変装した旅館の従業員がおどかしてきたりする。大半の生徒はびっくりして戻ってしまっている。
「みんな戻ってるけどそんなに怖いか?」
「いえ、全く」
「まぁ、そうだよな。これだったらセフィさんがキレたほうが100倍怖い」
「そうなんですか?」
「ああ。ギドでも手に負えないからな」
苦笑いしながら大夢が語る。彼自身も恐ろしさをよく知っている。
出発してから少し歩くと芽亜の姿があった。こちらに気づくと笑顔で向かってきた。
「芽亜。パートナーはどした?」
「わかんない。知らないうちに逃げちゃったみたい」
「仕方ない……。一緒に行くか」
「うん!」
パートナーが逃げてしまった芽亜と合流し、再び境内を目指すと、さっきまで黙っていたヤミが口を開いた。
「近くに何かいますね……」
すると突然地面が揺れだし、いつのまにか空中にいた宇宙船から何かが降りてきた。
「なにあれ?」
「げっ。あの宇宙船……。ってことは」
「ラコスポですね……」
案の定宇宙船から降りてきたのはラコスポだった。低身長に太った体、お世辞にもイケメンとは言い難い顔。誰が見てもどこかの国の王子とは言えない容姿だった。
「ジャジャーン!ラコスポただいま参上だもん!」
「ヒロ君誰だかしってる?」
「まぁ一応」
「この僕を知らないなんて非常識だもんね!」
「貴方を知ったところで得はしませんが」
「う、うるさいんだもんね!こーなったら……出てこい!ガマたん!」
突然ラコスポの宇宙船から特大サイズのカエルが降りてきた。
ちょうどそのとき地鳴りを聞きつけてやってきたナナとモモが合流した。
「あれは……イロガーマ!?」
「ナナ知ってるの?」
「あいつ前に来たときもイロガーマを連れてたんだ」
「大夢さん!」
「モモ姫!それにナナ姫!」
「ヒロム!どうしてラコスポがここにいるんだよ!」
「わかりません。しかし今回の目的はララ姫ではないようです」
「その通りだもんね!そのために今回は協力な助っ人を呼んだもんね!」
突然木陰から黒い弾丸が大夢に向かって撃ち込まれた。大夢はトランスで弾丸を防ぐも数メートル程吹っ飛んだ。
「ぐっ!相変わらずいい弾丸だな。クロ!」
「こんなところで死神に出くわすとはな……」
木陰から出てきた男がクロである。真っ黒の戦闘服に身を包み黒い装飾銃を使いこなし、銀河でも危険人物とされるほどである。
「久しぶりだな。お前がラコスポの助っ人というやつか?」
「違うな。俺はやつに雇われたりしない。ここに来たのはある任務のためだ」
「ってことはラコスポのハッタリ……」
「ぐぬぬ……こうなったら……出てこい!ガマたん!」
突然ラコスポの宇宙船からニャーという鳴き声がするカエルが降りてきた。
「イロガーマか。まだそんなのをペットにしてたのか」
「うるさい!みんなスッポンポンにしてやるんだもん!」
「メア!危ない!」
辛うじてイロガーマの粘液から芽亜を救ったナナだったが、粘液の一部がナナの服に飛び散り溶けてしまった。
「ナナ!」
「ナナちゃん!大丈夫?」
「イテテ……。なんとか……」
「ナナ姫。お下がりください。後は俺がやります」
「俺も加勢させてもらうぞ」
「みんなはここで待っていてください。俺とクロでやつを叩きます」
するとクロの装飾銃が赤のオーラを纏い出した。
「俺の精神エネルギーをすべてこいつに注ぐ。つまりは本気だ。お前も本気をだしたらどうだ?」
「そうだな……。久しぶりに全開でやるか」
大夢は目を閉じ、精神を集中させる。体全体を落ち着かせ、一気に力を溜め込む。
「これぐらいでいいかな」
力を溜め込んだ大夢の姿はもはやいつもの大夢ではなかった。
「お父様……?」
「ヒロムが……父上に見える……」
モモや、ナナには大夢の背中が実の父親であるギド・ルシオン・デビルークに見えてしまった。
「ヒロ君……?」
「…………。」
芽亜やヤミも同じく驚いた表情だった。
特に芽亜が驚いていた。数えきれないほど一緒に戦ったりしたがこんな姿は一度
もしなかった。
「行くぜ。ラコスポ」
「……散れ……銀河の果てへ……」
クロが撃った真っ赤な弾丸はイロガーマを貫き爆発した。爆発したと同時に大夢は一瞬でイロガーマを真っ二つに切り刻んだ。
「まだあるぞ」
クロはもう一発の弾丸をラコスポ目掛けて放った。空中にいる大夢はトランスで大砲を作り、クロの弾丸に上乗せするように放った。
「あ~~れ~~だも~ん!」
弾丸を浴びたラコスポは宇宙船をも貫通し、星になった。大夢が地上に降りるとクロの姿はもうなかった。
「死神によろしく。と言ってました……。殺し屋クロ……大夢さん。彼は一体何者だったんですか?」
「あいつは俺と同じだった。そういうことですよ」
「何だよヒロム。ちゃんと説明しろよ」
「つまりは命知らずということですよ。クロも同じこと思っているはずです」
説明を終えた瞬間大夢は地面にうつ伏せに倒れこんでしまった。
「!?大夢さん?」
「お、おいヒロム!」
「ヒロ君……?大丈夫!?」
「しっかりしてください!」
旅館に向かう林道には一人の少年を心配する少女達の声が響きわたるだけだった。
こんな出来の悪い作品を読んでくださる全ての読者に感謝です!