「え~では一年生の皆さん臨海学校を楽しんできてください!」
校長の話が終わり、クラスごとに一斉にバスに乗り込んだ。
「……でなんでこの席なんだ?」
大夢達の座席は一番後ろでメンバーは左から、モモ、ナナ、大夢、芽亜、ヤミの順である。無論クラスの男子(V.M.Cのメンバーを含む)からは羨望と殺気が大夢に向けられていた。
「……ナナ姫、クラスの男子からの視線が痛いのですが。」
「な、なんであたしに言うんだよ!芽亜とかモモに相談しろよ!」
「それが……モモ姫も芽亜もこんな状態で……」
大夢の言う通り芽亜とモモはぐっすりと寝ていた。
「モモは今朝から眠そうだったらからな。」
「モモ姫もですか?実は芽亜も夜更かししたらしく今朝はすごい眠そうでした。多分楽しみで眠れなかったんでしょう。」
「ヤミは夜眠れたのか?」
「私は目を閉じて体を休めるだけで深い睡眠は取らないようにしてます。」
「まぁ俺も危険察知という意味でも気持ちよく寝たことは一度もないな。」
「あたしにはよくわかんないなー」
「仕方ありません。ナナ姫には少し難しいですから。」
「ヒロム今あたしのことを子供扱いしたよな?」
「え、ちょ、ナナ姫!誤解です!」
「んー……なに騒いでるの?」
「芽亜!聞いてよ!ヒロムのやつあたしのことを子供扱いしたんだぞ!」
「ヒロ君。ダメだよ年頃の女の子を子供扱いしたら」
「そう言われても……」
「ヤミお姉ちゃんもヒロ君になんかいってよー。」
「……彼に言うことなど何もありません」
バス内はとても賑やかだった。大夢達のように世間話で盛り上がったりカラオケではしゃぐやつもいたり、トランプを始めるやつらもいた。目的地の旅館まであと少しというところで担任のティアーユ先生が、
「目的地までもうすぐなので降りる準備をしてください」
「「「はーい!」」」
クラス全員が一斉に元気のいい返事をする。このクラスはこういうところだけは謎の団結力があった。
「ん……もう着いたの……?」
「お目覚めですか?モモ姫」
「おはよ。モモ」
「おはよー!モモちゃん」
「おはようございます。モモ」
「着いたのですか?」
「ええ。着きましたよ」
バスから降りるとところどころ年季の入った大きな日本旅館が彼らを出迎えた。部屋も和を感じさせるのどかな和室だった。
「部屋はいいんだが、何故部屋割りが……」
大夢達の部屋は三人部屋で大夢、芽亜、ヤミといったメンバーである。ナナとモモは別の部屋である。
「ヤミお姉ちゃんと泊まるの楽しみだなー!」
「私もですよ。芽亜」
「俺は逆に不安なんだが。」
「えー?なんでー?」
「芽亜とは同じ屋根の下で暮らしてるから何とも思わないんだけど、ヤミは色々読めないからなぁ」
「それは私への宣戦布告という事でよろしいですか?」
「そうだ。一回殺り合うか?」
「望むところですよ。」
「じゃあ私も!」
「おっとそろそろ飯の時間じゃないか。食堂に行こうか。」
「……ヒロ君のいじわる……」
芽亜は頬を膨らませながらヤミと一緒に食堂へ向かった。大夢もそれに続いて部屋をあとにした。
夕食後、大夢はティアーユ先生と御門先生に呼び止められた。その中にはモモ姫もいた。一般の男子生徒ならラッキーかと思うが、大夢は嫌な予感しかしなかった。
「ごめんなさい。急によびだしたりしてその……ヤミちゃんの様子はどう?」
「何の話かと思ったらそれですか……。楽しんでるように見えますよ」
「そう言えばヤミさんと七原君はどういう関係なの?」
「デビルーク軍に入る前に殺し屋の仕事をしていてそれで知り合ったんですよ。」
「えっ。そうだったんですか?」
「モモ姫。ご存知なかったのですか?」
「初耳ですよ!」
「本題に入らせてもらうわね。実はこの旅館付近に異星人のレーダー反応が出たの。」
「私もミカドも徹底的に捜索したんだけど何も出てこなかったわ。」
「おそらくラコスポでしょう」
「ラコスポ?」
「モモ姫はご存知でしょう。ララ姫の婚約者候補を名乗り、ヤミもとい金色の闇にリト殿を殺させようとした男です。」
「何故彼だとわかるの?」
「数日前ギド・ルシオン・デビルークから、近日中にそっちにラコスポが現れる。こんな連絡がありましてね。」
「お父様がそんな連絡を?」
「ええ。しかもラコスポはどうやらまた殺し屋を雇ったらしく相当の腕利きだそうです。」
「彼がこっちに来るのも時間の問題ね。とりあえずモモさんはナナさんに連絡しておいてちょうだい。七原君もヤミさんと芽亜さんに伝えておいてね。」
「了解しました」
「はい。」
「七原君。その……ヤミちゃんと芽亜さんんをよろしくね。」
「任せてください」
「じゃあ私達は戻るわね。これから自由時間だから有意義に過ごしてね。」
御門先生はそう言ってティアーユ先生と共に部屋に戻っていった。
「私も用があるので先に戻りますね。」
「はい。お気を付けて」
モモも急ぐように部屋に戻っていった。
一方、大夢はいつものようにゆっくりと部屋に戻っていった。部屋に戻ると芽亜は部屋着、ヤミはパジャマにそれぞれ着替えていた。
「ヒロ君おかえりー。」
「芽亜。今何時?」
「9時ちょっと過ぎかな。」
「もうそんな時間か。二人は風呂入ったのか?」
「私は先に入らせていただきました。」
「私まだ入ってないよー」
「じゃあ芽亜。先に入るけどいいか?」
「それなら一緒に入る?」
「時間的にはギリギリだが、そうするしかないか」
「芽亜。気を付けてください。彼は結城リトと同類です。何をしでかしてくるかわかりません」
「安心しろ。俺はリト殿ほど何もないところで転けないし、ダイレクトに突っ込んだりしないよ。」
「でも私慣れてるから別にいいんだよね……」
結局成り行きと時間の関係で芽亜と入ることになってしまった。
「芽亜ー。入るぞー」
「いいよー」
ガチャっ
「……やっぱり恥ずかしいな」
「そう?私は別にそうでもないんだけど」
「……まぁいいや。先に体洗ってもいいか?」
「じゃあ私が背中流してよっかー?」
「別にいいけど芽亜は体洗ったのか?」
「まただよ。ヒロ君のが終わったらやってもらおーかなー」
「は!?なんでそうなる!?」
「だってこれでおあいこでしょ?」
「あー!もういい!さっさと頼む!」
「はーい♪」
芽亜は慣れたような手つきで大夢の背中を流していく。大夢は顔を真っ赤にしながら俯いていた。
「ヒロ君どう?」
「どうって……まぁいい感じかな」
「それなら良かった♪」
「俺はもういいよ。次は…俺か……」
「ちゃんと洗ってくれないとダメだよ~」
「わかってるよ。それじゃ、いくぞ」
大夢は相変わらず顔を真っ赤にしたままで芽亜の背中を流していた。
「よし!これぐらいでいいかなー。」
「もう終わりなの?」
「当たり前だ。俺は早く出たいし。先に出てるからな」
大夢が脱衣場に向かおうと立ち上がった瞬間大夢の腰に巻いていたタオルがほどけ、彼の下腹部が露になってしまった。
「ヒロ君も意外とケダモノだね~」
「馬鹿!どこ見てんだ!」
「もうちょっとよく見させて!」
「なにいってんだ!もうでるぞ!」
芽亜に強く促すと少し不満げな顔で脱衣場へと向かっていった。
着替え終え部屋に入るとヤミはベッドに腰掛け腰掛けながら読書をしていた。
「ずいぶん遅かったんですね。芽亜にエッチいことでもしてたんですか?」
「してねーよ。てか、逆にされかけたんだけど」
「私ヒロ君にエッチいことしたかな?」
「自覚がないだけだろ」
「私もう寝ます。今日は疲れたので」
「あ、待ってくれ。話があるんだ。芽亜にも関係あることなんだけど」
「なーに?」
「それなら知ってますよ。この近くに異星人が潜んでるかもということでしょう。」
「知ってんなら話が早い。近いうちにナナ姫かモモ姫を狙ってくる可能性が高いから頭に頭に入れといてくれよ。」
「貴方言われるのは癪ですが、わかりました。」
「正体とかはわかってるの?」
「ヤミは知ってるけど芽亜は知らないだろうな。」
「誰なの?」
「ラコスポだ。ヤミはわかるだろ」
「あの男ですか……」
「ヤミお姉ちゃんと関係があるの?」
「ララ姫と結婚するために邪魔だったリト殿暗殺をヤミに依頼した張本人だ。結局奴はヤミに虚偽の情報を伝えのが原因でヤミから裏切られ、ララ姫にもボコボコにされた哀れなやつだよ。」
「そーなんだ……」
「でも、今回はかなり凄腕らしいぞ。どうする?見回りでも行くか?」
「その必要はありませんよ。どうやらドクターミカドが旅館全域に異星人の侵入を防ぐバリアを張ったみたいですから。」
「あの人……そんなこと言ってなかったぞ。」
「このことはモモちゃんやナナちゃんに伝わってるの?」
「伝わってるよ。ただ、ラコスポが現れるとしたら明日になるだろうな。」
「どうしてわかるの?」
「奴の性格的にそう思っただけだよ。それよりそろそろ寝るぞ」
「私は先に寝ます。おやすみなさい」
「おやすみ~。ヤミお姉ちゃん」
普段は寝ないヤミだが、今日は珍しく寝息を立てながら寝ていた。
「俺らも寝るぞ」
「ヒロ君ベッドじゃなくて大丈夫?私は別に一緒に寝てもいいんだけど」
「気持ちは嬉しいけどいいよ。俺はソファーで寝るから。じゃ、消すぞ。」
「うん。おやすみ」
部屋の電球が消えたと同時に一気に来た疲れと眠気ですぐに眠りの世界に落ちてしまった。
まだまだ臨海学校編は続くのでよろしくお願いいたします!