新たなスタート
今日は新入生の入学式だった。三年生は卒業し、一年生だった俺達は二年生へと進級し、リトさん達は最上級生となった。この時期は環境ががらりと変わるから気が緩みやすくなる。新しいクラスメイト新しい教室、新しい担任。何もかもが新しい。
だが、さっきまで初々しい表情をしていた新入生達の顔がいっきに青ざめた。そりゃそうだ。
何せ校長がパン1で真面目な話をしているのだから。よく捕まらんなあの人。
俺達在校生はやれやれといったリアクションをするしかなかった。
「やったな、メア!同じクラスだな!」
「うん!やったね、ナナちゃん!モモちゃんとお姉ちゃんもよろしくね!」
「よろしくお願いいたします」
「ええ、よろしくお願いいたします♪」
先程新しいクラスが発表された。芽亜はナナ姫やモモ姫やヤミと同じクラスで嬉しそうだ。
対する俺は…
「やあ、僕と一緒だね」
「お前かよ…」
「酷いな、君は。ナイトメアの時は一緒に戦った仲じゃないか」
「確かにあのときには感謝してる。が、それとこれとは別だ。別に俺はお前の事を信頼してるわけじゃないし、仲良しこよしするつもりもない」
「まぁ、そう言うと思ったよ。君は本当に信頼した人しか心を開かないようだからね」
「……」
参った。
本当に厄介なやつと同じクラスになってしまった。ただでさえ何考えてるかわからんのに顔見知りがこいつしかいないのも面倒だ。
だけどこのクラスは他にも面倒なやつがたくさんいそうだ。
「おい!我々V.M.Cも新たな会員を増やすぞ!まずは新入生勧誘だ!」
「はっ!」
「まじやべぇよな!今週のグラビア!巨乳三昧だぜ!」
「うっはー!デカ乳だらけじゃん!!」
「やっぱり七原君×長月君じゃない?」
「えー、私は断然長月君×七原君かなー」
最後に至っては悪寒さえ感じたが、思ったよりV.M.Cの奴等以外はまともらしい。
学級委員も去年別のクラスでやっていた真面目そうな娘が立候補し、決定した。新しいクラスでの自己紹介も終え、放課後になった。各々部活に行ったり、趣味が合いそうなやつと遊びに行く計画を立てたり、普通に帰宅したりそれぞれの自由だ。
芽亜達には先に帰るように伝え俺は保健室へと向かった。ナイトメアの件があって以来こうして定期的にDr.ミカドの診察を受けている。
「まだ完全には消えていないわね。もしかしたら不意に出てくる可能性も否定はできないわね」
「そうですか…」
「私から言えることは疲労やストレスを溜め込まないことね。負の感情に捕らわれてしまったらあっという間にナイトメアに飲み込まれるわよ」
「はい、わかりました」
「な、七原君!困ったら相談してね!私も出来る限りのことはするから!」
「ありがとうございます、Dr.ティアーユ」
保健室を出て下校する頃には辺りは暗くなり始めていた。
恐らく腹を空かせて待っているであろう芽亜のために、マンションまでBダッシュで帰った。
「遅いよ!」
「ごめん、すぐ作るから」
「いいよ、作らなくて」
「え?」
「もう作ってあるから、ヒロ君の分も」
「え…芽亜が作ったのか?」
「うん!前に美柑ちゃんに教えてもらったから!」
「へぇ~、すごいなぁ。食べてもいいか?」
「どうぞ、召し上がれ♪」
「んっ!これはっ……!」
「どう?」
超しょっぱかった。
「う、うまいんじゃないか?」
「ほんと!やった、嬉しい♪」
あとで芽亜に料理を教えようと思ったのと、たまにはこういうのも悪くないなと思う大夢であった。