俺はメアやヤミと違ってとある星の小さな村で生まれた。小さな村と言っても人口は300人くらいいて、外交や貿易にも力を入れていたから経済的にも豊かな村だった。俺の両親も顔は覚えてないけどそれなりに優しかった。けど、ある日村に悲劇が起こったんだ。
「よし!次はサッカーでもやろうぜー!」
「いいねー!じゃあ、家からボールとってくるから待ってて!」
俺達はいつものようにみんなで遊んでたんだ。日も暮れてきたからこれで最後にしようとみんなでサッカーしてたんだ。そしたら、向こうから見慣れない大柄な男達がこっちに向かって歩いてきてたんだ。俺達は気味が悪くなってみんな家に帰って両親にその事を話したら、
「海賊だわ!あなた!家の戸締まりは!?」
「今やってる!大丈夫だ!もし何かあってもお前達は俺が守るからな!」
「あなたはどこかに隠れてなさい!いい?絶対に出てきては駄目よ!」
ものすごい剣幕で言われたのでなんで?と聞き返す余裕も無かった。俺は母の言うとおりに押し入れの中に隠れてたんだ。やがて、ドアをぶち破る音と共に野太い男の声が聞こえた。その後父と男が何か言い争ってるのが聞こえ、すぐにグシャッと何かが潰れる音と同時に母の悲鳴が聞こえた。
「うるせえ!」
男がそう言ったのが聞こえ、また何が潰れる音が聞こえた。男達が出ていったのを確認すると我慢できなくなった俺は押し入れから飛び出し、トイレで胃の中のものを全てぶちまけた。しばらくして、玄関を覗くと、無惨な姿で殺されていた父と母の姿があった。
「…っ!」
やっぱりだ。あの音は頭が潰れる音だったんだ。再び沸き上がってくる吐き気を押さえつつ、外に出ると衝撃の光景が広がっていた。
「なんだ、これ…」
紅の炎1色に染まる村、おびただしい死体の数々、目の前で海賊に強姦や誘拐される女や子供。まさに生き地獄だった。それから、間もなくして海賊は村を出ていった。どうしようもないほど滅茶苦茶にして。悔しかったし、何も出来ない自分が情けなかったよ。村の人達が目の前で殺されてるのに見てることしか出来なかった自分が。残った村人達はなんとか生活していたが、長くは持たなかった。みんな飢餓で死んだ。大人も子供も。奇跡的になんとか生きていた俺は飢えで地べたを這いつくばってるところをある研究者に拾われた。
その人は俺の状態が回復するまで自身の研究所で身の回りの世話をしてくれた。けど、そこである現実を叩きつけられた。俺は人の子じゃなく、人工的に生み出されたのだと。それからは地獄のような日々だった。培養カプセルに入れられ、拷問のような人体実験を何度も、何度もさせられ、トランス兵器へと覚醒した俺は自我を失っていた。
だが、そんな時第一次銀河大戦が始まった。研究者達は刺客として大夢を戦場に送り込んだ。研究者の目論見通りにトランス兵器とかした大夢は惑星を1つまるごと壊滅させ、他の惑星に向かっている時にギド・ルシオン・デビルークと出会った。当時から最強と謳われたギド相手に大夢は無謀にも真っ正面から勝負を挑み、善戦しながらも敗北を喫した。けれど、ギドとの勝負は楽しかった。失われた自我を取り戻すくらいに。互いにギリギリで戦ってたし、どっちが勝ってもおかしくはなかった。
「なぁ、お前うちで軍師やんないか?」
勝負が終わったあとギドがこう聞いてきたときはこいつ頭大丈夫か?と思ったよ。なんでさっき戦ってたやつにこんなこと言うんだよって。そしたら、
「お前がうちにくれば自由な生活を保証すんだけどなー」
我ながらまさか、こんな口車に乗るとは思わなかったな。まぁ、そのおかげで今の俺があるんだよなぁ。
「とまぁ、こんな事があったんだよ。昔は」
いつの間にか自分の世界に入っていた俺はメアが寝てるのに気づかずに一人で熱弁してたようだ。あぁ恥ずかしい…。