ある日の休日、大夢とメアは結城家に遊びに来ていた。メアが席を外したところでリトからある催しに誘われた。
「夏祭り…ですか?」
「うん、もうすぐ開催されるんだけどどうかなって…」
「いつですか?」
「えっと、来週の土曜かな。もしかして何か予定とか入ってる?」
「いえ、大丈夫ですよ。行きます」
「良かった~、助かるよ」
「何故ですか?」
「男子俺一人じゃ心細いからね。大夢がいてくれるだけでも助かるよ」
「ところで、この話はメアも知ってるのですか?」
「うん、知ってるよ。モモとナナに伝えるよう頼んでおいたからね」
「ヤミもですか?」
「実は、ララやモモが誘ったらしいんだけど行かないって言っててね…」
「そうなんですか…。なら、俺が誘ってみます」
「いいけど、大丈夫か?ヤミは行かないの一点張りだし…」
「なんとかしてみせますよ」
「そっか、なら大夢に任せるよ」
「ありがとうございます」
「さっ、堅苦しい話は終わりにしてさ、今日はゆっくりしてってよ」
「はい」
「もっとリラックスしてもいいんだよ」
「し、しかし…」
「そうですよ、大夢さん」
「モモ!?いたのか?」
「すいません。お二人が何を話しているのか気になって…」
「ヤミのことで大夢に相談してたんだ。そしたら大夢も手伝ってくれるっていうから」
「そうだったのですか…。それで、大夢さんはヤミさんをどう口説き落とすのですか?」
「モモ姫、言葉が悪いですよ。あくまで俺は彼女を説得するだけですから」
「冗談ですよ」
すると、遊んでいたメアとナナとララと洗濯物を取り込んでいた美柑が下に降りてきた。
「ヒロくん、今日ここに泊まって行こーよ!」
「駄目だ。みんなに迷惑がかかるだろ」
「えー、でもナナちゃんやララ先輩はいいって言ってくれたよー」
「だけど…」
「そうだよ、大夢さん。どうせ明日も休みなんだから泊まってってよ」
「そうだよ、ヒロくん」
「…リトさんは良いんですか?」
「俺は大歓迎だよ。寧ろこういうのは大人数の方が楽しいしね」
「…リトさんがそう仰るなら…」
「それじゃあ、晩御飯の準備しちゃうね」
「あ、私も手伝います」
「あの…俺も何か手伝えることは…」
「ダメ。大夢さんとメアさんは今日はお客さんなんだからゆっくりしてて」
「…わかりました」
夕食を終え、風呂が出来るまでリトさんやモモ姫とゲームで対戦していた。
「大夢さん、お風呂沸いたけど先に入る?」
「いえ、俺は後からで大丈夫です」
「じゃあ、俺が先に入らせてもらうね」
そう言ってリトさんは風呂場へと向かっていった。それから5分ほどでモモ姫がリビングを出てどこかへ向かっていった。さらに数分後に美柑さんがどこかへ向かった。そして更に数分後に美柑さんの怒号が聞こえたので、声の行く方へ向かうとリトさんとモモ姫が脱衣所で正座し、美柑さんに怒られていた。恐らく原因はモモ姫の風呂場乱入だろう。リトさんとモモ姫が説教をくらっている間に風呂を頂き、風呂から上がってもまだ二人は美柑さんに怒られていた。
「あっ、そうだ。二人は寝る場所はどこがいいとかある?」
説教を終え、少し疲れた様子で美柑さんが聞いてきた。
「寝床ですか…。俺は特に希望は無いです」
「私もー」
「う~ん、二人で寝ることになっちゃうけど大丈夫?」
「構いませんよ」
「私も大丈夫だよー」
「じゃあ、1階の和室でいいかな。今から布団を敷いちゃうから少し待っててね」
「はい、お願いします」
時間も11時を過ぎ、みんなそれぞれの寝床についていった。俺とメアも美柑さんが敷いてくれた布団にゆっくり身を預けた。布団に入り、少したった頃、メアが話しかけてきた。
「ねぇ、ヒロくん。まだ起きてる?」
「起きてるよ。…やっぱりメアも眠れない?」
「うん…」
「そっか、じゃあ少し話をしようか。誰も知らない俺が小さい頃の話を」