やっと放課後になったが、発明品の効果は切れず、まだ大夢は女の子の姿でいた。
(いつになったら元の姿に戻れるんだろうなー)
俺は帰りのHRが終わってもまだ机に突っ伏していた。そこへクラスの男子数人が話しかけてきた。
「ねぇ、七原さん。これから俺らとカラオケに行かない?」
「悪いけど今日はそんな気分じゃないので」
「そう言わずにさぁ~行こうよ~」
あまりのしつこさに大子(大夢)もイラッときてたのか、思わず殺意を剥き出しにした目で睨んでしまった。
「ひっ…」
睨まれた男子は虎に睨まれた小動物のように萎縮してどこかへ行ってしまった。
「はえ~女の子になっても相変わらずすごい殺気だね~」
「そうですね…」
「…からかいに来たのか?」
「いや、もう下校時間だから一緒に帰ろうと思って」
「ああ、そういやもうそんな時間だっけ…」
机から身体を起こし、鞄を持ってメアとヤミの元へと向かった。
「ナナ姫とモモ姫は?」
「先に帰ってるって。あ、あとモモちゃんから伝言預かってるよ」
「伝言?」
「うん、えっとね元に戻れるまであと1時間くらいなんだって」
「あと、1時間くらい、か。それならあと少しで戻れるってわけだな」
「あの1ついいですか?そもそもどうして大夢は女の子になってしまったのですか?」
「なんかね、ララ先輩の性別を逆転させる発明品の実験台にされちゃったんだって」
「そうなんですか…」
「でも、ヒロくん今日ほんとについてなかったよね。やっぱり占いが当たったのかな?」
「まさか、そんなわけないだろ。今日はたまたま運が悪かっただけだよ」
暫く3人で歩いていると背後から嫌な気配を感じた。
「どうしたの?」
「いや、まさかな…」
不幸にもその気配はすぐに現れた。
「むっひょ~!あそこに美少女3人がいるではありませんか!」
嫌な気配は校の正体は校長だった。いつも通り服を脱ぎ捨てパンツ一丁のままこちらへ向かってきた。
「相変わらずですね…」
もちろんいつも通り校長はヤミに空の彼方へ吹っ飛ばされた。パンツ一丁のままで
「校長って懲りないよな…」
「そうだね…」
その後ヤミと別れ、俺とメアの二人になり、河川敷付近を歩いていると突如宇宙船が現れ、筋肉ムキムキのガチムチ宇宙人が降りてきた。
「見つけたぜぇ!赤毛のメア!」
「誰?」
「さぁ?」
「さぁ?って…お前が知らなきゃ誰が知ってるんだよ」
「私弱いやつ知らないもん」
「ごちゃごちゃうるせぇ!死ねぇ!」
ガチムチ宇宙人が持っていたこん棒を大子(大夢)達に向かって振り下ろすが、大夢はなんなく片手で受け止めていた。
「…ちょうどいいや。朝からフラストレーション溜まりまくってたんだ。あんたで発散させてくれよ」
受け止めていたこん棒を粉々に破壊し、ガチムチ宇宙人へ先程クラスの男子に向けていた殺意の目線を向け、近づく。
「は、はは…よ、用事を思い出したから今回は見逃してやる!」
ガチムチ宇宙人は勢いよく自前の宇宙船に飛び乗り、そのまま逃げるかのようにその場を離れていった。
「帰っちゃったね」
「もう少し殺りがいのある奴だと思ってたけどな…がっかりだ」
「仕方ないよ。賞金稼ぎってのは所詮そういう奴しかいないんだから」
「お前も元賞金稼ぎだけどな…」
「私は違うよ。あんなのヤミお姉ちゃんを探すためのただの肩書きなんだから」
「はいはい、わかってるよ。……あれ、この感じは…」
「どうしたの?」
突然大夢の身体を「ポンッ!」という音とともに煙が覆った。煙が晴れると大子から大夢へと元に戻っていた。
「戻った…。はぁ、やっとか…」
「えー、もう戻っちゃったのー?もっと大子ちゃんの姿でいてよー」
「やだよ。絶対にごめんだね」
「ていうかヒロくんさ元に戻ったのはいいんだけど制服は女の子のままだよ?」
「あー、忘れてた…。戦闘服で帰るしかないな」
トランスを発動させ、特有の黒い戦闘服を身に纏った。
「先に行ってるぞ」
「だったら私もトランスで帰る」
「理由を聞いても無駄か…。そんならさっさと帰ろうぜ」
「うん♪」
振り返ってみれば今日はとてつもなく1日が長く感じた。朝から女の子になったり、校長には二度も絡まれるし、リトさんには醜態さらしたり、変な宇宙人に絡まれたり、嫌なことだらけだった。
(でも、貴重な体験もあったのかな…)
いずれにしろもう二度と女の子にはなりたくない。そう願った大夢であった。