ララの発明品により女の子になってしまった大夢はクラスの担任であるティアーユ先生と御門先生に事情を説明しに保健室にいた。
「……というわけなんです」
「事情はわかったわ。けれど、どう誤魔化すの?」
「とりあえず俺の従妹という形にしてもらえませんか?それならクラスのみんなも納得するでしょうし」
「大夢君本体はどうするの?」
「欠席扱いでお願いします。今日1日乗り切れば元に戻るので」
「わかったわ。それじゃあ教室に行きましょうか。私の方も出来るだけフォローはするから安心してね」
「ありがとうございます。ティアーユ先生」
「やっぱり大夢君女装慣れしてるわね。喋り方も全然違和感が無いわ」
「た、確かに…」
「あの…全然嬉しくないんですが…」
心底がっかりしている俺にお静さんがさらに追い討ちをかける。
「だ、大丈夫ですよ!今の大夢さんすごい綺麗ですから!」
「フォローになってないです…」
その頃教室では転校生の噂で持ちきりになっていたが、メア、ナナ、モモは珍しくいない大夢の話をしていた。
「なぁ、メア。大夢はどうしたんだ?」
「ヒロくん?あ、実はね…ヒロくんララ先輩の発明品で女の子になっちゃったんだ…」
「あー、発明品ならあいつ実験台にされたな」
「どうして?」
「昔からなんですよ。お姉様の発明品の実験台に大抵ザスティンさんか、大夢さんが巻き込まれるんですよ」
「へー、ヒロくんそんな事全然話してくれなかったなー」
すると、教室のドアが開き、ティアーユ先生と共に一人の美少女が入ってきた。
「今日はみなさんに転校生を紹介します。七原さん、どうぞ」
「はい。七原大子と申します、よろしくお願いいたします」
「七原さんは七原君の従妹なのでみなさん仲良くしてくださいね」
ティアーユ先生からの軽い紹介を終えると教室から拍手と歓声(主に男子)が沸いた。
(これは、休み時間に質問攻めのパターンかな…)
休み時間になると大夢の予想通り男子達が一気に押し寄せてきた。大夢はその間を縫うようにすり抜け、モモ達の待つ屋上へと逃げ込んだ。
「はぁ、はぁ、つ、疲れた…」
「おつかれー、ヒロくん」
「どうですか?大夢さん、再び女の子になった気分は」
「良いとは言えませんね。むしろ最悪です。今すぐ死にたいです」
「大丈夫ですよ。時間が経てば自然に戻りますから」
「でも、姉上のそれって結構時間経たないと元に戻らないんだろ?」
「そうなの?」
「うん、だから放課後までこの格好なんだよな…」
「大丈夫ですよ、大夢さん。私達がしっかりサポートしますから」
「ありがとうございます、モモ姫。それじゃあ、早速一ついいですか?」
「なんでしょうか?何でも聞いてください」
「…トイレってどうするんですか?」
数分後、顔を真っ赤にした大夢が教室に戻ってきた。
「どうだった?上手く出来た?」
「なぁ、メア。女の子って大変だな…」
「?」
4時限目を終え、ようやく昼休みとなった。大子もとい大夢はメア達より先に屋上に向かっていた。だが、屋上に着いたと思ったら意外な人物が待っていた。
「おぉ大夢ではないか。いや、今大子の方がよいのか?」
「なんでネメシスがいるんだ…」
「よいではないか。私も暇をもて余しているのだよ」
「街へ行けばいいだろ。わざわざ学校に来る必要なんかないだろ。てか、なんで俺だってわかる?」
「ちょうど見てたんだよ。お前が女になる瞬間をな」
「やっぱり今日は厄日だな」
「まぁそう言うな。お前の女装姿かなり様になってるぞ」
「うるせぇ。全然嬉しくないから」
「お?照れてるのか?」
「あんまりしつこいと消すぞ」
「冗談だ。…おや誰か来たようだな。では、私はこれで失礼するか」
「あっ、おい!」
ネメシスが姿を消したあと屋上の扉が開き、モモ、ナナ、メアとヤミが姿を現した。ヤミは俺をジーっと見つめながら半信半疑で聞いてきた。
「本当に大夢なのですか?」
「ああ、そうだよ。信じられないかもしんないけど」
「いえ、疑うつもりはありません。ただ、なんだか新鮮ですね…」
「……」
まさか大夢もヤミにこんな事を言われるとは思わなかっただろう。しかし、大夢を知らない者から見れば彼はただの美少女にしか見えない。モモやナナも事前に知らされていなければこの美少女が大夢だと気づくことはなかっただろう。
「そういえば、ヒロくん。さっきネメちゃんと話してた?」
「どうして?」
「なんか来る途中にネメちゃんの気配がしたから」
「気のせいだろ」
「うーん、そうかなぁ…」
「でも、気配がしたんならまだネメシスがどっかにいるっことだろ?」
(おや、ナナ姫は意外と鋭いのだな)
(なんだよ。結局出てきたのかよ)
(思った以上に暇でな。後、それから屋上に何やら妙な奴が近づいてきてるぞ)
(おい、それってどういう…)
「むひょー!見つけましたぞ!」
「ゲッ、校長…」
(ネメシスの言ってた妙な奴って校長だったのかよ!)
「さぁ!ワシと一緒に愉しいランチタイムにしましょうぞー!」
「く、来るなー!」
ドゴンッ
鈍い音と共に校長が大夢のトランスによって空に吹っ飛んでいった。
「はぁ、はぁ、ようやく昼飯が食えるな…」
「ヒ、ヒロくん…」
「ヒ、ヒロム」
「大夢さん…」
「大夢…」
なんだかみんなが赤面してる。これどういうことだろうか?
「なんだよ、みんなしてどうしたの?」
「その…スカートが…」
「スカートがどうかしたの?」
「思いっきりめくれてるんだけど…」
「モモー。話って何?」
なんとも間の悪いタイミングであろうか。メアがスカートのめくれを指摘したと同時にモモに呼ばれて屋上へとリトがやって来たのだ。
「うわっ!ごごご、ごめん!」
リトが慌てて出ていった後、大夢はようやく自分が置かれた状況に気づき、ダッシュでトイレまで行き、昼休みが終わるまでそのトイレから出てこなかった。