向こうから姫君達の和気あいあいとした声が聞こえる。ここ電脳サファリパークでは動物と話せるナナ姫が過去に友達になった宇宙動物達を保護している場所である。しっかりと動物達が生きていける環境が管理されており絶滅危惧種もここでは多数生存している。
「警備と言ってもすることないな」
周りを見れば草原が広がり、動物達が有意義に過ごしている。どこにも危険性は感じられない。だが、油断は禁物だ。もし、セフィさんの姿を動物達が見てしまったら大変な事になる。一番の問題はリトさんである。あの人の性格上ここに来ることはまず無いが、もしも何らかの形で迷い混んでしまったら、必ず何かを起こすだろう。その為にも警備を一分一秒も怠ってはいけない。
すると、向こうから何か人が倒れる音がした。嫌な予感がしつつもその場所へ行くと、案の定セフィさんが、リトさんに押し倒されていた。しかもセフィさんの顔を覆っていたベールも取れてしまっている。
「お二人ともご無事ですか!って、セフィさん!ベールが…」
「え?…あ…」
セフィさんもベールを取った張本人リトさんもしばらく固まっていた。とりあえずリトさんが正気に戻るまで軽く絞めることにした。
「ペケ、セフィさんを連れて逃げろ!リトさんは俺が何とかする!」
「わかりました!行きましょう、セフィ様!」
「え、ええ。あ、ありがとう大夢くん」
「さぁリトさん!いい加減に正気に戻ってください!」
「タップ!タップ!く、苦しっ…」
「え、あれ?」
「ぷはっ、はーっ、はーっ。し、死ぬかと思った…」
「会話ができている…。理性はまだあるのですか?」
「当たり前だ!俺は正気だっての!」
「しかし、さっきまで固まっていたではありませんか!」
「あんな綺麗な女性が目の前でタオルがはだけたんだから当たり前だろ!」
「まさか…どんな紳士でもケダモノになってしまうのに…」
どうやらリトさんにも俺やギドと同じチャームが効かないようだ。だが、地球人でセフィさんのチャームに耐えたのはリトさんが初めてだ。
すると、セフィさんがペケと共にこちらへ戻ってきた。
「ペケ?どうしたんだ?」
「セフィ様のチャームによって暴走した動物達から逃げてきたのです!あちらを見てください!」
ペケが指指した方向には大量の動物達が目をハートの形にさせながらこちらへ迫ってきてるのがわかった。
「マジか…。…とりあえずペケは俺とでセフィさんとリトさんを動物達から守るぞ。リトさんはセフィさんを連れて逃げてください!」
「わ、わかった!セフィさん、こちらへ!」
「い、いやっ…彼もチャームにかかっているのでしょう…」
「お、俺は正気です!いいからこっちへ!」
「な、何ともないのですか!?私の美しい顔を目の前にして…」
「な、何ともなくはないです!今だって直視しないようにしてるし…」
大夢とペケが時間を稼いでいる間にリトはセフィを連れ、湯気の濃い方へと逃げ込んだ。
一方大夢とペケはチャームにかかった動物達に苦戦を強いられていた。
「埒があきませんね…」
「仕方ないな…。逃げるぞ、ペケ!」
「は、はい!」
数も多いし、厄介な敵が多いのでとりあえず逃げるぞことにした。ある程度全力で逃げれば上手いこと動物達を撒けるだろう。
やがて、何とか撒くことが出来た。ペケには姫達と合流してからセフィさんのところに向かうと言っていたが、俺はそのままリトさんとセフィさんのところに向かうとした。
俺が向かったときには既にペケも姫達を連れて合流していた。
「大夢!無事だったんだな!」
「ええ、なんとか…リトさんもセフィさんも無事でなによりです」
「大夢君にペケ、貴方達のおかげで助かったわ。ありがとう」
「いえいえ、私は当然の事をしただけですよ!」
「俺もペケと同じです」
実際のところ俺は大したことはしていない。セフィさんをここまで連れてきたのはリトさんだし、姫達に危険を知らせたのはペケだし、俺はその時間稼ぎをしただけだ。
「それじゃあ改めてみんなでお風呂に入りましょうか。大夢君とリトさんは見張りをお願いしますね」
「わかりました」
それからまたしばらくリトさんと話しながら女性達の入浴が終わるまで見張りを続けた。
そして翌日、セフィさんがデビルークへ帰ることになった。
「もう帰っちゃうの母上」
「また通信で会えるでしょ、そのうちまた時間を作って来るわ。それに私も彩南町が気に入ったしね」
「またね!ママ!」
「ええ。ララ、元の身体に戻るまで無理をしてはいけませんよ」
「はーい!」
「セフィさん、あの…何か色々すみませんでした…」
「いいえ、楽しかったわ。娘達をよろしくお願いいたします」
「お母様!またいつでもいらしてくださいね!」
「そうさせて頂くわ。それと…」
セフィさんがモモ姫に何か耳打ちをしていた。まぁだいたい内容はわかるが。
「大夢君も元気でね」
「はい、俺もときたまそちらに伺います。恐らく仕事関係になると思いますが」
「そう、わかったわ」
こうしてセフィさんはデビルークに帰っていった。突然あの人が地球にくると言ったときはどうなることかと思ったけど無事に事なき得て良かった。
久しぶりの投稿です。相変わらず色んなとこがおかしいと思いますが、最後まで読んで頂ければとおもいます。