「君が暴走したおかげでみんな死んだんだ」
昨夜奏から言われた言葉が頭から離れずにいた。それのせいで午前中の授業はまともに聞けなかった。今日はヤミは来ているが、奏は珍しく欠席だった。
昼飯の時間も大夢は弁当を広げず、落ち着ける図書室へと足を踏み入れた。適当に本を何冊か取り、席へ向かうとヤミと会った。
「珍しいですね。あなたがここに来るなんて」
「ちょっとした気分転換だ」
そう言ってヤミの近くに座る。
「……らしくないですよ。今日のあなたは。……何かあったんですか?」
「別になんもないよ」
「私に嘘は通じませんよ」
「はぁ……わかった話すよ」
大夢は昨夜奏と話したことをヤミにも話した。
「ナイトメア……聞いたことがありませんね」
「俺も昨日初めて知った。どうやらダークネスより危険なトランスらしい」
「芽亜にその話は?」
「してない。だから一番あいつが心配なんだ。発動条件もわかってないしな」
読み終えた本を戻しながらさらに付け加える。
「とにかく、芽亜には俺が伝える。発動条件はわかり次第連絡する」
「わかりました」
教室に戻り、クラスメイトに芽亜の場所を問うが誰も知らなかった。そこでちょうどナナとモモが戻ってきた。
「メアなら屋上へ行ったぞ」
「何かあったんですか?」
「大事な話があるんです。お二方も来てくれますか?」
二人は同時に頷いた。
屋上のドアを開けると夏の熱い日差しが飛び込んできた。辺りを見回すと戦闘服の姿で貯蔵タンクの近くに座っている芽亜を発見した。
「芽亜。探したぞ」
「ヒロ君。それにナナちゃん、モモちゃん……。どうしたの?」
「お前に話しておきたいことがある」
ヤミの時と同様に芽亜とナナとモモに説明した。
「話はわかったけどなんであたし達にも話したんだ?」
「俺か芽亜が発動した場合すぐに駆けつけてくれるようにです」
「ネメちゃんには頼まないの?」
「ネメシスだとなにするかわかったもんじゃないし、モモ姫が嫌がる」
案の定ネメシスという言葉を出しただけでモモの顔色がガラッと変わった。
「そういえばヤミは発動の可能性はないのか?」
「ヤミは以前ダークネスを発動させたことにより耐性というものがついたんだと思います」
「それだったらヒロムさんや芽亜さんはどうなるのですか?」
「勿論芽亜も発動の可能性は十分にあります。ですが、条件がわからないのでなんとも言えません……」
キーンコーンカーンコーン
キリのいいところで昼休み終了を告げるチャイムがなった。
「私達次プールだからもう行くね」
「ああ」
体育はサッカーか……。最も得意で好きな球技だ。基本的に球技は何でもできるがその中でもサッカーは格別だ。少し楽しみにしながら校庭へと向かった。
次回で最終回かな……