日常
明朝5時、日の出を見ながら、少年はあのときの光景を思い出していた。炎に包まれる研究所、真っ暗な空、地面に転がる死体の山、それぞれの光景が今でもはっきりと脳裏に焼き付いていた。
「チッ……」
少年は軽く舌打ちしながら薄明かりが灯る道をゆっくりと歩いていった。
少年の名前は七原大夢(宇宙人)。16歳。彩南高校一年。銀河最強のトランス兵器でありながらギド・ルシオン・デビルークに代わりデビルーク軍の元帥を勤めている。黒髪短髪、青と黄土色のオッドアイが特徴
彼が自宅のマンションに戻ると同居人の少女が白いTシャツに縞パンというなんとも無防備な格好で寝ていた。
「芽亜。朝だぞ」
「う……ん。おはよう…ヒロ君」
「おう。早く朝御飯食べろよ。冷めるぞ」
「うん。わかった」
大夢が「芽亜」と呼んだ少女こそが彼の同居人である。黒咲芽亜。16歳。彩南高校一年。第二世代トランス兵器。長い赤毛の三つ編みが特徴の美少女。大夢とは同じトランス兵器研究所で生み出された幼なじみである。
「ヒロ君。早くしないと遅刻しちゃうよー」
「ああ。今行く」
芽亜に急かされて大夢は足早に家を出た。季節は6月終盤梅雨も過ぎ去りまた暑くなる頃合いだ。学校に向かう通学路を歩いていると見知った人物に肩を叩かれた。
「おはよう。大夢、芽亜」
「おはようございます。リトさん」
「おはようございます♪リト先輩♪」
このリトという少年は大夢や芽亜の一つ上にあたる先輩でデビルーク家の三姉妹のララ、ナナ、モモと共に暮らしている。大夢は三人のことを姫と呼んでいる。
「ところで姫達はご一緒ではないのですか?」
「ああ、三人とも先にいったよ。用事でもあった?」
「あ、いえ、特に。」
「わたしはナナちゃんと一緒に登校したかったなー」
芽亜が不満そうに呟く。芽亜とナナは親友であり、とても仲が良い。
「仕方ないだろ。ナナ姫は忙しいんだ。」
「むー」
「はは、また今度だな」
三人でいつものように話していたらあっという間に学校に着いてしまった。
「じゃ、俺こっちだからまた。」
「はい。失礼します。」
「またねー。リト先輩」
リトと別れ、大夢と芽亜は自分達の教室の1ーBのクラスへと向かう。入り口のドアを開けるとクラスの人数の大多数が楽しそうに談笑していた。大夢達はその中でも奥の方に向かう。
「おはようございます。ナナ姫、モモ姫。」
「おはよう♪モモちゃん、ナナちゃん」
「おーっす!メア、ヒロム!」
「おはようございます♪メアさん、ヒロムさん」
この二人の少女がデビルーク家の三姉妹のうちの二人である。桃色のツインテールの少女がナナ・アスタ・デビルーク。
桃色のショートボブの少女がモモ・べリア・デビルーク。大夢と彼女達はデビルークの頃からの知り合いであり、よく一緒に遊んでもらっていた。こうやって彼女達と談笑していると周りの男子達の視線が痛いほど感じる。特にモモに至ってはファンクラブまで存在するほど崇高な存在として崇められている。
キーンコーンカーンコーン
「それではHRを始めます」
教室に入ってきたのは担任のティアーユ先生だ。金髪の長い髪に眼鏡をかけている美人教師。スタイルも良く男子生徒の間では人気が高い
「えっと…欠席者は一人ですね。」
その欠席者とは俺の隣の席の金色の闇という少女だ。彼女はティアーユ先生の細胞をベースに産み出された人工生命体で第一世代トランス兵器でもあり、芽亜の姉でもある。
「メア、今朝ヤミを見てないのか?」
「うん、見てないよー」
「大夢さんも今朝とかにヤミさんを見てないんですか?」
「申し訳ありません。今朝は時間が無くて…」
結局授業が終わってもヤミは来なかった。帰りのHRが終わり、身支度を整え昇降口へ向かうと、
「あ、ヒロムー!」
「ララ姫。これからご帰宅ですか?」
「うん!リトとセリーヌちゃんを待ってから帰るのー。ヒロムも芽亜ちゃんとかは?」
「芽亜はナナ姫やモモ姫とご一緒するそうですよ。」
「そっかぁ」
彼女がデビルーク第一王女ララ・サタリン・デビルーク。とても明るく好奇心旺盛な少女だ。
「ヒロムもこれから帰るの?」
「はい。今日は色々と野暮用があるので。」
「そっかぁ。またねー!」
ララと別れ、真っ先に家に帰ると小さな小包が届いていた。
「差出人は……ギドか。それで中身は……なんだこれ?ビデオ?」
再生してみるとまず最初にデビルーク軍の軍歌が流れ、その後にギド・ルシオン・デビルークを崇拝する謎の歌が流れ始めた。最初のうちは面白半分で聞いていたのだが再生してから僅か5分で大夢はDVDのディスクを真っ二つに割ってしまった。
「…………ギド後で100回殺す……」
溢れるデビルーク王に対しての殺意を抑えながら芽亜の帰りを待った。
最後まで見てくださった方ありがとうございます!長くてすいません(泣)。