やはり俺の大学生活は間違っている。   作:おめがじょん

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第11話:大学生が長文で何かを書く時は大抵ロクな事が書いていない。

前略 比企谷小町様。

 

 お久しぶりです。そちらはお変わりないでしょうか。お兄ちゃん達は3年生なので夏休みが始まって早々に大魔王に騙されて工事現場で朝から晩まで働いています。しかも14連勤です。労働基準法っていったいなんなんでしょうかね。お兄ちゃんはそちら方面は疎いのでよくわかりません。ただ、騙されたという事実だけは認識しています。あの女には気をつけてください。工事現場で働き始めて、色々ありましたが隼人君は相変わらずの人気者です。怖い体に落書きをしたおじさんに気に入られ、仕事が終わった後、一緒にサウナにいったそうです。お兄ちゃんと義輝君も誘われましたが丁寧にお断りをしました。その日の晩、サウナにいったからか隼人君は汗だくの半裸という格好で帰宅しました。あんな涙目な隼人君ははじめてみました。

 

「……まぁ、その、なんだ隼人。予想はついてたけどやっぱあっち系の人だったか? 着替えてる時、やたら義輝とかお前の方見てるなぁとは思ってたんだけどよ」

 

「拙者、休憩時間よく尻を触られるでござる……」

 

「……………必死に断ったよ」

 

 少し隼人君も大人になったようです。小町ちゃんがこういった大人の階段を登っていないかお兄ちゃんは心配です。そっちのマンションに大志とか招き入れてないよね? そうだよね?

そんなこんなでやはり汗水垂らして働くのは間違っていると思います。家に居ればこんな事も起こらないよね。でもお金稼がないとお兄ちゃん達は家すらなくなっちゃうんだ。ははっ。

お金といえば工事現場で知り合ったヒコさんという年齢不詳のおじさんと少しだけ仲良くなりました。誰も本名を知らず、住所も知らないという不思議な人です。ヒコさんは不思議な人で着てるものはボロボロなのに、俺達にはよくおやつやジュースを奢ってくれます。食べ物をくれる人に懐くという傾向が最近顕著になってきている俺達がヒコさんを慕い始めるのは無理もない事でしょう。そんなある日、ヒコさんから稼ぎのいいアルバイトがあるから夜中に神奈川県のはずれにある港まで来てくれと言われました。どうやら、船で運んできた積荷を降ろすアルバイトのようです。

 

「ヒコさん。……この骨みたいなのってなんですか? 何かの動物の牙にも見えますけど」

 

 ヒコさんはレプリカだから気にするなといいました。お兄ちゃんはお金に目がくらんでいたので無言で積荷を降ろし続けました。いやだって、日給6万円だよ? 相当贅沢できるよ?でもね。お兄ちゃんも少しこれおかしくね?って思い始めてたんです。そして義輝が船の一番奥から籠を持ってきました。

 

「は、八幡。こ、これ……」

 

「……どっかで見たことある生き物だな、これ」

 

「上野あたりで見たような……」

 

 白と黒の生き物のようでしたが、眠っているのかぴくりとも動きません。ヒコさんはよくできたぬいぐるみだなぁとケラケラ笑っています。……名残惜しかったですが、お兄ちゃん達はそのままトイレにいったフリをして逃亡しました。神奈川県から涙目で夜中から朝まで汗だくになって走り続け、朝になった頃に沙希ちゃんに何とか連絡をつけてお金を持ってきて貰いました。沙希ちゃんが駅に現れた瞬間、安堵からか一斉に抱きついてボコボコにされたのも今ではいい思いでです。やはりお兄ちゃんの青春ラブコメは間違っていると思います。青春といえば小町は大学生活を謳歌していますか? お兄ちゃんは忙しくて死にそうでした。大学生はぼっち程忙しいです。高校とは真逆で非常に疲れます。2年の夏を迎えついに学部内で女子の友人が0になった一色と一緒に協力し、お互い切磋琢磨しながら忙しい大学生活を何とか今学期も生き延びました。

 

「一色、基本語学の追試と、漢文の追試は代わりに俺が受けてやる。お前は俺の代わりにフィールドワークの実習に出てくれ」

 

「いいですよ。これ、昨日作ってきたカンペです。先輩なら平気だと思いますが一応保険で。槇島教授と千島教授の講義はチェックがゆるいので楽勝ですね」

 

「そうすればここのスケジュールが楽になるからな。隼人にもカップ麺2個で代返させたし、出席点の追加分も考えると可は確実に貰ったな」

 

「あの葉山先輩がカップ麺2個でお願いを受けてくれるなんて……。悲しいやら、なんというやら複雑な気持ちです」

 

「あいつ、ついにお前の前でもかっこつけるの辞めたからな……」

 

 一色は相変わらずです。むしろ堕落し始めました。最近では可愛い自分アピールも飽きてきたのか、偶に凄く雑な女になっている時があります。まさかジャージ姿の一色を見る日がくるとは思いませんでした。積もる話もありますが、そろそろアルバイトの時間なのでこの辺りで近況報告を終わりたいと思います。盆休みの終わりぐらいには久しぶりに実家に帰ろうと思います。平塚先生に「飲むから来い」といわれたらいかないわけには行きません。もし小町も帰るのであれば、久しぶりにきちんと話もしたいと思いましたのでこんな手紙を書いて見ました。それでは、盆休みに予定があえばまたあの家で会いましょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 数年ぶりに兄から便りが来た。

 最初は何のつもりだろうと首をかしげてみたけど、あの兄の考えることなのできっとまたしょうもない理由なんだろうなと思うと同時に、自分の頬が少しだけ緩んでいるのを感じた。

兄が高校3年生の時に、大喧嘩をしてから気まずくて、兄が何を考えているのかを理解できなくて私は最後まできちんと仲直りできずに、遠く離れた地に来てしまった。メールは極たまにするものの業務的なやり取りが殆どで、昔のような関係とは程遠い。最初は、これが大人になるって事なのかなってかんがえていたけれど、やはり私の考えは間違っていたみたいだ。沙希さんから偶に近況報告を聞いていたが、ここ半年ほどの兄はそこそこ元気で昔とは少しだけ違う環境でそれなりに楽しくやっているらしい。葉山さんと材木座さんと一緒に暮らしていると知ったときは大変驚いた。そして、兄は変わっていないという事に気づいてしまった。昔と一緒で卑屈で陰気でぼっちで目の腐った私の大好きな優しいごみいちゃん。でも、どうしても思ってしまう。

 

 

 

 ──どうして、その優しさの輪の中に雪乃さんと結衣さんを入れてあげる事ができなかったの?

 

 

 

 結衣さんがどれほど傷ついたか。雪乃さんがどれ程心を痛めていたか私は知ってしまっている。それが喧嘩の一番の原因だ。あの優しい兄が、あんな仕打ちをするなんて思いもしなかった。も、今ならこう考えてしまう。またどうせ、しょうもない事を色々考えて自分なりにこれが最良だと決め付けて動いてしまったのだろう。そこに、私が何かを言う余地などもう無い。

少し大人になった今なら、兄と話せばどうしてあんな事をしたのか理解できるのかもしれない。また、昔のような兄妹に戻れるのかもしれない。ならば──また、兄と向き合うしかないだろう。ならばすぐに行動あるのみだ。私がお兄ちゃんに絶対に負ける事がない点は行動力のみだ。考えるな、すぐに動け。そう心に念じ、スマホを取り出した。

 

「あ、大志君。お仕事中ごめんね? 盆休み帰らないって言ってたけど、やっぱ帰るから。……ううん。別に迎えに来なくていいよ。電車で帰るし」

 

 締め切っていた部屋の窓を開け、空気を入れ替える。数年ぶりに空気を入れ替えたような爽快な気分だ。やはり、自分はこうでなくては、と思い鏡を見る。そこには少しだけ大人びて、悪い笑顔を浮かべた私が映っていた。

 

 

 

 

 




2ヶ月ぶりぐらいに書いて見ました。
なんだかキャラが違う感じもしてきましたが、おいおい修正していこうかと。
仕事が激務すぎて終電帰りばっかですが、時間みつけては書いていきたいです。当初考えていた事と少し違う話になりましたのでタイトル変えました。

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