インフィニット・ストラトス~A new hero, A new legend~ 作:Neverleave
※一部グロンギ語に誤りがあったため、修正しました。アドバイスをくださった方に感謝!!
――????――
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大雪が降り、風が乱れ、大地が白一色に塗りつぶされていた。空は厚い雲に覆われ、太陽の光が完全に遮られているせいで朝なのか夜なのかすらわからない。
建物らしき人工物は一切なく、木の葉を落とし切った木々だけが点々と存在する。ここは、どこかの山だろうかと、一夏は推測した。
(……どこだろう……ここ……)
いったいここがどこで、どうしてここにいるのかわからない。だが、漠然とではあるが一夏は『見せられている』のだと理解した。
それが幻か、現実か。過去か、現在か、未来なのかはわからない。しかし、今自分が見ていることは何か意味があって、自分は見なければならないものなのだと直感している。
一夏が見ているもの。それは、雪原の中で向かい合う、二人。
一人は、真っ白な服を着た青年。うっすらと浮かべる笑みは本人の無邪気さを表しているが、その表情を見て覚えるのは、恐怖の感覚。子供のようにまっさらで、おぞましいほどに残酷なその心を持つ、怪物がそこにいた。
相対するのは、漆黒の怪人。腹部に装着されたベルトは黒く輝き、そこから全身に金色のラインが走っている。四本の角が頭部から伸び、刺々しい突起が肩や肘、足から伸びるそれは禍々しい姿だった。触れただけで傷つきそうな悪魔の如き姿をしたそれは、赤く大きな目をした仮面で顔を覆うため、その表情を伺うことは出来ない。しかし禍々しいはずのその外見とは裏腹に、見ていて覚えるのは、安堵と温かな気持ち。
二人を比喩するならば……それは白い闇と、黒い光。
(あれは――)
漆黒の怪人に既視感を覚える一夏。それもそのはず、その怪人は、今しがた彼が目撃した幻覚に現れた、赤い怪人と似た姿だったのだから。
「――なれたんだね。究極の力を、持つ者に」
白い服の青年が静かに、そして心の底から喜ぶように呟いた。
投げかけられたその言葉に、漆黒の怪人は何も答えることなくそこに佇む。無言の返答を受け取った青年は、ますます歓喜したように口を横に広げて、怪人を見据えた。
その目に恐怖はない。あるのはただ、『遊び相手』を見つけることが出来た、狂喜の色だけ。
見る者に死を連想させる笑みを浮かべたまま、白い服の青年が変貌する。対峙する漆黒の怪人とは真逆の、純白の怪人に。
色こそ正反対のそれは、同じ四本角を持ち、金の装飾が施された、同等の力を持つ存在。
両者は互いに歩み寄り、ゆっくりと距離を縮めていく。
その最中、純白の怪人が漆黒の怪人に向けて手をかざす。その瞬間、漆黒の怪人の身体が炎上し、業火がその身を覆った。
燃え盛る赤に包まれた黒。普通ならば致命的な損傷になり得るその現象に怪人は全く怯む様子を見せることなく、自身も純白の怪人に向けて手をかざす。
すると白い闇から赤い光が生まれ、瞬く間に火炎が純白の怪人を焼き尽くさんと広がった……が、こちらも全く堪えている様子がない。
拮抗した両者の状態から、これ以上は意味がないと悟ったのだろう。二人から炎が消え去ると同時に、白と黒が互い目がけて走り出す。
「――あああああああァァァッ!!」
「――はァッ!!」
黒い光が、雄叫びをあげ。白い闇が、鋭く声を放つ。
間合いがなくなったその時、両者の拳が相手の胸部に衝突する。
グシャッ、と骨が砕け、肉が弾ける。鮮血が飛び散り、怪人たちは大きく怯んで背中から地面に倒れ込んだ。
純白の怪人は起き上がると、追撃を行うべく漆黒の怪人に迫る。漆黒の怪人も倒れ込んだ姿勢から立て直すと、迎え撃つようにして拳を振った。
ゴッ!!! と。二つの打音が同時に響き、衝撃が二人の全身に走る。
「があっ……!」
「うあっ……!」
白い雪に紛れて、赤い水が飛ぶ。互いに打撃を喰らって小さく呻き、両者は怯んだ。互いに倒れ込むことを堪え、純白の怪人がいち早く行動を開始。更なる一撃を漆黒の怪人にお見舞いしようとする。
そこで漆黒の怪人は、迫る純白の怪人を迎撃するべく後ろ回し蹴りで攻撃。衝撃を受けて一瞬止まる純白の怪人だったが、寸でのところで堪えて殴り掛かった。
そこから先は、もはや泥沼のような殴り合い。どちらもどれだけ攻撃を受けても倒れることはなく、お互いを殺すために両腕を振うばかりだった。打音が響き、血が吹き出し、骨が砕け、肉が千切れても、怪人たちは止まることを知らないように我武者羅に戦う。
純白の怪人は心の底から楽しむように笑い声をあげ、漆黒の怪人は悲鳴のような叫びをあげる。
互いの拳が真っ赤に血で染まり、悲鳴と咆哮が入り混じる、阿鼻叫喚の光景。何十発と両者が殴り合ったその時……事態が一変した。
「おりゃああ!!」
何度繰り出したかわからない、拳の一撃。漆黒の怪人が放つそれが、純白の怪人のベルトに叩き付けられたその途端、ベルトの装飾に亀裂が走る。
「うあっ、が、あァ……!!」
ビキビキッ、と金色の装飾には、殴られた場所を中心にしてヒビが入る。その時、今まで猛攻を続けてきた純白の怪人の動きが止まり、苦痛の声が漏れる。
それが致命的な一撃であったことは明らかだった。傷ついたベルトを庇うように屈み、今にも膝をついて倒れてしまいそうなほど、純白の怪人の足はふらついている。
だが――
「……ハハッ、はは……ハハハハ」
白い闇は、笑っていた。
命に関わるほどの傷。常人ならばもう戦うことすらできないような痛みに苦しんでいるというのに、彼は……楽しそうに笑っていた。
この様子を見て恐れを抱いたのか、それとも死にかけの彼を見て逡巡したのか……一瞬ためらいながらも、漆黒の怪人は更なる拳の連撃を打ち込む。
二発、三発……必殺の威力を秘めた正拳が白い闇の胸部を打ちぬき、四発目が放たれた。
しかし、これを見切った純白の怪人は振り払うようにして拳を逸らし――自身がやられたように、黒いベルトへと拳を繰り出した。
ガギッッッ!! と。硬い何かが砕かれる音がして、それとともにベルトに亀裂が走る。
「うああ゛あ゛っ!!」
漆黒の怪人から、苦悶の悲鳴があがる。純白の怪人と同じようにベルトにヒビが走り、堪え切れない激痛が全身に走る。
「ああっ……ぐぅっ……はぁっ! ああっ……がぁっ……ああっ!!」
腹を押さえ、呻く漆黒の怪人。仮面に覆われたその顔からは表情を見ることが出来ないが、その仮面の奥はきっと、痛みでひどく歪んでいることだろう。
お互いに致命傷を負いながらも、彼らが止まることはなかった。黒と白は互いに向かって走り、全力の拳打を突きだした。互いの顔面が射抜かれ、耐え切れず倒れ込む二人。
そこで、怪人たちの姿が変わる。どちらもベルトへの一撃がよほど堪えたのか、純白の怪人と、漆黒の怪人は人間の姿へと戻っていた。白い闇は、先ほどの無邪気な青年の姿に。黒い光は、この場所の寒さに備えた黒いジャンパーを着た青年に。
しかし、それでも二人は止まらない。人間の姿に戻ってもなお、二人は殴り合い、殺し合う。
結局は、さっきと同じような殴り合い。どちらも倒れることなく、やられたらやり返すことを何度も繰り返した。
(……やめろよ……)
一夏は、見ていられなかった。これ以上、耐えられなかった。
どれだけ互いが痛みに悶えても。どれだけ互いが苦しんでも。決して止まることのない、暴力の繰り返し。
拳が身体にぶつかるたび、ズキリとした痛みが一夏の心に走る。自分がただ、この光景を見ているだけしかできないという現実が、彼の心を蝕む。
どうして?
どうしてなんだ?
なんで、そんなになってまで殴り合うんだ。
痛くないのかよ。
苦しくないのかよ。
殴って、何も思わないのかよ。
自分も相手も、どうなったっていいのかよ。
そんなにまで……殺したいヤツなのかよ……。
熾烈を極める戦い。総毛立つその光景を前に、一夏は悲しみにくれた。
彼には、理解できなかった。お互いが死ぬまで殴り合うその場面は、彼にとってあまりにも悲しすぎた。
なぜ、なぜ……と疑問で頭の中が埋め尽くされていたその時、一夏の目に二人の顔が映る。
一人は、満面の笑み。
白い服に身を包んだその青年は、血だらけになった口を大きく横に広げていた。素敵な夢を見た子供のように。心ゆくまで遊び尽した子供のように。彼は笑っていた。
一人は、泣いていた。
黒い服を着たその青年は、悲しみに歪んだ顔で哀哭し、叫ぶ。親しい友を失くしてしまった子供のように。友達と喧嘩して、後悔する子供のように。彼は泣いていた。
「――あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
「――ハハハッ、はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
慟哭と、欣快の叫びが、雪山の中で木霊する。
前へと突き出された二つの拳は、互いの頬を抉るようにして直撃。白と黒は口から血を吹き出しながら、ついに力尽きたように倒れ込んだ。
雪に背を預け。厚い雲に覆われた空を仰いだまま……白と黒が、再び動くことはなかった。
赤い雪の上で横たわる彼らを見る一夏は、何も口にすることもなく……ただただ、動かなくなった二人を見つめたまま、静かに涙を流す。
――君に、この道を歩むことは出来る?――
どこからか響く、女性の声。
聞き覚えがあるようなその優しい声音の主は、一夏に問いを投げかけた。
――君は、何もかもを包み込む優しさを持っている。だけど、それだけじゃどうしようもないことだってあるんだ。彼が、そうであったように――
その女性が言う『彼』が、誰であるかはわからない。だが、一夏は直感していた。
『彼』が誰なのか。
そして『彼』が、何をしたのか。
投げかけられた問いに答えることなく、一夏は女性の言葉を聞き続ける。
――彼は君のように、誰よりも人の笑顔を愛していた。だからこそ、強くならなければならなかった。そして殺さなければならなかった。そんなものを、彼が望んでいなかったとしても……その仮面の下で、人知れず涙を流しながら――
そこで一夏は、彼にこの光景を見せた者の意思をようやく悟る。
これは、『警告』なのだ。
これからの自分の運命を大きく揺るがす、未来に起こるであろう出来事への……一夏へ向けた、善意からの警告なのだと。
――君に『選択』が迫っている……『戦う』か、『逃げる』か。どちらを選んでも構わない。だけど、これだけは知ってほしかった。君が選ぶであろう道の先に何が待っているのか……とても辛いことだけれど、知らなければならないと思ったから……あとは、君次第だよ――
そこで、女性の言葉はフッと消えてなくなる。聞こえるのは、雪を運ぶ風が吹き荒れる、荒々しい音のみ。
唐突な出来事が連続して起こる現実に、一夏はただ、戸惑うことしか出来なかった。
*
――東京都文京区――
4:52 p.m.
「――い、――! ――――夏!」
「……うっ……」
誰かが叫んでいる。その声を聞いた一夏は、沈下していた意識をゆっくりと浮上させ、現実へと感覚を戻していく。
目を開くと、そこにあったのは彼の友の顔。五反田弾が、焦燥の色をその顔に浮かべながら、一夏を見つめていた。
「一夏! おい聞こえるか、一夏!」
「……弾……?」
必死な形相で、弾は何度も一夏の名を呼んでいた。呼びかけに返答するように一夏が弾の名を呟くと、切羽詰まっていた表情が緩み、ホッとしたように大きくため息を吐く。
「ったく心配させんじゃねえっての! 帰り道を歩いてたらオメーが倒れてるもんだからこっちはメチャクチャ驚いたわ! またお前無茶な冒険でもしてたんじゃねーだろうな!?」
「あ、ああ……わりぃ……てか、え? 俺、倒れ……!」
そこでようやく、一夏は自分の身に何が起こったのかを思い出した。
ハッとして立ち上がると、一夏は周囲を見渡して、自分に『何か』をした薔薇のタトゥーの女性を探す。
しかし、当然と言うべきか……女性はおろか、弾と自分以外の人影は一つも見つからなかった。
「だ、弾。ここに、女の人がいなかったか?」
「女ぁ?」
「ああ。髪は首辺りまで伸びてる黒い長髪で、赤いマフラーを巻いてて……奇妙な指輪を右手にはめて、額に薔薇のタトゥーをした女性、なんだけど……」
「……んな見るからに怪しいヤツいたらとっ捕まえてるよ」
弾の言う通りだった。仮にも人が倒れているところで、そんな人を見つけようものなら怪しいことこの上ない。犯罪の臭いがプンプンするし、即通報されたっておかしくないだろう。
まぁ、血気盛んな彼の悪友はそんなことなど考えず、実力行使で成敗するつもりであったらしいが……後先考えないというか、なんというか。
(……夢……だった、のか?)
誰にも見られていない女性。先ほどの出来事。
こんな道中で自分が倒れていたというのは不自然だが、それにしたってさっき経験したことは現実味がなかった。目の前にいる友人に話したって、それが事実だと信じてもらえるかどうか怪しいものだ。第一、自分だって現実であったかどうかの判断がついていないのだから、尚更それは信憑性に欠けるというものである。
だがそれと同時に、生々しいものでもあったのも否めない。
チラと自身の腹部に目をやり、思わずさする一夏。何かをこじ開けられたような、あの感覚……そしてその後やってきた想像を絶するような激痛は……いったい何だったのか。
一度疑問を浮かべてみればキリがない。起きたことを整理しようと思考に耽った一夏だったが、謎はますます深まるばかりだ。
うーんと唸りながら考え事をするその様を、友人から奇妙な目で見られていることに気付いていない一夏だったが……ふと気になることがあったので、弾に問いかけてみる。
「なぁ、弾。今って、何時だ?」
「……午後の4時52分だな。どした?」
不意に投げかけられた疑問に首を傾げながらも、弾は一夏に聞かれたことを答える。
一夏が空を見てみれば、確かに空模様は先ほどとあまり変わらない。確か自分が女性と出会った時は、午後4時半ごろだったから……自分が気絶したのは、20分ほど。
仮に彼女の存在が夢でなかったとしても、もう遠くに行っているだろう。
(……なんなんだよ、いったい……)
夢か否か、未だ自身の中で確信を持てないでいる一夏だったが……なぜだかとても嫌な予感がする。
――君に『選択』が迫っている……『戦う』か、『逃げる』か――
夢の中で自分に語り掛けてきた人の、言葉が脳裏をよぎった。
どうしても拭いきれない不安が彼の心を煽る。言葉では表現できない、モヤモヤとした気持ちの悪い感覚が、胸の中でざわめいている。
これがただの考えすぎならばいい。気のせいであればいい。だがその一方で、どこか確信があった。
これから、とてつもなく恐ろしいことが起こる。そして、自分はそれに巻き込まれていく。そんな確信が。
「つーか、なんでここで倒れてた? 薔薇のタトゥーの女……だっけ? そいつが何かしたのかよ」
「あー……なんつーか……うーん……」
そんなことを考えていると、弾が一夏にここで倒れていた理由を問いかけてきた。しかし、疑問を投げかけられた本人はどう応えるべきか戸惑ってしまう。
本当のことを言ったところで信じてもらえる自信がないし、まして自分ですら半信半疑なのだ。下手なことは言えないが、もはや『薔薇のタトゥーの女』の存在を彼は口にしてしまっている。
どう返答すべきか戸惑う一夏だったが――そんな彼の思考は、次の瞬間に掻き消えることとなる。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」
平和な日常が営まれる街中で、突如としてあがった悲鳴。耳にした二人はお互いに顔を見合わせると、一夏が声の聞こえた方向に駆けだした。
「あっ! おい、一夏!!」
突然の叫びに一瞬呆気に取られる弾だったが、慌てて一夏を追いかける。
人気のない小路から、人混みで溢れ途切れることなく車の列が走る大通りへと飛び出す一夏。彼がその時目にしたのは、騒然として空を見つめる人々の光景だった。
いったい皆は何を見ているのか。疑問に思った一夏も、空を仰ぐ。そしてその目に映ったものを認識した時、彼は肝を抜かれた。
「なん……だ。あれ……?」
そこにあったのは――地上から数十メートル上空に張り巡らされた、巨大な蜘蛛の巣。
建物と建物の間に白く太い糸が張られ、それが幾つも重なり合っている。彼らが作る精巧なものではなく、まるでそれを真似て出来た歪な形をしていたが……表現するならば、それはまさしく蜘蛛の巣だった。
「おい……なんだよあれ、一夏……」
やや遅れて弾が一夏に追いつくも、彼も同じものを目撃して驚嘆したらしい。震える小さな声で訊ねかけてくるが、当然と言うべきか一夏はその問いに何も答えることが出来なかった。
ただ事ではないと、一夏と弾は現場に駆け寄る。
「イヤッ!! お、降ろして、吊るさないで!! お願い、やめてええっ!!」
と、そこで先ほどあがった悲鳴と同じ声が、上空から聞こえてくる。点のように小さいが、よくよく目を凝らしてみると、そこに女性らしき人影が見えた。糸が全身に絡まり、巣に括りつけられているその姿は、蜘蛛の巣にかかってしまった蝶を彷彿とさせる。
誰かに向かって拒絶の意思を訴えているようだが、果たしていったい彼女は何に言葉を投げかけているのか?
誰もが疑問を抱いたその時、その答えを全員が得た。
その者の姿を、直視することによって。
「お、おい……なんだ、あれ」
男性らしき人が疑問の声をあげ、女性のいる場所とは違う方向を指さす。その言葉を皮切りに、次々に人々は指先を『あるもの』に向けて差していった。
皮膚は土色。手足は鋭く尖った爪が生え、頭部には蜘蛛の足らしき節くれだった触覚が幾つも伸びている。額には複眼らしき黒い球体がついており、目は黄色い輝きを放つ。口は縦に裂け、裂け目の向こうには糸らしき白い物体が覗いている。
それは……蜘蛛と人間を合体させたような『それ』は、怪人だった。四肢を持つその肉体の構造は人間のそれでありながら、外観は明らかに人間とはかけ離れた異形。
「……未、確認……生命体?」
それはいったい、誰が呟いた言葉であったか。疑問形で発せられたその声は集団の中で拡散し、騒然とする。
未確認生命体。それは、現代の日本を生きる人々にとって未だに恐怖の対象とされている、最悪の災厄。
今から25年前に突如として現れた、人の姿をした怪物たち。未知の言語を操るそれらはどこからともなく出現し、その周囲一帯に大虐殺を発生させて回る脅威だった。
人間では到底起こしえない不可思議な現象を起こし、人々に死をばらまく死神たち。彼らによって殺された犠牲者の数は、およそ数万にも及ぶとされている。
「う、うそだろ……未確認って、もう全部死んだんじゃ……?」
信じられない、というように一夏の隣で弾が震える声で呟く。リアクションこそ起こさないものの、心境は一夏も彼と同様であった。
それもそのはず。奴らはもう、この世には存在しないはずだった。
自身も同じ異形の身でありながら、人間のために戦った未確認生命体第4号。彼の協力と警察の捜査、科警研の必死の研究により、彼らは掃討されたはずである。その事件から12年後に再発した未確認生命体事件ですら、再び姿を現した第4号の助力により、収束に向かったはず。
もう、彼らの脅威など……この世には、あるはずがないのだ。
本物とは信じがたいが、しかし、だからといって誰かのイタズラにしては凝りすぎている。
あれが本物か、それとも偽物か。情報が少なすぎてなんとも判別しかねるが……皆が理解できることが、一つあった。
これから起こることは……決して、いいことなどではない。
「いやっ、いやっ、誰か、誰か助けて!!」
蜘蛛の巣に捕まった女性は、必死になって蜘蛛の糸の拘束から逃れようとしていた。
地上から数十メートル、手すりや足場などが全くない場所で宙吊りにされる。それだけでも視覚的にも絶大な恐怖を与えられているというのに、そのすぐ傍に怪物が存在するのだ。身動き一つできず、逃げ場がなく、脅威に迫られるその恐ろしさは、想像すらできない。
助けを求めて泣き叫ぶ彼女のもとに、蜘蛛の怪人はサルのように手足を駆使し、ゆっくりと近寄っていく。徐々に近づいてくるそれを見た女性はさらに恐怖心を刺激させられ、もはや口から出てくる絶叫は言葉の形をなくしていた。
その様子を見ていた一夏は、懐から携帯電話を取り出すと、警察へ電話をかける。
耳元にあて、相手が出るのを待つ一夏。電話の呼び出し音は嫌に長く鳴り続けており、向こう側はなかなか出る気配がない。じれったく思っている一夏だったが、そこでようやく相手が出た。
「もしもし、警察ですか!? 東京都文京区の大通りで、その……未確認生命体らしきものが出ていて、ビル群の間に巨大な蜘蛛の巣らしきものを張ってます! 女性一人が捕まっていて、危機的な状況にいます! すぐに助けに来てください!!」
口早に、しかしなるべく現状がわかりやすく説明できるよう気を使って喋る一夏。
助けにいきたいが、あんな高さのところへ救助に向かおうにも手段がない。消防車のはしごやヘリコプター、できればISなどがあれば助けに行けるのだろうが、どちらもこの場にはない。今すぐにでも、こちらへと寄越してもらうよう伝えるしかないのだ。
しかし、連絡してから現場へ急行するのにどれほど時間がかかるだろうか。
「いやあああああああああああああああああああああっ!! いやっ、あああああっ、やああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
とうとう、怪人は彼女のぶら下がる位置にまでたどりついた。身をよじり、メチャクチャに動いて抵抗しようとする女性だったが、糸は千切れるどころかビクともしない。ただ彼女のいる場所が上下に振動するだけで、現状は何も変わりはしなかった。
怪人は時折開閉する口以外、眉一つ動かすことなくそれを見つめる。右手から鋭く尖った鉤爪のようなものを出現させると、女性にのしかかるように立ち、怪人は左手で女性の頭を押さえつけた。
「ひっ――」
息を呑み、目を見開く女性は叫ぶのをやめてしまう。
彼女の目に映ったのは、蜘蛛の顔。微動だにしなかった、そして今もしていないはずの怪人の顔は――女性には、うっすらと笑ったように見えた。
「………ザジレジョグ・ダボギギ・ガヅシブゾ!!」
怪人が、言葉らしき声を放つ。
未知の言葉が周囲一帯に響き、全員の耳に届いた次の瞬間……女性の首に、その鋭い鉤爪が突き立てられた。
「――か……ぁ……け……か……っ!!」
喉を貫き、首の裏にまで達する刺突。喉をやられたその声はくぐもった呻き声に変わり、女性は痛みに悶えて痙攣する。
鉤爪を引き抜き、怪人が巣に身体を固定していた糸を引き裂くと……女性は重力に引かれるまま、地面へとまっさかさまに落ちていった。
「うわ、わ……!!」
「ひぃっ……!?」
真下にいた人達は咄嗟に飛び退く。咄嗟に一夏が受け止めようと駆け出したものの、人混みのせいで到達することができず――ポッカリと穴が開いたように女性の落下地点だけ人がいなくなり、女性はそこに向かって吸い寄せられていった。
グシャッ!! と。血の詰まった肉袋が弾けた音がする。その瞬間、鉄くさい匂いが、辺りに充満した。
人を掻き分け、女性が落下したところへと急ぐ一夏。そしてその場へ辿りついた時、残酷な現実が彼の目の前に突き付けられた。
「……あ……っ」
地面に叩き付けられた箇所からは鮮血が溢れ、折れた骨が突き出たのか白い突起が生えている。喉は大きな二つの風穴が開けられ、そこからも赤い液がいつまでも噴き出ていた。
「……あ……ぁ……」
ヒクッ、ヒクッ、と。血を吹き出しながら大きく痙攣する様から、目が離れてくれない。掠れた声が、一夏の喉から漏れた。
彼の隣でその光景を目にしてしまった誰かも、カタカタと震えて言葉を失う。傍にいたサラリーマン風の男性、街中を偶然歩いていた女子高生らしき娘たち、一夏たちと同じ男子中学生たち……彼らは皆一様に、残酷な情景を目の前にして絶句していた。
騒然としていたはずの周囲は、水を打ったように静寂が訪れる。
今まで経験してきた日常からは想像すらできない、死という光景。無残な姿を晒してそこに佇む死体を目にしても、白昼夢のように現実味がなくて、皆は頭のどこかが麻痺していた。
だけど、見れば見るほどそれはリアルで。
それが、自分にも訪れるかもしれないと、嫌でも訴えかけてくるもので。
――そこで、誰かが叫んだ。
「――未確認だァァァァァァァァァァァァあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
絶叫。そしてそれに続く、数多の悲鳴。
「う、うわああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」
恐怖が伝染しきった集団は、本能が命令するままに逃避行動を一斉に開始する。
その時を待っていたかのように、遥か頭上で佇んでいた蜘蛛は糸を吐き出し、次の犠牲者を捕獲せんと行動し始めた。
人々は逃げようとするが、辺り一帯は人混みであり、お互いがお互いの邪魔をしてしまっている。中には車を乗り捨てた人もいるようで、車道に置かれた車も障害物に変わって、思うように動けなかった。
一方、蜘蛛がすることはただ一つ。人混みに向かって、糸を吐くだけ。それだけで面白いくらいに人が捕まり、次々と彼の巣に引きずり込まれては、最初の女性のような無残な最期を迎えることとなる。
「いやだああああああああああああああああああああああああああ!!」
「誰か、誰かあああああああああああああああああっ!!」
糸が絡まった人は助けを求めるが、その場にいた誰も彼らを助けようとはしない。皆、自分だけでも助かろうと必死に逃げ惑うばかりで、捕まった人達のことなど見向きもしないのだ。
「ハハハッ、ビゲソ・ビゲソ!! ロドド・ゴセゾ・ダボギラ・ゲデブセ!!」
混沌を極めた人々の様を見下ろして、蜘蛛はあざ笑うかのように未知の言語を叫ぶ。
恐怖と絶望の悲鳴があちこちから響く、阿鼻叫喚の地獄絵図。人々が一目散に逃げ回る中、一夏は凍り付いたように動かなかった。そんな彼を見かねた弾は、声を張り上げて一夏に呼びかける。
「おい一夏! ヤベェことになった、俺らも逃げんぞ!!」
そこでようやく意識がこちらに戻ってきたのか、一夏はハッとして弾のほうへ振り返り、呼びかけに返答する。
「あ、あぁ…………つッ!?」
そして一夏もそこから逃げ出そうとしたその瞬間。鋭い痛みが一夏の頭に走り、思わず膝をついてしまう。
脳みそが直接かき回されているようなズキズキとした痛みが、彼の思考を破壊する。聞こえていた人々の光景、悲鳴や絶叫は掻き消え、映像のような記憶が彼の眼前に出現した。
現れたのは、赤い目をした怪人。その怪人は、一夏たちが見た蜘蛛と同じ異形の者たちと相対すると、次々とそれらをなぎ倒していく。
その拳とその脚で敵を打ちのめし、迫る脅威に立ち向かうその姿は、まさしく『戦士』。
その幻覚は再び姿を消し、その途端痛みが消えた。
「……ッ、またかよ……なんだってんだ、これ……!!」
一夏は現実へと引き戻されると、忌々しげに悪態をつく。
いったい何が自分に起こっているのか。何が原因かと考えてみれば、心当たりは一つしかない。あの薔薇のタトゥーの女が、自分に『何か』をしたのだ。
だが、いったいそれが何を意味するのか? そのタイミングを狙いすましたかのように登場した未確認生命体は、何なのか? 殲滅されたとされる彼らが、なぜ復活したのか?
脳裏にちらつく、あの『戦士』は何だ?
何もかもが謎だらけで、理解不能なことだらけで、苛立ちを隠しきれない一夏。その思考に注意を逸らされてしまったがために、彼は致命的な隙を作りだしてしまう。
「一夏ァッ!!」
唐突に、弾が一夏に向かって叫ぶ。今度は何が起こった、と声が聞こえた方向へ振り向こうとした瞬間……一夏は、弾によって突き飛ばされる。
不意打ちめいた行動により、抵抗できず一夏は尻もちをついた。悪友の突然の奇行に戸惑いを隠せなかったが……彼はその行動の意味を理解することとなった。
自分を突き飛ばした親友の身体に、蜘蛛の糸が絡まったのだから。
「――――え?」
白い粘着質の糸玉が、べちゃりと音を立てて弾ける。瞬く間に彼の身体は白濁のどろりとした繊維に捕えられた。
一瞬の硬直。茫然自失し、ただ眺めることしかできなかった一夏に向かって、弾は叫ぶ。
――バカヤロウ。
状況を認知したそのとき、無慈悲な怪物は悪友をその大口へと引きずり込もうとして……。
「弾ァァァァァァああああああああああああああああああああああああああああン!!!!!!!!」
悪友が視界から消えるその刹那。一夏は思考するよりも早く、彼に飛びついた。
引きずられていく彼の身体を、がしっ、と全身で掴む一夏。しかし男子一人分の体重が増えたにも関わらず、引っ張られていく速度は変わらない。二人ともが、殺人蜘蛛の巣へと瞬く間に引きずり込まれていった。
すさまじい速度で、一夏と弾は高層ビルの間に張り巡らされた蜘蛛の巣と激突。柔軟性に優れたそれは衝撃を緩和してくれたものの、二人の身体にべちゃりと張り付いて、彼らを絡めとる。
「おまっ、何やってんだあああああああああ!! 冒険癖も大概にしやがれこのバカ一夏ァァァァァッ!!!」
怒声を張り上げる弾。それもそうだ、自身が身を挺してまで救おうとした人物が、よりにもよって自ら危機的状況へと飛び込んできたのだから。
一方でそんな声など全く耳に入っていないかのように、一夏は自身に絡みついた糸を外そうとする。だが、どれだけ躍起になって格闘しても、彼の全身に巻き付く糸は千切ることもほどくこともできない。一見綿のような貧弱さが伺えるそれは、どれだけ力を込めてもびくともしなかった。まるで、粘着質なワイヤーの束で拘束されているかのようだ。
(クソッ、どうする!? どうすりゃいい!!??)
反射的に身体が動いてしまった。そのことに、全くといっていいほど彼は後悔していない。
だが、そんな心情的な問題などどうでもいい。現状は最悪だ。身動き一つ取れず、親友も捕まり、そして『
抵抗する手段も、逃げる算段もない。もはや一夏たちは、文字通り蜘蛛の巣にかかった羽虫に等しかった。
「ザボガ……」
焦燥に駆られあがく一夏の耳に、嘲笑するかのような呟きが入る。それとともに、ギシッ、ギシッ、と巣が震える。
声のした方向を見れば、そこには糸を伝ってこちらへと迫る未確認生命体の姿があった。
自身と親友を殺そうとしている化け物が、目と鼻の先にいる。その事実は一夏の精神に多大なストレスを与え、余裕をかき消していく。
(ダメ、だ……このままじゃ……)
何もしないまま、ただ喰われるのを待つことなどできない。しかし現状、彼は足掻くことすらできない。
力が、足りない。
圧倒的なまでに。今の自分は、弱すぎる。
(このままじゃ……俺も、弾も……死ぬ……!!)
力が、ほしい。
自分を、弾を。この脅威から、守れるだけの力が、ほしい。
未確認生命体は、ゆっくり一夏たちのところへと近寄ってきた。まるで獲物をいたぶるように。じわじわと、心を恐怖で追い詰めていく。
二人と怪人の距離は縮まっていき、やがて蜘蛛は一夏のそばにまで接近した。
「一夏ァッ!! おいてめぇ、クソ蜘蛛野郎!! やめろ、やめろっ、やめやがれこんちくしょオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」
親友の危機に、弾はがむしゃらに体を動かして暴れまわる。しかし、そんなことをしても蜘蛛の巣がトランポリンのように振動するだけで、彼は未確認生命体の行動をけん制することすら叶わなかった。
そんな弾を馬鹿にするように、未確認生命体は鼻で笑う。その手にかぎ爪を出現させ、一夏を一突きにするべく振りかぶった。
――死ぬ――
直面している現実が。一夏の生存本能を刺激する。
生物としての本能が、思考を破壊し、理性を崩壊させ……彼に、絶対の命令を下す。
――死にたくなければ、足掻け――
「ッ、うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!」
叫びとともに、何も考えずに一夏は右手を動かした。
頑強な蜘蛛の糸によって制限されるはずだったその行動は……しかし、何の制限も受けることなく容易く実行される。
ブチンッ!! と。彼の腕を拘束していた糸が、はじけ飛んだ。
「ッ!!??」
反撃がくることなど、未確認生命体にとってまさに想定外だったのだろう。
一夏を刺し貫くはずだったかぎ爪の刺突は、彼の拳によって弾かれ、腹部に痛烈な衝撃が走る。
ドゴッ!! と。暴力的な打音が響いた。予想外の攻撃に、未確認生命体は抵抗できずに怯む。バランスを崩したその瞬間、蜘蛛は自らの巣からあっさりと落ちてしまった。そのとき偶然、彼のかぎ爪は一夏を張り付けていた糸を切り裂く。
束縛から解放されたものの、それは果たして幸運といえるのか……高層ビルの間に張られていた巣から、一夏も落下することなった。
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!??」
なすすべもなく、一夏は落ちていく。
高度は、ビル数十階分。とても人間が落ちて無事でいられる高さではない。危機を脱するための行動により、更なる危機的状況へと陥ってしまうなど、洒落にならなかった。
(あ……これ……ほんとに死ぬ……)
一瞬前の自分の行動を後悔するより早く……一夏は、地面と激突する。
瞬間。彼の全身に激痛が走った。
「がァッ……!!」
前身から地面にぶつかったため、顔から足にかけての痛みがすさまじい。薔薇のタトゥーの女が自身に与えたものとは違う、鈍痛な感覚。それは数秒間彼の肉体を苛み、しばらく動くことができなかった。
しかしその感覚は、徐々に消えていき……やがて、ある程度動くことが可能になるまで回復する。
「……?」
一夏は、戸惑いを隠せなかった。
あの時、自分は死を直感した。それほどまでの高度から、自分は落ちたはず。なのになぜ、自分は生きている?
いや、生きているよりも……なぜ、動くことができる?
あまりにも自分が受けたダメージが少なすぎる。自分の身体に起こっている変化に、一夏は首をかしげながらも、立ち上がろうと地面に手を着く。
そして……彼は、気づく。
「……え?」
自分の手が、普通の手ではなくなっていることに。
手の甲には、白い装甲。それ以外は黒い皮膚のようなものに覆われ、手首には金の腕輪らしき装飾が施されていた。肘から手首にかけた部分は、手の甲と同じような、白い籠手。
思わず、まじまじと見つめる一夏。手を開いたり閉じたりして動かしてみれば、意思通りに動く。確かにそれは彼の手であると証明されたが、未だにこれが自身のものであると彼には理解できなかった。
「なん、だ……これ……」
見れば、変化が起こっているのは腕だけではない。足が。腹が。胸が。同じく白のアーマーと黒の皮膚を纏っている。
また外見だけでなく、五感までもが鋭くなっていた。今まで見えなかった遠方までも視認でき、遠くで逃げ惑う人々の言葉も聞こえる。ふと周囲を見渡してみれば、近くに車があるのが確認できた。
歩み寄り、サイドミラーをのぞき込む一夏。
そこで彼は……自身の姿を、見た。
そこにいたのは、白の戦士。
目は巨大で赤く、昆虫の複眼を連想させる。額からは二本の短い角が生え、クワガタを彷彿とさせた。
色こそ違うものの、まるでそれは――自分が何度も幻視した、赤い戦士そのもの。
「クウガ……! ビガラ・ザダダンバ・クウガ!!」
ハッとして、声のした方向へと振り向く一夏。
そこに立っていたのは、自身と同じく巣から落ちることとなった未確認生命体。そいつは一夏の姿を見ると、驚愕したように何かを叫んでいる。
相変わらず何を言っているのかは意味不明であったが……一夏は、なぜか奴の放った一つの単語が、妙にはっきりと聞こえた。
「……クウ、ガ……?」
――ここに、新たな伝説が生まれる。
突如として復活した、未確認生命体。再び人類へと来訪した、恐怖。
誰かの笑顔のために。その教えを受け継ぐ、心優しき若き英雄が……今、人々のために立ち上がろうとしていた。
ひとまず本日はここまで。
ようやくクウガ登場。しかし序盤なのでグローイングフォーム。
こんなの絶対おかしいよ……って思うところがあったら、感想をおなしゃす。