インフィニット・ストラトス~A new hero, A new legend~   作:Neverleave

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スランプと多忙の板挟みにあった今日、私は帰ってきたッ!!

他の作品もちょこちょこ書いてはいるのですが、うまいこと纏まらず投稿できていないという残念な結果。リハビリも含めて、新作書いていこうと思い行動してしまいました。

相変わらずいつ続きができるかわからない亀更新となりそうですが、それでもいいよという理性を保ったまま凄まじき戦士になれそうな心優しい方は、どうぞ。

※後書きに注意書きがございますので、ご一読ください。


憧憬

 ――????――

   05:31 p.m.

 

 日暮れの時間。陽は西に沈み、地平線の向こうへ降りようとしている。昼間には青空だった空は真っ赤に染まり、どこからか聞こえてくるカラスの鳴き声が虚空に響いて静寂を引き立たせた。

 東京都内にある、とある公園の広場。そこに設置されているベンチに、男の子が一人座り込んでいた。背格好からして、小学生低学年だろうか。まだまだ幼い一人の少年はその表情に暗い影を落とし、深くため息を吐いた。

 嘆息を漏らしても、そこにはその子一人以外誰もいない。ため息は誰に聞かれることもなく、ただ虚しく掻き消える。ゆっくりと視線を移し、周りに誰かいないかと見渡してみたが、やはりそこに誰かがいるはずもなかった。

別に期待はしていなかった。こんなものを人に聞かれたとして、自分の胸中に抱えるモヤモヤとした感情が消えるわけではない。だがそれが一層、自分が独りぼっちであるということを思い知らせるものとなって、余計に悲しい気持ちになってしまう。

 

「……はぁ」

 

 思わず、もう一度息を吐く。

そんな時、どこからかバイクが走行するようなエンジン音が唸りをあげ、こちらへと近づいてくるのが聞こえた。

 この公園の傍を通り抜けるだけだと思った子供は、そんな音に興味も示さない。しかし……その駆動音は、彼のいる公園間近で停止した。

 

「……?」

 

 そこでやっと子供は、音がした方向へと視線を向ける。公園の入り口が目に入る辺りで、バイクの駆動音は止まった。そこから間もなくして、子供にとって見覚えのある人影がひょっこりと現れる。

少年を見つけると、一瞬首をかしげてこちらを見つめる青年だったが……それは次の瞬間には、明るい笑顔に変わっていた。もうとっくに成人しているであろうその顔つきに似合わぬ、子供のように無邪気で朗らかな笑みが特徴的なその青年は、少年のもとへと駆け寄る。

 

「よっ。どうしたんだ、こんなとこで一人でいて。お父さんやお母さんは?」

 

 見知らぬ赤の他人に話しかけられ、一瞬たじろぐ少年。そんな人に呼びかけられても何も答えるなと姉から教わっていたため、一夏は返事をすることなく口を噤む。

 その反応を見て困ったように苦笑する青年だったが、彼はめげることなく一夏に声をかけ続ける。

 

「もうすぐ日が暮れるよ? 暗くなって、みんな心配するんじゃない?」

「……知らない」

「知らないって、どした? 喧嘩でもしたのか?」

「……」

「元気がないなー。喧嘩じゃないのか? なら、何かやなことでもあったのか?」

「…………」

 

 さっきからしつこく話しかけてくる青年を、少年は無視することにした。小さな子供が、一人でこんなところにいれば気にもなるだろうが……わざわざバイクで走っているところを引き返してまで来る必要があるだろうか?

 独りぼっちが嫌だと感じてはいたが、だからといってこんな人と一緒にいたいとは、今の彼には思えなかった。むしろ、鬱陶しくてどこかへさっさと去ってほしいとさえ思える。

 

「……んー……よし!」

 

 相手にしないまま放っておくと、青年は何かを決意したように声をあげ、懐から何かを取り出した。気になった少年が見てみると、ざぶとん型のお手玉が三つ、彼の手元には置かれている。右手に一つ、左手に二つずつ持つと、青年は少年に向かってニッコリ笑いかけた。

 

「よーしいくぞー……ほれっ!」

 

 意気揚々と言い放ち、青年はお手玉を始めた。「ほっ、ほっ、ほっ、ほっ!」と掛け声をあげながら、右手で玉をあげ、左手で受け止め、右手に受け渡し、と忙しなく動き回る青年。

 いったい何をしているんだ、と目を丸くする少年だったが、そんな不審な様子で見る彼の目線は、次第に別のものへと変わっていった。

 三つのお手玉は流れるように綺麗な軌跡を空に描き、滞ることなく青年の両手は動いている。こういったことに手馴れているのか、青年自身の表情はとても涼しげで、そして何よりも――楽しそうだった。

 

「ほいほいほい――ほいっと!!」

 

 と、そこで仕上げとばかりに青年は三つの玉全てを空高く放り投げ……次の瞬間には、彼の左手の上にポポポン、と縦に連なって落ちた。

 

「……わぁ」

 

 思わず、感嘆とした声を漏らしてしまう少年。ハッと気づいた時には遅く、青年の顔には『してやったり!』というような悪戯っぽい笑みが浮かんでいる。

 

「な、なんだよ……確かにすごいって思ったけど、別に……」

「笑った!!」

「それ以外なんてこと……え?」

 

 得意な顔をするあたり、自慢でもするのかと思っていた少年だったが……青年の言葉を耳にして、ふと自分の顔に手をあててみる。全く自覚がなかったが、触れてみると自分の口元は横に広がっているのがわかった。

 その事実がなぜか少年にとってはとても恥ずかしく、思わず顔を隠してしまう。

 

「……笑ってねーし。なんだよあんた、わけわかんねー。だいたいお手玉とか子供じゃねーんだから」

「素直じゃないな~。これじゃあまだ満足しない? オッケー! なら次の技するしかないな!」

「え? つ、次?」

「よっしゃ! よーくみてろー! いくぞー!」

「いや、ちょっと……」

 

 戸惑う中、青年は少年の目の前で次の技を披露する。誰かを笑顔にするために習得した、二千以上にのぼる技を。

 

 これが少年……|織斑一夏〈おりむらいちか〉と、『青年』の出会い。

 彼の運命を大きく動かすこととなる、笑顔が大好きな――『新たなる伝説』を築き上げた、『戦士』との出会いだった。

 

 




みんなの笑顔のために。
その信念は、彼の『誰かを守りたい』という思いを、確かなものへと変えていく。
決して歪なものでも、不確かなものでもなく。『何を守りたいのか』を、彼は知る。



仮面ライダークウガとインフィニットストラトスのクロス。
幼いころに一夏と五代が出会っていたら……という妄想を爆発させた自己満足作品でございます。設定などが原作と一部改変されることなどございますが、ご了承ください。
なお、本作品は『小説版仮面ライダークウガ』の設定も盛り込んでおります。ネタバレなどがございますので、事前に『小説版仮面ライダークウガ』も一読していただきますよう、お願いいたします。

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