神炎聖剣少女ジャンヌオルタさん   作:ちゅーに菌

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やったねディオドラ! 眷属がふえるよ!


ディオドラさんのジャンヌオルタさん

 

 

ジャンヌ・ダルクを女王にしてからのディオドラの生活は一変したと言って過言ではない。

 

例えばジャンヌが眷属集めという名目の旅に出る前にトレーニングシートなるものを作製し、ディオドラに手渡した日の光景に遡る。

 

『ではとりあえずこのメニューを1ヵ月間こなしてください』

 

相変わらず不器用に微笑みながらそう呟いたジャンヌからトレーニングシートを受け取った数秒後、ディオドラの目は驚愕に見開かれる。

 

そこには魔力や肉体共に悪魔でもそこまでやるのかと言わんばかりの超過密トレーニングが刻まれていたのだ。

 

確かに眷属を集めることは委任したが、まさか駒自体の価値を上げる事までディオドラは想定していなかった。いや、頭の片隅程度には想定するにしてもここまで本気でやれと言われると考えていなかったと言うのが正しい。

 

『無理というのはですね、嘘吐きの言葉なのです。途中で止めてしまうから無理になるんです』

 

ディオドラが口を開いたまま暫く固まる。平常時なら何を言っているんだお前はとぐらいは吐くハズであるが、如何せん相手が悪過ぎた。ディオドラは困惑するばかりである。

 

なまじディオドラが全力でやれば出来る限界スレスレの量かつ、極限まで効率を優先しているトレーニングメニューなのが微妙に彼の事を考えてもないような気もしないでもない為に意地らしい。

 

『途中で止めるから無理になるんです。途中で止めなければ無理では無くなります』

 

ジャンヌはそう言うと床に手を付け、その場で倒立をする。

 

更に片腕を離し、片掌だけで全身を支え始めたかと思うと、掌から五指だけで全身を支え始め、次第に1本づつ指を離していくと、最後には小指1本での倒立を成立させてしまった。

 

卓越した技量と、バランス感覚、そして異常な筋力が無ければ無し得ない行動を、準備体操か何かのように続けながら尚もジャンヌは言葉を吐く。

 

『止めさせないんです。血を噴き出そうがブッ倒れようが、とにかく1ヵ月間全力でやらせる』

 

ディオドラの頭に大量のハテナが並ぶ。

 

自分は王で目の前の者は女王、立場は自身の方が上のハズである。だが、目の前のジャンヌの謙ってはいるが、慈悲の欠片もない会話内容にそれさえも気のせいだったような感覚さえ覚える。

 

『無理ではなかったという事です。実際に1ヵ月もやったのだから。無理という言葉は嘘だった』

 

流石にディオドラもどうかと思い反論をした。最も結果はどうなるかなど目に見えているが。

 

『しかし、現実としてやったのですから無理じゃなかった。その後はもう無理なんて言葉は吐けないでしょう?』

 

暴論も良いところだが、バッサリと切り捨てられ、最悪な事に1ヵ月が終了した後も続けさせる事まで付け足されたようである。

 

口は災いの元とは良く言ったもの。ジャンヌは小指倒立の姿勢から後ろバク宙を決め、途中で悪魔の翼を展開して空に舞い上がる。そして、ディオドラでも顔が引き釣るほどの技術のアクロバット飛行を繰り広げた。それを準備体操と称している超人に逆らうというディオドラの意思は急速に萎えて行くのであった。

 

ちなみに実際にそのトレーニングは効果がかなりあり、数ヵ月間で元から血統書付きのディオドラの身体能力をトレーニング開始前の数倍近くにあげる事には成功した事を記しておこう。血と才能だけならディオドラもかなりのものなのである。

 

 

閑話休題。

 

 

そんなこんなでジャンヌと血統以外は月とスッポン程の開きがあり、恐妻などという2文字では収まらない女王に選んでしまったディオドラであるが、実際のところ彼女を眷属にした後悔は殆どない。

 

それというのもレーティングゲームの学校での優越感に浸れる日々を送れるからであろう。

 

悪魔のレーティングゲームの学校は通常部と、高等部の2つに別れており、通常部を卒業時点で悪魔の駒を渡され、それ以上に学びたければ高等部に通うという構成になっている。

 

悪魔の貴族の減少もあり、レーティングゲームの学校ではクラスでかなり年が離れる事もそう珍しくはないが、ディオドラは今のところ義務教育過程のように最短で学業を修めれる年齢で高等部に在籍していた。

 

その在学生らの眷属に比べてディオドラの女王であるジャンヌ・ダルクは究極と言っても過言ではない程の有能さだった。

 

まず、悪魔でさえ知らぬ者の居ないほどの莫大な知名度。それ単体で神滅器に匹敵する程である。更に、女王という駒に適し過ぎている事も拍車を掛ける。絶世の美女と言っても差し支えない容姿、極めて高い魔力と魔法才能、常人には決して至れない技量と筋力から来る身体能力、稀で強力な神器。更に学習能力まで遥か彼方。序でに意外ではあるがかなり家庭的である。

 

そんな誰もが羨望するような超生命体がディオドラの女王なのだ。後悔する方が難しいであろう。

 

そして現在、眷族集めの最中のジャンヌ・ダルクはディオドラの屋敷に帰ってきており、新たに加わった眷属の説明をしていた。

 

「私とは違い神器は保有していませんが、未だ発展途上にも関わらず、高名で高潔な魂によってディオドラ様の騎士の駒を2つ消費した程の眷属になります。戦闘においてのポテンシャルだけならば、私と同格かそれ以上かもしれません」

 

「そ、そうか…」

 

要は日本の織田信長や、フランスのジャンヌ・ダルク、ギリシャ神話のヘラクレス級の代表する英雄の魂を受け継いだ者を眷属にしたと言うのだろう。それも戦闘特化型のだ。ジャンヌの言葉を徹頭徹尾信じるのならば、やはり彼女の多方面への有能さは正に女王のそれだ。

 

ジャンヌが合図を送ると部屋の扉が力強く開け放たれた。それを見たジャンヌの目が密かにひきつり、笑顔のままピクピクと動いていた。ディオドラはそれを触らぬ神に祟りなしの基本精神でそれに気付かないフリをしながら部屋にズカズカと入って来た人物を眺める。そして、ディオドラは目を見開いた。

 

白に近い金髪に、金の瞳、死人か死神並みに白い肌。ほぼ黒一色で固められた服装。更には顔のパーツがやたらジャンヌに似ており、姉妹と言われてもディオドラは納得しただろう。

 

まあ、一番奇妙に思うのは、何故かバケット一杯のターキーを豪快に頬張ったまま現れたのである。ジャンヌが連れてきた以上、ディオドラとしては特に文句を言うつもりは無かったのだが、この光景は流石に貴族の悪魔として目に余る。

 

そんな事はお構い無しといった様子のジャンヌに良く似た少女は、そのまま口を開いた。

 

「どうも(もきゅもきゅ)、ご主人サマ。貴様の(もくもく)可愛い可愛い騎士様だ(もきゅもきゅ)。精々、よろしく頼む(ごくん)」

 

「おい、表出ろ"騎士王"」

 

新たな眷属が、一瞬発言が素に戻ったジャンヌに首根っこを掴まれ、ずりずりと部屋の外に連れていかれる様を呆然と眺めるばかりであったが、その間、一切手にしているターキーを咀嚼する事を止める様子の無い少女にディオドラは呆れを通り越して関心の念すら懐く。

 

ちなみに素のジャンヌ・ダルクはギャルのような喋り方になる事などはディオドラ含め、ディオドラ眷属なら公然の秘密である。ディオドラとしては素のジャンヌの方が良いと思うのだが、それを指摘する勇気は今のところ無い。自分が常日頃から聖女っプリをアピール出来ていると思い込んでいるのが、ジャンヌの唯一にして最大の欠点だろうか。

 

 




ちなみにディオドラの騎士さんは見た目はまだ、黒いアルトリアリリィぐらいですが、勿論この世界ではエクスカリバーを持っていないので成長して何年か経過したら乳上になります(馬と鎧は別売り)。

次回は数日前に遡り、ジャンヌオルタさんと騎士さんの奇遇です。

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