姉が勇者として転生してきた為、魔王の右腕になって復讐することにした【凍結中】   作:ベクセルmk. 5

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19話 ● 陸での戦い

瘴気の大峡谷を越えたラドラー平原。ミストヴェール教国領であるこの平原に、ブルームハート王国の将軍、華冠(ブルーム)が陣を敷いていた。

陣形は魚鱗、指揮を降しているのは『一華冠』、デブル・デプールだ。

「よし、陣形をそのまま維持!防御に徹しろ!」

正面から突撃してくるクラウディア大聖堂騎士団。彼らの主武装である突撃槍(ランス)を活かした勢いと鋭さのある戦い方だ。しかし、

「なっ――――――――止められた!」

騎士の一人が驚愕で顔を染める。よく見るとそれは、盾を持ったゴーレムだった。

数秘魔導(カバラ)。かつて存在した石や青銅で出来た兵士に、人間の魂を転換することによって誕生した魔物、ゴーレムを人間でも扱いやすいようにした魔導だ。しかし、それだけじゃない。デブルの軍隊には生物がいない。

「機械歩兵は後方から射撃準備、ゴーレムは防御に徹し続けろ」

数秘魔導だけでなく、機構魔導(メカニカル)によって、機械化した兵士もいた。

デブル・デプール。ブルームハート王国北部で生まれた犬人(シアンスロープ)だ。貴族でもなく、奴隷でもなかったデブルは魔導を学び始めた。本来なら犬人のような種族は知能が低いため、魔導の研究には向いていない。そんなことをしても長続きしないだろうと、同族達――――――――魔族の皆が思った。しかしデブルは天才だった。

魔導を完全に兵器として使い込めるように昇華させ、将軍となったのは、デブルだけだろう。

防御文術(ガードワード)!」

デブルが唱えるとゴーレムの防御がより堅牢になる。文字魔導(ルーン)だ。

「あまり舐めるなよ。私は書物魔導(グリモア)以外の魔導なら、簡単に使いこなせるぞ?」

~~~

「さて、デブル将軍はうまくやってるみたいだ」

ちょうどフェーリン海域の見える丘の上で、白いローブを纏った男・・・・・・否、性別どころか人間であるか、あるいはそれ以上の生物であるかも分からない『ソレ』はそこにいた。

「ラウル、君の作戦はうまくいってるよ」

今のところは。最後にそう呟き、ソレは魔力を高める。

「開放宣言――――――――神威魔導(ゴッヅオーダー)パンドラ、()()()()()()()を起動』

それは遥か昔、パンドラ帝国が現れるまで北の覇王と呼ばれていた国が密かに作っていた箱型の兵器。

『全兵器細胞開放、砲撃開始』

それは細胞一つ一つが大火力の主砲だった。放たれた先にあるのは沈みかけた教国の戦艦。そこで戦っている勇者と同胞。

「うん、腕だけじゃ足りなかったな」

 


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