自己満足で始めた作品ですけど楽しんでいただけると幸いです。
これからもよろしくお願いします。
アサシンの脱落。
それは即ち聖杯戦争の始まりを意味する。
アサシンの脱落の一部始終見ていた者たちは様々な反応を示した。固有スキルである気配遮断を持つアサシンが消え、姿無き暗殺者への警戒を解く者。アサシンを一方的に蹂躙したアーチャーを警戒する者。アサシンの存在を他の陣営から消せてほくそ笑む者。
そして……アサシンとアーチャーの戦闘で疑問を持つ者も少なからずいた。
冬木のとあるホテルにて。
衛宮切嗣と彼の協力者であり、
部屋のベッドには切嗣が普段仕事で使う重火器の数々が綺麗に並べられていた。もし、少しでも武器を持って日本に入国すれば怪しまれる可能性がある。今回の戦いでは普段以上の細心の注意を払って進めなければならない。その為に切嗣は自分が冬木に着いた後に舞弥に武器を運ばせていた。
彼女には幼い頃から戦いのための訓練や隠密活動の訓練を叩き込んできた。その実力は他でもない切嗣自身が一番良く理解し、そして信用していた。
そう、
彼女は衛宮切嗣が最高のパフォーマンスを発揮するための道具に過ぎない。その間に確かな忠誠心があっても信頼感は決して無い。
いや、あってはならない。もしも彼女のために切嗣が涙を流す日が来るのならその時はきっと―――――
「装備品一式……全て到着しています。マダムたちも既に冬木に到着し、動き始めています。これで他のマスターもセイバーのマスターがマダムだと思い込むはずです」
「ああ、ご苦労」
一通り会話を終えると切嗣は舞弥に撮ってもらった昨夜の映像を見せてもらっていた。
そこに映っていたのは遠坂邸に進入するアサシンの姿。英霊の動きはあまりに早すぎるため普通の人間に目視することは難しい。カメラに映っていない部分もあるが遠坂の魔術トラップを難なく潜り抜けトラップの中心である宝石に辿り着いたところまでは見事と言う他なかった。
しかし、問題はその直後だった。
宝石に触れようとしたアサシンの右腕を突如謎の光が貫き、続けざまにたくさんの光がアサシンの体を串刺しにしていった。
遠坂邸の上には黄金の甲冑を身に纏った男が立っており光はその背後から降り注いでいた。
切嗣はすぐに疑問に思った。サーヴァントではなく、その対応の早さに。
「―――この展開どう見る?」
「出来すぎのように思えます。アサシンの侵入から遠坂のサーヴァントの攻撃までのタイムラグが短すぎます。気配遮断スキルを持つアサシンを事前に察知できたとは思えませんし、侵入者があることを承知していたのではないかと……」
聖杯戦争で召喚された英霊にはクラス別に固有スキルという物が存在する。
アサシンの場合は『気配遮断』。
その名の通り自身の気配を絶ち、他者にその存在を気取られることのないようにするスキルだ。ランクにもよるが高ければ高いほどその感度は鋭くなっていく。人はもちろんトラップのような現象でさえ感知できない場合もある。
「サーヴァント戦では英霊の正体を秘匿するのが鉄則だ。何故遠坂はみすみす自らのサーヴァントを晒すような真似をした?」
「見せる意図があった、と言うことでしょうか?」
「舞弥、アサシンのマスターはどうなった?」
「昨夜のうちに教会に避難し、監督役が保護下に置いた旨を告知されました。アサシンのマスターは言峰綺礼」
「っ!」
その名を聞いた瞬間に切嗣の頭の中で嫌な予感がした。
言峰綺礼。
衛宮切嗣が今回の聖杯戦争で恐らく最大の障害になるであろうと予測した人物である。
彼の記録を見た時、切嗣には疑問しか浮かばなかった。今日に至るまで彼は様々なことを学んでいた。学問に魔術、それに治療術や降霊術など見るだけでも素晴らしい博識に満ちた人物だと思うだろう。
だが、彼はそれら全てをあと少しで極められるであろう所までいってその全てを極めることなく次に進んでいた。
切嗣には彼が理解できなかった。
取り組んでいたことに対して何の未練もなく切り捨てられる彼のことが。その人生に対して凡そ情熱というような事柄が全く見受けられない彼のことが。
「……舞弥、冬木教会に使い魔を放っておけ」
「いいのですか? 教会の不可侵地帯にマスターが干渉するのは禁じられているはずですが……」
「監督役の神父にばれない様ぎりぎりの距離をうろつかせる様にするだけでいい」
「……はい。分かりました」
一通り指示を出し終えるとベッドの上に広げられている銃の点検を始める。
狙撃用の銃に対象の熱を感知するスコープ。さらに離れた相手を確認するためのスコープを組み立て、そして構える。
「預けておいた奴は何処にある?」
「こちらに」
舞弥が一つの鞄を切嗣に手渡す。少し見つめた後、受け取りゆっくりと鞄を開いた。中には一丁の拳銃と数発の弾丸が収納されていた。
それこそが彼の切り札にして魔術師殺しと呼ばれる所以になったものであった。
構えるとそのまま中の弾丸を外し、新たに装填し再び構える。
「――――二秒ってところか。衰えたな」
「……はい」
切嗣の小さい呟きを聞きながら舞弥が反応を返す。何故、衰えたのか。その答えは数えるだけあるのだろうが切嗣自身が一番よく分かっていた。
落とした弾丸を拾い、再び鞄に直す。
「――――そこのワルサーよりもイリヤの体重は軽いんだ。もう八歳になるのに」
自分にとって人を殺すための道具のほうが愛する娘よりも重いものだと言うことを改めて実感させられる。
切嗣の願いは人間同士が争うことのない平和な世界を作ること。その為に彼は様々な紛争地帯に赴き、悉く戦争を終わらせてきた。だが、その度に彼の心は少しずつ傷付いていった。人を救う為に人を殺すという悪循環。多くを救う為に少数の人間を切り捨ていく。それの繰り返し。
そして次第に……嫌でも気付いた。戦争が終わることは望まれていないことに。
戦争が起こることによって大勢の人の命が失われていく。それによって損をする人より得をする人間のほうが圧倒的に多いのだ。人の命を対価に利益を得る人間が確かに存在する。そのためだけに何の罪もない生きるべき人間の命が失われていく。そんな人間を殺していくにも自分はあまりに普通の人間だ。一生を捧げても戦争を終わらせることは出来はしない。
だから聖杯を求めた。
この世から戦争をなくすために。
この戦いを――――――最後の戦いにするために。
俯く切嗣に舞弥が背後から手を回し、そのまま立たせて向かい合う。
「今必要なことだけに意識を向けてください」
そのままキスをする。出来るだけ優しく……切嗣が少しでも安心するように。
「――――余計なことは考えないで」
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「よくぞ来た。今日一日この街を練り歩いて過ごしたものの、どいつもこいつも穴熊を決め込むばかり。俺の誘いに応じた猛者は……お前だけだ」
街の外れにあるコンテナ群の中にセイバーとアイリは来ていた。昼に冬木についてから街の風景や人々を見て観光していた二人だったが、夜になった時溢れ出る魔力を感知した。それも全く隠す気がないように一つの場所から辺りに撒き散らすかのように。
歴戦の戦士であるセイバーも素人であるアイリにもすぐに分かった。敵が挑発していることに。
魔力の中心に向かうとそこには二振りの槍を構え、緑の軽装をした男が佇んでいた。
「その清澄な闘気……セイバーとお見受けしたが…如何に?」
「――如何にも。そう言うお前はランサーに相違無いな?」
「ふっ……これより死合おうという相手に尋常に名乗りをすることもままならないとはな。今日の俺は縛りがあったものだ。」
いい終えると槍を構えるランサー。
セイバーも自身の魔力でスーツ姿から召喚された時に身に纏っていた鎧を形成し剣を構える。
「セイバー……気をつけて。私でも治癒魔術位のサポートは出来るけど、でもそれ以上は……」
「ランサーはお任せを。ただ、相手のマスターが姿を現さないのは気掛かりです。妙な策を弄するかもしれない。注意しておいて下さい。アイリスフィール……私の背中は貴方にお任せします」
「………分かったわセイバー。この私に勝利を!」
「はい。必ずや!」
闇夜の中で剣を構えるセイバーと槍を構えるランサー。
お互いに素性を明かさないものの共に人類史に名を残すほどの猛者であることだけはすぐに分かった。
聖杯戦争第二戦――――否、第一戦が人知れず幕を開ける。
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「始まったな」
「始まりましたね。はいご主人様♪ 入れたてのお茶です♪」
「ん、ありがと」
セイバー対ランサーの戦いをお茶を飲みながら高みの見物をする俺たち。
今何処にいるかと言うと、この街の様々なところが見渡せる一番大きな橋の上に居座っている。
アサシンの脱落を聞き、大方覚えている通りに進んだことを確認した俺はひとまず安心し、次の戦いの舞台である街外れのコンテナ群がよく見渡せる場所へと移動していた。
用意した望遠鏡で戦いの様子を覗きながらキャスターが入れてくれたお茶を飲む。
ちなみに何故望遠鏡なのかと言うと、もちろん魔力で強化すれば見えないこともない。だけどこれからのことを考えると少しでも魔力は温存しておきたいのだ。いざという時に魔力が足りなくてやられちゃいました、なんて笑い話になっても語り継ぐつもりはない。
「街を一望できる場所で夜に二人っきりの男女。そしてそのまま二人はお互いに見つめあったまま顔を近付け……そして……キャアアアーーーーッ!! そんなご主人様まだ早すぎますって~! でもでもぉ、ご主人様がどうしてもっていうならぁタマモも吝かではないというか~むしろばっち来い! っていうか~~……ぐへへへへへ」
妄想の世界に走っているタマモ。まぁ、妄想するのはただだし本人が幸せそうだから……ほっとくか。
ちなみにタマモとはキャスターの真名である玉藻の前は他人行儀すぎるということで真名で呼ぶときはタマモで呼んで欲しいと言う本人のリクエストだ。
「ははは、楽しそうで何よりだよ……」
そう言った直後だった。
「! マスター!?」
「ああ! 上だ!!」
俺たちの頭上から稲妻が降ってきた。その全ては俺たちに直撃しなかったがその全てが魔力で形成されているのが分かった。
今の状況から魔力で出来た雷。十中八九魔術師かサーヴァントによるものだとすぐに理解し臨戦態勢を取る。
「AAALaLaLaLaLaLaLaLaLaie!!」
雲ひとつない空に迸る雷撃。その後に男のような声が響き渡る。警戒する俺たちの目の前に現れたのはチャリオットを引いた二体の牛だった。
だが、普通の牛ではないことは見てすぐに分かった。チャリオットを引いている牛は空中を駆けながら自分たちの上空に移動し、駆け巡ったであろう軌跡には雷が迸っていた。
チャリオットから二人の男が飛び降りてくる。一人は力強く着地し、もう一人は無理やり落とされてきたのか着地できずに橋に必死にしがみ付いていた。
でかい、それが二人が最初に感じた印象だった。
赤いマントを羽織り腰には短剣のようなものをぶら下げた男が俺たちを見つめて、にっ、と笑う。
「その出で立ちとこの気配……お前たちはサーヴァントとそのマスターで相違無いな?」
「その通りですけど……そちらは?」
「うむ、冷静に相手を分析するその気概真に見事だ!」
そう嬉しそうに言うと男は両腕を張りながら……
「我が名は征服王イスカンダル!! 此度の聖杯戦争においてライダーのクラスとして現界したッ!!」
――――自身の
ぽかーん……という音が聞こえたような感じがした。キャスターが呆気に取られる。まぁ、その気持ちは俺も分かる。事実俺も少し呆気に取られているからな。
聖杯戦争で呼ばれたサーヴァントが真名ではなくクラスで呼ばれるのには理由がある。サーヴァントは人類史の英雄を忠実に再現した存在だ。そう……それはもちろんその英雄の弱点や死因となったものまで見事なまでに再現されることになる。当然、自分のサーヴァントの弱点となるものを用意されたら戦いは一気に不利になる。その為にマスターは自分のサーヴァントの真名を隠す必要がある。
だというのにこの男……ライダーは自身の真名を大声で自分たちに告げた。
征服王イスカンダルとはかつてはアレキサンダーとも呼ばれ、その異名の通りこの世を本当に征服しかけたほどのマケドニアの大王の名だ。
「どうした? こちらは名乗ったのだからそちらも名乗り返すのが礼儀というものであろう」
「あ、ああ。俺は南雲零司。今回の聖杯戦争に参加したマスターでこっちがサーヴァントのキャスターだ」
「……キャスターです。お見知りおきを」
「何だ、そっちは己が真名を名乗らないのか?」
「あのですね、普通は真名は相手にばれない様にするものなんですよ。貴方ほどの実力者ならまだしも私はキャスターなんですよ? ただでさえ弱い弱いと言われているのに真名までばれたらもはや負けランキング1位の座になっちゃうじゃないですか」
「あ~……確かにそうだな。すまん」
「何か納得されると凄まじくむかつくんですけど!?」
何故か納得するライダーと怒るキャスター。まぁ状況は立派にカオスになりつつあるんだけど俺としては背後で助けを求めている声が気になってるんだけど……。
「た、助け! ていうか落ちっ……落ち?!」
「よっと」
「た…助かった~…って、か、刀っ?! かたっ、かた!」
「そう暴れるな。もちろん許可はちゃんと取っている」
不正にだけどな。そう思いながら限界が来たのか手を離して落ちそうになったライダーのマスターらしき人物を閻魔刀で助けて引き上げる。
「すまんなぁ……。こいつもお前さんみたいにこう高いところでも堂々としてほしいんだがなぁ」
「将来に期待するしかないだろ、そこは」
「人は地面に生活する生物だっての! こんな高いところに好き好んで上るわけ無いだろこの馬鹿ッ!!」
「ああ分かった分かった。こいつは見ての通り余のマスターでウェイバー・ベルベットという。騒がしい奴だがそこは大目に見てやってくれ」
「何勝手に自己紹介してんだよこの馬鹿は! っあいて?!」
ライダーに殴りかかって文句を言っていたウェイバーだがライダーからデコピンを食らって吹き飛んでいった。
「それで? 私たちの前に現れた訳は何です」
「な~に、あそこにいるセイバーとランサーの決闘を見るのにいい場所はないかと探していたらちょうどお前さんらがいたのでな。用事も兼ねてちょいとばかし相席させてもらおうと思ってな」
「一緒に見るぶんに関してはマスターがいいのなら私は別に構いませんけど……用事とは?」
「うむ。キャスター……それにそのマスターよ。いきなりだが余の軍門に下るつもりはないか? 下るのであれば余が聖杯を取ったあかつきには朋友として迎え入れ、聖杯を取った栄華を共に分かち合う所存だが……どうだ?」
嬉しそうにいうライダー。その雰囲気からどうやらその言葉に他意はなく本心から言っているのであろう事はなんとなく分かった。恐らく王が持つ妙な説得力のようなものなのであろう。
だが、ライダーには悪いけど俺たちはその聖杯を壊すつもりでいるから軍門に下るならともかく聖杯を使うのであれば協力は出来ない。
「誘いをかけてもらって悪いんだが俺には別に目的があるからお前の家臣になることは出来ない」
「私もです。私が尽くすと決めたのは他でもないこのマスターただ一人。どんな報酬を用意されてもそれだけは変わりせんよ~だッ!」
「そうか……まぁ無理にとは言わん。次はあそこのセイバーとランサー辺りに声を掛けるか」
俺たちの返事に残念そうにするライダー。どうやら俺たちだけでなく原作の通りほぼ全てのサーヴァントに声を掛けるつもりみたいだな。俺たちの隣に座るとそのままセイバーとランサーの戦いを熱心に見ている。その横顔は二人の闘気に当てられたのか若干嬉しそうだ。
相変わらず落ちないように体全体で橋にしがみ付いているウェイバーを除き、三人で用意した暖かいお茶と煎餅やキャスター一押しの稲荷寿司を食べながらセイバーとランサーの戦いを見ていた。
セイバーとランサーの戦いは両者の実力が近しいことからお互いに攻めあぐねていたがランサーが長槍の包帯を外したときにその流れは変わった。
覚えている限りでは確かランサーの宝具は魔力を無効化する槍と治癒不可の槍の二本だったはずだ。
どうやらその記憶は正しかったらしく、ランサーの宝具である長槍を開放しセイバーの聖剣に纏わせている風の魔力や魔力で形成している鎧を悉く無効化していく。
鎧の意味が無いと判断したのかセイバーが鎧を外し聖剣を構える。乾坤一擲。防御を捨て、攻めに出る気のようだ。風の魔力で加速を付けたセイバーがジェット機のように踏み込む。
しかしその時を待っていたかのようにランサーが足元に隠していた短槍の宝具を開放し、セイバーの左腕を切り付けた。確かあの槍の傷でセイバーは自身の宝具を封じられたはずだ。
そこまでいったところでライダーが困ったように動き出した。
「いかんなぁ……これはいかん」
「どうかしましたか?」
「ランサーの奴め、どうやら早々に勝負を決める気のようだ」
「なぁライダー……それってむしろ好都合なんじゃ?」
「馬鹿者。何を言っとるか。キャスターのように隠れてみている奴が出てこないかと待っていたがこのままではセイバーが脱落しかねん」
「だからそれの何が問題だっていうんだよ!」
「セイバーが脱落することが問題なのだ! よいか坊主。異なる時代の英雄豪傑と矛を交える機会など滅多に無い。それがこうして揃うとなれば一人たりとも逃がす手はあるまい。現にセイバーとランサー!! あの二人にしてみれば共に胸の熱くなるような益荒男ときた! 死なすには惜しい!!」
「死なせなくてどうすんのさ! 聖杯戦争は殺し合いなんだってば……って、あいたッ!?」
喋っている途中にライダーにデコピンされ再び吹き飛ぶウェイバー。吹き飛んだウェイバーを気に留めずにライダーは立ち上がる。ウェイバーに宣言するように――――俺たちに知らしめるように。
「勝利して尚滅ぼさぬ……制覇して尚辱めぬ……それこそが真の征服であるッ!!」
いい終えると同時にライダーは腰に携えている剣を抜き、怒号を上げながら天に向かって薙いだ。
剣から光る線のようなものが飛び出ると何も無い空間が裂かれたかのように割れ、奥から動物の鳴き声が響いてくる。
稲妻と煙が溢れると中からは最初にライダーが乗っていた二頭の牛がチャリオットを引きながら現れた。
ライダーの持つ『キュプリオトの剣』によって開かれた空間より現れるチャリオットを引いた二頭の飛蹄雷牛を差す征服王イスカンダルをライダーたらしめる宝具だ。
その原典はかつてゴルディアス王がオリュンポスの主神ゼウスに捧げた供物であったのを、ライダー……イスカンダルが佩刀で繋いでいる紐を断ち切って自らのものとしたとされている。
史実ではこのチャリオットを使えばマケドニアを征服できると予言され、その証拠にインダス川まで征服する事が出来たとされる。事実覚えている限りではライダーはこの戦車で聖杯戦争の殆どを生き残っていたはずだ。そして、直に目にしただけで納得せざるを得なかった。
マケドニアの征服王――――イスカンダル。
恐らくギルガメッシュがいなかったら間違いなくこの戦いで聖杯を取っていたであろう存在だ。
「見物はここまでだ。我等も参じるぞ坊主!!」
「ばかばかばかぁ! お前やってることデタラメだぁッ!!」
「気にくわぬのならこの場所に残って見ておくか?」
「行きます……連れて行け馬鹿!!」
「よし……それでこそ余のマスター!! ……で、お主たちはどうする。なんなら乗せてやってもよいが?」
「そうだな。いいって言うならその誘いにはぜひ乗らせてもらうか。キャスターもそれで良いよな?」
「ええ、もちろんです。二人っきりではなくなりましたが夜のランデブーと参りましょうか♪」
ライダーからの誘いもあり俺たちはライダーとあまりの展開に泣いているウェイバーと共にセイバーとランサーの元へと向かった。
これより聖杯戦争に参加する全てのサーヴァントが集結することになる。
そしてそれはつまり――――零司の知る原作の破綻を意味するものである。
話を区切るタイミングを見失わないようにしようとするけど予想以上に話が長くなってしまう……。
短いところと長いところの差が酷くなるときもあると思うけど温かい眼で見てくれれば幸いです。