Fate/Fox Chronicle    作:佐々木 空

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紙一重の理想

「……なぁ、騎士王。もしかして余の聞き間違いかもしれんが―――貴様は今『運命を変える』と言ったか? それは過去の歴史を覆すという事か?」

 

「そうだ。たとえ奇跡をもってしても叶わぬ願いも聖杯が真に万能であるならば必ずや―――」

 

続きを言おうとしてセイバーの口が止まる。口が……というよりもこの空間が止まっていた。

 

目の前にいるアーチャー、ライダー、そしてキャスターまでもが『何言ってんのこいつ?』みたいな目でセイバーのことを見ていた。何故そのような視線を向けてくるのか分からずセイバーも呆気に取られるしかなかった。

 

「えぇと……セイバー? そのブリテンとかいう国が滅んだとかいうのは貴様の時代の話であろう? 貴様の治世であったのだろう?」

 

「そうだ。だからこそ私は許せない。だからこそ悔やむのだ。あの結末を変えたいのだ他でもない私の責であるが故に…ッ!」

 

己が死んでしまっただけであればまだいい。王とはいずれ死にゆくものだ。

王が死した後、国が王の遺志を受け継ぎ繁栄してゆく……それこそ理想の国としての在り方だ。

 

しかし、先に滅びたのは故国(ブリテン)、先に死したのは自国の民たちであった――――。

 

自らが遠征に赴いていなければ、もっとうまくしていれば………様々な思いが駆け巡ったが、その全てに意味はない。何故ならば、そう思った時にはすべてが終わっていた。

目の前に広がっていたのは自分の息子と名乗っていた騎士。辺りに広がっていたのは自らと反逆の騎士(モードレッド)に付き従い死んでいった騎士の亡骸のみ――――。

皆元は同じ国の民であった筈であるのに、互いに殺し合い、そして死んでいってしまった。

 

 

―――――一体なぜだ?

 

考えるまでもない。

 

民が、国が、すべてが終わってしまったのは、他でもない国を統べていた王に責任があったからだ。

 

これらすべては王である自らが招いてしまった悲劇だ。

 

ならば、自分はこれを救わなけらばならない。

 

他でもない王自身が――――

 

 

 

「ハッ……ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」

 

 

 

「……アーチャー、何が可笑しい」

 

普通の人間ならば押し黙るほどの視線をアーチャーへと向けるセイバー。それも当然だ。

先ほどの自分が語った唯一つの願い……『故国の救済』を自身と同じ王が嘲ったのだ。しかし、その視線を受けてなおアーチャーは隠しもしないように笑い続けている。

 

「自ら王を名乗りククッ…皆から王と讃えられてッ……ヒヒ、そんな輩が”悔やむ”だと? ハッ! これが笑わずにいられるか!? フハハハハ傑作だ!」

 

「ちょっと待て。よりにもよって自らが歴史に刻んだ行いを否定するというのか?」

 

アーチャーを特に止めることもなく、ライダーが難しい顔のままセイバーに尋ねる。

 

「そうとも。何故訝る? 何故笑う? 王として身命を捧げた故国が滅んだのだ。それを悼むのが何故可笑しい?」

 

「ブハッ! おいおい聞いたかライダー! この騎士王とか名乗る小娘はッ…よりにもよって! ヒハハハハハハ『故国に身命を捧げた』のだとさ!」

 

「笑われる筋合いが何処にある? 王たる者ならば身を挺して治める国の繁栄を願うはず!」

 

「いいや違う。王が捧げるのではない。国が、民草が、その身命を王に捧げるのだ。断じてその逆ではない」

 

「何をッ―――! それは暴君の治世ではないか! 貴様らこそ王の風上にも置けぬ外道だぞ!」

 

 

「然り。我らは暴君であるが故に英雄だ。だが自らの治世を、その結末を悔やむ王がいるとしたらそれはただの暗君だ。暴君よりなお始末が悪い」

 

セイバーの在り方をは余りにもかけ離れているであろう在り方をライダーは咎めもせずに肯定した。国の為に王があるのではなく、王の為に国があるのだと。

 

その在り方をセイバーは許容することが出来なかった。

 

何故なら、そんなものは自身の理想とする王としての在り方とはあまりにもかけ離れていたから。

 

争いのない世界において繁栄を極めることこそ理想の国の在り方の筈だ。確かにブリテンにも数少ない闘争はありはした。だがしかし、その後には確かに平和と笑顔で溢れていた。

愛する者を、国を守ることが出来たのだ。たとえ今でなくともいずれ平和が訪れると信じて今を駆け抜けてきた。

 

 

だが、ライダーの在り方では民の心が休まる平穏が訪れることは限りなくなかったはずだ。

 

王の言一つで行われる略奪による闘争に次ぐ闘争………。いつ終わりが来るかもわからない闘いの日々であったはずのそれを果たして正しき王政を言えるのだろうか?

 

いや、言えない。言えるわけがない。

 

 

だと言うのに、このライダー()はその王政こそが正しきものだと言ってのけた………いや、断言した。

 

それがどうしても理解することが出来ない―――。

 

 

「貴様とて……世継ぎを葬られ、築き上げた帝国は三つに引き裂かれて終わったはずだ。その結末に何の悔いもないというのか? 今一度やり直せたらとは思わないのか?」

 

 

「――――ない」

 

 

「余の決断、余に付き従った臣下たちの生き様の果てに辿り着いた結末であるならば、その滅びは必定だ。悼みもしよう。涙も流そう。だが決して悔やみはしない」

 

「そんな――――!」

 

「ましてそれを覆すなど! そんな愚行は余と共に時代を築いた全ての人間に対する侮辱である!」

 

ライダーの言葉をセイバーは正しく理解する。ライダーは遠回しに告げているのだ。

 

『お前のやろうとしていることは、ブリテンの全ての人間たちを侮辱することだ』、と。

 

「滅びの華を誉れとするのは武人だけだ。救済こそ民の祈りだ」

 

「解せんなぁ。王による救済? そんなものに意味があるというのか?」

 

「それこそが王たる者の本懐だ! 正しき統制、正しき治世、すべての臣民が待ち望むものだろう!」

 

「………で、王たる貴様は『正しさ』の奴隷か?」

 

「それでいい。正しさに殉じてこそ王だ。人は王の姿を通して法と秩序の在り方を知る。王が体現するものは王と共に滅ぶような惨いものであってはならない。より尊く、不滅なるものだ」

 

「そんな生き方はヒトではない」

 

「そうとも。王たらんとするならばヒトの生き方など望めない。たかだか我が身の可愛さのあまりに聖杯を求めるという貴様には決して我が王道は解るまい。あくなき欲望を満たすためだけに覇王となった貴様には―――」

 

 

 

「――――ちょっといいですか。セイバーさん?」

 

 

不意に掛けられた言葉にセイバーとライダーの視線がお互いから声のした方へと向けられる。

アーチャーではないことは確認しなくともわかっている。あの傲慢なアーチャーがこんな丁寧口調で口を挟むわけがない。

 

聞くところに、女性の声であった。

 

この場でセイバー以外で口を挟む女性など一人しかいない………。

 

「……何用だ、キャスター。生憎だが、今は貴方にかまけている余裕はないのですが?」

 

「ライダーさんに力説しているところ申し訳ないのですが、少し尋ねたいことがあるんですよ」

 

 

見るからに不機嫌そうなセイバーの態度をものともせず、淡々と話を続ける。

ライダーはまだ言いたいことがある様子だが、キャスターを止めようともしていないので問題はないのだろう。

 

「貴方はライダーさんやそこの金ぴかのことを王の風上にも置けない、と仰ってましたね?」

 

「ああ」

 

「それは何故ですか?」

 

「知れたことを。自ら治める国と民を守ってこその王だ。だが、こいつらはその国と民とを守ろうともしていない。死した後に自らの国が滅びたと聞いても尚我欲を優先する者は王ではない」

 

セイバーの言い分も分からなくもない。

 

自分自身が何に変えても守りたかったものが目の前で滅び、終わっていった…………。その時の後悔、絶望は当の本人にしか理解しえないものであったのだろう。

 

だからこそ嘆いた――――。

だからこそ後悔した――――。

 

あの結末から、何もかもを救ってみせると―――――。

 

そこに至るまでにどれほどの道程があったのかは知らない。

 

だからこそセイバーはライダーを、アーチャーを王とは認められない。

国が滅びても尚、自分自身のために戦い続ける王を……認めることはできない。

 

 

「なるほど……一理ありますね。真の王様は我欲を優先せず、臣民の為にその身を尽くす……と」

 

「そうだ。治める国が滅びた……人々の争いによってだ。そんな悲劇があってたまるか。だからこそ私が救わなければならない。ブリテンの王たるこの私が――――万能の願望器を使ってッ!!」

 

「………なるほど。なるほど、なるほど、なるほど、なるほど~~―――――」

 

セイバーの言を聞き、うんうんと頷き、言葉を紡ぐキャスター。

ひとしきり頷いた後、目を開き――――

 

 

 

 

「―――あなた、何様のつもりですか?」

 

「―――はっ?」

 

 

―――一蹴した。

 

 

「悲劇? ああそうですね。当事者であるあなたから見れば悲劇そのものかもしれませんね。後一部の歴史学者もそう思ってんじゃないですかね? ぶっちゃけ私にとってはどうでもいいですけど」

 

「ッ!? 貴様! 我が故国を侮辱するつもりか!!」

 

キャスターの心底どうでもよさそうな感想に流石に呆気に取られていたセイバーも憤慨する。

自分の国のことをどうでもいいと言ったことはまだ許そう。だが、それを鼻で笑いながら言うのであれば、それは自分の故国の侮辱に他ならない。

今にもキャスターに掴みかかりそうなセイバーに、いえいえ、と言いながら制止する。

 

「侮辱だなんてとんでもない! ただかわいそうだなーって思っただけですよ? 歴史から見ても悲劇かもなーって思っただけです」

 

「ッ……その通りだ。だからこそ、その悲劇から皆を救うために私が………」

 

「はぁ~……だからそこが可笑しいっつってんですよ」

 

「何だと……?」

 

「悲劇から皆を救う、とあなたは説きましたね? では、あなたの言う民はあなたにお願いしたわけですね? ――――”自分たちを救ってくれ”と。”聖杯を使って自分たちを悲劇から救済してくれ”……と」

 

「っ……それは………」

 

キャスターの言葉にセイバーの言葉が詰まる。

 

「おやおやぁ~? 何狼狽えてるんですか? もしかして全部自分で考えてやってることなんですか?」

 

「! 当然だッ!! 王たる者であるならば民の為に――――」

 

「ではあなたは自分に付き従っていた騎士たちに、民たちにお前たちが必死に国を守ろうと戦ったことも精一杯頑張っていたことも全部無かったことにして救ってやる!! ありがたく思え!!! ……って、言えますか?」

 

「――――えっ?」

 

「その時必死になっていた人たちの意思を無視して、聖杯という名の都合のいいリセットボタンで全部無かったことにするつもりなんですか?」

 

「ち、違………ッ!!」

 

 

 

「いいえ違いません。貴方はやろうとしていることはそういう事なんですから」

 

 

最初の軽口のような口調はなりを潜め、淡々と話し続けるキャスターにセイバーは返す言葉を失っていく。

 

離れたところから全体を見ていた零司は今のキャスターの態度に少し疑問に思い見ていた。そして、気付く。今のキャスターの態度をたびたび見ていたのだ、と。

臓硯の願いを聞いた時。拠点に戻った後、自分の独白を聞いた時。召喚した神社での時。

抱いている感情はその都度違うのだろうが、纏っている雰囲気が似ているのだ。

 

「王が体現するものは尊く、不滅なるもの……とあなたは言いました。そこから間違っているんですよ。100年の栄華を手にした王国もあるでしょう。1000年続いた帝国もあるでしょう。しかし、永遠の理想郷など存在しません。生まれたモノは必ず滅びを迎えます。ただ、早かったか遅かったかの違いです」

 

人は生まれ、生きて、そして死ぬ―――。

 

嘗て、不老不死の秘薬を求めて旅をした英雄がいた。自分から生まれ出た蛇に若者を喰らわせ永遠を手にしようとした王がいた。竜の血を浴び、無敵ともいえる肉体を手に入れた剣士がいた。他にも数多くの人間たちが凡そ無敵とも不死身ともいえる力を手にした。

 

そして、その尽くが必ず終わりを迎えている。

 

不老不死の秘薬を見つけた英雄は目を離した隙にその秘薬を蛇に食われ、王は予知夢で見た通り人々の希望を携えたただの人間に討たれ、不死身の剣士は唯一の友に弱点を晒し、争いを止めるために自身を討たせた――――。

 

 

生きている者には必ず終わりが訪れる。

 

それは、人も、動物も、物も、植物も、――――そして、神も………。

 

「ッ…その通りだ。だからこそ私は……ッ!! せめて平穏が長く続くようにとっ!!」

 

「その結果がアレなのに、ですか?」

 

キャスターの話は止まる気配がなく、確実にセイバーの心に突き刺さるように説き伏せていく。じわりじわりと一つずつセイバーの心の拠り所を失くしていくように言葉が紡がれていくのを止めることが出来ない。

 

「ライダーさんも仰っていましたね。貴方の生き方はヒトではない、と。その通りです。貴方の言う救済とは到底人の為せるものではありません。だからこそ貴方はこの聖杯戦争に参加しているのでしょう? 人の為しえない所業を成しえるかもしれない聖杯を獲る為に」

 

人が英雄と言われるのは一体何時なのか?

 

それは到底不可能と言われる偉業を成し遂げた時だ。

 

人々を脅かす怪物を倒した時。圧倒的劣勢を覆した時。神々の試練を踏破したとき。

人によって千差万別だが、不可能を超えた者たちのことを人々は英雄と呼ぶのかもしれない。

 

しかし、そんな英雄たちも自分自身の死の運命から逃れることは出来はしない。何故なら『死』とは絶対なものであり、人として生まれたのであればいずれ来る『死』からは逃れることはできないからだ。生まれ、そして死ぬ………。どんな万夫不当の英雄であろうと、どんな知識を持った賢者であろうと『死』からは逃れることは出来はしない。

 

 

だが、もしもそんな絶対的な運命をひっくり返せるような者がいたら………?

 

 

人の……世界の運命をたった一人で覆すような者がいるのならば………それはもはや人ではない。

 

人の手に余りある禁断の聖遺物(アーティファクト)――――。

 

それこそが聖杯が”万能の願望器”と言われる所以だ。

 

 

「人の生き方ならざる道を選んだあなたが思い描いている救済の先に存在する理想は到底理想とは呼べません。『もしもああっていたら……』、『もしもこうしていたら……』と後悔したがゆえに思ってしまった、理想より遙かに遠く、ありもしない幻想よりもなお性質の悪い―――――妄想です」

 

 

「私は………」

 

 

「その辺にしておけよキャスター? あまり虐めると可哀そうではないか」

 

アーチャーの言葉で場の空気がほんの少しだけ変わった。

まさかここでアーチャーが口を挟むとは誰も思わなかったのか、視線が一気にアーチャーへと向けられる。言葉だけ聞けばセイバーへと助け船と取れるが、当の本人であるアーチャーが面白いものを見ているかのように、くっくっくと笑っていることから見るに堪えないものをこれ以上見るのは無理だったようだ。

 

もちろん、笑いを堪えきれないという意味の方であるが。

 

「何がおかしい…アーチャー……!」

 

「なに…少し見物だっただけだ。己の王道に苦悩するのではなく、王道そのものを他者に否定され迷子になった幼子のような顔になっていくお前の顔が、な……」

 

「っ!? 貴様ッ………!!」

 

「おいおい何だセイバー? 我は貴様に感謝される謂れはあっても剣を向けられる謂れは無いぞ?」

 

「こらこら、今宵は問答だと言っとろーが。口を開く場であって、剣を抜く場ではないぞ」

 

アーチャーの言葉に剣を抜くセイバーだがライダーの仲裁の言葉で悔しそうにしながらアーチャーに斬りかかろうとする剣を止める。

剣を向けられていたというのに、アーチャーの顔は今もにやにやしたままなのが、いちいちセイバーの勘に触る。もちろん、分かってやっていることは明白だ。

 

「……で、だ。未だに素性を明かそうともしないお前さんが聖杯に臨む願いは何だキャスター?」

 

「みこっ? 私ですか?」

 

「待てライダー! 私の話はまだ――――!」

 

「どことも知れんこやつに王道を否定され、答えられなかった時点で貴様の話は終わっとるわ」

 

「違いない……ぷふっ……」

 

ギロッ!! っと、擬音が聞こえそうなほどにセイバーが睨むが、アーチャーはそれすらも面白いらしく、未だににやにやしっぱなしだ。

 

「私別に王様とかではない平々凡々な一サーヴァントですけど」

 

「おいおい。ただの平々凡々の一サーヴァントが酒の飲み方を知っとるわけないだろーに。それにお前さん、アーチャーの酒を飲んですぐに普通の酒ではないと気付いていたであろう? ん?」

 

「………意外と目ざといですね。にしてもなんですか? 女性の肢体をじろじろ見るとかアリストテレスはそんなことまで教えてたんですか? あーいやらしい!!」

 

「いや、あやつの専門は文学や哲学でこれは余が人生の中で培った洞察力だ。そもそもアイツはあまり女に関心はなかった気がするぞ? 知識に愛情を注ぎこんでるような奴だったからなぁ……」

 

さて、と言い脱線しかけている話を無理やり本筋に戻し、話を進めようとするライダー。

 

「私は別に願いとかはありませんよ? というか、もう叶っています」

 

「ほう……如何様な願いなのだ?」

 

「私の望みは『ご主人様(マスター)に仕えること』。ご主人様(マスター)の手となり足となり、剣になり盾になる。ただ一途に付き従い、我が身が滅びるまでお仕えすることです」

 

「くっくっく………」

 

「………なに笑ってんですか、金メッキ」

 

先ほどと同様ににやにやするアーチャーに不機嫌な顔をするキャスター。

 

「人の手となり足になる、剣となり盾となる……と抜かすか」

 

「………それがどうかしたんですか?」

 

「なに……それが貴様なりの復讐なのかと思ってな。なぁ―――――もののけ(・・・・)?」

 

「―――――ッッ!!!!」

 

からんッ!! ……と、酒杯が落ちる音が庭に響き渡った。その衝撃で中の酒も一緒に零れているがそんなことはどうでもよかった。

いきなり立ち上がったキャスターが目を見開き、アーチャーを見ている。自らの酒杯が落ちたことを気にも留めないほどに、今のキャスターの心の内は混乱していた。

 

何故? どうして? 一体何時から?

 

聖杯戦争に呼ばれるサーヴァントは生前の姿を再現することからもし知り合いが他のクラスで召喚されていた場合、身体的特徴で真名を看破されることがある。

もちろん顔見知りでなくとも、特徴から大体の出自や出生を探り当てることもなくはない。キャスターとて、その程度のことは予測済みだし、正常な聖杯戦争(・・・・・・・)であればまず気付かれないであろうと思っていた。

 

真名だけであればまだいい。問題なのは、アーチャーがキャスターの根底の部分を指摘してきたことだ。

 

 

「我を誰だと思っている? 貴様のような雑種は腐るほど見てきたからな。少しばかり目に留まっただけのことだ」

 

「(……恐らくこの金ぴかが気付いたのは私の生態だけ。真名は知らない………というより、興味もないって感じですね。こちらとしてはありがたい事なんですけど………)」

 

―――正直、今のタイミングで言う必要はあったのだろうか。

 

いや、ない。

 

だが、この男は本当に目に留まっただけなのだろう。

 

人でないものが、人の生き様を否定することがあまりにも滑稽だったのだろうから。恐らく、そんな理由で指摘してきただけだろう。

現に今の自分は突然の横やりに驚き、咄嗟に身構えてしまったのだから。もし、平常時のキャスターであれば上手くはぐらかすことが出来たが、目の前であんな話を聞かされて少しばかりスイッチが入ってしまい、その虚を上手く突かれてしまった。

 

「―――全く。何ですか? 王様ってやつはロクでもないのしかいないんですか?」

 

「おいキャスター。復讐って一体どういうことだ?」

 

「何真に受けてんですか。復讐心何てこれっぽっちもないです。私にあるのは純度100%の献身とご主人様への(ラブ)のみです。なので私の望みはご主人様の望み。聞きたいならマスターから直接聞けばよろしいのでは?」

 

ライダーの質問を上手く躱し会話の流れを自分から零司へと変える。

 

「…………」

 

会話の流れから戦いというよりキャスター自身に不利になる可能性があるということを零司は何となくではあるが理解する。

 

普段はキャスターであれば、相手からどんな指摘をされようが冷静に対処していたであろうが、先のキャスターはいつもであれば想像もつかないほどに動揺していた。

 

キャスターのスペックを考えるなら真名の露呈は避けるべき案件だ。それにこの面子の気をそらすには超ド級の発言をしなければならない。さっきから自らの王道を語ったりしている連中に対して意識を向けさせるほどの発言などふつうは準備できるはずがない。

 

――――が。

 

 

「(ま、あるんだけどな。超ド級の案件(ばくだん)が)」

 

その辺に抜かりはなかった。

 

問題なのは何時その爆弾を投下するか、そもそも投下させてもよいかだった。しかし、このままでは通常の聖杯戦争が継続する可能性がある。そうなってしまえば、自分がこの戦いに参加している意味がない。唯一の利点が無くなるに等しい愚行だが、理想とする未来にするためにはこのままではいけない。

 

「という訳で、バトンタッチされた訳だが、平民の俺が王様の座談会に口を挟んでもよろしいので?」

 

「構わん構わん。どんな素性の者であろうと受け入れるのも王の度量であるからな!」

 

本当にこの男は………と、破天荒ながらもどこか嫌いになれないライダーの言葉を聞き思う。

周りに目線を向けるも、特に口出しがないことから他の連中も問題はないということなのだろう。

 

 

「んじゃま、発言させてもらうとするか。俺の場合は願いというより目的だけどな。俺の目的は―――」

 

 

この先の発言はこの戦いの根底を破綻させる言葉であることは明白だ。

予想だにしない連続が続くのかもしれない。

だが、やるしかない。

 

たとえそれが未知への挑戦であろうとも…………前へと進み続けるしかない――――。

 

 

「―――聖杯の破壊だ」

 

 

 

 




ギルガメッシュが気付いたことは、キャスターが人間ではない、という事だけです。それ以外は知らぬ存ぜぬって感じですかね。

プロトアーサーは不意打ち過ぎてびっくりしましたよ。ディケイドみたいなことやってんですね。完全に主人公ポジションですけど。個人的に女マーリンの中の人は川澄さんだと思ってます。

あー沖田さん欲しい…………。
ガチャでも早く新しいタマモナインやCCC組来てほしいなー。


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