夜半過ぎ、マザーベースのヘリポートから飛び立とうとする準備が進む中、人影の少なかったそこにオセロットが姿を現した。
「マサ村へ?」
「はい、オセロット。ホワイト・マンバ――いえ、イーライを我々で連れ戻しに行きます」
「――そうか」
オセロットは荷物を詰め込んでいく彼等の装備を見た。
ゴム弾仕様、非殺傷のいわゆる”子供専用”の武器ばかりだとひと目でわかる。ミラーは、どうやら子供というモノに幻想を持っているのじゃないか?
NGOをどうこう口にしてからの彼の言動も行動もあやしくなるばかりで、ダイアモンド・ドッグズの兵士達は戦場に命がけのトレーニングを強要され続けている。少なくとも、カズが少年兵がらみで任務を決定するとそれだけで兵士たちのうんざりした顔を見せ、士気は低下する傾向が見られる。
いくらこちらは回収という保護をするつもりでも、向こうにしたら少年兵という存在を狙って拘束してくるのと同義だ。必死に抵抗してくるし、こちらに向けてくる銃口が火を噴けば簡単に兵士の命を奪ってみせる。
この事実に不満を覚えない奴がいないわけがない。
今のところ、ダイアモンド・ドッグズからは死人こそ出ていないが。
怪我人は普通に出ているし、事故もおこっている。部隊でもそれをネタにまだ笑い話ですむのは、そのせいもあるだろう。
だが、それが破られて仲間の命が奪われた時、部下達はどうなる?これは違うか、彼らはそんな少年兵達を”どうしよう”とする?
あまり想像したくないことだった。
「なにか、ありますか?」
再びスクワッドリーダーに返り咲いたゴートは、オセロットの気持ちを読んだか先に聞いてきた。
「いや、ない。だが忘れるな、お前達が向かう先にいる小僧は。ビッグボスが自ら捕え、ここに連れて来られてからも暴れ続けていた問題児だ。この脱走も、暇をもてあました、ただのクソガキの悪戯というだけではないかもしれない」
「はい」
「そしてお前達の技術はボスの認めるところでもある。その”お前達”が戦場でしくじれば、次は当然だがビッグボスの出番だ。お前達は”ボスの露払いも出来ない”特別に無様な奴等、そういうことになる。わかるな?」
言われた意味を理解し、瞬時に彼らの顔が朱に染まる。
スクワッドの意義からいえばそれは屈辱的だが、否定できないことだった。マザーベースにビッグボスがいる時、もっとも長くともに訓練し、教えを受けているのだ。自分たちよりも優れたボスの兵士はいない、その思いが彼等の誇りでもある。
それを自ら汚すような真似をするわけにはいかない。
「――胸に刻みます」
「ならいい。”ミラー”副司令も気にしていることだ。さっさと家出小僧を連れ戻してこい」
飛び去るピークォドを見送りながら、これなら大丈夫だろうとオセロットも思うように努めていた。スクワッドに油断はそれほどあったとは見ていない。だが、今回は相手のイーライが気になっていた。
わずかに与えた数日の間に、イーライは村に近づくCFAの大人達を撃退していた。
その一部始終を見た諜報員は震えながらその時のことをマザーベースに報告してきている。
村に近づいてきたCFAの傭兵達の前にわざと姿を見せたイーライは、大人達を森の中へと引きずり込み。そこにしかけていた罠だらけの地帯に導いたのだそうだ。
獲物となって引きずり込まれた傭兵達は、無残にもあちこちで罠にはまり、まずは重症患者へと早変わりした。彼等のあげる苦痛の声に誘われた隊長が、第2陣を助けに出すと、さらなる犠牲者を生みだした。
彼らは結局戻らなかった連中をその場において、退却していったらしい。
置き去りにされた連中の苦しむ声は一晩中続いたが、夜が明けて太陽が昇ると。もうそこはいつもの静かな獣の声が時折聞こえてくる森に戻っていたそうだ。
オセロットもそれだけ聞き、目を閉じればその情景を思い浮かべることができた。
あのベトナムを思わせる戦い方、間違いなくあの戦場を知っているプロが教えた技術を、あのイーライは知っているのだ、と。
まだ暗いサバンナにピークォドから降り立ったスクワッドが頭を突き合わせる。
これが作戦前の最後の確認だ。
「マサ村では北と南側の出入り口から侵入する、西側の川沿いに出ることはないだろう」
リーダーのゴートがそう言うと新人のウォンバットが声を上げる。
「そんなに気にすることなんですか?確かに、医療班にいた時から噂は聞いてましたし、生意気な子供とは思いましたけれど。あんな風にオセロットが言うなんて――」
「甘いね。君や僕のような新人が言うことじゃない」
彼女の声をワームが冷たく切り捨てる。
支援班と開発班でとりあいをしていたと言われたこの若き兵士2人は、戦闘においても貪欲に知識を求め続け。知識を消化するように体を動かした結果、ビッグボスの興味を引くことに成功して今はここにいる。
「警備班の怯えぶりは嘘じゃない。オセロットが叩き伏せたというのも、別に偶然というわけではなさそうだし。そう考えると副司令が最初にビッグボスに任務を当てた理由も見えてくる」
「――あたしには見えないけど?」
「僕らには公開されてない秘密が、あの少年にはあるのさ」
「どんな?」
「もういい、やめてくれ」
若い男女2人の会話に緊張感をたもてなくなりそうでアダマが止めに入る。
技術的なことでいえば、彼が今のスクワッドではもっとも高いレベルにある兵士だと思われたが、彼は自分が部隊を率いていた時。スカルズとの戦闘で部隊を壊滅させかけたとの思いがあって今回はリーダーをゴートに譲っていた。
だが、そんなことは本人が思っているくらいだったので自然とここでは副隊長のようにふるまうよう仲間たちから求められている。本人もその立場にようやく慣れてきたようだった。
「川はいいんですか?」
場の空気を引き締めようとあえてアダマが聞いてくる。これは出発前にも頭をひねったことだった、最終確認なのだろう。
「ボスがホワイト・マンバを捕獲した際の報告書を読んだ。
あの少年は村に打ち上げられていた船の船室で寝起きしていたらしい。戻ったということは、やはり今もそこにいるだろう。
そうなると当然、意識を向けているだろうし、川は見つかれば船上から撃ち降ろしで好きにやられる。駄目だな、危険すぎる」
「そうですね」
そう言って確認を終えるとゴートとアダマで3人ずつに部隊は予定通りにわかれた。
2時間後、マサ村の中でお互いが合流することになる。
==========
かつてそこはCFAに配属される少年兵たちを鍛える場所でもあったというマサ村は、スカルフェイスによる声帯虫の感染エリアに指定もされていたことがコードトーカーの証言から判明していた。
そうした油田襲撃、奇病蔓延、少年兵蜂起と続いたせいだろう。
最近までこの村は無人のままだった。イーライがここへ還ってくる前までは。
ゴートが指示を出すと、フラミンゴがナイフを抜いてそっと部屋に飾られた絵画に触れようとして――その直前で指と刃先をピタリと止める。
「――あるのか?」
「ええ、やっぱりありました」
「触るな、戻れ」
息を吐きながら家の中から出てきたフラミンゴと、部屋の奥にいっていたワームがやはり青白い顔をして戻ってくる。
「信じられない。絵にまで罠がある」
「ワーム?」
「頭がおかしくなりそうです。台所もそこら中にトラップが。偏執的になってますね、でも無臭ではないので火薬の匂いが凄いです。隠すつもりがないとしか思えません」
村は要塞化されつつ――というよりも巨大な罠の見本市となりつつあった。
イーライが今、感じている孤独。
自分のまわりに少年兵がいないことへの不安なのか。
マサ村はびっしりと、あちこちに罠が仕掛けられていて足の踏み場がなくなっていた。だが本来、罠というのは仕掛ける側に気づかれないようにしなくてはならないはずだ。
この少年のそれは法則こそ守っているが、数がでたらめに多いせいで、ダイアモンド・ドッグズの兵士ならば嗅ぎなれた火薬の匂いがむせるほどあちこちに充満しているのでまったく存在を隠せていない。
(あの少年、狂っているのか?)
あまりにも見事な罠の張り方と、一方で妙に素人臭い。イヤ、恐怖心があらわれたかのように。
村のあらゆるものに罠を設置させようとするその襲われる側の恐怖を感じる精神状態を、正しく読むのは相手が子供とあっても困難だった。
ゴートはため息をつきかけ、それを飲み込むと情報端末を取り出す。
「アダマ、そっちは?」
『ハリアーを狙撃ポイントに置きました。少年に動きがあればすぐに仕留めろと言ってあります』
「それがいい」
『それもあって、こちらは正直進んではいません――その、ハァ』
「フフ、気持ちはわかるさ。とにかくミスをするな、怪我ではすまないぞ」
『了解、では後で会いましょう』
どうやらむこうもこちらと似た状況らしい。
扉に巻きつけられた手榴弾、壁に爆弾、床に地雷、落とし穴の底にはびっしりと尖った木の先を汚染土をぬりたくっていて、家と家の間をワイヤーが張られている。
かつての名残のように道の半ばで転がっているCFAの装備も近くに巧妙に隠された火薬に銅線がつなげられていて、触れれば指を失うだけでは済まないだろう。
これを見ればそれでわかる、プロの技だ。
経験が圧倒的に少ないが、豊富な知識を持ち合わせていないとこれはできない。
そしてイーライという少年はそれで敵兵が死ぬことを、どうやら構わないと考えているらしい。ゴートはかつての同僚達が、少年兵を化物だと忌々しそうに口にしていたことを思い出す。
そんな化け物を相手に、自分たちは非力な非殺傷兵器を持たされてここにいる。先日の酒場での騒ぎが思い出され、気持ちが沈みそうになる。
集中しなくてはならなかった。
こんな任務だからこそ、完璧にやり通さなくてはならない。
そして今はマザーベースに姿のないビッグボスのことを想った。自分たちが何事もなくこの少年兵を処理できれば。今は遠い異国の地で、冗談のような任務という名のバカンス中のあの人が戻ってきたときにこんな憂鬱な戦場に立つ必要はなくなる。
そうだった、出動のとき。オセロットもそう言っていたではないか!
先に進んでいたワームから、進めるとのサインが送られてくるとゴートはフラミンゴと共に泥の中を静かに進む。
イーライは夢うつつにあったが、ゆっくりと意識を回復させてきた。
いつの間にか今夜は彼の”王座”で眠ってしまったようだ。しかし傍らには、座り込んでいたはずの赤い髪の奇怪な少年の姿がない。どこかに出かけているのだろうか?
あいつは時にふらふらとさまよっているらしく、その間に何をしているのかイーライも知らない。優秀な部下だが、特別に頼りになるというほどではない。
部屋には新しく彼が用意した豚の生首が、汚らしいウジとハエをたからせ腐什を涙を流すようにたらしている。
彼の中の完璧な世界が再びここにあった。
だが、イーライは同じ場所に戻ってきたにもかかわらず。以前ほどの全能感を、ここで感じることが出来ないことに実は苛立っていた。理由はわかっている、あの男の海上の巨大な城をその目でしっかりと見てしまったからだ。
あれほど屈強な兵を従え、兵器を揃え、好きに世界に戦争しに行くのをみてしまうと。ここはどうしようもない小さくてクソみたいに貧相な豚小屋と同じ。
俺はこんなところで満足していたのか――。
だが、それも長いことじゃない。
計画がある。それはもうはじまっている。
全てが終わるとき、俺は新しい王国を手に入れる。その王国から兵を集め、あいつの――親父のあの城へ向けて進軍するのだ。
殺してやる、奪ってやる、全てをこの手で……。
空は暗いが、明け方が近いのはなんとなくわかる。
ブルーライトに照らされたような夜の世界は、まだまだ若い少年であっても死者の世界のそれを思わせる静寂がある。
その中をミシリ、ミシリ、と足音を忍ばせる。
俺の夢か?幻聴、フラッシュバックというやつか?心の中ではいまだ敗北への苦い思いを捨てられていないのか。
――ミシリ、カッ。ミシリ、カッ
俺の隣に、俺の言葉を乞う死神が進み出て声をかけてくる。
「王よ、次はだれを死地に追いやりましょう……」と――。
赤い髪の力だけはある部下に、俺は指示を出してやらなくてはならない。閉じられた重いまぶたに意識を集中する。
――あらわれるのは死神ではない。バラクラバマスク、あの男が着ていたのと同じ黒のスニーキングスーツ。
ダイアモンド・ドッグズのスーツを着ている!?
イーライは一気に覚醒を果たすと、席から飛び降りて山刀を抜き放つ。
あの日、明るい太陽の下で平然とこの場所にあらわれたビッグボスが再び現れたかと思ったが、今回は違う。下っ端だ。
「噂通り勘がいいな。良いセンスだ」
「……殺す」
「俺はビッグボスではないが――お前に俺は殺せない。お前が出来ることはなにもない。それでも抵抗するなら、怪我をするだけだぞ」
警告だと?子供扱いされた!?
カッとなった瞬間、左の後方から大人の腕が伸びてくるとイーライの腕に絡めてくる。
咄嗟に拘束を逃れようと山刀を諦めて手放し、跳ねて空中で前転すると、相手は転がった武器を蹴り上げるだけですぐにイーライの腕を諦めて離れていく。そちらの方を見ようとすると、今度は右後方から後頭部めがけて殴りつけられた。
(囲まれている!?俺を押しつぶすつもりか)
必死に意識をつなぎとめながら、イーライは正面から来た男に向かって脇目もふらずにいきなり走り出す。
左右、後ろの3方から囲んできているなら、それを脱出するには前進するしかない。奴もあの男の使う技をつかうのだろうが、そんなものにいつまでもこの俺が――。
驚いたことに、相手はあの男のように腕を差し出して構えはするが、とくになにをするでもない。
イーライは余裕でその体をかけのぼると、背後に着地して間抜けなそいつの背中を攻撃してやろうと思った。
だが相手の体を駆け上り、空中に走り出したイーライを、相手の背後にある影から飛び出したもう一人が。胴回し回転蹴りの要領で、空中で無防備になったイーライの腹にそいつの太い足が吸い込まれていく。
闇の中で空中にあった子供の体が床にたたきつけられると、少年が自分で用意した玉座の前へと転がった。
脱出を阻まれ、再び囲いの中に戻ってしまったイーライが片膝をついた瞬間。
新たにあらわれたゴートとアダマを含め、フラミンゴ、ワーム、ウォンバット達大人が。イーライ中央にして四方から攻撃を本格的に開始した。。
それを耐えようと手をかざせば、手をはじき飛ばした後で拳が顔にめりこみ。よろけると足の表と裏が蹴り上げられて膝を立たせない、距離をとらせない。攻撃しようとしても、腹や背中を狙って蹴りや拳が容赦なく叩きこまれていく。
これがゴートの作戦であった。
独自にCQCを攻略しようとした子供だ。悠長に優しく諭すように説得しているわけにはいかない。
不意打ちだと思わせつつ、一気に力でねじ伏せる。獣を調教するやり方ではあるが、この少年ならちょうどいい塩梅なはずだ。
また、失敗も許されないのだからこの場合は副司令の機嫌を損ねようと――死体となっても連れ戻せばいいというのが理由だった。
スクワッドはイーライを殴り殺すつもりなのだ。
冷酷な仮面の下でゴートは密かに舌を巻いていた。
ただの子供とは思わなかったが、闘争本能も並大抵のものではない。容赦なく4人の男女が一人の少年を殴り殺そうとしているのに、その全てをわずかにずらして受けてみせている。そうして意識を保ちつつ、こちらの連携の隙を探り、反撃を諦めていない。
その姿はあのビッグボスも顔負けだ。
はれあがっていく顔の閉じかけたまぶたの下では、こちらに向けて憎悪の炎が勢いだけを増している。
危険な敵だ。
保護するにしても、自分たちの側に手加減を許してはいけない存在だ。
そうは言っても、すでに勝敗は決しつつあった。
ついに4つんばいになったイーライの細い腹を、輪に入っていったゴートは思いっきり蹴りあげる。勢いを殺せずに吹っ飛んだ子供の体は、千切れた船の固い壁に叩きつけられるが、それで許されはしない。
ワームとウォンバットがすぐに距離をつめて崩れ落ちようとする少年に拳と蹴りを間断なく叩きこんでいく。
「よし、そこまでだ」
ゴートはイーライが意識をついに失ったのを見てとって止めようとするが、今度はウォンバットとワームが止まらない。
慌ててフラミンゴとアダマが2人を突き飛ばしてイーライから離すことで攻撃を続けることを辞めさせることが出来たが、なぜか辞めた2人はどっと疲れた顔を見せ。ウォンバットは「信じられない、このガキ!」と言って吐き捨てている。
2人を咎めず、ゴートはイーライの側によって調べると、それで理解した。
2人の攻めでついに意識を失い崩れ落ちた少年の手の中には鋭い形状をした自作のナイフが握られていた。あの壁際に叩きつけられた一瞬、どこからか隠していたナイフを手にしてあの2人に反撃しようとしたのだろう。
それを察したから、恐怖し、怒りを感じた2人は容赦なく攻撃を続けて止めろというリーダーの指示に従おうとしなかったのだ。
(見事だ。素晴らしい闘争本能だった)
ビッグボスが戻れば土産話として聞かせたいほど見事な少年の戦いぶりであったが、ゴートは仲間には絶対今日のことはビッグボスに話すなと口止めすることを、この時に決めた。
狂ってはいないようだが、しかし正気ともいいかねる。
少年が抱えている怒りと憎悪が、あまりにも激しすぎる。これではいつか限界が来て、自分でもコントロールを失い自滅しかねない。
「よし、任務は完了だ」
「回収したこの子は?」
「フルトンを使え、ヘリで暴れられても困る。副司令は気にいらないだろうが、ここまでは生きていた。フルトン回収で死ぬというなら、最初から抵抗したこの少年が悪い」
「了解」
「それと――支援班に連絡。この村はえぐれるくらい爆撃せよ、と。このままだと死の村のまま、再建はできない。
トラップがそこかしこにあって全て解除しなくちゃならないが。そのための暇も人員も出せないし、残しておいても、この子を回収したうちへの悪評となる」
「ミラー副司令は止めるでしょうね」
「意見は言っておかないと。この少年も、これで素直に罠を仕掛けた場所を全て教えるとは思えない」
「ですね」
アフリカ、この大地にはダイヤが転がっているといわれている。
だが、もしかして自分達はそこでとびっきり危険なダイヤの原石を――戦場で生きるために作られたかのような、恐ろしい子供を手にしてしまったのではないかと思えて仕方がない。
――ミラー副司令は、この少年をどうしたいんだろう?
イーライを回収し、ピークォドへの連絡を済ませると朝焼けの川へと5人は泳ぎだしていく。
この村の中をもう一度通って出ていくことはできない。今のここは少年の王国なのだ。民も、兵も、武器もないが。彼の意思がそこに村という形として残されている。
彼が存在を認めないものは死ぬだけの、幽霊の住む村だ。
3時間後、ダイアモンド・ドッグズは許可を下した。
そしてマサ村とよばれた無人の廃村が激しい爆撃を受けたという。それはそれは凄まじいものだったようで、村のあちこちには”奇妙に”抉れた穴がいくつも残っていたと周辺の者達は声を落して噂した。しばらくするとそんなことをした犯人の名が広まっていく。
ダイアモンド・ドッグズ。
あの恐るべき伝説の傭兵が率いるプライベートフォース。
過去とそして現在の戦場で伝説を生み出し続ける彼等の”新しい物語”は、そうやってさらに変化を繰り返しながらまたもや世界に波紋となって広がっていく。
また明日。