教えてやるだのと言ってはみたものの、スネークに出来ることなど実際にはなにもない。
彼等の勝利を信じて、それを口にすることしかできなかった。
だが、言われた方はそれでも十分であった。
尊崇するビッグボスに選ばれ、彼のかわりに重要な任務を任され、そして今は彼にこの不死の部隊とも思えるスカルズを倒してみるといいと励ましてくれた。
これ以上の援護など望むのは欲張りというものだった。
「スクワッド―リーダーだ。全員、これこそ俺達がやるべき仕事だ。なかなかない機会だ。楽しませてもらおう」
草むらに伏して、トラックの側から動こうとしないスカルズから目を放すことなくアダマは言葉を続ける。
「1人に2人ずつで当たる。だが、それにはまず目標から離さなければならない。どうする?」
「……後ろの2人は例の油田の入り口まで引っ張ろうか。どう思う?」
「シーパーの意見、賛成」
「採用しよう」
どうやら2人は処分は決まった。
「前の2人はどうする?」
「……こっちは仕方ないんで、素直に脇の地雷原にそれぞれデコイで引きずり込みましょう。あとは、実力で勝負かと」
「――他には?」
「リーダー、こっちは河岸まで誘い出してみる」
アダマは周囲を見回す。岩が転がっているが、ここは草が生えているくらいで身を隠せそうなのはそれぐらいだ。撃ち合いになるのは不利になるが、やるしかない。
しばらくすると、スカルズに動きが出てきた。
河岸と草むらの中から、どこかで聞いたことのある声がして。それに反応した2人が別々に動き出す。
開戦の一発は、ハリアーの狙撃銃から始まった。
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ハリアーとシーパーは同時に口の中で薬を噛み砕くと、道の真ん中で腰を下ろし。狙撃銃のスコープをのぞく。
距離にして100メートル強、彼等の腕なら問題ない。
後ろ側でカクカクしていたスカルズの頭部にそれぞれ射撃を開始する。同時に、向こう側でもスモークグレネードが2カ所で煙を吐き出し始め、本格的な戦いが始まった。
いくら距離をとって狙撃をすると言っても、一発では奴らは倒れないし。その強靭な身体能力で、お互いの距離を信じられない速さでつぶしに来るのはわかっている。
実際、2発目からは相手の体が岩のように表面がデコボコすると弾が着弾してもよろける程度しかできなくなっている。
それでも2人は動揺することなく、落ち着いて射撃を続けていく。スクワッドはすでに彼等の戦闘方法は知っていたし、一度はビッグボスは奴らに囲まれたところから自力で切り開くのも見ている。
そのビッグボスに「できる」と言われたら、やれませんでしたとは報告したくない。
それでもスコープに捕えたスカルズが消えた瞬間はさすがに焦った。
ハリアーは素早くスコープをのぞくのをやめて「敵、ロスト!」と声を上げる。その瞬間、目前の空中にそのスカルズがあらわれると手にした山刀を振り下ろしながらハリアーの上へと落ちてくる。
「来てるっ!」
隣のシーパーにそう声をかけながら、必死で横っ跳びでそれをかわす。素早くサブマシンガンを抜き放ち、倒れながら目の前のスカルズめがけて銃爪を引いた。
シーパーの方も警告を受けて気がついたが、彼の苦労はハリアーのそれとは比べ物にならない。返す刀で襲ってくる刃をかわすが、そこに自分が撃っていたスカルズが直立してあらわれると、ノーモーションで山刀を振り抜こうとする。
シーパーは狙撃銃でそれを受けることが出来たものの、ハリアーの攻撃に慌てた。彼女の攻撃に合わせてスカルズの皮膚が硬度を増し。はじいた弾があちこちに乱反射して、シーパーにも襲ってきたのだ。
「やめろっ!」
馬鹿女が、味方にとどめを刺されそうになるなんて冗談じゃないぞ!
河岸に移動したスカルズをオクトパスとワスプが襲う。
とはいえ、やはりすぐに相手の能力によって押し返されてしまう。油田の影響で汚染がすすむそこなら相手も動きが封じれるかと思ったが。実際は自分達がぬかるみに足を取られて動きを封じられているという始末。
こちらの動きが悪いのを理解したのか、スカルズのほうから接近してきて素手で攻撃してこようとする。それをかわすにしても汚土のなかを転げまわるのはできれば避けたい。
そのせいでオクトパスはスカルズのとび蹴りを銃身で受けてしまい、早々に壊して武器を失ってしまった。
(クソ、ハンデ無しかよ)
だがそんな彼に追撃しようとするスカルズの背後に、ワスプが迫る。
オクトパスはそのどちらも信じたくない気持ちで見ていた。スカルズは素手で自分を仕留めようとしていて、そしてそれを止めようとするワスプは――この女、絶対頭おかしい――ナイフを手にスカルズに背後からCQCをしかけようとしていた。
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アダマとボアに作戦などなかった。
体を隠して戦うようなスペースはそこにはない。動き回ったとしても、身体能力の優れたスカルズ相手では限界が見える。
ではどうするのか?
自分の周囲にスモークグレネードの特徴である黒い煙が勢いよく吐き出され続けても、スカルズは一向に慌ててはいなかった。油断なく先ほど捕えた人の姿を探し続ける。
と、草むらの向こうに立つ大柄の男の姿を見た気がした。
気のせいなどではなかった。なんとボアは、スカルズの前にいきなり仁王立ちすると。カスタマイズされた軽機関銃を構えている。
やるのはフルオートで、150発ものそれを一発残らずスカルズにくれてやる。そのために両脚は開かれ、重心は下げ、大地を力強く踏みしめていた。
霧の中のスカルズに向けた銃口が火を吹き始めると、さすがにスカルズもその威力に不気味なその体が翻弄されていく。
だが、当然だがそれは長くは続かない。
たちまち皮膚の表面を硬化させると、弾は突き刺さることなく固くなった岩のような皮膚にはじかれ始める。これはいつもおこなわれていたことだ。アフガンだけではない、どこでも根性を入れた奴が半ばやけをおこしてこうやってスカルズを倒そうとしたことは何十回もある。
だが、その全てをスカルズは生き残ってきたのだ。
攻撃される方向からボアの存在を確認すると、いつの間にかスカルズの手には彼ら用の銃が握られていた。そしていつものように片手で悠々とそれをかまえ、ボアにむけて激しい連射音とともに撃ち返していく。
すぐにスカルズは違和感を覚えた。
相手は相変わらず攻撃を止めないが、こっちだって攻撃を続けている。
つまりお互い弾丸のシャワーを浴びあっていることになる。そんなことがただの人間に出来ないことはわかっている。
スカルズは気がつかなかった。
ボアは確かに攻撃を続けている。だが、その彼の前にはアダマがいて。ダイアモンド・ドッグズ開発の防弾シールドで踏ん張っていたことを。
これは例えるならばチキンレースである。どちらが先に撃ち尽くし、先に死ぬかの度胸試し。
ボアは150発を撃ち終えると、素早くドラムマガジンを交換し。再び轟音を響かせる。
防弾シールドなどといっても、完璧にすべての弾を防ぎきることはできない。それはわかっている。
ボアもアダマも、顔色一つ変えずにこの狂気の特攻作戦を実行しているが。すでに盾の影にいても防ぎきれない弾が盾を貫き、彼らの皮膚を裂き、肉をえぐり、傷を増やし続けていた。
だが彼等のそんな恐ろしい気迫がこもっていたせいだろうか、スカルズのほうも皮膚の硬度は破壊されはじめていた。粉々になって固い岩がくだかれ、飛び散り。再びその体に叩きこまれる銃弾の嵐に翻弄されようとしていた。
スカルズ達の山刀攻撃から逃げ続けるハリアーとシーパーの回避能力は感心するものがあった。
特に味方の攻撃で足首とひざを撃ち抜かれたシーパーは頑張っていた。
四度襲ってきた刃をかわすと、今度はシーパーがショットシェルと呼ばれる散弾を発射するタイプのリボルバーをオセロット顔負けの早さで抜き放ち、全ての弾をスカルズに叩きこんだ。
その体から緑の血がしぶき、体から力が抜ける。
(やったか!?)
と喜びが湧くが、良く見ると足元はしっかりと力は抜けているが固まっていて倒れる気配がない。
(チクショウ、やっぱり死なねーんじゃねーの)
安心することなく距離をとっていこうとすると、やはり相手は再び肌を硬化させて襲ってきた。
2人は良く頑張ってはいるが、状況はすでにスカルズが優勢で。すでに仕留められにかかっているようにしか見えない。このままその時を待つしかないのだろうか。
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狂気の沙汰というのはこう言うことだと思う。
それを目にしたオクトパスもおかしいのか、浮かべている笑みは引きつっている。笑うしかないが、笑えない瞬間。それが今なんだろう。
ワスプとかいう女はアホだ馬鹿だと思ったことはないが、イカレているのは間違いない。
”あの”スカルズ相手に肉弾戦をやっていた。
振り下ろされた山刀は”ビッグボス”のようにその手から取り上げると、相手の喉笛につき立てて返品し。離れながらサブで持ち歩いているリボルバーを撃ちまくっている。
味方がそんな接敵ばかりするので、こっちは距離をとってもできることがない。
(俺もあそこに混ざるしかないって?)
恐怖、それしかないが。あの女、やりながら笑ってやがった。
ワスプはスピードローダーで素早く弾を入れ替えると、そこに自分の刀で喉を貫かれたままのスカルズの拳が襲って行く。
どう考えても勝負になんてなるわけがなかった。
ワスプは女達の中では一番小柄な奴だった。大きな体のスカルズの”体に触れないよう”にCQCの技術だけでしのぎ切れるようには思えなかった。
タイミングを計り、ある瞬間にワスプに「離れろ!」というとオクトパスはショットガンを撃ちながら近づいていく。ポンプアクションで6発、だがこれだけでは無理だろう。
素早く使えなくなった銃を放り出すと、後ろ手で荷物から例の奴を取り出す。
「このイカレ女っ――」
ああ、クソ。これが、こんなのがっ。
「お前、本当におかしいからな!!」
そういうと攻撃で動きを止めたスカルズの腰に素早くオクトパスはC4を複数くっつけると、自分の首をあの太い腕か足で薙ぎ払われて引きちぎられる前に、起爆装置をオンにした。
ワスプはついに、それもよりにもよって”味方”のせいで吹き飛んだ。
汚土の中を転がり、口に入るそれを吐き出しながらも意識だけは失わまいとする。
起き上がろうとして、それがかなわずにバランスを崩して再び転がってしまう。だが、焦る必要はないことはわかった。
彼女の敵と彼女の同僚だった奴の砕けた体がそこ等に飛び散っているをの見てしまった。
それにもうひとつ――。
「ビッグボス、こっちに来てくれないかな」
泣き言を言っても痛みは変わらない。
負傷した右腕から来るこの不快な激痛は、つい先日も味わったものとよく似ていた。
ハリアーとシーパーが転げ回っているのをさらに離れたところからフラミンゴとランスは見ていた。
彼等の準備はついに完了しようとしている。
「ランス」
アフリカーナの青年にそう声をかけると、彼は一つうなずいてライフルにマウントされたグレネードランチャーからスモーク弾を複数、彼等に向けて撃ちこんでいく。
その隣には、ンフィンダ油田の入り口に備え付けられていた2連装対空兵器に、熱源探知ゴーグルを装着したフラミンゴが座って動かしている。
最近のバージョンアップで、これは夜だけではなく昼でもそれなりに熱源を見分けられるようになっていた。
「退避!!!」
フラミンゴが声を上げると同時に、霧の中でおかしな動きをする2人めがけて肉眼でもとらえられるほど巨大な光弾が音を立てて飛んでいくのがわかる。
さすがにこれは圧倒的だった。
あっというまにスカルズの1人は体が砕け散り、もう片方も片腕を吹き飛ばした。
(勝った!)
とまでは思わなかったが、やれると思ったフラミンゴの隣に立つランスが。いきなり後方にはじき飛ばされる。
フラミンゴはゴーグルをしていたことをあとあと感謝することになる。頭部を破壊された味方が、中身を汚土のうえにぶちまけるのをしっかりと肉眼で確認するのは、やはりキツイ。
ミラー副司令が最近食堂のメニューに加えたがる魚の鍋料理が食えなくなる。
ゴーグルの先に捕えていた影が消えると、フラミンゴはそれを頭からはずして地面に投げ捨てた。
影と共に大地の土が跳ねあがり、次の瞬間には銃座に座る彼女めがけて片腕となったスカルズが飛び込んでこようとしていた。
だが、彼女はそれを読んでいた。
冷静に砲台の操作を続け、銃口を鋭角に持ち上げながらそいつを迎撃しようと試みる。
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スネークにとってそれは長い時間に感じられた。
わからないようにしたかったのだろう、向こうの様子は一切電波で伝わってこない。
『……ビッグボス、アダマです』
「スクワッドリーダーか!?――報告を」
『スクワッドはスカルズを撃破。これより、回収してマザーベースへ帰還します』
「そうか……よくやった、リーダー」
重い、厳しい難局を彼等は彼等の力で乗り越えてくれた。
これで士気は上がる。きっと、残る任務もやりきれるはずだ。
アダマもまた、肩の荷を下ろしていた。
これであの人はまだ戦える。自分達のこの勝利で、次の勝利をもぎ取ってくれるはずだ。
無線を切り替えると、喉の奥から溢れてくる不快な血を吐き出してから口を開く。
「副司令、アダマです……」
『わかってる。もういい、お前達はそこにいろ。あとはまかせろ』
「”荷物”と我々の回収は、ゴート班に」
『ああ、わかってる!すぐにお前達を連れ帰ってやる!』
優秀な人だ、きっと約束は果たされるだろう。
同じくそばで倒れているボアに声をかけようとして、彼が先に逝ってしまったと知った。
アダマは部下の様子を気にしていたが、確かめる力は残されていなかった。それでも自分達の勝利を全く疑ってはいなかった。
ビッグボス、我々は。
ただの人間である兵士が、あのスカルズを最初に倒すことに成功しました。我々はあなたと征く戦場、忠を……。
薄れていく意識の中で、アダマはなぜか聞こえるはずのない戦場へと近付くピークォドの羽音を聞き。そこにいる人に向けてずっと話し続けていた。
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スクワッドがスカルズとの戦闘に勝利してわずかに40分後。
ノヴァ・ブラガ空港では続いてCFAのトップとサンアール社なる背後にサイファーと繋がりのあるそこの社長との会談が始まろうとしていた。
ソ連製の攻撃ヘリから出てくるのは、サンアール社の社長。しかし、彼には別の顔があり。CIAの手先として世界の紛争地帯で商売をする武器商人でもあった。
「ようこそいらっしゃいました、社長。我らCFAの中部アフリカでの成功はあなたがたのお力添えがあってこそのものです」
「ああ」
そう言って握手を交わすCFAのトップの黒人と武器商人の白人の姿はどことなく滑稽にうつる。
「本日の視察の前に、先日のンフィンダ油田での騒ぎについて謝罪を」
「まったくだ。あのおかげで世界があそこに目を向けたので面倒になったよ。前時代の老人相手にやられるとは。正直、失望している」
「しかしその老人、ビッグボスという伝説の傭兵があそこを狙うといった情報はありませんでしたので。それに我々の間で交わされた契約では近代化された軍を相手に――」
彼等の今日の予定からいえば、それは謝罪でも何でもなく。世間話でしかないようだった。適当なあたりでさっさと直接それを見たいのだといって、2人は南北にひとつずつあるハンガーの視察を開始する。
どうやらサンアール社は新しい商品で市場を開くため、このCFAの施設を活用しようという腹づもりなのだという。ここから話題は一気にキナ臭いものとなる。
それによると、なんでもリーズナブルな核兵器のビジネスをするらしい。
そのあまりにもご都合的な計画を聞いて、CFA側のトップは呆れた顔をして見せる。
(内戦を互いに食い物にしておきながら。今更どちらが”正気”なのかを比べてどうする。偽善者共め)
カズは彼等の話を聞いていてそう心の中で唾棄していたが、表面上はいつもの冷静な仮面をつけていた。
奴等の話は終わろうとしている。もう、こちらもいいだろう。
「スネーク、オセロット。会談は終わりだ、はじめてくれ」
空港の西ゲートの先に広がる高原に風が吹き抜けると、そこに1人のカウボーイ姿の男が立っていた。
リボルバー・オセロット。
人は彼をそう呼ぶが。このアフリカで西部劇をしようとはどういう神経をしているのか。
彼が歩き出すと、続いてその背後には数十人からなるダイアモンド・ドッグズのスニーキングスーツを着る部隊があらわれていた。
オセロットが素早くハンドサインを出し、それを見た彼等は忍者のように再びサバンナに姿を消す。
本人はそのままただ1人で、空港の入り口から建物のロビーへと向かって歩き続ける。ただし、その手はすでに腰に提げたリボルバーに触れていた。
そしてもう一カ所、空港のハンガー内の影の中から立ち上がる男が1人。
伝説の傭兵ビッグボス、現在のコードネームはパ二ッシュド・スネークその人である。
マザーベースでの騒ぎを収めた彼は、とんぼ返りで現地へ戻ると。そのままCFAとサンアールの会談を盗聴すべく空港へ潜入。先ほどまで彼等が話していたそのすぐそばに身を隠して聞いていたのである。
伝説はいまだ死なず。
その信じられない高い潜入技術は、もはや芸術的と表現するだけでは足りなく感じるほど冴えわたっていた。
「クワイエット、DD」
静かに無線機に語る。
すると南ゲートを豪快に突破してDウォーカーとそれに続いて走るDDがハンガー内へと駆けこんでくる。すでに彼等の姿は確認され、空港内では侵入者をつげるサイレンが鳴り響いていた。
Dウォーカーから降りてきたのは驚いたことにあのクワイエットである。
スネークのためにわざわざウォーカーをここまでもってきたのであろう。スネークはうなづくと、代わりにDウォーカーの背にへばりつくように乗り込み。クワイエットは瞬時に姿を消す。
「いくぞっ!!」
声を張り上げると同時に今回のDウォーカーに搭載された電子放電砲なる光学兵器が唸り声を上げて攻撃の準備を始める。
空港内の滑走路から天に貫く光のビームを見て、オセロットはビッグボスが動き出したことを知った。
(戻ったばかりだというのに、元気な人だ)
だが、同時にオセロットはロビーから飛び出してきた2人の兵士を瞬時に抜いたリボルバーの2発できれいに倒してしまう。
それは敵や味方にとっても悪夢のような光景だっただろう。
走っていく男達が急にスイッチを切ったようにぐにゃりとなって地面の上を転がる姿など、不安にしかならない。しかも反対では、滑走路上でこちらと同じウォーカーギアのはずなのに。動きが明らかに違う一機がこちらのウォーカーギアどころか兵達を圧倒していっているという。
さらに異形の姿をした女狙撃手の姿を見たと主張する奴もいたが、その真偽はわからない。
この日、ダイアモンド・ドッグズによるノヴァ・ブラガ空港襲撃はほとんど一方的と表現していいくらいの強さをみせつけ、短時間で終了した。
防衛側の戦力が不足していたわけでは決してない。いや、むしろ充実していたと言っていい。
だが、たった2人の男と彼等に率いられた部隊を止めることが出来ず。
1時間と経たず、最終的に守備兵達を降伏に追い込んだダイアモンド・ドッグズは。彼ら全員を回収すると空になった空港をそのままにマザーベースへと戻っていった。
戦いは終わった。
この最大の作戦はダイアモンド・ドッグズに多くのものをもたらせた。
トラックの荷物はまだ解析が始まったばかりだが、4人のスカルズの遺体(?)は回収され。
サンアール社の社長の肩書を持つ男はサイファーのことは全く知らなかったものの、CFAの連中は何故か妙にこちらのことを気にいり。自分達を雇わないかと言いだした。
とにかく彼等はまたしても輝かしい勝利を手にしたことになる。
また明日。
(設定)
・アダマ
メキシコ生まれの男性。
わずかだが、モンゴル人種の顔立ちをしている。BIGBOSSの部隊、第2期のリーダーを務めた。
仕事大好きな軍人であった。だが、家族と仕事の両方を失い国を出る。軍にいたときに伝え聞くMSFのビッグボスの復活に引き寄せられてしまった。
自分にも厳しいが、それを他人にも求める傾向あり。
・オクトパス
南米出身のアメリカ人、男性。しかしたぶんだが、経歴はほとんど嘘だと思われていた。
警察の爆破処理にかかわっていたらしいことはわかっている。
何をどう間違ってこんなアフリカに来てしまったのか。よくわからない人。
・ボア
元ソ連兵。この部隊では一番体躯が丈夫であった。
口数が少ない、というより無口。個人的な趣味で野草で独自に薬物を精製していた。彼の死後、個人で育てていた草花は医療班が回収され、その後の研究に生かされたという。
・ランス
アフリカ出身の兵士、語学に優れ。英語、フランス語の他には地元の言語を8種類ほど使いこなした。
この部隊では一番若く、戦場での経験も少ない。だが、物覚えのよさと、機転の利くところなど。将来を見込まれて部隊への採用が決定された。