真実とは神罰、毒の味がする   作:八堀 ユキ

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分けるの面倒なので今日は多めに。



美女と野獣

 一緒に行動して見ると、クワイエットは意外に情感豊かな奴だということがわかった。

 たしかにまだこちらの命令には、完全に従う様子はなかったが。暴走するようなそぶりは見せていない。

 こちらが静かに任務を行えば、彼女はただ静かにそれを見守ることが出来るのもわかった。

 待機を命じられて苛立つと、こっちに銃口を”わざとわかるように”むけてくるし。どうやらスクワッドのお譲さん達の影響を彼女は少なからず受けているようにも思えた。

 

 一方、アンゴラの大地を5日間彷徨って、合計4人の男を追跡調査した結果が出ようとしていた。

 

 ノヴァ・ブラガ空港。

 かつてはこの国に訪れる人々を受け入れたであろう空港は、今ではPFによって占拠され。彼等のためにだけ離着陸を許されている場所となっていた。

 その広大な敷地は、これまで見たことのないくらいきちんと整備がされてはいるが。同時に監視の目も他と違って厳しいものとなっている。

 

「俺達はこの中から、たった一人の男を探し出さなければならないのか――」

『この件に関しては諜報班でも動くが、今は現場のボスの判断にまかせる。どうする、スネーク?』

「……」

「やりましょう、ボス!」

 

 声を上げるフラミンゴの顔を見て、ビッグボスとして問いかける。

 

「敷地はデカイ、監視の目は厳しい。やるなら複数が同時に潜入して始めるしかない。それもこの太陽が高い、真昼にだ」

「できます、私たちなら」

「この警備だ、失敗すれば外に出られなくなる。捕まれば終わりだぞ?」

「その時は助けてくれますよね、ボス?」

「――おい、フラミンゴ」

 

 こちらの顔を見ている3人の美女達にスネークは言った。

 

「俺は別に、”お前達だけ”に潜入させるとは言ってない」

「今、決まりましたよ。それなら私たちも安心して行けます」

 

 確かに、その技術は彼女達にはある。うまくやれるだろうが、だからと言って自分は外にいて彼女達だけをコヨーテの徘徊する巣に向かわせるような真似はすぐには決断できない。

 

「でも、ひとつ意見があります。あいつの力はいりません」

「……」

 

 フラミンゴの冷たい言葉はクワイエットのことを差し、他の2名もそれに同意しますと口に出した。

 

(嫌われたものだな、クワイエット)

 

 そしてビッグボスは決断を下す。

 

 

==========

 

 

 空港は中央に長大な滑走路をはさむと西と東にそれぞれ複数の施設を配置し。使われてるのか使われてないのかわからない、南と北に1つづつのハンガーがある。

 この全てを根こそぎ探索するとなると、かなりの時間と労力が必要で。太陽が照りつける下、監視の目をかいくぐって静かにこの中からたった一人を探し出すのは、やはり困難なのは否定できない。

 

 彼女達3人はそれぞれ西、東、南から侵入。

 警備で巡回している兵を中心に、伝説のガンスミスを見つけ出す手はずとなった。

 スネークはと言うと、空港から200メートルは離れた場所にクワイエットと別々に待機することとなった。この別々、というあたりが彼女達のクワイエットへの信頼のあらわれのようで、スネークにしても悩ましいものがある。

 

 

 ハリアー、ワスプ、フラミンゴの3人は、それでも優秀な兵士である。

 同性の候補者をブッチギリ、男達の頭を踏み台かわりに早々にビッグボスも認める優れた技術を持つ女傑達。

 一般兵に先んじて、スネーク同様に提供されたダイアモンド・ドッグズの漆黒のスニーキングスーツに包まれて、まさに黒い影となって敷地内を静かに進んでは捕え。話を聞いては、次に移るを繰り返していた。

 

 

 

 男は事務所から出ると、書類を手に2階の渡り廊下を進む。

 だが、角のあたりでいきなり向こう側から細い手が伸びてくると、こちらの腕にからみつき。そこから向うへと力強く引きこまれ、思わずバランスを崩しそうになる。

 そして気がつけば、蹴躓く寸前に誰かの腕の中に飛び込む形で受け止められ。体が拘束されているのに気がついた。

 

「なんだ?お前、誰だ?」

「あなた、『伝説のガンスミス』さんよね?」

「女!?」

「静かに――」

 

 気道をふさがれ、腕の複数の関節が一斉に悲鳴を上げる。

 

「わかった、わかっ……」

「質問に答えて。お弟子さんからの紹介。理解出来た?」

 

 すると男はそこで初めて笑顔を浮かべる。

 

「もうその名前は使ってねェよ。それにネエチャン。俺の弟子がどれだけいると思ってるんだ、百人から先は覚えてないぜ」

「あら、ずいぶんと吹くのね。その余裕が本物の証、じゃないとひどいわよ?」

「はァー、今度はどいつが俺の名前を言った?俺は関係ない、あいつら全員とは縁を切ったんだ。俺は関係ない、あいつらトラブルおこすとすぐに俺を巻き込もうと――」

「もういいわ、後で聞く」

 

 いきなり力が入ると、ハリアーはあっという間に男を絞め落としてしまう。

 プラチナブロンドの髪に手をやり「確保しました」と告げると情報端末を出してそいつの顔をマザーベースにも送る。

 それにしても――。

 

「んふっ」

 

 5日ぶりの男の体臭、そしてそれを自分の腕の中で絞め落とす感覚。

 自分が思った以上に欲求不満気味だったと知って動悸を抑えようと胸に手をやり、頭にはしっかりしろとカツを入れる。

 マザーベースよりカズの「任務完了だ、離脱してくれ」の報告を聞く前に。彼女は男を担ぎあげると、空港の外へと進路を変えた。

 

 

 丁度、捕えた男を尋問していたワスプは「任務完了」の報告に心の中で舌打ちする。

(しまった、あっちにいたのか)

 東側から侵入した彼女は、滑走路脇にいる兵にあたりをつけていたのだが。まさか反対側に本人がいたとは、これも運がない。

 

「おい、あんたっ」

「なんだ?」

「あんま言いたくないんだけどよ。ちょっと、匂うぜ。臭い、ホント」

「うるっさい!」

「あんたに捕まる前も、プーンって――うおっ」

 

 尋問を止めてさっさと落とすことにした。

 5日間もサバンナを放浪したこともあり。たしかに5人の体臭はきつくなっていた。

 だが、水資源が汚染された地域のそばでは気軽に川や湖の水を使うわけにもいかなかったのだから仕方がない。今回、ボスがすぐに決断しなかったのも、これのせいなのかもしれない。

 

 あとおちるまで残り2秒、そんな時だった。

 ワスプの背後にあるトイレのドアがいきなり開くと、ポルノ雑誌を手にした男が出てきた。

 気絶しかけている男と、その背後にすがりついて絞めあげている黒衣の兵士。男が一拍おいて、声を上げるのと同時にワスプの腕の中の男は意識を失ってグニャリと地面に横になる。

 

「敵襲だ、敵襲ー!!」

 

 空港内に音高く敵発見を告げるサイレンが鳴り響く。

 

 

==========

 

 

 空港内のサイレンと中にいる人が騒がしくなるのをスネークは確認すると、無線機に手をやる。

 

「全員、状況を報告せよ」

 

 フラミンゴ、ハリアーはすぐに返事があったが。遅れたワスプは息を切らせながら「自分です。すいません、ボス」と言ってきた。

 スネークは2人にそのまま離脱して合流地点を目指せと命令すると、情報端末iDroidを取り出してワスプの位置を確認する。

 

(北側に流されている。追い込まれるな、時間はそれほどない)

 

 望遠鏡をのぞいて東側のゲートを見ると、すでに兵士がそこを封鎖する動きを見せているのがわかる。

 助けに行くにしても、あそこを強行突破していてはワスプは生きてはいないだろう。

 

「クワイエット」

 

 自然に命令が口から出ていた。

 

「空港内を偵察、ワスプを見つけたら彼女のところへ。”俺が行くまで”守れ」

 

 クワイエットは遠くにいるはずのビッグボスの背中を一瞬だけじっと見たが、すぐにその姿は消えると。力強く大地を蹴り上げて空港に向けて突進を開始する。

 

「オセロット!例のモノを」

『わかった、ボス。すぐに用意する』

 

 

 

 空港北部にある並ぶコンテナの影にワスプは転がり込んでいた。

 利き腕の右が穴だらけにされ、結構気に入っていた細い指も何本か折れている。

 どうやらここでは暴徒鎮圧用のゴム弾をつかうショットガンも用意されていたらしい。走り出したとたんにぶつけられ、転がったところをライフルで狙われた。

 胸や腹にも貰ってしまったが、スーツがそれを軽減してくれていることを今は祈るしかない。それにここまで走ってこれたんだ、きっと大丈夫。

 

 とはいえ、状況はどうしようもなく不利だった。

 この空港は侵入してはじめてわかったのだが、東西のゲート以外の出入り口は封印されているようだ。それ以外から侵入するなら簡単には出れないようになっている。

 そして奴等はこっちの動きがわかっているのだろう。先ほどからコンテナの反対側に着弾をつづける弾の数の多さには背筋が凍る。

 

(こんなところにボスを来させるわけには――投降するか?私)

 

 きっとダイアモンド・ドッグズはすぐに救助に動いてくれるだろう。その間は、まぁひどいことしかされないだろうけれど。少なくとも仲間が逃げる時間くらいは稼げないだろうか?

 

 ドカン、と彼女が身を隠すコンテナにいきなり強い衝撃があって驚き。思わず見上げると、そこにあいつの顔がこちらをのぞきこんでいた。

 

「――クワイエット!?」

 

 相変わらず向こうは黙ったまま、しかしすぐにその姿は消え。また先ほどの着地の衝撃が、地面を伝ってワスプの尻に感じる。

 慌ててコンテナの影から覗くと、あの女。よりにもよってコンテナの前にある信号塔の上に腰をおろして射撃体勢をとっている。

 嘘、嘘だよね?

 

 まったく嘘じゃなかった。あの化物女、平然とこちらにむかって撃ってくる建物めがけてあの夜と同じように、やっぱり攻撃を開始してみせたのである。

 

 ワスプもそうなると隠れているわけにはいかなかった。

 左腕で無理にライフルを地面に押し付けるようにして構えると、狙いなどつけずに滑走路の向こうにある建物めがけて撃ちまくる。地表の、それも狙わないで飛び出していく弾丸は放物線を描くから届かないかもしれないが。なにもしないで、敵にクワイエットを狙わせるわけにはいかなかった。

 それでも弾倉の30発を瞬く間に撃ち尽くすと、痛みに顔をゆがめながら弾倉を交換する時間がもどかしい。

 

 反撃された側も黙ってはいなかった。

 対空用にと設置された大口径のガドリングが動き出し、クワイエットを確認して攻撃を開始する。

 

「クワイエット、逃げなさいよ!」

 

 ワスプはまだ終わらないマグ(弾倉)交換に苛立ちつつ、声を上げるが。クワイエットは動かないまま射撃を止めようとしない。

 

(そうだった。あいつ、こっちの話なんて聞きやしないんだ)

 

 あいつとここで討ち死にか。悪くないかもしれないが――いや、最悪だ。死ぬ前にビッグボスに求婚していないのが特に最悪。彼女はかなり重度のファザコンであった。

 クワイエットは黙っている。

 彼女めがけて飛びかかってくる弾丸は、時に彼女の足の肉を切り裂き。腕の肉を抉るが、苦痛にあえぐそぶりも見せずに淡々と射撃を続けている。

 自分に向かって大口径のそれが飛んできても、彼女は冷静に狙いをつけて撃つだけ。銃座に座っていた男の頭が爆発し、体は座席から跳ね跳ぶように後ろに転がり落ちると。地面にはそいつの目玉と脳味噌だったものがぶちまけられた。

 

 クワイエットは射撃を止めない、この任務は続けている。

 

 

 その不快な金属音はいつからしていたのだろうか?

 地面を斬りつけた歯車のような音のその正体をワスプはわからなかった。

 だが、同時に聞こえてくるものはわかった。

 

ゥゥウウオオオオオォォ――――!!

 

 それは鬨の声なのか?

 太古の戦場で、将軍が突撃していく中を共に征く部下の戦意を奮い立たせようとするあの声。

 ワスプの体に頭の先から足の先まで震えが走る、腰が抜けそうだ。

 その声が終わらないうちに、封印されていた北ゲートをつきやぶってあらわれたのはあのヒューイがビッグボスにといって用意したDウォーカーであった。

 黄色の目立つ車体に装着したガトリングの発射準備をしながら、あの機械音と共に滑るようにコンテナの裏に回りつつ。迫ってきていた重装兵たちを豪快に薙ぎ払っていく。

 

(あんなことをいったが。こいつ、意外とやるじゃないか。ヒューイ)

 

 本人には決して伝えることのない感想と共に、ワスプの前に来て急停止するとスネークは飛び降りてくる。

 

「すいません、ボス。ほんとうに……」

「クワイエット!東だ、東のゲートに行け」

 

 ワスプの謝罪を無視して、声を張り上げて指示を出す。それまで動かなかったクワイエットはやはり黙ったまま、そこから姿を消した。すぐに、離れた東ゲートの方角から彼女のライフルの銃声が聞こえてくる。

 

「あいつ、やっぱりわざとこっちの話を聞こえないふりをしてっ」

 

 忌々しそうにいうワスプの傷の判断が難しい。

 素早く取り出した包帯で、折れた指がひどい状態の右手に巻きつけると。スネークは彼女の頭をいきなり両手で挟んだ。

 

「ワスプ、よく聞け」

「ふぁ、はいっ」

「俺の乗ってきたこいつでお前は東ゲートから脱出しろ。クワイエットが今、道を開いている。合流地点まではなにがなんでもたどりつけ。サバンナで寝られると探す手間がかかる」

「えっ、ボスはどうするんです!?まさか」

「開発者の話じゃ、こいつは1人乗りだ。ペアで乗れる仕様がほしいと、戻ってから開発班に言うんだな」

 

 そういうと多くを語らせずに追い立てるようにDウォーカーの背に乗せる。

 

「右手がそんなじゃ、こいつのガトリングは撃てん。とにかく突っ切れ、わかるな」

「……はい、ボス。またあとで」

「いけェ!」

 

 声を上げると同時に、スネークは背中のPSG-1を手にすると歯に挟んでいたカプセルを噛み砕いた。

 銃声と怒号が鳴り響く戦場が、静かに思える。

 薬物によって即効で集中力をたかめているのだ、ライフルはリズミカルに火を吹く。

 

 空港側のPF兵達も混乱の中にいた。おかしな狙撃兵が目の前にあらわれたと思ったら、それがいなくなったのに相変わらずこちらへの正確無比な射撃が続いている。

 その間にも、おかしな機械に乗った兵が東ゲートを突破したと知らされ。残っている奴を必ず捕えろと、周辺の味方にも応援を頼んだ。

 

 結局彼等は、ある時点で反応がなくなったと気がつくと。一気に包囲の輪を狭めてそいつをみつけようとしたが。その姿はどこにもなかった。

 そんなわけはないと、怒ってヘリまで持ち出し周囲の捜索を続けるが。

 結局、翌日になってもなにもでないまま、そこで逃げられたのだろうとようやく納得した。

 

 事実、スネークはあの後すぐにこの空港から離れていた。

 自分はまだ北側のコンテナの影にいると信じている兵達の目を掻い潜ると、人のいなくなったがら空きの西側ゲートから悠々とサバンナの高原へと走り出していった。

 伝説のビッグボスの名は伊達ではないのだ。

 

 

==========

 

 

 ワスプはちゃんと合流地点で先に待つ仲間達のところにたどりついていた。

 ハリアーはその傷口を改め、フラミンゴは不快な折れかたをしている指を元に戻し。ワスプはその痛みにうめき声をあげた。

 気がつくと、彼女達の側にクワイエットがいて。周囲の高原に影はないかと油断なく見回していた。

 迎えのピークォドが「到着まであと5分」を伝えた頃、ビッグボスもここにたどり着く。

 

「ワスプの怪我は?」

 

 医療の知識を持つハリアーは素早くこたえる。

 

「腕は手術が必要ですが、致命傷ではないと思います。ヘリに血液バックなどがありますから、あとは寝かせられればマザーベースまでは大丈夫なはずです」

「寝ないのか?」

「興奮状態で、どうにも」

「そうか――なら、これを試してみるか」

 

 そういうとスネークは腰に吊るしたグレネードの1つを手に取る。

 

「開発班の睡眠グレネード、だそうだ。ガスを吸った相手の意識を失わせて睡眠状態にするらしい」

「ああ、使えるかもしれません」

 

 悩んでいる暇はなかった。ヘリが来れば急いで離れないといけないし、そこではやれることも多くないことはわかっている。興奮状態になった患者には静かに眠ってもらうのが一番なのだ。

 

「ワスプ、聞こえるな?」

「ボス、無事でよかったです!」

「お前には眠ってもらわなきゃならん。睡眠グレネードで強制的に眠らせる。いいな?」

「――おこしてくれる時は、キスしてくれます?」

「おい、ふざけている場合じゃ――」

「思い残しがないようにしたいので、いいですか?」

「なんだ?」

「ボス、さっきの救出。濡れました。帰ったら自分とすぐに結婚してください」

「お前のプロポーズは聞いた。返事が聞きたいなら、いい子にしろ」

 

 そう言うと全員にその場を離れろと言い。大地に寝かせたワスプの側にグレネードを置いて自分も離れた。興奮状態はそのままだったが、ワスプは離れていく足音の後で大きく息を吸って吐いてをくりかえすようにする。何かがシューッと音を立てているのが聞こえて。彼女はすぐに意識を失い、眠りに落ちた。

 

 

==========

 

 

『ボス、マザーベースに到着します』

「医療プラントの3番へ。あそこで手術の準備がされている」

『了解』

 

 向かいあって座るクワイエットはわざとなのだろうか。こちらの視線を避けるように、ずっとヘリの操縦席を見ている。

 そしていつも自分が座る席を、3人ですわるスクワッド達が口を開く。

 

「ボス、今回のサバンナツアー。なんだかんだで楽しかったですよ、いい経験と勉強になりました」

「そうか?まぁ、俺も楽しかったハリアー。お互い良かったということだな」

「なにいい子ちゃんしてるの、ハリアーは?ロマンス、美女とのロマンスが欠けてます、ボス」

「お前は少し黙ってろ、フラミンゴ。その方が美人だ」

「ちょっとー、あんたも素直になりなさいって!」

 

 苦笑できるのも気が緩んできた証拠だろう。

 ところがクワイエットは席を立ち、扉を開けるとこちらが何か言う前になんとそこからヘリの外。空中へと飛び降りた。

 

「クワイエット!?」

「えっ、えっ?」

「……照れたんだろう、安心しろ。自殺じゃない。先に降りて戻ったんだ」

 

 なぜかそうスネークはそう口にしていた。クワイエットの気持ちがわかったような気がしたからだ。

 オセロットに報告してやらないといけないだろう。奴のもくろみ通り、どうやら自分とクワイエットはいい相棒になれそうだと、その手ごたえを感じることが出来た。

 

「あいつも、少しはいいところがあるのかもしれませんね」

「そう思うか?なら、優しくしてやれ」

「――駄目です、ボス。それには条件があります」

「条件?なんだお前もか」

「男共の選定なんてやめて、私達とあいつでスクワッド結成にしましょう!名前もつけて」

「ほう、眠り姫と従者達。とか?」

 

 ワスプは眠っている。それを指しているのだ。

 

「は?こんな女、寝てるだけです。それより『美女と野獣』はどうでしょう?」

「ビューティー・アンド・ビースト?おれが野獣か」

「いえいえ、野獣はあいつ、クワイエットで。ボスは私達の仲間に入れてあげます」

 

 ピークォドが次第に高度を下げていくのを感じる。

 

「悪いがお譲さん達。俺はこの年齢で女装はできんよ。さぁ、降りるぞ!」


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