真実とは神罰、毒の味がする   作:八堀 ユキ

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本日は少なめ、明日から本気出す。


静かな狙撃手 (1)

 数日後、ビッグボスを中心にカズヒラ・ミラーとオセロットはブリーフィングを開いていた。

 あがっている議題はヒューイ救出任務についてである。

 

「だが考えると意外に問題が、多くあることがわかった」

 

 オセロットが口火を切った。

 

「情報によると、このヒューイがいるのは北部の山岳地帯。そのなかにあるソ連軍の電力施設内部からということになる。ここらの情報は秘密が多い、だいたいこんな場所にこれほどの大規模の発電施設が必要な理由がわからない」

「つまり、サイファーの何らかの施設が近くにあるのではないかということになる」

 

 スネークが質問がある、と言った。

 

「そもそもなんで、ヒューイが俺達に救助を?」

「わからない、まったくな。

 だが、どうやらスカルフェイスのもとで研究しているものが最終段階にあるらしいというから、その関係があるのかもしれない」

「兵器の開発か」

「思えば、奴はMSFでも同じことをしていた。スカルフェイスの手に落ちてからも俺達にやったように、くだらない兵器を生み出して提供しているのだろうよ」

 

 カズの口調には苦いものが混ざっている。

 MSFの壊滅に、手を貸した奴。カズにはそう思えて仕方ないので、憎悪せずには居られないのだろう。

 

「とにかく、だ。しばらく前からダイアモンド・ドッグズ宛のメッセージを受け取っている。

 差出人はヒューイとMSFで呼ばれていた科学者。罠の可能性があるから表面上、わざと放ったふりをして探っていた。むこうはそのせいで不安に思ったのか、現在の自分の状況について知らせるようになってきた」

「それで思い出したことがある。スネーク、アマンダを覚えているか?」

 

 その名前には覚えがあった。

 南米、コスタリカの元反政府軍のボスだった女性であり、ヘリの墜落で死亡したチコの姉でもあった。

 この時代、コスタリカは革命を成功させ。アマンダは英雄として新政府で働いているのだという。その彼女に、ヒューイと共に消えたストレンジラブと名乗るおかしな女教授が接触を求めてきたことがあった。

 

 そのことを思い出して、カズはヒューイとストレンジラブはスカルフェイスのところに。サイファーと手を組んだのかも知れないと、かなり強引にこじつけ、断言した。

 

「実は、他にも問題がある。ボス、まえに狙撃手の話をしたのを覚えているか?」

「ああ」

「実はあれからも諜報班は調査を勧めていてな。かなり興味深いことがわかってきた」

 

 そういうと地図を取り出す。ここ最近、そいつがおこした事件の場所について調べた結果。おもしろいことがわかってきたのだという。

 狙撃手の出現範囲が狭まってきているらしい。

 

「あんたの白馬を狙い撃ったという位置は、実はその近辺でもあった。あんたはあの作戦中、うっかりそいつのいる場所に近づいてしまい。だからこそ――」

「狙ってきた。サイファーの殺し屋だ、間違いない!」

 

 カズはまたしても、いきなり断定する。

 オセロットはそれを横目で冷ややかに見つめているが、自分の意見はないというように。そこには触れなかった。

 

「ふむ、とりあえずこういうことだな。

 ヒューイの救出には、この静かな狙撃手との対決がもれなくセットでついてくる、と」

「加えると、ボス。そいつは無差別に要人も襲っているらしい。あんたの名前も、そいつの持っているリストに間違いなく載っているってことだ」

 

 スネークはそれには何の興味も示さない。

 別のことを気にしていた。あの日以来、彼の中にいるイシュメールはあまり出て来てくれなくなった。

 彼はそこにいる。だが、任務中の自分のように。以前よりも圧倒的に口を開いて話しかけてはくれない。

 今回も未だに出てきて何か助言を口にしてくれることもなかった。

 

「ボス?」

「考えてみても、名案は生まれないものだな」

「なんとか奴を封じ込めないか、とも考えてはみたのだが――」

「いや、オセロット。そうじゃないだろう」

 

 そういうとスネークはニヤニヤしながらオセロットを見ている。まるで「ほら、さっさと早く言えよ」といっているようで、カズは「なんのことだ?」と聞かざるを得ない。

 

「情報をまいたんだろう。俺がそこへ近づこうとしていると、だいぶ前からな」

「なにっ、オセロット。どういうことだ!?」

「責めるな、カズ。それよりもよくやった、オセロット。そいつのリストに俺の名前はちゃんとあったと、そういうことなんだろう?」

「――食い付きが凄かったのは認めよう。まさかこれほどはっきりと、こいつがあんたをマークしてくるなんて。想像もしていなかった」

「いいさ、謝ることじゃない。つまり俺達の計画も、よりシンプルで行くしかないというだけだ」

「ボスッ!?」

 

 机の下から本物の葉巻を取り出した。

 やはりいつも偽物では、味気なく感じるものだ。そして時には本物を味わいたくもなる。

 火をつけて、いつもとは違う煙の独特な味わいを堪能して吐き出す。

 

「狙撃手のコードをクワイエットとする。

 作戦は簡単だ。俺が奴のエリアに踏みいって対決し、その後で俺の部隊に先行させて発電所までのルートを確保する。そこからは――出たとこ勝負になるかもな」

 

 

==========

 

 

 しかし実際に作戦の決行日が決まるまでにはさらに10日ほどの時間がかかった。

 その理由は、カズが山岳地帯奥にあるという発電所の情報を集める時間が欲しいといって嫌がったことが大きい。

 しかしそれも、諜報班から8人近い音信不通がでたと報告が上がってくるとスネークはこれ以上の延期を認めないとはっきりと拒否する。

 

 計画は数段階を経て実行されることになった。

 ヘリでまったく関係ない場所に降りると、狙撃手の出現エリアに約1日かけてスネークが歩いて接近。

 対決後は入れ違いに部隊が現地に入り、スネークのかわりに発電所までを先行偵察。スネークは彼等のエスコートをうけてそこから単独でさらに奥地へと潜入することになる。

 

 かなり感情的になっているのか、カズはこの作戦を嫌がったが。オセロットは冷静だった。

 実は彼にはひとつ、この作戦のための秘策があったのだ。




また明日。

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