強くて挑戦者   作:闇谷 紅

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・バレンタインなのでおまけネタ

ト  ロ  ワ「何人もの人をえっちにはできても……たった一人のアークマージはえっちにできないみたいですね」

せかいのあくい「な……な……何者だ……」

ト  ロ  ワ「とっくにご存じなんでしょう? 私はがーたーべるとを受け取ったアークマージ……マザコンの心を持ちながらマイ・ロードによって清らかな心を持つに至った究極のせくしーぎゃる……極せくしーぎゃるトロワです!」


他版権作品パロディ過ぎて没にすることにした展開の再利用でもありますが、バレンタイン全然関係ないですな、これ。



第四十九話「約束の履行」

「ようやく、完成したな……」

 

 謎の達成感を覚えつつ眺める先に地下墓地の入り口はなかった。何も知らない者が見たら、ただ家具を雑多に積んだだけに見えるかも知れないが、そのバリケードを構成する家具は明らかに計算しておかれているのだ。

 

「とりあえず、これでここはもういい。後は他の者が担当している場所だが……素材探しとバリケードの設置までこちらはやってるからな」

 

 余分にかけた時間を考えれば他の班も魔物退治を終えている頃だろう。

 

(いや、下手すると村長の家の方でもう待ってるかもな)

 

 辿り着いてみたら俺達以外の面々が待っていた何て事になると、ちょっと格好もつかない。

 

(まぁ、地下墓地の入り口を封鎖してたってことを説明すれば面目は立つだろうけどさ)

 

 事情を知らなければ、心配される可能性だってある。

 

(クシナタ隊のお姉さんは俺の強さを知っているもんなぁ)

 

 実力的に一番乗りしててもおかしくない反則級クラスの実力の持ち主が姿を見せず、待てども姿を現さなかったら、俺だって気になる。

 

「さて、余分に時間をかけた分急ぐぞ?」

 

「はい」

 

 踵を返しつつ口を開けば後ろから返ってきた声に俺は振り向くことなく歩き出した。

 

(うん、周囲に取りこぼした魔物の気配もない。崖を登れば最短距離だけど、他の班が担当した場所も気になるし……)

 

 まだ魔物退治の途中なら、気配で分かる。

 

(そして、結局解ったのはムール君達かもう一方の班かは解らないけど、こっちを担当した班は既に目的地か目的地に向かっている最中、と)

 

 何となく、そんな気はしていた。目的地に向かう道を進んで居るのに魔物の気配も人の気配も感じないのだから。

 

(一番乗りの可能性は消えたかぁ。まぁ、いいけど)

 

 個々を担当していた面々が無事魔物退治を済ませたと言うことでもあるのだから。

 

(気にしちゃ、駄目だよなぁ……きっと)

 

 建物の壁に開いた大穴とか、原形をとどめてない死体とか、こんがり焼かれた元民家のことなんて。

 

(成る程、ここがいわくの有りそうな建物の有るエリアだった、と)

 

 呪文攻撃主体で何とかしてるのを見るに、どちらが担当したかは明らかだ。また、いわくの有りそうな家は魔法使いの私同行する班の担当ですねとかお姉さんが言っていた記憶もある。

 

(いわくについては……聞かない方が良いんだろうなぁ)

 

 ムール君辺りに尋ねれば教えてくれそうだが、村長の息子とよろず屋の一件というロクでもない両者のいざこざに巻き込まれた俺としては積極的に聞く気は皆無だった。

 

(聞かなきゃ良かったとか聞いて後悔する話って結構あるし)

 

 決行は明日だが、地下墓地に潜って残った魔物を掃討するという仕事が残っている。

 

(ここで精神的な疲労をため込む必要なんて何処にもないからなぁ)

 

 トロワと一緒に寝ることになっているので、これ以上精神的に消耗せず明日を迎えるというのは不可能な訳だけれど。

 

「マイ・ロード……」

 

「ああ、解っている」

 

 ムール君の個人的な希望も含むけどと前置きした、魔物が居ないという予想はお約束と言うか所謂フラグだったらしい。開け放たれた扉、入り口に倒れ伏す腐乱死体、戸口の向こうで動き回る生者とそれ以外の気配、どれもが魔物退治IN村長の家が既に始まっている事を告げていたのだから。

 

「先に行く。お前のブレスや呪文は乱戦では使えないだろうからな。後ろをついてこい」

 

「はい」

 

 片手に石をもう一方の手にチェーンクロスを持って掛け出せば、視界に飛び込んできたのは、まずムール君とオッサン。

 

「加勢するっ」

 

「あ、ありがとう。じゃあ、がいこつの剣士を」

 

「解った」

 

 俺の声に反応したムール君に答え、そのままオッサンと斬り結ぶ多腕の骨剣士目掛けて肉迫する。腐乱死体と違って武器の汚れを気にしなくて良い分、こいつが相手なら直接叩ける。

 

「散れっ」

 

 鎖の先にある分銅のリーチを考え、横に振る。ただそれだけでよかった。

 

「っ、援軍か、かたじけない」

 

「ここはお前達だけか?」

 

 目の前の的がいきなり吹っ飛んだ驚きも俺の姿を見て納得に変わったのか、オッサンが頭を下げるがそんなことよりお姉さん達の姿がないことが気にかかり、俺は問う。ここに来る途中で出会わなかったのに、この場に姿がない。だから、問うのは当然だと思ったのだが。

 

「それなら――」

 

 オッサンが答えるより早く、外で轟音が響いた。

 

「今のは、攻撃呪文の……」

 

「あ、うん。あの姉ちゃん攻撃が呪文主体だからさ、今日泊まる建物の中で攻撃呪文は放てませんってドアを開けてすぐ中にいた魔物を外に連れ出してくれたんだよ。ただ」

 

「誘引しそこねた魔物が残っていて戦闘になった、というわけか」

 

 そして、屋外の戦闘も呪文をぶっ放したと言うことはおそらく終了したのだろう。

 

「そういうこと。ま、それはそれとして……」

 

「お゛ぉおぉおばっ」

 

「そうだな。残りもさっさと片付けるか」

 

 ひょいひょいと腕を避けるムール少年を追い回していた動く腐乱死体がオッサンに切り伏せられ倒れるのを見た俺は手にしていた石を吹き抜けの向こうへ投じた。

 

「ぉげ」

 

 顔面を砕かれた腐乱死体が倒れ込み、館の中に居た最後の魔物の気配が消える。

 

「ふ、これで終いだな」

 

「あ、うん。けど……まさか、この家まで魔物に荒らされるなんて」

 

 ムール君からすればショックなのだろう。

 

(この家じゃないけど、下着被ってる腐乱死体も居たしなぁ)

 

 あれが最後とは言い切れない。そして、いかに男だろうと他人に下着を被られるのは俺だって嫌だ。だからこそ、ムール少年の気持ちは痛い程よく分かったのだ。

 

 




ぎゃあああっ、予定してたとこまで行けなかったぁっ?!

次回、第五十話「ひ・み・つ」

じ、次回こそは。

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