オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》 作:XENON
「………あのMSと戦っている…」
建設途中のコロニー内に隠れていた私、マリア・カデンッヴァナ・イヴの前でビームライフルの砲口を向けたまま沈黙した連合のMS、そのコックピットを貫き通し立つ剥き出しのフレーム、頭部のツインアイ、特異なブレードアンテナが特徴のMSが光の翼を広げ現れた
……三日前にお父様、妹を失い誰も助けに来てくれないと思っていた…
何より翼を持つMSの圧倒的な強さに私たちは目を離せない……この不条理な世界から救いに来てくれたのだと
??年前、火星急進派閥所有コロニー《ヘルヘイム》
「カデンッヴァナ卿が失脚し私財を没収だと!どういうことだ!!」
『同士ジェダ、そ、それが…私たち、マーシャンに支援している事を面白く思わないテラナーの一部派閥が連邦議会で卿が不正をしていると突きつけたらしいのです。おそらくは罠に嵌められたとしか掴めていません…』
「そんな事はどうでもいいんだ!卿は、そのお身内の無事は確認できているのか!?」
『現在、カデンッヴァナ卿とお家族は卿の知り合いである方の提言により地球圏をシャトル二機で離れ火星圏に出発したとまでしか』
ヘルヘイムにある執務室で地球圏にいるスパイからの緊急量子通信報に声を荒げデスクに拳を叩きつけたジェダ…エクシェスと対となるMA起動テストが終え戻った俺は信じられなかった
カデンッヴァナ卿はテラナー……今の連邦議会には珍しい良識派で未来を見据えた政策を行える人物。一度、通信越しで会話した時に火星圏の未来を真剣に考えていると強く感じた
ールセディスくん、キミとは通信越しではなくじかに会える日が来ることを願いたいなー
ー卿、俺も同じです。テラフォーミングが成功した暁にはぜひとも火星圏へ。我々はアナタを歓迎しますー
…貧困に喘ぐ火星圏に手を差し伸べる彼を罠にはめた派閥はソレだけには飽きたらず、さらなる一手を打つはず……最悪な光景が浮かんだ……ジェダからインカムを奪い取った
「……カデンッヴァナ卿は今どこにいる」
『え、それは…暗号化されているので…』
「暗号化されたデータを送れ!彼を死なせてはいけない!!」
『……………わかりました』
「ルセディス!この暗号化データは解析には!」
ジェダの声を無視してスパイから送られてきた暗合化された通過ポイントデータを閲覧……同時にヴェーダに星図座標を暗号解凍、解析したモノにあわせる
ヴェーダを通して地球圏にある観測衛星のカメラをジャック、見えたのはカデンッヴァナ卿と家族を乗せたシャトル二機。現在、月を経由し火星圏に向かっている。
「どこいくルセディス!」
「カデンッヴァナ卿と家族を迎えにいく………エクシェスで出る」
「まて!VLはあるとはいえ一割しか装甲がついてはいないんだ!死ぬ気か!!」
「…………死ぬ気はない……為すべき事を果たす為に」
「!?…………わかった…各員に告げる!エクシェスに惑星間航行ユニット装着を急げ!!」
ジェダの指示がエクシェス用追加装備開発メンバーへと言葉が飛び交う執務室をあとにした。機密ロッカーにはいり専用パイロットスーツを着込みパイザーを閉じエアロックを開く
眼前には必要最低限な装甲、剥き出しのフレームを晒すMS、下半身から脚部を覆い隠すように惑星間航行ユニットが誘導レーザー、整備メカニックと共に取り付け作業が進められている。オレはまっすぐハッチにたどり着き開放と同時にパイロットシートへ滑り込み作業状況を確認、機体OSを惑星間航行ユニットとのリンクアッセンブリを引き出したコンソールに最適化した数値を打ち込み始める
「推力および重力ブレーキを三秒に変更、姿勢制御タイミングを0,8secから0,2sec、ヴォワチュールリュミエール展開および太陽風受容距離を機体周辺に限定、生命維持に必要な酸素5人分……エクシェス惑星間航行ユニットとの物理およびシステム接続完了」
ーエクシェス、第02カタパルトへ移送。作業員は速やかに退避、繰り返す退避せよー
ハンガーデッキが第02カタパルトへ移送と同時にリニアカタパルトへ固定、正面ゲートが開きレーザーガイドが瞬く間に伸びていく
ー偽装解除完了、正面ゲート付近にデブリ無し……発進どうぞー
「……………ガンダムエクシェス、惑星間航行ユニット装備……でる!!」
リニアカタパルトから電磁放電反発減少と共に打ち出される…対Gシステム越しにシートへ押しつけられるのを耐えヴェーダとのリンクを繋げたまま虚無の宇宙へと
カデンッヴァナ卿のシャトルと接触するまで15日…通常ならば一月あまりかかる距離をGNドライブの技術を応用した惑星間航行ユニットならば二週間強短縮できる
(………オレが事を成し死んだあと火星圏を任せられるのはカデンッヴァナ卿、アナタだけだ………願わくばクリスを)
手が操縦桿から離れそうになるの堪えながらヴェーダとリンクしカデンッヴァナ卿を嵌めた派閥に関して調べ唖然となった……嵌めた派閥の中心的人物は地球蒼生軍親派の議員。オレから爺ちゃん、母さん、ノイン姉さん、ハーティを奪った地球蒼生軍……そいつラを野放しにしていたのかGspirits隊…
「……オレの家族だけじゃなく火星圏の未来をも奪うのかGspirits隊……大東おッ!」
歯ぎしりし、今はただ、一刻も速くカデンッヴァナ卿と家族を助けなければ……操縦桿を強く握りしめ無事を願いひたすら加速し続けた
Mars-Day:02 ー胎動する憎悪の
………14日と19時間後、オレが目にしたのは
「………カ、カデンッヴァナ卿………くっ!!」
黒こげになったシャトルの残骸が辺りを漂う宙、カデンッヴァナ卿が愛用していたロッド、そして半ばもぎ取られたように千切れた熊の縫いぐるみがマニュピレータに流れ止まった。ハッチをあけ軽く蹴り、マニュピレータに近づき縫いぐるみを手にする
このぬいぐるみはカデンッヴァナ卿の末の娘が大事に持っていたモノ……ハーティと変わらない年の子だ
ゆっくりとぬいぐるみを抱いた時、ヴェーダからある映像が流れ込み見えたのは建設途中のコロニー…そのターミナルに被弾したシャトルの搭乗口が爆砕ボルトで破壊され煙の中から外見から大人と子供とわかるノーマルスーツに身を包んだ3人がコロニー内へ逃げる姿、遅れて三機のMSが進入してくる…あの機体は連合の秘匿部隊が使用するモノ…
惑星間航行ユニットをパージし、三人が逃げ込んだコロニーへ機体を傾け加速する……間違いなくあの三機の狙いはカデンッヴァナ卿の家族
「ヴォワチュールリュミエール展開……エクシェス」
…次世代の推進機関としてDSSD、オーストレルコロニーで開発されたヴォワチュールリュミエール…理論上は亜光速に近い速度を出すことを可能とする。邪魔な惑星間航行ユニットを外した今は最高速でコロニーへつける
瞬く間にコロニー外壁に張り付くと、搬入口を解放し内部へ入った……ヴェーダの情報によると三人が逃げ込んだのは3日前、いるとしたら建設途中の住宅街。熱源感知を人体に設定、広範囲サーチ……その時センサーが捉えた。最大望遠で映されたのは例の特務機、その手に構えられたビームライフルの銃口がとらえてるのは三人の少女…カデンッヴァナ卿の長女マリア・カデンッヴァナ・イヴが養女の月読調、暁切歌を守るように後ろを振り返りながら走る姿
「うっ!?」
ーおいおい、どうすんだよ?ー
ー軍の連中に知らせるかもしれないぜあの餓鬼ども、始末した方が良いんじゃね?ー
ー賛成!ー
ーだな、そうするかー
今の声は………あの三機のパイロットの声…自らの保身しか考えていない下婢た思考を脳量子波が拾った…こんな奴らにカデンッヴァナ卿と末娘がと思うと暗くドロドロとした感情が溢れ出し最高速でビームライフルを向け今まさにトリガーを弾こうとした特務機のコックピットへエクシェスの腕を突き刺し貫いた
ーガベァ!?……アッ……………ー
「…………」
貫いた瞬間、パイロットの意志がはじけ消えた…のこり二機へ目を向けながらエクシェスの腕を特務機のコックピットから引き抜くとスロットルペダルを全開にしビームサーベルで切りかかろうとした特務機の懐を潜り込んだ
ーひっ!?い、いやだ!ー
「頭に響いて、うるさいんだよ………軍人だろ?おまえたちはっ!!」
五月蝿い声を無視してコックピットを刺し貫く…関節部に僅かな負担を示す警報が鳴るが、今はこいつらを
……
ーなっ、何だってんだよ!こんなのMSじゃねぇ、化け物だ、悪魔だ!来るな、来るなぁ!ー
悪魔と呼ぶか……コレはオレの復讐を為すためにミッドチルダに逃げた地球蒼生軍残党に何の対処もせず結果、オレから家族を奪ったGspirits隊、大東貴一に復讐するために
P・Tから渡された九つのうち四つのジュエルシードを使い、魔法とMS技術を融合させたエクシェス…今の姿は悪魔にみえるよな
ーひ、ひぃ………ー
二機目のコックピットを貫き通し投げ捨て、隊長機を見る。ここから逃げようとバーニア、スラスター全開で離脱しようとしてる…誰一人逃がすわけないだろ
リュミエール展開と同時に加速し、隊長機の前へ回り込むと急制動をかけ止まるのを見逃さずスレスレまで近づき頭を掴む。接触回線が開いた
「自分だけ逃げる気か?」
『た、たのむ!助けてくれ……あんたの事は誰にも、誰にも話さない……本当だ、な、頼む!!』
「……悪いが…この機体《ガンダムエクシェス》を見た者は生かしてはおけない…」
『や、やめ……たす……グギッヒアーーーーーーー』
聞き終わる前にコックピットを渾身の力で刺し貫くと接触回線越しに断末魔の叫びが木霊する中、操縦桿から手を離しヘルメットを脱ぎ捨て髪をかきむしる
もっと速くカデンッヴァナ卿のシャトルにたどり着いてさえいればと思う……今は悔やむ時じゃない脱ぎ捨てたヘルメットを被り操縦桿を握る。卿の子ども達がいる場所へ機体を向かわせた
やがて三人の姿を見つけゆっくりと機体を近づけ、膝をつけるように着地。モニターには卿の娘《マリア・カデンッヴァナ・イヴ》が義妹二人を守るように立ちながら見る瞳から強い意志を感じとれた
オレはハッチをあけ外へ出た……炎が強い風が煽られ荒れ狂い機体を照らしている…消化の為に降るはずの雨すらない。コロニー内環境管制システムは不調だとわかる中で互いに言葉すらない
「………」
何を話せばいい…彼女たちの父親である卿を助けることすら出来なかった……彼女たちはあの日の家族を失ったオレと同じだ
激しく燃えさかる復讐の炎に身を焦がすオレ自身…だからでたのかもしれない
「………たのむ………生きてくれ………オレを一生恨んでもいい。でも今だけはオレを信じてついてきてくれ………」
「………あなた、父を知ってるの」
「ルセディス………オレはマーシャンのアレス・ルセディス……」
………この日、燃えさかる炎の中でオレは卿の娘たちマリア・カデンッヴァナ・イヴ、暁切歌、月読調と邂逅した…
Mars-Day:02 ー胎動する憎悪の
了