オリ主が再びIS世界でいろいろと頑張る話だけど…side:ASTRAY《本編完結》 作:XENON
呼び止めるクリスの声がエクシェスのコックピットに響く…オレはアームシリンダーを強く握りしめ離脱しながら思うのはクリスのことだ
記憶を失った
「何故だ…クリス…なんで火星からオレなんかをさがしにきたんだ…お前には火星で幸せになって欲しかった…なのに」
歯をギリッギリ鳴らし…記憶を無くしていたとはいえクリスと関係を持ってしまった、何れ死ぬオレと…御門了子、アインハルト・O・ストラトス、ノーヴェ・ナカジマも……
最悪な事に綾崎翔真が率いるソレスタルビーイング、プトレマイオス2にいる。オレの仇がいる船に…ある意味人質に取られたと同じだ
「………く…」
…答えはでないままエクシェスと共に真っ暗な海上へと出た
「……?」
「…………マリア、調、切歌、なぜここにいる」
乾いた音と一緒に右頬に痛みを感じる…数時間前、ラスベガスから離れた私《マリア・カデンッヴァナ・イブ》は、暁切歌、月読調、そしてあの赤い機体のパイロットに誘導されザフトのボスコロフ級潜水艦へ着艦し機体を固定しコックピットから降りた
潮風の匂いと海のうねりを感じながら、私達の前に隊長のMS…ガンダム・エクシェスが膝をつくように甲板に着地、ハッチが開く
「アレスにい……アレス隊長です」
「…隊長、よかった」
真っ白な髪に赤いメッシュが入った髪がなびき、赤金に輝く瞳、血で染まったYシャツを無造作に脱ぎながら機体から降り私達の方に歩いてきた
四年前より少しだけ変わってたけど、隊長を利用していたソレスタルビーイング、未だに命を狙う私達のお父様の仇がいるGspirits隊から助け出せた…
「アレス隊長、よく無事……ッ?!」
風を切る音と頬に微かな痛みが走る…目の前には腕を振り抜いたまま隊長が無表情で立つ姿。でも赤金に輝く瞳から怒り、困惑の色が見えた気がしたのは気のせいかしら
PHASE:98.5 困惑、そして…side:ASTRAY
「アレス、隊長?……私達はアナタを探して…」
「……お前達にはガングニール、シュルシャガナ、イガリマの調整が終わるまでヘルヘイムコロニーに繋留してある偽装艦《ミストルティン》で待機を命じていたハズだ…」
「ソレは隊長が計画発動時に行方不明と急進派派閥メンバーが一斉検挙されて行き場がなくなった私達は逃げるしかなかった」
「…で、でも機体の調整も終わったデス!隊長の力になるため、マリアも調、私も一生懸命やったデスです!!」
「OSも阿頼耶識システムも完璧、リアクターも安定稼働してる…タスクが穏健派に捕まって身動き取れなかった」
…信じられん…リアクター調整、阿頼耶識システム・ORIGINを仕上げただと?バカなオレはあの時確かに…それより気になるのはマリア達がどうやって来たかだ
この世界に来るには魔法世界の魔導技術が必要になるはず。可能性は三つ、偶然に開いた時空の歪みに飲まれたか、流出した魔導技術によるものか、ソレか此方の事を知る第三者の介入だ
前者は無い、あるとしたら第二、第三だ。あの忌々しいGspirits隊率いる大東貴一が所属する地球圏統一連合が存在するならば魔導技術で転移可能だ
しかし地球圏にソレを行う施設がある為に消去、残るのは一つだけだ
此方の事を知る人物は一人だけだ。
「………マリア、調、切歌、…お前達がここに来れたのはP.Tか?」
「た、隊長…P.Tを知ってるのですか?」
マリア、切歌、調の反応をみてわかった…P.Tが此方の世界に送り込んだのか。余計な事を…しかしかえって好都合だ。今の火星圏にいるのは危険すぎる。ならばやることは一つだ
「……一つ聞く、いつ此方に来た?」
「え、は、半年前…あの隊長?なぜそんなことを」
「……無断で動いたことは本来なら重罪だが、半年前まで火星圏にいた。オレがいなくなってからの火星圏の状況を報告と引き換えに不問にする」
「つまり半年前の火星圏の事を話せば無罪判決、勝訴にするデスか?」
「切ちゃん……意味違うからね」
「あ、あの隊長…「マリア、今のも含めて不問にする」……ではさっそくですが…」
「ホワシン・リー!なぜここに、ザフトの艆にいる!!」
マリアの声をかき消するよう響いた声…振り返ると髪を揺らし此方へ迫るドレス姿の女…何度か刃を交えたザフト、特務艦ミネルバのエースパイロット《篠ノ之箒》がズカズカと間合いを詰め勢いよく顔面へ殴りかかる、見えやすい動きだ、拳をすっと手を添えるように受け止めた
「………な?」
「……篠ノ之箒…オレはアレス・ルセディスだ……ホワシン・リーじゃない」
「何を?」
「ソレに…いきなり殴るか…ならば」
「うわ?」
止めた拳ごと此方に引き、体勢が崩れたのを見逃さずに首を腕で捉え、ナイフを胸元付近に突き立てるよう紙一重で止める…篠ノ之箒が動きを止めるわけなくもがいた時、別な方から乾いた音が響いた
「箒を、箒を離して!」
「私も同感だねアリシア…さあどうするかい?女の子を撃つのは趣味じゃないけど、男である君は別だ」
銃口を向ける金髪の少女、そして背後から銃を向けている女、ロラン…いつの間にかマリア達も銃を向けている。数では有利だがザフトの艆にいる時点で不利だ
「く、離せ!ホワシン・リー!!」
未だにもがくのを止めない篠ノ之箒を解放すれば間違いなく此方に牙を剝くのは間違いない…
「ソコまでです。双方銃をおろして。彼と彼女たちは客人ですよ…議長が是非にお会いになりたいと招いたんですけど」
「湊?議長がコイツらを……だが!」
「箒、議長には考えがあるみたいです……ソレに先ほどのやりとりから見る限りどう見ても…アナタのせいじゃないですか?」
「…わかった。私に非があるようだ……で、何時までこうしてるつもりだホワシン・リー」
「……アレス・ルセディスだ。ホワシン・リーを名乗っていたヤツは消えた…マリア、切歌、調、銃を下げろ……」
「は、はい……切歌、調」
「うん」
「わかったデス」
オレが篠ノ之を離すと金髪の少女、背後の女も銃を降ろしたのをみてマリア達もホルスターに収めた…奏、たしかあの時、過去の世界から帰還してすぐ、織斑千冬を追っていたプロヴィデンスの後継機に乗っていた女だったな
(私の声が聞こえてますね…アナタの部下の安全は保証します…)
(かわり議長に会えと……いいだろう。ただしオレのエクシェス、マリア達のガングニール、イガリマ、シュルシャガナに触れるな。ソレを飲むならば。のまないならば)
(かまいませんよ…では、少し長旅になりますがゆっくり休まれてください……アレス・ルセディス)
それっきり声は止んだ。奏と言う女は此方に敵意を向ける篠ノ之を伴い離れていく…金髪の少女がこちらを一瞥し追いかけデッキから離れた
「ねえ。君もしかしてDiVAの娘かな?私と付き合わないか?甘い御菓子と紅茶をごちそうするよ」
「つきあうです!……って調、マリアどうしたデス?なんで止めるのデスか?」
「悪いけど切歌と調にはタスクがいるから無駄よ…」
「なら、君は?」
「え?わ、私……け、結構よ!」
……………色々と不安だが。ザフト評議会議長プレシア・テスタロッサがオレに会いたいか…まあいい、ソレまでは火星圏の状況を知る時間が出来た。確認次第、機を見てキアラ、エッちゃんに《プロジェクト・エデン》遂行を令呪を通じ命じるだけだ
この計画だけは成功させる。オレの復讐もな……ふふふ、あははっあははははは
PHASE:98.5 困惑、そして……side:ASTRAY
了
アレス・ルセディス、彼の存在は
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危険すぎる
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危険じゃない
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どちらでもない