念のため、小走りでキャンプに向かう一同。途中、ブラムがモンスターに襲われたりブラムがモンスターに襲われたりブラムがモンスターに襲われたりしたが、なんとか到着した。だが、キャンプには既に何匹かの芋虫に襲われていた。
それほど多い量ではない。精々、10〜20匹といったところだ。
「ここにいたのか……!」
「よし、援護に行くぞ」
フィンの号令で全員が突撃。だが、当然狙われるのはブラムだけだ。
「畜生ぉぉぉぉ!僕にも戦わせろぉおおおおお!」
涙ながらに逃げ出し、サクッと周りは芋虫を仕留めた。
「ふぅ……これで全部かな」
「すまないフィン、助かった」
リヴェリアがお礼を言うと、フィンは「いいって」と手を振る。
「厄介だったが、慣れりゃ大したことねぇな」
「というか、ほとんどブラムがタゲ取ってくれてるお陰だけどねー」
ベートの呟きにティオナがのんきに返した。
「でも、そのブラムのステイタスが更新されないのはチョッと可哀想ね……」
ティオネが同情するように言った。
「されてんだろ。敏捷だけな」
「それが可哀想なんじゃない」
「ハッ、バカ言うな。ファミリア最速の野郎を哀れむのは無駄だろ」
自分より速いブラムを、ベートはそこだけ認めていた。
「だぁよねぇ、ベートの面目丸つぶれだし」
「喧嘩売ってんのかクソ女ァ!」
ベートがティオナに振り返り、口喧嘩をする。そんな時だ。ズウゥゥウンッと重い足音が響いた。その足音はベキベキベキッと気を踏み倒す音と共に、近付いてくる。見上げると、フィンの言っていた成虫が歩いていた。
「まさか、本当に成虫がいるとは……」
「あれも下の階層から来たって言うの?」
「迷路を壊しながら進めば……何とか?」
「バカ言ってんじゃねぇぞ……!」
フィン、ティオネ、ティオナ、ベートと呟いた。
「あのモンスターも倒したら破裂して腐食液をブチ撒くっすよね…?あの大きさでそんな事になったら……」
ラウルの台詞に全員がゾッとした時だ。モンスターが金色の粉をぶちまけた。それが、キラキラと綺麗に全員の元に降り注ぐ。その瞬間、ドドドドッ!と爆発した。
「きゃあああっ!」
「あの光る粉粒、爆殺しよったぞ……!」
ガレスが爆風を浴びながら言った。
「総員撤退だ」
フィンの判断は速かった。
「速やかにキャンプを破棄、最小限の荷物を持ってこの場から離脱する」
「おいフィン⁉︎逃げんのかよ!」
「あのモンスターを放っとくの⁉︎」
ベート、ティオナと言った。
「僕も大いに不本意だ。アイズ、ブラム」
「はいっ?」
フィンに呼ばれて、ブラムは上ずった返事をしてしまった。
「ブラム、僕らの撤退準備が終わるまで、一人で奴の気を引け。そして、それが終わったら、アイズと共に奴を倒せ。二人で、だ」
「うえっ⁉︎ぼ、僕がですか⁉︎」
「……すまない。君のスキルを頼りきりにしてしまって。でも、これは君にしか出来ないことなんだ」
真面目な顔でフィンは言った。
「……頼めるか?」
「任せてください!」
それでも、ブラムはいつも通りだった。だが、他の団員は納得がいかないようだ。
「ねぇ、ちょっと、フィン⁉︎何でブラムはともかくなんでアイズ一人なの⁉︎あたしも行くよ!」
「ブラムはいいとして女に尻守られるなんて、尚更冗談じゃねぇぞ⁉︎」
「団長、ブラムはいいけど私からもお願いします。ご再考を」
「みんな僕のことなんだと思ってるのさ!」
ティオナ、ベート、ティオネと反論するが、フィンの答えは変わらなかった。
「二度も言わせるな。急げ」
その言葉には、誰もが従うしかなかった。全員が撤退の準備を始める。
「ブラム、頼むぞ」
「分かってますよ〜。僕の取り柄は逃げ足だけですから」
ブラムはそう言うと、全員とは正反対の方に走る。
「こんの、デカブツ!こっちだー!」
叫ぶと、成虫はゆったりとブラムを見る。
「バーカバーカ!だるま落としみたいな格好しやがって虫野郎!車に跳ねられて死ね!」
尻尾を振って耳を立たせてブラムは吠えた。そのデカブツは、「は?踏み殺すよ?」みたいにブラムを見下ろす。で、金色の粉を撒いた。
「これ……爆発する奴だよね……?」
さっきとは比べ物にならないくらいの面積にぶち撒ける。
「ごめんなさああああああいッッ‼︎」
ダッシュで逃げた。ギリギリ爆発圏内から抜け出し、ブラムは壁を駆け上がる。自分が走っていた壁にモンスターの四つの腕が穴を開けた。それに若干、ビビりながらもブラムは跳んだ。腕の上に着地すると、本体に向かって走り出す。
「僕がただ逃げてるだけだと思ってたろ!」
威勢良く言いながらブラムは剣を抜いた。そして、本体の頭部に登ると、大きくジャンプして、モンスターの背中をとった。
「………まぁ、合ってるんだけどさ」
チョッとテンション下げながらまた逃げた。ちなみに剣を抜いた意味はない。空中のブラムに腐食液が迫る。
「嘘っ……!」
着ていたパーカーを脱ぎ捨て、腐食液にぶつけた。服を溶かさせて自分はその隙に落下。地面に着地する。
「あのパーカー……チョッと気に入ってたのに……」
涙目になりながら上を見ると、金の粉が振り撒かれていた。
「鬼コンボにもほどがあるでしょ……!」
そうボヤきながら、ブラムは走って逃げた。だが、さっきより広範囲に金の粉をブチ撒かれた。
「ぬぉおおおおお!燃えろぉおおお!僕の何かァァアアアアッッ‼︎」
曖昧に自分の何かを燃やしながらダッシュ。爆発の直前、ヘッドスライディングで避けた。ただし、爆風の勢いのおかげで人間ロケットみたいになってる。
「ふぉおおおおおおおッッ‼︎」
目の前の木に突っ込んだ。見事に木に身体が突き刺さる。
「……あれっ、抜けねっ。マジ抜けねっ」
後ろから成虫が迫って来る。
「ゴメンなさい!バカって言ってすみませんでした!だからひとまず!ひとまず待った!分かった!300ヴァリス!300ヴァリス払うから!いやー!バカバカバカ待った!やめてとめてやめてとめてやめてとめてやめて……!」
泣き叫ぶブラムに近付く成虫。そして、腐食液が垂れてきた。その直前、アイズがブラムを引っ張って引き抜きながら脱出した。
「あ、あ、アイズたん〜!」
「誰がアイズたん?」
担いで走りながらアイズは言った。
「撤退の準備は終わった。私が一撃で貫くから、落下した私を背負って、全力で出口に撤退」
「了解です」
ブラムは木と木を踏み台にして、木の上に登り、木と木の上を飛び回った。当然、狙われる。そして、上手く誘導して、デカブツをアイズとブラムで挟むような形を取った。デカブツがブラムに拳を叩きつけてきた。
そのデカブツの後ろからアイズが突っ込んだ。
「『目覚めよ』《風》最大出力‼︎」
風をまとって剣を構える。
「リル・ラファーガ」
それが、デカブツを貫いた。だが、爆発する。
「ヴァレンシュタインさんッ‼︎」
あらかじめ壁を走っていたブラムが、思いっきりジャンプし、アイズを抱き抱えた。そして、魔法を使った。
「《
詠唱無しで魔法を発動。ブラムの足元に透明のバネが出て来た。
「そぉらぁっ!」
大きく跳んだ。瞬間、天井に頭が突き刺さった。
「ムギュ!」
だが、爆発からは免れた。アイズを抱えたまま頭だけ突き刺さっている。
「……大丈夫?」
「ふごふごふご……(今日はよく刺さる日だよ)」
*
出口付近。
「アイズ⁉︎ブラム!」
ティオネが声を漏らした。
「や、やばくないっすか……⁉︎」
「大丈夫です‼︎ブラムくんは逃げることなら誰にも負けません!」
「な、なんか信頼してるのかイマイチ分からないっすね……」
レフィーヤの声にラウラがツッコむ。だが、爆風の中からは誰も帰ってこない。
「アイズ……!」
心配そうな声をティオネが漏らす。だが、天井からアイズが落ちて来た。
「⁉︎」
「な、なんで上から⁉︎」
「あそこ」
「へっ?」
上を見ると、ブラムが天井に突き刺さっていた。
「………なんであんなことに」
「なんか魔法使ってた」
この後、アイズのエアリエルでなんとか助けられた。