落下しながらブラムは、そこら中に透明のジャンプ台を張り続けた。それらを一つずつ使いながら、空中を移動する。その後ろに続く飛竜の群れ。
「クソガキ、寄越せ‼︎」
ベートに言われて、返事をすることもなく「『跳躍』」と叫び、透明のジャンプ台を貼った。
ベートはそれを踏み込むと、思いっきり跳ね上がり、飛竜の群れに蹴り掛かった。だが、それでも仕留められるのは一体だ。
「チィッ……!気張れよクソガキ!」
「『跳躍』『跳躍』『跳や……』!」
言われた直後、身体がフラついたのが分かった。精神枯渇。
直後、ブラムは自分の真後ろに最後のジャンプ台を出した。それを思いっきり踏み込むと、目をキュッと瞑って壁に脳天から突っ込んだ。
グチャッと音がして、壁に減り込むと共に血が飛び散る。そこに頭から突っ込む飛竜の群れ。
「ブラム………‼︎」
「ティオネさん、私を!」
直後、レフィーヤは叫んだ。ブラムの意図を悟ったレフィーヤは、自分を守れとティオネに言った。
「【解き放つ一条の光、聖木の弓幹。汝、弓の名手なり。狙撃せよ、妖精の射手。穿て、必中の矢】!」
ティオネに守ってもらいながら詠唱し、狙うのはブラムの突っ込んだ壁に集まる飛竜の群れ。
「【アルクス・レイ】‼︎」
レフィーヤの最大出力の大光閃。特大の単射魔法が飛竜の塊に直撃した。
『オオオオオオオオオオオ‼︎』
断末魔と共に爆発する飛竜。そして、煙の中からヒョッコリと見たことのある顔が出てきた。
「レフィーヤさん、ナーイス!」
ブラムの呑気な声だ。魔力が消える前に、自分を殺して魔力を再生させると共に、ついでに敵も一掃したのだ。
「ぃよっと」
そう言ってブラムは飛び降りると、落下しながら全員の足元に透明のジャンプ台を設置する。
「足場は僕が作ります!敵の排除は任せます!」
ブラムが言っても返事はないものの、全員頷いたり手を振ったりして了解のサインを出した。
「【我が同士の為、勝利への空間を創りたまえ】」
詠唱するとブラムは、二つ目の魔法を唱えた。
「【グライダー・スペース】」
直後、ブラムの視界に入った空間全てに透明のジャンプ台が現れた。
「⁉︎ これは……!」
「マジかよ……!」
「ブラム、こんなのやって魔力は保つの⁉︎」
ティオナに聞かれると、ブラムは微笑みながら返した。
「大丈夫ですよ。切れたならまた死ねばいい」
そ、そういう問題なのか……⁉︎と、全員が思ったのは言うまでもない。
だが、このジャンプ台のおかげで全員が戦いやすくなったのも事実だ。空中を徘徊するドラゴンや、下からの砲撃を躱して、モンスターを次々に殺していく。
そして、ベートが着地し、砲竜に向かって走り出した。
「死ね」
そして、ベートの蹴りが炸裂。一撃で蹴り殺すと、他の砲竜を見回しながら呟いた。
「戻ってきてやったぞ……クソッタレども」
続いて、ティオナが隣に降りてきた。
「二番乗りっ、とッ!」
その直後、二人に新しい影が天井から現れた。
「……【雨の如く降りそそぎ、蛮族どもを焼き払え】」
「あんた達、逃げなさい‼︎」
「【ヒュゼレイド・ファラーリカ】‼︎」
レフィーヤの詠唱が終わり、降り注ぐ炎矢の豪雨。それらが砲竜に降り注いだ。
ベートとティオナが慌てて魔法を避ける中、モンスター達は焼き尽くされていった。
「レフィーヤ、ティオネ!」
「い、生きてる……」
「あれだけの『魔法』をかましておいてよく言うわ」
ティオネに抱えられたレフィーヤが階層に降り立つ。
「………ブラムは?」
「あそこだ」
ベートの睨みつける先にはチャイナ服がふわりふわりと落ちて来ていた。
そして、そのチャイナ服に集まる血、肉片、眼球、内臓、細胞。ブラムの身体が形成されていった。
ようやく完成したところで、ドサッと大の字になって着地した。
「………い、生きてる……」
「あんたに限ってはほんとその通りだと思う」
全員が呆れていた。