ロキファミリアの囮役   作:杉山杉崎杉田

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新たな女子力

 

 

ベルを助けに【ロキ・ファミリア】は先へ進んだ。ブラムは念のため袋に入れてティオナが運んだ。

ベルは一人でミノタウロスを撃破し、マインドダウンしたため、一度地上に運ばれた。

【ロキ・ファミリア】は再び遠征を開始した。

で、今は50階層。

 

「………まじで?ベルが?ミノタウロスを?」

 

「うん、マジだよー」

 

ティオナとブラムはキャンプの最中でお話ししていた。

 

「うおお!超見たかったー!」

 

「だめだよー。ブラムが見てたらミノタウロスこっちに来て、結局私達が倒してたもん」

 

「あー……そっか……。クッ、自分のスキルが憎い!」

 

本気で悔しそうにしながらも、二人は楽しそうにお話をしていた。

 

「………随分、仲良くなったわね」

 

「それな。どうしたんだあいつら」

 

その様子を見て、保護者のティオネとベートがヒソヒソと話していた。

 

「まぁ、流石にあいつもアレで男だ。なれたんだろ」

 

「前は緊張して会話にもなってなかったもんね」

 

お互い成長したなぁ、とほんとに保護者のような感想を心の中で二人が思ってると、フィンの声が聞こえた。

 

「最後の打ち合わせを始めよう。事前に伝えてある通り、51階層からは選抜した一隊で侵攻を仕掛ける。残りの者は【ヘファイストス・ファミリア】とともにキャンプの防衛だ」

 

全員がその言葉に耳を傾けた。

 

「パーティには僕、リヴェリア、ガレス、アイズ、ベート、ティオナ、ティオネ、ブラム」

 

「ブフッ‼︎……ゴホッ、ゴホッ⁉︎………ゴホッ!」

 

「何むせてんだお前」

 

ベートの冷静なツッコミにブラムは立ち上がった。

 

「僕がパーティ⁉︎サポーターじゃなくて⁉︎」

 

「君をサポーターにしたらアイテムもろとも吹き飛ぶだろ」

 

「でもっ、だからってなんで……⁉︎いや理由は分かるけど……‼︎」

 

「ならいいだろう。続いてサポーターは……」

 

と、サポーターをフィンは発表していく。

今回は何回死ねばいいんだろう……と、心の中で思ってると、ティオナがポンっと肩に手を置いた。

 

「大丈夫だよ。私も守るから!」

 

「いや、それはいいです。不死身の僕が誰かに守られてたら世話ないんで」

 

「生意気なー!」

 

そんなアホなやりとりとは別に、フィンは続けた。

 

「椿も武器の整備士として、僕達に同行してもらう」

 

「うむ、任された」

 

微笑みながら頷くと、椿は立ち上がった。

 

「では、渡すものを渡しておくぞ!」

 

アイズとリヴェリアを除いた、第一級冒険者たちの前に並べられる武具。

 

「注文されていた品。『不壊属性』だ。連作《ローラン》。それぞれの要望通りだ」

 

フィンは長槍、ガレスは大戦斧、ベートは双剣、ティオナは大剣、ティオネは斧槍……一つ、盾が余った。

 

「何をしてるブラムたそ。これは貴様のだぞ」

 

「えっ?」

 

椿に言われて、間抜けな声を上げるブラム。

 

「なにせ、囮役のようだからな。フィンに頼まれて作っておいた」

 

「マジですか⁉︎」

 

「うん、ブラム。今日も頼むよ」

 

フィンに微笑まれ、ブラムは泣きそうになった。

 

「はい!敵の視線を釘付けにしてみせます!」

 

フィンに他意はなかったが、ブラムのその答えに、誰もが「チョロい」と思ったのは言うまでもなかった。

 

 

一度解散し、明日から出発。ブラムは落ち着くため、テントの中にこもった。

 

「………大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない大丈夫僕は死なない………」

 

全然落ち着いてなかった。すると、パサッとテントが開いた。

 

「おっすー。ブーラム」

 

「おっすー。ブーラムおっすー。ブーラムおっすー。ブーラムおっすー。ブーラムおっすー。ブーラムおっすー。ブーラムおっすー。ブーラムおっすー。ブーラム……あれ、何言ってんだ僕」

 

「ほんとに何言ってんの?」

 

「いやちょっと……わひゃあ⁉︎ティオナさん⁉︎」

 

「おっ、久しぶり。その反応」

 

「あの、何してるんですか?僕、もう明日に備えて寝るので………」

 

そこでブラムは気付いた。少し、ティオナの体が汚れてることに。

 

「………あの、体休ませろって言われてましたよね?何してたんですか?」

 

「………えへへ、ガレスとちょっと……」

 

「えへへじゃねー⁉︎何やってんですか!ほらもうそこ寝て!」

 

「え?は、はい?」

 

急によくわからない司令を出され、思わず従ってしまった。布団の上にうつ伏せで寝ると、その上にブラムは跨って座った。

 

「ふえっ⁉︎な、何してんの⁉︎」

 

「少し前に戦闘で役に立てない僕が何かできることないかなーって思って、マッサージ覚えたんですよ」

 

「へ?役に立てないって誰が?」

 

「僕が。少し動かないで下さいね」

 

「へ?……んんっ⁉︎」

 

あまりの的確なツボと力加減に、思わず声を漏らしてしまった。

 

「よっ、と」

 

「やっ……そこっ……」

 

「あとここ、1日の疲れをよく取るとかなんとか」

 

「バッ……だめッ、……んッ!」

 

「ここは血流を良くするらしくて……」

 

「ひゃんっ……!あっ……!」

 

その後、的確に身体中のツボをピンポイントで押されまくったティオナはグダッと倒れてしまった。

 

「ふぅ……このくらいでいいでしょう。さ、もう寝ましょ……ティオナさん?」

 

顔を赤くしてハァハァと呼吸が乱れているティオナ。それを見て、少なからずムラっとしたブラムを誰が責められよう。

 

「ッ……⁉︎」

 

慌てて視線を逸らすブラム。自分の欲望をなんとか抑えつけた。

だが、それをティオナがさせなかった。

 

「ぶらむ……」

 

ヤケに色っぽい声で自分の名を呼ばれ、ビクッとする。

 

「………な、なんです、か?」

 

「人をこんなにしといて……放っとくの……?」

 

「こ、こんなって……?」

 

「………わかってる癖に」

 

「……………」

 

ぷいっと顔を背ける。今のティオナは危険だ、と本能が言っていた。

直後、ティオナは隙を突いてブラムを押し倒した。

 

「ち、ちょっとティオナさん⁉︎」

 

「よそ見しちゃダメだよ。そんなんじゃ、明日死んじゃうよ?」

 

「い、いや待って……!僕が死んじゃうです!」

 

「大丈夫、殺さないよ。搾り取るだけ」

 

「なんかそっちの方が怖いし!」

 

ティオナの紅潮した顔が、ゆっくりとブラムの顔に近付いていった。耳や尻尾がヒクヒクと動く。

あと一歩で大事何かが奪われる、その時だった。

 

「ブラムー、明日の事で団長が……あっ」

 

ティオネが入って来た。

直後、フリーズするティオナ、ブラム。

 

「あっ」

 

「えっ?……あっ」

 

「」

 

顔を真っ赤にするティオナ。顔に手を当てて「やっちまった……」みたいな表情のブラム。

 

「………お、お邪魔しまつた……」

 

気まずそうな顔でティオネはテントを閉めた。

 

「「ち、ちょっと待ってええええ⁉︎」」

 

慌てて二人はティオネを追って騒いでたら、フィンに怒られた。

 

 


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