ロキファミリアの囮役   作:杉山杉崎杉田

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デュランダル

 

ブラムとティオナは二人、手を繋いだまま出掛けた。

 

「あの……それで今日は……?」

 

「んーっとね、ブラムの洋服作ってもらおうと思って」

 

「へっ?」

 

「だって、死んだ時に服が燃え尽きてたりするんでしょ?だったら、破れない服を作ってもらったらいいんじゃない?」

 

「えっ、そんなの作れるんですか?」

 

「ほら、不壊属性の服とかさ」

 

「ああ〜……いや、可能ですかそれ」

 

「さぁ?まぁいいじゃん。とにかく、お願いしてみようよ」

 

「アテがあるんですか?【ゴブニュ・ファミリア】とか?」

 

「あそこには頼みづらいかなー……ほら、ウルガ壊してるし……いや、ブラムのって頼めばある意味引き受けてもらえるかも……」

 

「へ?なんで僕なら引き受けてもらえるんですか?」

 

「よしっ、まずはそこに行こう!」

 

「ち、ちょっとティオナさーん……!」

 

【ステイタス】に明らかな差があるため、ブラムはなす術なく連れて行かれた。

 

「………あっ」

 

その途中、ブラムが声を漏らした。クレープの屋台が目に入ったのだ。

 

「? どしたのブラム?」

 

「あ、いえ……」

 

ブラムの視線の先をティオナが見ると、ニヤリと微笑んだ。

 

「……食べたいんだ?」

 

「あ、いえっ。僕、服と一緒に財布も切り刻まれてお金、部屋で貯金しといた分しかありませんから。………ははは、これからどう生きていけばワカンネー」

 

「奢ってあげよっか?」

 

「い、いやいやいや!いいですよ!大体、クレープくらい材料あれば【ファミリア】で作れるし!」

 

「いいからいいから。私も食べたいし。ねっ?」

 

「………は、はぁ。すみません……」

 

本当にどうしたんだこの人は……と思いながら、ブラムはティオナの後をついて行った。が、その足を止めた。

 

「待った」

 

「んっ?」

 

「ティオナさん、今お金ありませんよね?確か、武器を借金して作ってたような……」

 

「それなら大丈夫、ティオネのフィン用の結婚資金(笑)からパクッ……借りて来たから!」

 

「えっ、今なんか不穏な言葉が聞こえたような……」

 

「いいから、行くよ!」

 

「は、はい……」

 

ティオナに手を引かれ、クレープ屋の屋台に連れられた。

 

 

「おいぃ!クソ女!暴れるな!」

 

「ちょっと離して駄犬!殺す!あいつ殺す!」

 

「駄犬でいい!この際駄犬でいいから大人しくしてろバレるだろうが!」

 

「後で本当にボコボコにする……!」

 

グヌヌッと悔しそうに唸るティオネを何とか抑えながら、ベートは二人の様子を覗き見た。

買ってもらったクレープを、ブラムは嬉しそうな顔で頬張っていた。

 

「チッ……男の癖に奢られやがって。情けねえ……」

 

「何よ、なんだかんだあの子のこと気になってるんじゃない」

 

「ちっげーよバカ。本当のことを言っただけだ」

 

「ツンデレ」

 

「殺すぞ」

 

「それよりベート、私もクレープ食べたい」

 

「ああ?あいつら消えたら買ってくりゃいいだろ」

 

「私もクレープ食べたい」

 

「だからテメーで買って来いって……」

 

「買って?」

 

「ああ?なんで俺がテメーなんかに奢んなきゃいけねんだよ。寝言は寝て言えカス」

 

「男は女に奢るものなんでしょ?」

 

「そうは言ってねえだろ。男が女に奢られるのが情けねぇって言ってんだろうが」

 

「じゃあ私、ベートの分のクレープも買ってきてあげる」

 

「ああ⁉︎テメッ、汚えぞ‼︎」

 

「ねぇ、どうするの?」

 

「チッ……わーったよ。クソ女。あいつらが消えたらな」

 

「やりっ♪」

 

嬉しそうにガッツポーズするティオネだった。

 

 

クレープをあーんしてもらう、というテンプレイベントを終えたあと、二人はようやく【ゴブニュ・ファミリア】に到着した。

 

「こんにちはー!」

 

「げぇ⁉︎壊し屋⁉︎また壊したのかお前!」

 

開口一番で酷いことを言われても、ティオナは気にした様子なく笑顔で言った。

 

「違う違う。今日はこっちの装備を作ってもらおうと思って」

 

ズイッとティオナに前に突き出される形でブラムは出て来た。

 

「いいだろう。なんでも作ってやる」

 

「………その変わり身、ムカつくなぁ」

 

不満そうにティオナは言うも、【ゴブニュ・ファミリア】のメンバーは態度を変えようとしない。そのままブラムに聞いた。

 

「それで、何を作って欲しいんだ?」

 

「そのっ……不壊属性の洋服が欲しくて……」

 

「不壊属性の?また無理言い出したな」

 

「で、ですよね……。すみません、お邪魔しました……」

 

「いやいやいや、無理言い出したってだけで無理だとは言ってないから。だからそんな泣きそうな顔するな、俺たちの嫁」

 

「よ、嫁⁉︎僕、男の子ですよ!」

 

「男の娘だって嫁になれるんだよ」

 

「あれ、なんかニュアンスに違和感が……」

 

「とにかく、任せろ。おいテメェら!今やってる全部の仕事をキャンセルしろ!不壊属性の服を作るぞ‼︎」

 

「ええっ⁉︎ちょっ……僕だけ特別扱いなんて……!」

 

「いいから俺たちに任せな。お代はいらねえ」

 

「えええええ⁉︎いやそんな流石にそれは……!」

 

「良かったね、ブラム」

 

「ティオナさん⁉︎全然良くないですよ!」

 

「いいんだよ。こういう時は従っておけば」

 

「は、はぁ……。なんか、すみません……」

 

「いいんだ、まかせとけ!嫁!」

 

「だから嫁じゃないですってば!」

 

「じゃ、寸法とか服脱いで取るからこっちこい。………ふひひ」

 

「変なことしたら私キレるから」

 

「すいませんでした」

 

 

夕方、帰宅中。あの後、色んな店に寄ったりして、ほとんどカップルのデートだった。

 

「ふぅー、どうだった?ブラム?」

 

「楽しかったです、けど……どうしてこんな、急に誘ってくれたんですか?」

 

「うーん……何となく?」

 

「な、何となく?」

 

「うん。ブラムが死んじゃったって聞いたときさ、すごく悲しかったんだよね。それで、今思えばからかってただけだなーって思って。だから、たまにはいっぱい遊ぼうと思ってさ」

 

「………ティオナさん」

 

「楽しんでくれたなら良かったよ」

 

ニコッと微笑まれ、ブラムはどきっとした。やっぱこの人は可愛い、そんな事を思いながら尻尾をふりふりさせていた。

 

 

「………成長したわね、ティオナ」

 

「お前はなんで、親目線なんだよ」

 

その話を後ろで聞きながら、ティオネはウンウンと頷き、ベートはジト目でティオネを睨む。

 

「だから言ったろうが。取り越し苦労だって。お前どうしてくれんの?今までの時間、俺クレープ奢ってストーキングしてただけなんだけど」

 

「いいじゃない。あ、もしかしてアイズの方が良かった?」

 

「おい、クソ女。お前ほんと殺すぞ」

 

「は?あんた、今日一日でクソ女って言い過ぎだから」

 

「あ?やんのかオイ」

 

「上等よ」

 

街中で喧嘩してたまたま通り掛かったガレスに怒られた。

 

 


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