ロキファミリアの囮役   作:杉山杉崎杉田

31 / 43
デート

 

ロキの部屋を出て、ブラムは部屋に戻ろうとした。だが、目の前にティオナが現れた。

 

「あっ」

 

やべっ、忘れてた。とでも言わんばかりに声を漏らした。ティオナはジロリとブラムを睨んでいる。

 

「………あ、あのっ、ティオナさん……」

 

「……………何」

 

「す、すいません……生きてました……。心配させて、本当にすいません、でした……」

 

「……………」

 

ビビりながらも、頭を下げた。だが、ティオナからの返事はない。

おそるおそるティオナの表情を伺うと、すごい涙目だった。

 

「ブラムー‼︎」

 

「ええっ⁉︎」

 

ガバッと音を立てて抱き付いてきた。

 

「良かった……良かったよぉ〜……!」

 

「て、ティオナさん……」

 

そんなに僕が生きててくれて嬉しかったのか……と、ほのかに感動し、涙を流しそうになるブラム。

 

「これで次の遠征も私達は安全だよぉ〜……」

 

「酷い!いくらなんでもそれは酷過ぎる!」

 

「冗談だよ冗談」

 

「ブラックジョークにも程がありますよ……」

 

ため息をつくブラム。「でもね」と、ティオナは続いた。

 

「良かった、っていうのは本当だよ」

 

「………!」

 

「さて、じゃあ一緒にお出掛けしよっか」

 

「ほ、ほんとです……⁉︎」

 

喜びかけて、言葉を止めた。どうせまたレフィーヤだのティオネだのがついてくるハーレムでもデートではないデートに決まっている。

 

「おっと、騙されませんよ?どうせティオネさんやアイズさんやレフィーヤさんがハッピーセットで付いてくるパターンですよね?いくら僕がちょろくてアホで学習能力皆無でもそのくらい……」

 

「………自分で言ってて悲しくならない?」

 

「……なります」

 

「それに、今回は二人きりのつもりだったんだけどなぁ」

 

「…………へっ?」

 

少し不機嫌そうに頬を膨らませていた。今更、カァッと顔を赤くするブラム。

 

「す、すみません!じ、じゃあ、行きましょうか!」

 

「最初からそう素直に言っとけばいいのに……」

 

やれやれ、と言わんばかりにため息をつきながらティオナは手を差し出した。ブラムの頭上に「?」が浮かぶ。

 

「あの、なんですか?」

 

「何って……手、繋いであげようと思ったんだけど……」

 

「ててててーてて、てってててて⁉︎」

 

「何の歌?」

 

「ほ、本気ですか⁉︎」

 

再び顔を真っ赤にし、手なんかあわあわと虚空を彷徨っている。ただし、尻尾はかなり素直で、ものすごいフリフリしていた。

 

「何、やなの?」

 

「い、嫌なんかじゃありませんよ!む、むしろ繋ぎたいというかっ!あっ、いやでも、下心は無くてですねっ⁉︎……いや、少しありますけど……」

 

かなりテンパっていた。その様子を見て、ティオナは「ぷっ」と吹き出した。

 

「じゃ、行こう?」

 

「は、はいっ」

 

内心、かなりドギマギしながらギコちなく手を繋いだ。

 

(………女の子の手って、柔らかいなぁ……)

 

「………ブラム?」

 

「は、はひっ⁉︎」

 

思わず、ニギニギしてると声を掛けられた。

 

「………あ、女の子と手を繋ぐの初めてなんでしょ」

 

「へっ⁉︎いやっ、そのっ……は、はい……」

 

「じゃ、行こうか?」

 

「よ、よろしくお願いいたします!」

 

終始、緊張しっぱなしだった。

 

 

「…………何、あれ」

 

その様子を見ながら、ティオネが呟いた。

 

「あん?どうした」

 

そう呟くティオネに、ベートが声を掛けた。

 

「ちょっと!見なさいよあれ!あんたの弟分が私の妹に絡まれてるのよ!珍しい事に!」

 

「誰が誰の弟分だ。つーか、自分の妹をそんな風に言うかお前」

 

「だって考えてみなさいよ!ティオナよ⁉︎あのティオナ!それがからかわずにデートするなんて……天変地異の前触れよ!」

 

「だからそこまで言うかお前」

 

「とにかく!後をつけるわよ!」

 

「なんでだよ!つーか俺も⁉︎」

 

「当たり前でしょ⁉︎あんたの弟分が今、ティオナの毒牙にかけられようとしてるの!」

 

「そこまで言うかお前。結構エグいなお前」

 

「い、い、か、ら、行くわよ‼︎」

 

「だからなんで俺……!」

 

ベートはティオネに引き摺られる形で、二人のあとをつけた。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。