「ほぉおおおああああああッッ‼︎」
ソード・スタッグの群れから逃げ回るブラム。それを見ながらアスフィは呟いた。
「………なるほど、あれが【逃足】の由来なわけですか」
「あの……ブラムの前ではそれ言わないで下さい。気にしてるみたい、ですから……」
「いいから攻撃をしろォオオオオオオオオ‼︎」
怒声が聴こえてきて、アスフィもアイズもルルネも隙だらけのモンスター達を簡単に始末した。
「ひゃ〜っ、やっぱ強いなぁ〜」
アイズの戦闘を見てルルネが呟いた。
「ルルネさん達も、すごいですね……」
「伊達にLvを偽ってたわけじゃないからなぁ。私はともかく、アスフィや他の連中はすっとぼけた顔して結構な武闘派だよ」
そうルルネの言う通り、ファミリアの連携は高いし、一人一人の技量もすごかった。
(特に……)
アイズの視線の先にはアスフィがいる。指示を出してるだけで戦闘の様子は少ないが、短剣捌きは別格だった。
「ん、アスフィが気になるのか?」
「……アスフィさんのLvっていくつ?」
「4だよ」
「ファミリアの到達階層は?」
「37階層。モンスターがえらい強いし、流石に深入りはしてないけど」
「なるほど……」
と、アイズはそう呟きながら戦闘を進めた。すると、アスフィが戻って来た。
「【剣姫】。貴方の率直な意見が聞きたいのですが、この依頼についてどう思いますか?」
「……どういう意味ですか?」
「街襲撃の件に関して、ルルネから大まかに聞いています。謎の宝玉に執着する、黒ローブなる人物の依頼……今回の騒動も危険なものだと思いますか?」
その台詞を聞いて、アイズは間を置いて頷いた。
「本当に厄介なことに巻き込まれてしまいましたね……」
話を横で聞いてたルルネが肩身狭そうにするが、アスフィは特に何も言わなかった。
で、そのまま24階層の正規ルートを進んで行く。しばらく歩いてると、目の前に巨大な十字路が現れた。そして、薄闇の中を無数の影が動いていた。モンスターの大群だった。
「うげぇ……」
ルルネが嫌そうな顔で言った。
「アスフィ、どうする?」
「どうせ駆除しなければいけません。ここで始末します」
「仕方ない、行くか……」
言いながらブラムは首をコキコキ鳴らしてモンスターの群れの方へ歩こうとする。だが、その肩をアスフィが掴んだ。
「いえ、待って下さい」
「へっ?」
「貴方には18階層を出てから働いてもらってばかりだ。ここは我々に任せてもらえますか?」
言われて、思わず涙が出そうになった。
「あ、アスフィさん……」
「な、なんですか?」
出そうになった、というかほとんど泣いてるブラムに軽く引きながらアスフィは声を発した。
「あなた……良い人ですね……」
「は、はぁ?」
「うちのチビアホバカ金髪ショタジジイアラフォー団長じゃそんな言葉は絶対出ませんよ……」
「ふ、普段はどういう扱いを受けてるのですか?」
「1人で特攻、的になって隙だらけになったモンスターをその他で叩く」
「は、はぁ……それはなんとも……」
「僕、アスフィさん達と友達になりたいです!」
「わ、分かりましたから落ち着いてください。まずはあの群れを殲滅するのが先……」
と、言いながら群れの方を見ると、モンスターは全滅していた。真ん中に立つのはアイズただ1人。
「……」
「……」
「……もう全部彼女一人でいいんじゃないですかね」
「……帰っちゃう?」
「そういうわけにもいかないでしょう……」
げんなりした様子で話すアスフィとルルネにブラムは口を開いた。
「いつもの事ですよ。あそこの金髪戦闘マシーンは」
「ブラム、集合」
集合かけられて心底ビビりながらアイズの元へブラムは歩いた。怒られた。その様子を見ながらルルネがアスフィに聞いた。
「さて、アスフィ。これからどうする?」
「とりあえず、モンスターのいる方に進みます」
「?」
「モンスターが押し寄せてくる方面へ向かえば、その近辺に恐らく原因があるはずです。食料庫が大量発生の端を発しているというのなら、我々はモンスターが教えてくれる方角に進むだけでいい」
とのことで、一同はモンスターが押し寄せてきた方角、北へ向かった。