ロキファミリアの囮役   作:杉山杉崎杉田

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修行

 

 

飯が終わり、ブラムは部屋で本を読んでいた。その時だ。

 

「ブラムー!」

 

バタンッ!と勢いよくドアが開かれ、反射的に読んでいた本を背中に隠した。現れたのはティオナだった?

 

「チョーっと、ダンジョンに……今、何隠したの?」

 

「い、いや……これは、その……」

 

言えなかった。対象年齢5歳くらいのヒーローモノの本を読んでたなんて。

 

「い、生き物図鑑です!」

 

「へ〜え?」

 

ニヤニヤと笑うティオナ。ダメだ、逃げ切れないと本能的に悟った。が、ティオナは構わず飛び掛った。

 

「見せろー!」

 

「ひゃあっ!や、やめて下さい〜!」

 

まるで襲ってるような絵面だった。当然、力比べでティオナに勝てるはずもなく、あっさりと本は奪還された。

 

「えーっと……なになに?絵本?」

 

「……子供っぽいですか?」

 

「ああ、これか。懐かしいな〜。あたしも子供の頃好きだったよ」

 

「……………」

 

意外とからかわれなかった。

 

「? でもなんで隠したの?」

 

「こ、子供っぽいってからかわれると思って……」

 

「そんなことしないよ?」

 

どの口が言うか!と思ったが堪えた。

 

「それよりダンジョン行かない?みんなでさ」

 

「? ダンジョンですか?なんで急に」

 

「実は少しお金稼がないといけないんだよね。武器の代金とか色々あって」

 

「………後先考えずに武器作るからですよ」

 

思わずジト目で見てしまった。

 

「お願い、手伝って!」

 

「いいですよ、別に」

 

「ほんと⁉︎いやー相変わらずブラムは優しいね」

 

「そ、そんなことないですよ!」

 

「お?照れてるの?照れてるな?」

 

「っ! て、照れてません!」

 

「よしっ、じゃあ行こっか」

 

「ちなみにみんなというのは誰がいるんですか?」

 

「アイズとティオネとレフィーヤとフィンとリヴェリアかな」

 

「団長も行くんですか?」

 

「うん」

 

「あーい」

 

 

で、外。ブラムは腰に二本剣をぶら下げて準備万端である。

 

「前から思ってたんだけどさーブラム」

 

ティオナに声を掛けられた。

 

「はい?」

 

「なんで剣二本あるの?使って無くない?」

 

「使ってないのは逃げ回ってるから何ですけどね……」

 

「あ、その事なんだけど、」

 

と、フィンが口を挟んだ。

 

「今日はブラムにも強くなってもらいたいから、僕と一緒に狩りしよう。なるべく、多対一にはさせないようにするから」

 

「団長……」

 

「だからさ、その……代わりと言ってはナンだけど……」

 

と、言いにくそうにフィンは口籠った。

 

「あ、明日から毎日僕のオムライス作ってくれ!」

 

「な、何言ってるんですか⁉︎」

 

「頼む!それくらい美味しかったんだ!」

 

「べ、別にいいですけど……」

 

なんてやってると、ブラムの顔面に拳が迫ってきた。

 

「うわっ⁉︎」

 

慌てて躱すブラム。

 

「チッ、外したか。ごめんなさい、蚊がいたの」

 

ティオネが不快そうな顔で白々しく言った。

 

「いやっ、外したかって言ってたからね⁉︎というか何するんですか!」

 

「いえ、団長に何か虫が寄り付いていたものだから」

 

「むしろ寄り付かれてましたけど⁉︎」

 

「いいから団長から離れろおおおおおお!」

 

「ギィヤアアアア!」

 

追うティオネと逃げるブラム。すると、ティオネの肩にティオナが手を置いた。

 

「ティオネ、ティオネ」

 

「何よ!」

 

「逆転の発想、ブラムにオムライスの作り方教わればいいんじゃない?」

 

「…………」

 

その瞬間、ティオネが急に土下座し始めた。

 

「作り方教えて下さいお願いします」

 

「変わり身早っ⁉︎」

 

と、一応解決して一同はダンジョンへ入った。

 

 

 

「おりゃりゃりゃりゃりゃーーっ!」

 

元気よく雄叫びを上げながらティオナは武器を振り回す。ミノタウロスがバラバラに飛び散った。

 

「危ないわね〜、当たったら痛いじゃないの」

 

「痛いで済むんですか?」

 

ティオネの台詞に苦笑いでレフィーヤがツッコミを入れる。

 

「よそ見をするなレフィーヤ!来てるぞ!」

 

「はっ……きゃあ⁉︎」

 

リヴェリアに言われ、前を見るとミノタウロスが迫っていた。

 

「ひぅっ」

 

ガッと悲鳴をあげながら顎を殴りあげた。

 

「喉をつけ!」

 

「はいっ!」

 

リヴェリアに言われた通り、喉を突いて倒す。

 

「お前は遠距離からの魔法に慣れ過ぎたせいか、敵に近づかれると慌てる癖がある。まずは心構えからだ。魔導士といえど近接戦は不可避と肝に銘じておけ」

 

「は、はいっ!」

 

と、リヴェリアの楽しいパーフェクト魔導士教室の少し離れた所では、フィンの戦闘教室をやっていた。

 

「ひぇえええええええ!」

 

「コラ、逃げるな!」

 

フィンに怒られるも、ブラムはミノタウロスの群れから逃げ回る。

 

「だから逃げるな!」

 

そのブラムの襟首をフィンが掴んだ。

 

「ぐえっ!」

 

「戦、えっ!」

 

と、フィンはブラムをミノタウロスに投げ付けた。

 

「うそぉおおおおおおおおおおおおッッ‼︎」

 

絶叫しながらミノタウロスと衝突。

 

「いでぇええええええ!」

 

鼻を押さえながら悶え転がる。そのブラムをミノタウロスが見下ろした。「喧嘩売ってんのか?」みたいな感じで。

 

「ご、ごめんなさぁあああい!」

 

『ヴォオオオオオオオオオオ!』

 

「うっふぉおおおおおおおお!」

 

慌てて躱す。そのブラムの手をフィンが掴んだ。

 

「ダメだ、逃げてちゃ!」

 

「だ、だってあの量……!」

 

「少しでも僕とアイズが相手にするから、ブラムも逃げない!」

 

「は、はいぃ……!」

 

涙目で返事をした。で、ミノタウロスと相対する。

 

(そうだ、少しでも強くならないと……!)

 

そして、地面を思いっきり蹴ってミノタウロスへ向かった。

 

「うわああああ!」

 

ミノタウロスの攻撃をかい潜り、ジャンプして肩を踏み台にした。剣を抜きながら背中を斬ろうとした時だ。目の前に二頭目のミノタウロスの顔がある。

 

「ジェットストリームアタックぅ⁉︎」

 

「ぶ、ブラム……!」

 

二頭目のドムタウロスの拳がブラムのボディを見事にとらえた。

 

「ぐあっ……!」

 

壁に叩き付けられ、地面に倒れる。

 

「いてて……」

 

「何やってるんだ……」

 

フィンがミノタウロスを仕留めた。

 

「大丈夫か?」

 

「………無理です」

 

「大丈夫そうだな」

 

「鬼ですか!」

 

冷酷な一言にブラムは思わず肩を落とした。

 

「でもフィン、もう階層王まで来ちゃったよ」

 

アイズに言われてフィンはため息をついた。

 

「ブラム、ここまでミノタウロス何匹倒した?」

 

「えーっと……四匹です」

 

「………はぁ、まぁいいか。階層王を倒して休憩にしよう。着いちゃったものは仕方ないしね。みんな、行くよ」

 

フィンが言うと、全員は階層王のフロアに突入した。だが、

 

「ありゃ?階層王いないけど誰か倒しちゃったの?」

 

何もいなかった。

 

「ンー街の冒険者が総出で片付けたみたいだよ。交通が滞るからって」

 

で、一同は18階層に降りた。

 

「ん〜、ようやく休憩〜」

 

「いつ来ても綺麗ですねこの階層は」

 

「今はどうやら昼のようだな」

 

ティオナ、レフィーヤ、リヴェリアと言った。

 

「うう……疲れました」

 

「お前は四匹しか倒してないだろ」

 

「でも僕が一番動いてたと思うんですけど……」

 

疲れた体を引きずりながら愚痴るブラム。一同は街の奥に進んだ。

 

「買い取り所で魔石やドロップアイテムを引き取ってもらって、それから……」

 

「宿はどうするの?またいつもみたいに、森の方でキャンプ?」

 

「ンー、今回くらいは街の宿を使おうか。野営の装備も持って来ていないしね」

 

「でも、団長……一週間も寝とまりすれば結構な金額になると思いますよ?ここはリヴィラなんですから……」

 

「宿代くらいは僕が払いますよ。ティオナさんとかに払わせたら、結局武器のお金稼げないですから」

 

「いいのかい?ブラム」

 

「いいですよ別に。僕はお金あっても使いませんし」

 

「そうか。じゃあ頼むよ。でも明日からの特訓は1mmも負けねぇからな」

 

フィンに言われ、ぎくっと肩が震えた。で、一同は宿へ向かった。すると、リヴェリアが言った。

 

「……街の雰囲気が少々おかしいな」

 

「そういえば、いつもより人が少ないような……」

 

レフィーヤが賛同したように言った。で、宿に到着。が、ヤケに人が集まっていた。

 

「何これ、何事?」

 

「殺しだよ」

 

聞いてもいないのに群れの中の一人が言った。

 

「殺し?」

 

フィンが聞き返す。

 

「ああ」

 

「……みんな、ちょっと僕が見てきますね」

 

「僕も行くよ」

 

ブラムとフィンが足の間を通って突撃した。

 

「団長⁉︎待ってください!」

 

ティオネが止めたが、無視して二人は突撃した。

 

「ちょっとあんた達道空けて……!団長が一人で危険地帯に……」

 

「えっ?一人?」

 

「お願いだから聞こえてるでしょ…!団長が…ねぇ……!」

 

で、ブチ切れた。

 

「道あけろって言ってんだろ⁉︎はっ倒すぞ!」

 

踵落としで地面を叩くと、地割れのように前の人が横に分かれた。

 

「団長〜私もお供します♪」

 

「あぁ…ほどほどにしてくれよ……」

 

引き気味にフィンが言った。で、宿の中を進むと、異臭がした。

 

「………これ」

 

「どうした?ブラム」

 

「死体の匂いだよ。それも、人の死体」

 

「………なんだと?」

 

そして、ブラムの鼻を頼りに進むと、一つの部屋に辿り着いた。

 

「ここからです」

 

で、フィンが中に入ると、異臭が一層強くなかった。そして、床には頭の上半分が無くなった男の死体が転がっていた。

 

 


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