織田信奈の野望 〜乱世に迷いし少年〜   作:ふわにゃん二世

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原作の織田信奈の野望では『十面埋伏陣』→『石兵八陣』という順番でしたが、この作品ではその逆という設定にしています。


鬼の家緋村

美濃から逃げ延びた織田信奈は悔しそうにしていた。その後も何度か織田は美濃に侵攻しているがその度に竹中半兵衛の策によって阻まれていた。

 

「あぁ〜!もうっ!なんなのよ!石兵八陣⁉︎十面埋伏陣⁉︎陰陽術の霧⁉︎わけわからないわよ!」

 

竹中半兵衛にいいようにしてやられた信奈は相当ご立腹のようで終始不満をあたりにぶちまけていた。

実は美濃攻めの前に信奈は美濃から逃げ延び、尾張で隠居生活に勤しんでいる道三に諌められていたがそれを聞かず強行していたのだった。

 

「やはり、美濃攻略の鍵は竹中半兵衛か……」

 

未来から来た少年、相良良晴はそう言いながら頭の中でゲームで得た『竹中半兵衛の調略』を思い浮かべていた。しかし道三はうーむ、腕を組む。

 

「じゃが、半兵衛を抜きにしても侮れん、ワシの作った稲葉山城は難攻不落。それに向こう側には緋村家がついておる」

 

「緋村……確か現当主長隆殿は道三殿とは盟友と聞き及んでおりましたが…」

 

「なあ、ずっと思ってたんだけど緋村家ってなんだ?」

 

良晴隣に座る虎の被り物を被った前田犬千代に聞く。

 

「……良晴、知らないの?」

 

「だってそんな大名家ゲームには出てこないからな」

 

「緋村家、美濃国黒野の大名家で現当主長隆殿は剛勇の持ち主で勝家殿以上の武勇を持つお方です。そしてそのご子息も父譲りの武勇を誇り、『緋村は鬼の住まう家』とまで言われています」

 

未来には登場しない大名家に戸惑う良晴のために長秀か説明する。尤も「マジかよ、勝家よりも?」と良晴はさらに戸惑ってはいたが。

 

「しかし、長隆殿のご子息は隆成殿と義隆殿の二人は知っておりますが、緋村長門とは何者なのですか?」

 

「うむ、長門は長隆殿の三男。今は緋村家の軍師を務めておる。初陣では黒野に侵攻してきた浅井の軍勢七千をわずか二千弱程度で大損害を与えておる」

 

「「な、なんだってー⁉︎」」

 

道三の言葉に勝家と良晴が同時に驚きの声を上げた。

 

「おそらく長良川で義龍軍が突如統率が取れなくなったのも今考えれば長門の策のような気がしてくる」

 

義龍は史実では長良川で果てるはずだった。それを良晴の必死の説得で逃げるとなった時に、急遽義龍軍が統率を乱し、味方同士で乱戦になっていたのだ。それは勿論長門の策で疑心暗鬼に陥らせる為であったのだ。そんな長門に戸惑っている時、良晴は長森であったあの武将、緋村長門のことを思い浮かべていた。

 

(………あの緋村長門って凄いやつなのかこっちに味方になってもらえたら、信奈の天下に近づくんじゃないか?)

 

 

 

 

 

「へっくし‼︎」

 

その頃長門は黒野に一時帰還し屋敷で政務に勤しんでいた。長門は豊臣秀吉が行った『太閤検地』を再現する為に、計画書を作成している。そのほかの書類作業を終え、長門はふぅ、と溜息を吐いた。そして、いつものように三線を弾く。

その脇に、梅が瞬く間に長門の背後に跪いていた。

 

「………長門様」

 

「ご苦労さん、どうだった?織田は何かうごきはあったか?」

 

「…………はい、どうやら織田の侍大将の相良良晴というものが僅かな手勢を率いて美濃へと向かいました」

 

「そうか………となると、竹中半兵衛を調略しに来たのか」

 

「……………恐らく、長門様の仰る通りかと……」

 

「………配下の者によりますと、井ノ口で竹中半兵衛の家臣面接なる者がやっているとの情報が」

 

実は長門は良晴とは違い、その後梅の調べで紛れも無いかつての親友相良良晴ということが確認できていた。しかし、それが明確になったからこその悩みがあった。なぜ彼はここにいるのか。なぜ、彼が侍大将になっているのか?

 

「………高次、支度をしろ」

 

「はい?な、長門様?」

 

「井ノ口に行くぞ。ちょっと気になることがある」

 

「え?今からですか?昨日帰ってきたばかりですよ?」

 

「だから政務をある分全部終わらせたんだろうが。ほら、早く支度しろ」

 

高次にそう言い放った長門は井ノ口に赴く為に隆成に許可を貰いに行くところだ。

 

(良晴……….なんでお前がこの時代にいるんだ?なんの為に………竹中半兵衛もあるが、あいつのことも気になるな)

 

長門はかつての親友に会い、彼の考えを聞く為に井ノ口に向かう準備を始めた。

そして……

 

ガッシャーン‼︎

 

突然の音に驚くが、音の正体は足を引っ掛けた高次が湯呑みを落とし、割ってしまったのだ。

長門が井ノ口に行く為に黒野を発ったのは、湯呑みを落としてから一半刻後になった。

 

 

 

 




長門にもうひとりふたり欲しいですねー

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