美濃国。金華山、稲葉山城の麓の町、井ノ口。長門は彼の側近である高次と共に井ノ口を訪れていた。
「……長門様。やはり道三様の時とは違って城下の様子が変ですよね。なんというか………活気がないと言いますか……」
「多分戦が始まって不安があるのはそうだが、義龍が美濃の関所の復活させたのも少なからずあるのかもな」
城下の活気の無さを見て不思議に思った高次は長門に問う。実際に美濃の国主が道三の時代は美濃の関所を撤廃し商業の発展をしていた。自国の外で商業をするためにはその国の関所で関銭を支払わなければならない。そしてその関銭は国主の義龍や美濃の国人たちの懐に一定の関銭が支払われていた。ちなみに緋村では長門の献策で関所は撤廃されている。その他にも検地を行なったりなどしている。
今回の目的は『竹中家士官面談』が開催される為、長門は竹中半兵衛を見たいと言う興味本位で参加することにしたのだ。それともう一つの目的は、
「多分良晴の奴も来るだろうな……」
彼の元・親友相良良晴である。彼は無類の戦国ゲーム好きであった為、恐らく半兵衛の調略についてくるであろうと考えていたのである。そして彼に何故ここにいるのかなど聞きたいことが山ほどあったのだ。
そして井ノ口の長良川沿いにある鮎屋が遠目に見えてきた。
「あそこの鮎屋で竹中半兵衛の士官面談があるのですね」
「ああ………なんだありゃ?」
長門の眼の前では虎の被り物を被った少女前田犬千代に鮎で餌付けをしている男。と言うなんとも言え無い光景が広がっていた。しかもその餌付けをしている男と言うのが長門が会いたかった親友、相良良晴であった。
(なんだぁあいつは何やってんだ?女好きというのは知っていたが、まさか、ロリっ娘をペットにする趣味が出来ちまったのか?)
心の中で親友を心配する。それは当然であるだろう。久しぶりにあった親友がそっちの趣味に走っているとは思いもしなかった。
(ま、まあ他人に迷惑をかけてるわけじゃ無さそうだし、いいか)
長門の脳内会議も終わり取り敢えず、鮎を食べるかとなり馬を降り鮎屋に入る。
そして
「犬を飼い慣らす猿か………これは天然記念物かな?」
「なんだと⁉︎誰だって………お前⁉︎もしかして」
「お久しぶりですな。えっと……相良……良晴殿でしたかな?」
良晴は食べていた鮎を落としてしまった。ちなみに落ちた鮎は「………勿体無い」と犬千代がくすねていた。
「そなたらも士官面談なのだろう?少し話さないか?」
そして店の主人から鮎を貰って運んできた高次も共に良晴との対話をした。
*
「なるほど、未来とはそんなところなのか」
長門と良晴は話す言葉が柔らかくなっていた。良晴と打ち解けてきた事を装っているようだ。こっちは知っているが相手は自分は死んだと思っている為、それは言うべきではないと判断したのだ。
「ここに来たということはそなたも竹中半兵衛を?」
「ああ、俺様の説得で織田に来てもらう。そうすれば、美濃をとれるしな」
「説得できればの話だろ?」
「大丈夫だ。それは!それよりもあんたさ……」
「お若いの、半兵衛に士官する為に来られたのかな?」
良晴たちの前にどこか軽薄そうな笑みを浮かべる老将が座敷に座り込んだ。その老将に長門は心当たりがあった。
「お久しゅうございます。安藤殿、ご健勝そうで何よりです」
「おお、そなたは緋村長門殿。久しぶりじゃのう」
長門たちはひとしきり挨拶を済ませ、安藤伊賀守に案内され半兵衛のいる奥座敷に案内される。
そこには艶やかな美少年が正座していた。
「お前は、浅井長政⁉︎」
「貴様は……サル⁉︎」
突然、良晴がその美少年に噛みつき、浅井長政と呼ばれた美少年のほうもそれに乗っかる。そして彼らの言い合いを長門と高次はただ眺めていた。
「高次、あれは浅井長政で間違い無いんだよな」
「はい、忍び部隊に探らせましたが、人相はそっくりですね」
「これはこれは緋村長門どのではありませんか。私は近江商人の息子、猿夜叉丸と申します」
長政はイケメンオーラを出しながら長門に挨拶をする。長門もそれにならって挨拶を返す。
「では、わっちは下の階に集まっている貧乏浪人どもを解散させてくる。じきに半兵衛が参るであろう」
どうやら銭無しの浪人はお断りらしい。長門の横では良晴、犬千代、長政の三人がいがみ合っていた。
「お初にお目にかかる。いかにも、俺が竹中半兵衛重虎」
いつの間にか、奥座敷のど真ん中に白面長身の青年が一人、ごろりと寝そべっていた。
今回は短めにします。ここで区切るのが丁度良さそうだったので。
け、決して話数稼ぎとか、そんなんじゃ無いんですからね!
すいません冗談です。
では、誤字、感想あればよろしくお願いします。