Fate/Problem Children   作:エステバリス

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混沌の爪と蛮神の心臓につられてイベントにかまけてた僕は悪くない(真顔)。だって心臓はジャックのスキル上げに24個使うし爪は沖田さんとジャックのスキル上げに102個使うんだもの!死ねるわ!

つまり悪いとすれば……それは運営だぁ!/運営さん爪と心臓を比較的楽に手に入れられるイベントありがとうございます!

追記
ジャックちゃんの心臓と爪の数間違えてました。なので本当は心臓33個と爪90個です。……是非もないネ!






くえすちょんふぁいぶ その名を刻むは、血の言葉

 

 

唐突であるが、ドラキュラの由来を知っているだろうか。

 

箱庭において箱庭の貴族、兎に並ぶ龍の騎士ドラキュラとは中世ルーマニアの王、ヴラド三世が自らを竜の子……すなわちドラクルと名乗ったことに起因する。

 

また、ヴラド三世は国政などに優れ、国を護るべく鬼神の如く獅子奮迅の活躍をした様からルーマニア本土では護国の鬼将とも呼ばれる。

 

だが、彼はその一方で反逆者に容赦がなかった。自らに逆らう者や異国の捕虜を次々と串刺しに処し、まるで血を吸うかのように自らは食事を行う……その残忍な手口から彼は串刺し公と呼ばれた。

 

彼がドラキュラ……吸血鬼と呼ばれるのもまた、その残忍な行いから来た当然の帰結なのかもしれない。仮例、その彼が国のためよかれと思って行ったことであっても……彼ら英雄とは、未来のイメージによって事実を塗り替えられた哀しき存在でもあるのだ。

 

◆◇◆

 

「サーヴァント、というものには色々と後世のイメージが付与される厄介な特性があってね、今言ったヴラド三世はその代表格と言ってもいい」

 

ジキルの説明を聞きつつ、ジャックは静かに渡されたコーヒーを飲む。しかし苦かったのか、少し眉を潜めてコースターに置き直す。

 

しかしジキルはジャックに聖杯戦争とサーヴァントについて説明しているうちに熱くなっていたのか、それを気にせずに雄弁と語る。

 

「サーヴァントの力の源になっているのは聖杯からのバックアップの他に信仰や知名度っていうのもあるんだ。恐らくそれが作用して予想外の効果……すなわちイメージの押し付けが起こっているのだと推測できる。もしかしたら"ジャック・ザ・リッパー"が少女の姿をしているのは犯人を娼婦とする説の存在からその体形を成している可能性だって━━━」

 

「長い、にがい」

 

バッサリとぶったぎられた。あまりに唐突に、身も蓋もないツッコミが入ったせいで思わずジキルはずっこけそうになった程だ。

 

クイッ、と理知的に眼鏡を正す。まぁ相手は子供、長い話が嫌いなのはわからなくもない。だがしかし、聖杯戦争の基本ルールからやや外れた知識をもう少し教えてほしいと殴り込みに来たのは彼女の方だろうに、と言いたくなったジキルは悪くないはずだ。

 

「……長いのは悪かったけどさ、そもそもキミの方から聞いてきたんだろう。本当にもう……」

 

「でも長いんだもん」

 

どうにもジキルは子供というのは苦手だ。話を聞いてくれないし、一方的に話を聞かされるし、ていうかそもそも精神的に子供ほど面倒なものはないし。悪いことづくめもいいとこだ。

 

子供の相手をしていて嬉しいところと言えば、自分の言葉で屈託のない笑顔を向けてくる時くらいか。当然長ったらしいうんちくばかりの彼にそんなことはかなりハードルの高い事なのだが。

 

「いいかい、それじゃあ僕ももう少しわかりやすく、聞きやすく説明するからそっちもちゃんと━━━」

 

「邪魔するよ陰気眼鏡」

 

ジキルが再度説明をしようとしたその時ガラッ、とそれを遮るような声と共に戸が開かれた。

 

ちらり、と声の主を確認して嘆息する。その視線の先には男女が三人いた。

 

一人は白夜叉。心なしどころじゃないくらいピリピリとした空気を纏っている。

 

もう一人は男だ。銀のメッシュの入った黒髪を携えており、それなりの顔をしているものの、どこか下卑たヘラヘラとした笑顔がそれを打ち消しあっている。

 

最後は女。紫の長髪におよそ女性らしくない、十六夜ほどはあろう大きな体躯。そしてその体形には不釣り合いなほどに小さい衣服は嫌でも目を引く。また両目どころか鼻下まで隠しかねない大きな眼帯も特徴的だ。

 

なによりもジャックが反応したのは女の方。ただ三人の中で一番目を引く以外にも━━━その独特の空気感だ。

 

先日出会ったアタランテやジキル、なにより自分自身ともよく似たこの感覚━━━間違いなく一つの答えを暗示している。

 

「白夜王、態々貴女が彼を招くなんて余程なにかあったようだね。どういうことだい」

 

「どうもこうもない。先程此奴のコミュニティの者共がそこの小娘のコミュニティの本拠に不法侵入したのだ。私はその間を取り合うのだよ」

 

「不法侵入とは失礼なことを言うじゃあないか。そもそもアレはこちらの所有物だった訳だし━━━アレが元々所属していたコミュニティに逃げ込むようにアンタが仕向けた可能性だってあるだろう?」

 

人をからかうような鼻につく話し方だ。この男の話し方は幾分か慣れてきたが、やはりウザったいものはウザったい。

 

「なんだと……!?」

 

「白夜王、落ち着いて。いくら貴女が身内贔屓と言えどここで無為に怒るのは得策でもない」

 

ジキルに諌められ、白夜叉はその態度を隠すことなく引き下がる。

 

それを見て男は気を良くしたのか、あれやこれやと頭に来ることばかり話し出す。

 

やれ、"名無し"に気を良くする白夜王は"サウザンドアイズ"の面汚しではないのか、やれ、そんな白夜王に尻尾を振る"名無し"には誇りもなにもない。

 

そんな話が延々続くかと思っていたのだが、暫くしてまたガラッ、と襖が開かれた。

 

「おにぃさん、あすか……黒ウサ?」

 

ジャックが呟いた通り、現れたのは十六夜、飛鳥、黒ウサギの三人だ。十六夜はともかく、二人ともどこか釈然としない、白夜叉のようなイライラとした態度をしている。

 

「どうしたの?それにおにぃさん……()()、なに?」

 

ジャックが問うたように、十六夜は肩に少女の石像を持っていた。その少女はロリータと呼べるような衣装を纏っており、どこか先程のジキルの話に出てきた吸血鬼を連想させる美しさだ。

 

石像とは思えない、幻想的な美しさ。陳腐な表現だが、それこそが一番相応しいとすら思えてしまうのだ。

 

「これか?これは……まぁ気にすんな。そのうちわかる」

 

「ぶー」

 

「悪かった悪かった。すぐ説明してやるから」

 

「はぁい」

 

よしよし、と頭をくしゃ、と掻き分ける。乱暴だがあやすような行為にジャックは甘え、気持ち良さそうに目をつむる。

 

「へぇ、コイツが箱庭の貴族の兎ねぇ。ていうかミニスカガーターってエロいなオイ。キミ、ウチのコミュニティに来なよ。あ、俺ルイオスって言うんだけど。三食首輪つきで迎えるぜ?」

 

「わかりやすい外道ね。ガルドとはまた違ったベクトルの」

 

「そもそも黒ウサギの美脚は俺らのモンだっつーの」

 

「その通りです。黒ウサギの生脚は皆様の、てなに言わせようとしてるんですか問題児様!」

 

バシュン、と場の空気を台無しにする一発。流石は問題児といったところか。

 

「生脚……?黒ウサの脚、生だとおいしいの?」

 

「美味しくありませんヨ!?」

 

場の空気に流されてジャックもボケる。実に彼ららしいのだが、その場を見ていたルイオスはバカなものを見るように高笑いをしだしたのだ。

 

「ブ、クァ、アッッハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!なに!?なんなのアンタら!?"ノーネーム"って芸人集団のコミュニティなのぉ!?アハハハハハハ!!アヒ、ヒヒハハハ!!━━━ぁー、笑った笑った。なんだよ、それならお前ら纏めてウチに来いっての。僕、娯楽大好きでさぁ?なんならそれなりの金額払ってもいいぜ?まぁ勿論その美脚は毎晩ベッドなりで見させてもらうけどさ」

 

「御断りでございます。私は礼節を弁えぬ方にお仕えし、肌を晒すほど低俗でもありません」

 

「え、その服見せるものじゃねーの?」

 

「違います!これは白夜叉様がこれを着て審判の仕事をすれば報酬三割増しにすると言われまして……ぇと……その……」

 

「へぇ……」

 

後半は言ってて恥ずかしくなったのか、ゴニョゴニョと聞こえづらかったが……内容はだいたい把握できた。十六夜は少し考えて白夜叉の方に振り向き━━━

 

「超グッジョブ」

 

「うむ!」

 

「……いい加減に本題に入らせてください」

 

閑話休題。

 

「……以上です。我々としてはそちらのコミュニティの所有するヴァンパイア及びその追手が許可なく我々の本拠に侵入してきたことは明白。この屈辱は両コミュニティでの決着を以て晴らすものと主張します」

 

事の成り行きはこうだ。元々"ノーネーム"にいたものの、コミュニティ崩壊の期に"ノーネーム"から引き離されてルイオスのコミュニティ"ペルセウス"の所有物となった元・同志、吸血鬼のレティシアが侵入……という体で一時帰還。そこで十六夜と戦闘……恐らくコミュニティ再興の話を聞いて試しに来たのであろうが、それを行った。

 

そしてそれが終わってすぐさま"ペルセウス"の人間とそこの女性が現れ、レティシアをその恩恵で石像にした。

 

黒ウサギはこのタイミングが同志を取り戻すチャンスなのだと理解して敢えてレティシアを乏めるような言葉を選んでいる。彼女を慕っていたという黒ウサギからすればそれこそ屈辱だろう。

 

だがルイオスはその説明を聞き流して、かったるそうなな欠伸をひとつすると

 

「嫌だね」

 

とはっきり断った。

 

「な!?何故です!?」

 

「いやさ、それそっちがでっちあげた可能性あるじゃん?吸血鬼が暴れたって証拠あんの?」

 

「っ……それ、は……」

 

「そもそもアンタらあの吸血鬼の元・お仲間さんでしょ?逃げ出すことの理由なら僕よりもそっちにあると思うし、なによりそれならアンタらが盗んだって可能性もある」

 

「言い掛かりです!」

 

「あっそ。なら調べてもいいんじゃない?もっとも、それで痛い目見るのは僕らでもアンタらでもないと思うけど」

 

ニタァ、とイヤらしい笑みを白夜叉に向ける。白夜叉は軽く流したが、それだけでレティシアがコミュニティに来れたのは彼女の手引きがあったということを暗喩させられる。つまりこの男、真相をわかってるし、自分が絶対優位だと理解もしている。

 

その上でこの交渉に応じたのなら━━━性格がひん曲がってるとしか言えない。

 

「さってと……つまらねぇ話も終わりそうだし僕はそろそろ帰ってあの吸血鬼を売っ払うとするかなぁ」

 

わざとらしく立ち上がる。ルイオスは尻を軽く叩いて襖に手を掛けようとした時、ああ、そうだ。とわざとらしく顔を半分振り返らせる。

 

「あの吸血鬼の買い手のコミュニティ、箱庭の外にあるんだったなぁ。天幕は日の下を歩けない吸血鬼のためにある━━━それがなかったらアイツ、どうなるかなぁ?」

 

「あ、なたというヤツは……!!」

 

「アッハハハハ!!しかしアイツもバァカだよねぇ。他人の所有物になるなんて恥辱を被るなんてさぁ。それも、自分の魔王のギフトを売り渡してまで」

 

「……え……?」

 

「そうまでして手に入れた仮初の自由だぜ!?それなのに昔のお仲間さん達はこうして助けに来ることもできやしない!プッハハハハ!!あぁ~あ、可哀想に……あの吸血鬼、目を覚ましたらなんて思うかなぁ?」

 

それはつまり━━━彼女が己の生命線たる魔王のギフトを売り渡してでも"ノーネーム"に助けを求めに来ていたということか!?

 

黒ウサギの胸中は更に混乱したものとなる。それを見たルイオスは張り付いた笑みを更に深くさせて言う。

 

「そこで、取引だ。箱庭の貴族。吸血鬼は返してやってもいい。その代わり━━━アンタがほしい」

 

ルイオスの言葉を聞いた飛鳥はすぐにその場を立ち上がる。これまで聞いてきた侮辱に加えてその発言は、彼女の反応を早めるには充分すぎた。

 

 

「なっ、何を言っているの!?そんなもの応じられるわけがないでしょう!?」

 

「そうかなぁ?フェアトレードだと思うぜ?龍の騎士ドラキュラと箱庭の貴族ウサギ……レートは釣り合ってるし━━━それかなに?キミらは元・仲間の身はどうでもいいってんだ」

 

「っ……!!」

 

「ホラホラ……キミは献身的な箱庭の貴族だろう?それなら自分の仲間のために喜んで身を差し出すっていうのが普通じゃあないの?帝釈天に身を捧げる程の精神ってそんなもん━━━」

 

言葉は最後まで紡がれなかった。その直前にルイオスの手前で何度か、剣線が重なった音がしたからだ。

 

「………」

 

「………」

 

ジャックと女性だ。恐らく、ルイオスの言葉に我慢が効かなくなったジャックが彼を強襲、ずっと辺りを警戒していたであろう女がそれを止めた……というところか。

 

「じゃま」

 

「邪魔をしていますから」

 

ギリ、ギリ……とジャックの方が押され気味だ。だが女性は女性で、二本のナイフを一本のダガーで受け止めているせいか、少しだけ攻めあぐねている。

 

少しだけジャックは辛そうな顔をしたが、すぐに身体を後ろに引っ張り、得物に加えていた力を抜いて武器を手放した。

 

「━━━!」

 

「おにぃさんきらい。しんじゃえ」

 

突然のフェイントに体勢を崩した女を尻目に、ジャックはルイオスの首を落とさんと鞘の中のチョッパーに手を伸ばし、その首を狩ろうとする━━━

 

「そこまでだ。それ以上の狼藉は客人とはいえ"サウザンドアイズ"の者として看過できない」

 

ジキルがジャックの腕を掴み、ギフトカードに手を伸ばしているルイオスを目で制した。

 

ルイオスはジキルのことが気に入らなかったのか、チッ、と漏らしてギフトカードを仕舞う。

 

「手を出したのはソイツだろ」

 

「キミの態度にも問題があったとは思わないのか……ペルセウスの七光り」

 

「っ!!」

 

今度はルイオスがジキルに怒りの眼差しを向けた。だがそれは怒りというには余りに弱々しく、諦感の近いものも感じられる。

 

「……ルイオス様、先程の話ですが、少し待って頂けませんか?どうするのかと、決心するのかのための時間を何卒」

 

しかし、そんなルイオスの気分を再び高揚させる発言を黒ウサギは口走った。それを聞いた彼は再び顔を変え、そうか、そうかと嬉しそうに呟く。

 

「黒ウサギ、貴女!?」

 

飛鳥が正気を疑うかのように彼女の肩を揺する。だが彼女の目の色は迷いを抱きつつも決心を着けたかのような、ハッキリとした意志が宿っていた。

 

「オッケーオッケー、そうだな。あの吸血鬼が取引されるのは一週間後だ。それまでに僕の満足行く答えを出してくれよ?さ、行くぞライダー」

 

気分をよくし、ハミングを刻みながらルイオスは襖を開けて立ち去っていく。

 

その後を追うように出ていった女性の御辞儀はどうにも意識に残った。

 

◆◇◆

 

「……動いた」

 

「何が?」

 

処変わって某所。アリスとランサーは以前と風変わりしない平原で肩を並べていた。

 

Fate(運命)……て言ったら、笑うかしら?」

 

「いいや、お前がそう感じたのならそうなのだろう。生憎そういったことには疎いからな。俺には判るようなことでもない」

 

「あら、素直ね……いえ、素直なのはいつものことか」

 

アリスはただ、平原に広げた鍋の蓋に目を向けている。それを見てクスクス、と幾度も笑う。

 

「これは運命ね……あたしもこんなことになるなんて思いもよらなかった……思いもよらなかったことだとしても、運命だから必然なのね」

 

ポン、と鍋が一冊の本となる。刻まれた物語の名は、"Fate/Children"(運命の子ら)

 

「くるくるくるくる廻るドア、行き着く先は……何処へ行く?」

 

 

 

━━━女の話をしよう。運命に弄ばれて、望むことなく凡ての終止符へと駆り出される、運命の子供達の。

 

 

 






ジャックメインのお話はくえすちょん、アリスメインのお話はアンサー、としております。これには物語的な問い掛けをするジャックと物語的に謎を生んでは明かすアリスで対比になればいいなぁ……みたいな感じでつけました。

今回はイベント突っ走ってたこともあって難産気味でしたが、どうにか投稿できてよかったです。それではまた、次回!

































それにしてもターキーが食べたい。


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