Fate/Problem Children   作:エステバリス

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沖田さんの復刻ですよマスター!

石溶かせ(脅迫)




くえすちょんしっくす 英傑、二人

 

 

"アンダーウッド"の一連の観光を終えてすぐ、耀は宛がわれた自室のベッドに倒れるようにうつ伏せになった。

 

木の根と藁葺きの匂いに包まれて思わず寝落ちしそうになるが、ハッと目を覚ます。

 

「っと、いけないいけない」

 

そもそも、春日部 耀が"アンダーウッド"に来た理由は多くの動物の力を我が物にする事なのだ。友達百匹できるかな、とまでは行かずともより多く、更に多くという確固たる決心がある。そうでなければ順番を譲ってくれた十六夜に顔向けできないとも彼女は考えている。

 

「……そう言えば十六夜はヘッドホン見つかったかな。案外ジャックが寂しいからって隠したなんて事は……ないか。あれは素直で物分かりのいい子だし」

 

ふと、十六夜のヘッドホンの事を思い出す。特徴的な焰のマークが着いたヘッドホンだ。

 

確かアレは父の持っていたビンテージ物のヘッドホンととても似ていた。

 

「十六夜のいた時代は確か二十一世紀初頭だったっけ……その時代では流行りだったとか……まあいいや。帰ったら聞こう」

 

軽く汗をかいて背中辺りが気持ち悪いので着替えよう。そう思ってパパっと着替えの服を取り出す。その時カタン、という音がしたのだが生憎今の耀の気分は着替えモード。ジャケットを脱いで、シャツのボタンを外していざ脱衣

 

「大変です耀さ━━━」

 

「━━━」

 

つくづく、ジン=ラッセルという少年は身近な女性に関して運のない少年であった。

 

ジャックに拉致をされて、飛鳥に仕方なかったとはいえ人体の限界を越えたダッシュを強要され、耀の危篤に立ち会い。

 

そして今、思春期入りかけの少年は女性の半裸を見た。

 

「うわあああああ!!? うわあああああああ!!! ごめんなさいごめんなさい忘れます!!」

 

ジンは現状を忘れて部屋から退室してバクバクと鳴る心臓を必死に抑え着ける。

 

(見てしまった見てしまった見てしまった見てしまった!! ていうか女性の部屋にノック無しで入るのはそれは失礼だろ。じゃなくて今は緊急時だから仕方ない……なくない!)

 

アレは白夜叉様の言っていた人の神秘の一つ"NO-BURA"なるものだったのだろうかなどという煩悩を捨て去り外の光景を見る。今"アンダーウッド"は突如現れた巨大な体躯を持つ亜種人類、巨人族に襲われていたのだ。

 

その光景を再確認するとジンは改めて耀の部屋をノックして彼女に扉越しに話し掛ける。

 

「い、今のはごめんなさい! でも本当に緊急事態なんです! 入ってしまっても構いませんか!?」

 

『…………………………いいよ』

 

外の騒動で聞き取り辛かったが許可を得たので再度入室。そこには顔を紅潮させているもののいつもの耀の姿があった。

 

「で、何」

 

「そ、それが」

 

ジンが事情の説明を仕掛けた時、大地が揺れた。

 

「っ、地震……?」

 

「違います! これは"魔王残党"の巨人族の襲来です! 耀さんも早く戦闘配備に……」

 

その時、ジンの口が止まった。何事かと彼が注視している方向に耀も目をやるとそこには彼女も予想だにしていなかった物が落ちていた。

 

「━━━嘘。なんで……!?」

 

「どうして十六夜さんのヘッドホンがここに……!?」

 

二人の間に沈黙が訪れるが、ヘッドホンを見た耀の反応からジンはすぐに彼女を信じる事にした。

 

「詳しい話は終わってから聞きます。でも今はっ!?」

 

ジンの言葉と歩みを遮るように巨人の腕が現れる。

 

思わず舌打ちをするジン。腕が生えてきた方向を睨み付けるとそこには巨人の目玉。

 

「っ、そういう訳です耀さん! 彼らはギフトゲームを無視して襲ってきた典型的な無法者! 遠慮せずに相手をした方が賢明です!」

 

巨腕がジンに向かって伸びた瞬間、耀は鷲獅子の旋風を左手に纏ってそれを止める。

 

「っ……やらせない!」

 

風のベクトルを変えて拳を受け流すと空いた右手に纏う風で巨人の手首を両断する。

 

苦悶の雄叫びを挙げる巨人を尻目に耀はジンを抱えて部屋から脱出してすぐに飛鳥の声が掛かる。

 

「春日部さん! ジンくん! 無事ね!?」

 

「はい! なんとか!」

 

ジンが返事をすると飛鳥も強く頷き、ギフトカードを掲げてディーンを召喚しようとするが、それを慌ててジンが止める。

 

「待ってください飛鳥さん! 地下都市でディーンと巨人が暴れようものなら都市が崩壊してしまいます!」

 

「じゃあどうすれば!」

 

「耀さんと地表に行ってください! そこはより多くの巨人族がいます、そこでならディーンも!」

 

「でも、それじゃジンは」

 

言うだけ言って二人から離れようとするジンだったが、それを耀が引き留める。

 

彼は強力な意志を込めた目で耀に向き直ると一言、大丈夫ですと言う。

 

「地下には黒ウサギやカボチャのジャックさん達がいます。それに僕はマスターですから。いざとなればジャックを呼ぶ事だって出来る。だから大丈夫」

 

でも、となお引き留めようとする耀だったが、彼女の肩を飛鳥が掴む。

 

「行きましょう春日部さん。戦える私達には優先する事があるはずよ」

 

「……わかった」

 

飛鳥に諭され、耀は旋風を巻き上げて飛鳥と共に地表に上がって行った。

 

それを見届けたジンは走る速度を上げて急いで安全な地帯に向かうが、急いだのが逆効果だったか、多くの巨人に目を付けられる。

 

「っ……怖くない、怖くない!」

 

掌を紙一重で避け、数メートルの高度差のある別の根の道に飛び降りる。

 

巨人の脚がすんでのところで頭に当たって首から下が無くなるところだったが問題ない。数メートルの飛び降りは脚に強烈な痛みを催したが、足を止めてしまえばそれ以上の痛みが待っているのだから止まってはいられない。

 

「GuOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOO!!!!」

 

巨人の咆哮が耳をつんざく。鼓膜が破れるかもと思ったが幸いにもその心配はない。

 

(令呪はまだ切れない……もっと危険なゲームだって山のようにあるんだ。そう簡単には使えないな)

 

腕、脚、時には頭。巨人のあらゆる部位がジンに牙剥き、それらをすんでのところで回避する。

 

避ける。避ける。避ける。

 

時にはUターンをして避け、時には多少の危険を冒してでも立ち止まる。直感と目に頼ったその避け方は彼も生死を掛けたゲームに参加した者なのだと思わせる。

 

が、幸運はそう長く続かない。

 

痺れを切らした巨人達は一斉にジンに手を伸ばす。

 

避ける手段は最早ない。令呪を切ってももう遅い。

 

万事休すか、と思いながらそれでも活路を見出だそうと周囲を見渡していたその時━━━

 

「うむ! 自らの身の危険を冒した逃走劇、命潰えるまで諦めという言葉を持たぬその気概、見事であった! 後は━━━わしに任せよ!」

 

巨人の腕が一気に弾き飛ばされた。何が、と認識するまでもなく次々に巨人の腕が飛び、目が潰れ、脚を取られて行く。さも、舞いでも踊るが如く。

 

「残念じゃったなぁ木偶の坊共! わしがおる限りこの地、この小僧には指一本……いや、姿一つ写させはせんぞ!」

 

ジンの前に降り立ったのは少女だった。黒い軍服と帽子を被り、左手には木と鉄の混じった銃を。右手には赤い刀を持ち、長い黒髪を靡かせた王の如き少女。

 

「GUROOOOOOOOOOOOOO!!!」

 

叫ぶ巨人達を尻目に少女は右手の手袋を外してジンに手を伸ばす。ジンを見下ろす少女の情熱的な視線はまさしくジンの思い描く「人を治める長」そのものであり、少女に羨望の目を向けながら彼女の手を取った。

 

「立てるか小僧。これより天元を突破する故、走れるならば全力で走るが良い」

 

「は、はい」

 

少女と共にジンが走り出す。それに反応するように巨人達も雄叫びを挙げながら二人に迫る。

 

「はっ! 鈍い鈍い鈍いわうつけが! その程度でわしを止めようなどと五十年早いわたわけ!」

 

少女の周囲に突如現れた銃が巨人達の目を潰し、爪の間に弾丸を撃ち込む。

 

だがそれだけでは巨人も怯まない。彼らは一斉に少女に剛腕を向けて少女を掴む。

 

「魔神の同族が、わしに敵うと思うてか!」

 

だが、少女にそんな物は通用しない。少女━━━否。先程の少女とよく似た姿の()()は左手に持つ銃から強烈なビームを照射して一気に巨人達を凪ぎ払う。

 

ふっ、と銃口に息を吹き掛けながら女性はまた走り出し、ジンに追い付く。

 

「おい小僧!」

 

「はい! なんでしょう……ってその姿は!?」

 

「ええい、どうせこの世界にも子供体型から大人体型に変わる輩はおるじゃろ! いちいち驚くでないわ!」

 

若干理不尽な怒られ方をしたが、それは確かに事実なので彼は口を噤む。女性はそんな事よりと言うと後ろの巨人達に注視する。

 

「わしはこれからあの不届き者達を成敗する。最早一人でも大事なかろう?」

 

「え、ええ。ありがとうございます。えっと……」

 

そう言えば名前を聞いていなかった、とジンは彼女をどう呼ぶかと悩むが、それを察した女性はニッタリと笑いながら彼の頭をくしゃくしゃと撫でる。

 

「良い。わしの名を知らぬ不敬、特別に許す。では改めて彼奴らにも名乗ろうではないか!」

 

女性はそこで立ち止まり、巨人達に向き直る。

 

依然変わらず吼える巨人達を見て彼女は口を歪ませ━━━

 

「黙らぬか不敬者共が! これからわしは貴様らとあの勇ある小僧に名乗る故な、そのデカい耳から心の臓にまで響かせてくれるわ!」

 

銃声がジンや巨人の耳をつんざくが、少女の声はそれを遥かに上回る声量で彼らに届く。手に持った刀と銃を手放すと、彼女は高らかに叫ぶ。

 

三千世界に屍を晒せ。

 

生にもがくその瞬間こそ人は生涯最も輝かしい光を放つ。

 

「いざ、大焦熱が無間地獄! 三界神仏灰燼と帰すが良い! 我が名こそは第六天魔王波旬、織田 信長也!!」

 

その時、世界は巨大な樹の根から燃ゆる寺と化した。

 

「さあ、もがくが良いぞ。いずれにせよ人間なぞ五十も生きれば悉くが死ぬ運命。であれば亜人とはいえ貴様らも死ぬのは道理! ここでその命、潰してくれるわ!」

 

そう叫ぶのと同時に巨人達が炎の世界に焼き尽くされ、心の臓を撃ち抜かれる。炎の中生きる巨人達には容赦なく三千の銃が襲い掛かる。

 

地下都市から変貌した世界が元に戻る頃には、地下の巨人全てが死に絶えていた。

 

◆◇◆

 

織田 信長を名乗る女性が地下で暴れ回っている頃、地上でもまた一人の女性が巨人に蹂躙の限りを尽くしていた。

 

彼女の名は貌亡き者(フェイス・レス)。その名の示す通り白と黒の舞踏仮面を被った女性は全ての巨人を殺し尽くすと共にその剣を収めた。

 

「……この力は未だに慣れませんね。いずれは慣れるでしょうが、果たしてそれが何時なのか」

 

彼女はチラリと己のギフトカードを見る。そしてすぐ、カードを仕舞う。

 

ふと自分が向いていた方向とは真逆の方向を見ると、空中から落ちてきた少女と彼女を抱き止めた少女がいるのが見えた。フェイス・レスはゆっくりと彼女達に近付いて、歌でも歌うような透き通った声音で話し掛けるのだった。

 

「お怪我はありませんか?」

 

 






ジンくんの女難は続く! のかな?

ノッブの魔王化はビジュアル的に往年の深夜魔法少女アニメみたいに裸になるそうですね。皆様は普段のトランジスタグラマーノッブとグラマーノッブのどっちのノッブが好きなんでしょう?

作者はぐだぐだ本能寺のちびノブが一番好きです。




以下茶番

茶番ネタが無くなってきました。


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