Fate/Problem Children   作:エステバリス

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うわあああああああああああああああえっちゃん爆死したあああああああああああああああああああああああ!!!!

もうやだ何も信じたくない何が十連したら出たわ~だあんにゃろうふざけんな爆死しろ!!

くっそおおおおおおおおおおおおおおお!!!!

バチンッ!!

え……!?

友人「今は辛かろうがエステバリス……!! それらを圧し殺せ!!!」

ぼく「……………………!!!」

友人「失った金ばかり数えるな!!! 出なかったものはない!!! 確認せい! お前にまだ残っているものはなんじゃ!!?」

ぼく「!!?…………!!」

うああああああああああ!!!

ぼく「(爆死した)仲間がいる゛よ!!!!」

友人「それはそれとしてアイツ☆5出過ぎだろマジでいっぺん爆死しろ」

ぼく「ほんとそれな」

以上、本当にあった爆死話




くえすちょんふぉう 縁を結ぶは、ひとつの始点

 

 

━━━七七五九一七五外門"アンダーウッドの大瀑布"フィル・ボルグの丘陵。

 

「わっ、……!」

 

「きゃ……!」

 

ピュゥ、と丘陵に吹き込んだ冷たい風に悲鳴を上げる飛鳥と耀。

 

多分に水分を含んだ風に驚きつつも、吹き抜けた先の風景に息を呑んだ。

 

「……、すごい……なんて、巨大な水樹……!?」

 

彼女らの眼下に飛び込んだ景色は根が網目状に張り巡らされた地下都市と、清涼とした飛沫の舞う水舞台。

 

遠目でも確認できる巨大な水樹はトリトニスの滝に通じる河川を跨ぐように聳え、数多に枝分かれした太い幹から滝のような水を放出している。

 

"ノーネーム"の水樹は、此処で生まれた苗木なのである。

 

「飛鳥、下! 水樹から流れた滝の先に、水晶の水路がある!」

 

耀はこれまで出した事がないような年相応の歓声を挙げて飛鳥の袖を引く。

 

巨驅の水樹から溢れた水は幹を通して都市へと落ち、水晶に彩られた水晶を通過して街中に駆け巡る。

 

巨驅の水樹、そして河川の隣を掘り下げられて作られた地下都市。河川の付近は肥沃な泥に恵まれ、人類史上にもナイル川によって栄えたエジプト文明やユーフラテス川とティグリス川によって人の時代を築き上げたメソポタミア文明が代表されるように、文明の発展に添い遂げ続けている。

 

この水樹と地下都市を総じて呼ばれる"アンダーウッド"もまた、河川によって栄え、支えられている一つの文明なのだ。

 

(……あら、あの水晶は確か北側にもあったような……?)

 

「飛鳥、上!」

 

ふと水晶の輝きに既視感を覚えた飛鳥だったが、忙しなくはしゃぐ耀に振り回されて上を向く。

 

遥か上には何十羽もの角の生やした鳥が飛んでいた。

 

唖然と見上げる飛鳥とは対称に耀は熱っぽい声と視線を彼らに向ける。

 

「角の生えた鳥……あれ、鹿角に似てる? 見た事ない種類だ。ねえ黒ウサギ、やっぱり彼らも幻獣なの?」

 

「え、ええ。まあ」

 

「ホント? なんて名前なの? ちょっと見てきていい?」

 

珍しく熱い視線を向けている彼女の姿にどうしたものかと対応に困っていると、旋風と共に懐かしい声が掛かった。

 

『友よ、待っていたぞ。ようこそ我が故郷"アンダーウッド"へ』

 

巨大な翼で旋風を巻き上げて現れたのは、一頭のグリフォン。彼はジャックとジキルが会話をしている間に問題児達が白夜叉に試された試練で耀と競い、友となった者だ。

 

嘴のある巨大な頭を寄せると耀も応えるようにグリフォンの喉仏を優しく撫でる。

 

「久し振り。此処が故郷だったんだね」

 

『ああ。収穫祭で行われるバザーには"サウザンドアイズ"も参戦するらしい。私も護衛の戦車(チャリオット)と、今は正式な相棒ではないが見回りのために臨時で一人乗せている』

 

「相棒?」

 

『ああ、……おい、どうしたのだ。出てこないか』

 

グリフォンがそう言うと少々恥ずかしそうに一人の女性が現れる。彼女は緑色の衣服に緑のメッシュと獣耳を生やした金髪と尻尾。そして身の丈程はあろう弓を右手に持っていた。

 

「っ……そうは言うが。私は彼女らとは少々顔を合わせ辛い。後ろめたくてな」

 

少し顔を赤らめている女性とは耀や飛鳥はおろか、ジンと黒ウサギも面識はない。一体誰なのだろう、と興味深そうな目で見る始末だ。

 

『だが私が我が友らの迎えに行くと聞いて連れていって欲しいと言ったのはお前だろう。そら、名乗らないか』

 

「解った。解ったから嘴でつつくな。……汝らからすればはじめまして、となるか。我が名はアタランテ。かつて"フォレス・ガロ"に所属し、汝らのサーヴァントのジャックと交戦したアーチャーのサーヴァントだ」

 

「っ、"フォレス・ガロ"……!?」

 

「ああ、別に警戒しなくとも良い。私はガルドにいいように扱われていた故、むしろ汝らには感謝しているのだ。真名も詫びついでに、敵対の意思はないという意味合いでな。……ところで、ジャックの姿が見えないが」

 

警戒していたよりも幾分か好意的な対応だったので少しだけ面を食らうが、すぐに調子を取り戻した黒ウサギがその質問に答える。

 

「ジャ、ジャックさんは今回の収穫祭が遠出なので前夜祭はお留守番で御座います」

 

「そうか。……そうか」

 

露骨に残念そうな表情をされた。案外センチメンタルな人なのかもしれない。

 

グリフォンは嘴を自分の背に向けて一同に乗るよう促す。

 

『此処から街までは結構な距離がある。南側には野生区画というものが設けられていて東や北以上に道中に気を付けなければならん。よければ私の背で送ろう』

 

「本当で御座いますか!?」

 

『無論だ。その為に此処に来たのだからな』

 

グリフォンの厚意に耀は素直に深々と頭を下げる。それが今彼女がグリフォンに示せる最大の友愛と信じて。

 

「ありがとう。よかったら名前を聞いてもいい?」

 

『無論だ。騎手やそこのアーチャーにはグリーと呼ばれている。宜しく頼むぞ友よ』

 

「うん。私も耀でいいよ。よろしくねグリー。それでこっちの二人が、飛鳥とジン」

 

『うむ、飛鳥とジンだな。覚えたぞ友の友たち』

 

「二人に挨拶してる」

 

「え、ええ。よろしく頼むわ、えっと、グリーさん」

 

「よ、よろしくお願いします。"ノーネーム"リーダーのジン=ラッセルです」

 

耀の通訳を経てなんとかコミュニケーションを取る二人。頭を下げてからグリーの背に跨がろうとするが、その時アタランテが少し気後れしながらもジンに話し掛けて来た。

 

「リーダーなのか、汝が?」

 

「え? ええ、はい」

「……そうか。いやすまない」

 

アタランテのなんとも言えない表情にジンは妙な感覚を覚えながらもグリーの背中に改めて跨がる。

 

自分の力で飛べる耀はその間、例の鳥について質問をしていた。

 

「ねえグリー。あの鹿角の生えた鳥もやっぱり幻獣なの?」

 

『……鹿角の鳥の幻獣? まさか、ペリュドンの奴らか?』

 

「何、ペリュドンだと?」

 

グリーとアタランテが頭を上げて周囲を索的する。

 

"アンダーウッドの大瀑布"とは反対方向に位置する遠くの水場に耀の言う鳥の群れを見つける。するとグリーは獰猛な唸り声を上げる。

 

『彼奴らめ……収穫祭中は外門に近づくなとあれほど警告したろうに。余程人間達を殺したいと見る』

 

「……? 食人種なの?」

 

「いや違う。ペリュドンは()()()だ」

 

「YES。食べるために人を殺すのではありません。それ以外に理由があるから人を殺すのですよ」

 

ヒョコ、と黒ウサギとジンが背中から顔を出す。

 

「ペリュドンは元々アトランティス大陸という場所から来た外来種と聞いています」

 

「アトランティス……? それって、伝説にある海中大陸?」

 

「YES。天空神の怒りに触れて沈められた大陸です。そしてペリュドンは先天的に影の呪いを持っており、己の姿とは異なる影を映すのだとか」

 

「悪趣味な事に、その解呪方法が"人間を殺す事"なのだ。━━━フン、一定何処の誰の呪いかは知らんがな。生存本能以外で人を殺す理由を持たされた怪物(モンスター)共だ。獣の摂理にも従えぬ哀れな種故、普段ならば情を以て見逃すのだが今は収穫祭だ。再三の警告に従わないのならば今晩の食事はペリュドンの串焼きだろうな」

 

「そ、それは楽しみです。アタランテさんは魔猪カリュドーンの狩りで一躍名を挙げた弓の名手。かのヘラクレスやコルキスの魔女メディアと共にアルゴノーツの一員として海を駆けたのだとか」

 

ジンの心からの称賛にふい、と思わず目を逸らす。色々言いたい事はあるのだが、およそこの前自身の同志を手に掛けようとした人間に言うような賛辞ではないだろうと恥ずかしくなってしまう。

 

「……むう、こうも自分の行いを褒め称えられるのはなんというかむず痒いな。それが年端もいかぬ子供がいち神話のマイナーな人物にそうも言われるとなると尚更に」

 

「ジンって結構人を誑かすのが得意だよね」

 

「な、なんですか突然」

 

「別に。何も」

 

突然妙な茶々を入れた耀に頭を傾げながらも、彼らを乗せた鷲獅子は空を"踏み締める"。それを見た耀もまた彼に続き空を駆ける。

 

「わ、わ!?」

 

『やるな。全力の半分程しか出してはいないが、二ヶ月足らずでここまでついて来れるとは』

 

「う、うん……なんとか。黒ウサギが飛行を手助けするギフトをくれたから」

「YES! 耀さんのブーツには補助のため風天のサンスクリットが刻まれております!」

 

背後で声を上げる黒ウサギだが、そんな余裕があるのは彼女と周囲を警戒しながら軽く吹っ飛んだジンを脇腹に抱えているアタランテだけだ。

 

飛鳥はそうならないよう必死に手綱を握っている。

 

そして三毛猫は黒ウサギに抱かれてはいるものの、風圧に完全にやられていた。

 

『お、おじょおおおおおおおおおおおお!! も少し、も少し速度落としてって旦那に言ったってえええええええええええ!!』

 

ギニャアアアアア!! と叫んでいるようにしか聞こえないが、割りと本気で大ピンチだった。耀は慌てて減速するよう頼む。

 

「グ、グリー。もう少し減速して。後ろが大変」

 

『ん? おお、すまない。アーチャーは平気だっただけに失念していた』

 

「そうは言うがなグリーっ……私も割りと辛いのだぞコレは……私と箱庭の貴族では得意分野が違うっ、サーヴァントだからと言って、結構脆いのだからな……!」

一気に速度を緩めて街の上空を優雅に旋回する。

 

髪を乱れさせ肩で息をしていた飛鳥にも多少の余裕は出来たのだろう。そっと背中から顔を出して眼下の街を見た。

 

「……掘られた崖を、樹の根が包み込むように伸びているのね」

 

「"アンダーウッド"の大樹は樹齢八千年とお聞きします。樹霊の棲み木としても有名で、二千体の精霊が棲むのだとか」

 

『ああ。しかし十年前に一度魔王との戦争に巻き込まれて大半の根がやられてしまった。この景観は多くのコミュニティの協力により、ようやく取り戻した物なのだ』

 

魔王という単語に一同は顔を見合わせる。

 

グリーはそれに気付かないまま旋回し、ゆっくりと街を下る。

 

『今回の収穫祭はその復興記念も兼ねている。故に如何なる失敗も許されないり"アンダーウッド"の復興を東や北にも広く伝える為にもな』

 

強い意思を宿らせて訴える。網目模様の根っこをすり抜けて地下の宿舎に耀達を背から下ろす。すると彼は大きく翼を広げ空を仰いだ。

 

『私はこれから騎手と戦車(チャリオット)を引いてペリュドン共を追い返して来る。耀達は是非とも"アンダーウッド"を満喫するといい。アーチャー、彼女らを頼むぞ』

 

「うむ、引き受けた」

 

「うん、頑張ってね」

 

そう言うや否やグリーは翼を広げて旋風を巻き上げながら去っていく。

 

その背を見送った耀は少し困ったように喋り出す。

 

「……殺人種なんていうのもいるんだね。もし私があの幻獣からギフトを貰ったら━━━」

 

「ダメですよ、耀さん」

 

出した話題がジンにバッサリ切り捨てられる。冗談みたいなものなのだからもう少し花を咲かせてもいいじゃないか、と少しだけムッとなる。

 

「わかってるけど」

 

「いいえわかってません。いいですか、ギフトというのは必ずしも良い恩恵だけとは限らないんです。この前の"黒死斑の魔王(ブラック・パーチャー)"のギフトも本質は風や病を通して死の概念を与える(ギフトさる)ものでした。それは彼女のギフトに掛かった貴女ならわかっているでしょう?」

 

真剣な剣幕になって耀を諭す彼。あまりの必死さに耀だけでなく、その場にいた全員が呆気に取られている。

 

ジン本人は周囲など目に入らず、ただ彼女を本気で心配しているが故に厳しい言葉を浴びせている。

 

「ペリュドンのギフトをコピーして彼らの呪いまで彼らのギフトとして受け継いでしまったらどうなるんですか!? ……そうしたら、僕らに同胞を、貴女を殺せって言うんですか……?」

 

「……わかった。わかったから、そんなに縋るように腕掴まないでよ」

 

驚きながらも、彼の説得には子供故の弱さも感じられた。耀はそれを感じて少々動揺した反応を返す。

 

そして、それを感じたのは耀だけではなかったようで、アタランテもまたその様子を見て確かに安堵していた。

 

(……ああ、なんだ。この子らもちゃんと子供じゃないか。弱さを心で抑え切れていない。私の守れなかったあの子達や今守っている子らと何の変わりもない)

 

アタランテは男を欲した親に絶望され、生まれて間もなく捨てられたという経緯がある。彼女はその時月女神アルテミスの使わした熊のお陰で生き、獣の世界に身を置く女性として成長した。

 

その為彼女は子供という存在に対してある種の祈りがある。

 

全ての子供が幸福に生きられる世界。即ち子が親の愛をしっかりと授かり育ち、それがまた生まれ来る子供に愛を注ぐ。子供が子供として愛される世界。故に獣の感性を持つ彼女は生死感こそドライであるものの、子供には慈悲を見せる。自分のような子が生まれてほしくないという経験者故の願いなのだ。

 

ただ戦えるだけだ。彼らはアタランテの庇護するべき子供と何ら変わりはない。

 

「……若気の至りは構わんが、置いていくぞ?」

 

「なっ━━━」

 

「……そんなんじゃない」

 

なのでアタランテは茶化した。この幸福を守るという意思を強めるために、幸せを堪能する。

 

しかしその堪能もすぐに終わり、宿舎の上から知った声が掛かった。

 

「あー! 誰かと思えばお前耀じゃん! 何? お前らも収穫祭に」

 

「アーシャ。そんな言葉遣いは教えていませんよ」

 

賑やかな声に引かれて上を見ると其処には"ウィル・オ・ウィスプ"のアーシャとカボチャのジャックが窓から身を乗り出して手を振っていた。

 

「アーシャ……キミも来てたの?」

 

「まあねー。こっちも色々あってねっと!」

 

窓から飛び降り、耀達の前に現れてニヤリと笑う。

 

「で、耀はもう出場するゲーム決まってるの?」

 

「ううん、今ついたところ」

 

「なら"ヒッポカンプの騎手"には必ず出場しろよ。私も出るしね」

 

「……ヒッポ……なに?」

 

何それ? とジンに向く。彼は内心黒ウサギに聞いた方が……と思ったが、頼まれた以上は断らない。

 

「ヒッポカンプ、別名"海馬"と呼ばれる幻獣です。タテガミの代わりに背鰭を持ち、蹄に水掻きを持つ半馬半魚と言っても過言ではないかと。恐らく、彼らの背に跨がり水上や水中を駆けるゲームが"ヒッポカンプの騎手"かと思います」

 

「……水を駆ける馬までいるんだ」

 

「前夜祭のゲームじゃ一番大きいものだし絶対出ろよ? 私の新兵器で今度こそ勝つからな」

 

「わかった。検討しとく」

 

パチンと指をならして自慢気に笑うアーシャ。一方カボチャのジャックはジンの前にフワフワと麻布を揺らして近づき、礼儀正しくお辞儀をした。

 

「ヤホホ。お久しぶりですジン=ラッセル殿。いつぞやの魔王戦ではお世話になりました」

 

「い、いえ。こちらこそお久し振りです」

 

「例のキャンドルスタンドですが、収穫祭が終わり次第お届けします。その他生活用品一式も同じくです。……しかし、いやはや"ウィル・オ・ウィスプ"製商品を一式注文していただけるとは! 今後とも是非ともご贔屓にお願いしたいものです!」

 

ヤホホホホホ! と陽気に笑うジャック。

 

飛鳥は彼の前に出てドレスの裾を上げながらお辞儀する。

 

「お久し振りジャック。今日も賑やかそうで何よりだわ」

 

「ヤホホ! それは勿論、私ジャック・オー・ランタンなものですから! 賑やかさが売りで御座います! そちらもご健勝なようで何よりです。前回のゲームはディーンに遅れを取りましたが、何時かリベンジを━━━」

 

「え?」

 

隣で聞いていたジンが疑問の声を上げたのを見て飛鳥は慌てて話題を変えた。

 

「そ、それよりもジャック! 貴方はゲームに参加しないの?」

 

「ヤホホ。私主催者参加がメインなもので。参加者は性に合わないのですよ。今回も主な目的は日用品の卸売りです」

 

「あら、それじゃ参加者はアーシャ一人? 楽勝じゃない」

 

「超楽勝」

 

「おいッ!!」

 

「ヤホホ。して、そこの獣耳の淑女。貴女はどちら様で?」

 

ジャックはアーシャの気を逸らすためにアタランテに話題を振る。

 

完全に蚊帳の外だった彼女は若干面食らった顔をしながら答える。

 

「私か? 私はアーチャー。故あって彼女らの案内と護衛をしている"四本足"のサーヴァントだ」

 

「成る程。私は"ウィル・オ・ウィスプ"のジャック・オー・ランタンで御座います。どうかお見知りおきを」

 

「うむ、宜しく頼むぞ」

 

その後"ノーネーム"一同とアタランテは"ウィル・オ・ウィスプ"と共に貴賓客の宿舎に入った。土壁と木造の建物だが、意外なことに中身はしっかりとしている。

 

水樹の影響で半ば土造りだというのに乾燥していない。ところどころに浮き出る水樹の根は椅子代わりにもなりそのひとつに腰かけた耀は大きく息を吐き、"アンダーウッド"の感想を述べる。

 

「……凄いところだね」

 

「ええ。大自然的というのかしら。北側が人の文明の土地なら、南は自然の文明の土地、というところかしら」

 

「YES! 南側は箱庭の都市建設がされた時に地母神や豊穣神が数多く訪れたと伝わっております。自然神の力の強い地域は生態系が変化しますから」

「そうなのね……でも水路の水晶は北側の技術でしょう? 似たようなのを北側で見たわ」

 

へ? とウサ耳を傾ける黒ウサギ。

 

その隣に座っていたカボチャのジャックは感心したように答えた。

 

「良くわかりましたねぇ。飛鳥嬢の言うとおり、あれは北側の技術ですよ。十年前の魔王襲撃からここまで復興できたのは、その技術を北側から持ち込んだ方の功績だとか」

 

「それは初耳で御座います。一体何処の何方が……」

 

「実は"アンダーウッド"ち宿る大精霊なのですが、十年前の傷跡が原因で未だ休眠中なのだとか。そこで"龍角を持つ鷲獅子(ドラコ・グライフ)"のコミュニティが"アンダーウッド"との共存を条件に守護と復興を手助けしているのです」

 

「では、"龍角を持つ鷲獅子"で復興を主導されている御方が?」

 

「そう。元北側出身者。おかげで十年という年月で此処は再活動の目処が立てられたと聞き及んでおります」

 

「そうですか……凄い御仁で御座いますね」

 

黒ウサギは胸に手を当ててその言葉を噛み締める。

 

━━━箱庭最大の災厄"魔王"に教われた土地を颯爽と現れ復興の手助けをする救世主。

 

まるで異世界から来た四人の問題児たちのようではないか。

 

黒ウサギは思わず、両者の姿を重ねてしまったのだ。

 

「ヤホホ。それでは我々はこれより"主催者"に挨拶に行きますが……どうです? 此処で会ったのも何かの縁ですし?」

 

「YES! ご一緒するのですよジン坊ちゃん!」

 

「そうだね。荷物置いてきますから少しだけ待っていてください」

 

ヤホホ~と陽気に笑い承諾したジャックはアーシャとアタランテと共に宿の外で待つ。荷物を置いた一同は三人に連れられて地下都市を登り、大樹の中心に在る収穫祭本陣営まで足を運ぶのだった。

 

 






アタランテさんがとても可愛いのはだれもが認める事実なんだってはっきりわかんだね。





以下茶番トーク

それはそれとして、とうとう始まりましたね、1.5章。いきなり例の菌糸類の言うとおりぶっ飛ばしてきて作者もビックリです。

特にアヴェンジャーとかんなもんわかるか! ってレベルでした。一応概念上は正解だったんですが……

あとアサシンくんがめっちゃ欲しいです。すげー欲しいです。あの子好み。でも作者はボブを狙う。何故って? ボブまわりで知りたい事が山のようにあるからだよ!

それと、今回はエリちゃんが大活躍でしたね。槍の敵が多く、嗜虐のカリスマの範囲も優秀。強鯖と名高いジャンヌと相互バフが可能。その他のスキルも堅実。宝具は防御貫通。おまけに悪属性。まさしく今回はエリちゃんのための舞台だと思ったんですがどうでしょう!? 感動しました、エリちゃんのファンやめます。


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