Fate/Problem Children   作:エステバリス

17 / 42


お待たせしました。ドキドキハラハラ、オリジナルサーヴァント初登場回。戦闘に出せない分キャラが濃い……と自負してます。




くえすちょんふぉう 想い願うは、小さな成果

 

 

飛鳥が"サウザンドアイズ"の支店に帰ってくると、直ぐ様浴場に送り込まれた。

 

その際白夜叉と黒ウサギの白黒コンビと少々一悶着あったが、それも黒ウサギのツッコミで回避。そして今はやってきた女性陣、耀、ジャック、レティシア、そして先程の小さな精霊がやってきて少しした頃が今である。

 

落ち着いた飛鳥は湯船に浸かりながら静かに、先程起きた出来事を回想していた。

 

(……黒肌の青年。貴族と言っていたわね……じゃあ、アメリカの生まれではないか)

 

真っ黒とも形容できる肌色とは裏腹に彼の装束は清廉という言葉が衣類になったかのような白さだった。立ち振舞い、口調といい飛鳥がこれまでに何人と出会った貴族達を彷彿とさせる。

 

(でも……向こうにいた頃の私を知らないからかしら。嫌悪感はないわ……いえ、むしろ)

 

精神性に裏打ちされたような態度というのが無難か。その高潔で嘘偽りのない言葉には好意を覚える。

 

「飛鳥さん飛鳥さん」

 

いずれ敵対するのかもしれないし、共に戦う事になるのかもしれないという事から彼の素性を知りたいと思っていたはずが、いつの間にか単なる評価に変わってきていたところ、横から現れた黒ウサギがとりとめなく話し掛ける。

 

「……? ごめんなさい、少し考え事をしていたわ。何かしら」

 

「よろしければお聞かせ願いますか?」

 

「別に構わないわ。えっと━━━」

 

「そこのご主人は謎のネズミに追い掛けられていたところを黒髪黒肌の美青年に助けられて、その事を考えているのだよ」

 

「ちょ、レティシア!?」

 

「ははは、嘘ではないだろう? そら、その態度も正解だと言っているじゃないか」

 

「なにそれ気になる」

 

「なんだ飛鳥、ピロートークかの?」

 

「あつぃ……」

 

レティシアの発言を皮切りに次々と寄ってくる。別に隠す事でもないから構わないのだが、レティシアに変な風に茶化されたせいで少し躊躇ってしまう。

 

「っ……でも、そういう意味で考えていたわけじゃないわ。彼はサーヴァントで、私は彼の真名について考えていただけ」

 

「ほほう。それはまた違う方向に興味をそそられますね」

 

肩に乗っかって来た精霊をあやしながら飛鳥は二度目の回想に移る。彼女にとっては黒人というだけでも印象に残るのでわりとすらすらと話せた。

 

「黒い肌と髪をしていたわ。クラスはアーチャー」

 

「私も一目見たが、尋常ならざる存在感を放っていたよ」

 

「なるほど。しかしそれだけではなんとも……他に特徴は?」

 

「……とても大きな弓だったわね。彼の身の丈程はあったかもしれないわ。それと、まるで矢を"その場で作っている"かのように矢を射ていた筈よ」

 

その言葉に黒ウサギは更にやや、といった表情をする。

 

「矢をその場で作っての一射、それも黒い肌……となるとかなり絞られますね。例えば、"アーラシュ・カマンガー"という人物がいますが……知ってます?」

 

「聞いたことないわ」

 

「私も」

 

「たべれるかな?」

 

飛鳥、耀、ジャックとポンポンポンと否定する。やっぱり……みたいな表情をした黒ウサギはこほん、と一つ咳払いをして語り出す。

 

「アーラシュ・カマンガーというのはペルシャ神話に登場する大英雄の事です。日本においてはほとんど無名レベルの知名度なのですが……皆さんにとっての海外ではとてつもない知名度を誇る活躍をなさったのデスヨ」

 

アーラシュ・カマンガー。英語に訳すと"アーラシュ・ザ・アーチャー"。アーラシュこそが弓兵、といったような意を持っており実際にその活躍は多くの武勇を持つ英傑らをして尊敬の念を抱く。

 

それはまさしく、国造り。ペルシャとトゥランの戦争において両国の間に国境を引く事によって戦争を終わらせた救国の戦士。

 

その国境を引いた手段というのが圧巻、文字通りの大地を引き裂く射撃なのだ。ペルシャとトゥランの間に射撃地点からその距離二千五百キロメートルという途方もない距離に線を引いて国に平和をもたらしたのだ。

 

━━━が、戦いを終わらせた英雄は帰っては来なかった。その人の限界を超え国を造るという規格外の一発を放った英雄を神が許さなかったのだと後に誰かが語った。

 

英雄はその一撃を放ったのと同時に五体が四散し、死に至った。

 

「……というのが英雄アーラシュのざっくりとした物語ですね。彼は女神アールマティの加護により弓矢作成の達人だったと言われています。矢を作って撃ったのはその加護があった……とも考えられます」

 

黒ウサギの説明を聞けば聞くほど英雄アーラシュの強さが伺い知れる。

 

━━━曰く、あたかもガトリングガンの一斉掃射の如く撃ち出される弓矢の嵐。

 

━━━曰く、其の狙撃を脅威たらしめる千里眼により短時間先ではあるが、会話の内容すらも把握できる千里眼を持つ者である。

 

━━━曰く、人の世に移った人類史において神代の肉体を持って生まれた者。

 

━━━曰く、其の聖なる献身と流星の一矢による非業の死、普通の人間とは隔絶された若き頃、そして未来を見通す力を持っても尚腐る事なく、英雄であれという矜持と英雄たる器を持つ者。

 

彼を讃え、彼の悲運を嘆く詩は数多くある。イランには彼の勇姿を表した銅像すらもある。単に何故か、日本でその名を知る者がほとんどいないだけなのだ。

 

「……どうでしょう? 私は大英雄アーラシュがそのアーチャーの真名と予想してみますが」

 

黒ウサギの説明になるほど、と首肯していた飛鳥はしかし、と言った風の表情をする。まるで苦虫を噛み締めているかのようでもある。

 

「なんと言うか……そのアーラシュ、ではないと思うわ。確かに彼はアーラシュと同じ、あるいは似たような印象を受ける所もあるのだけれど。……そう、その評価や見聞にあるような高潔さは感じなかったわ」

 

「私もだ。少し会話を交わしただけだったが、彼はまるで己の人生を悔いているかのような眼をしていた。そんな眼をしている人間が民の為に命を投げ出した英雄アーラシュと言えるのだろうか」

 

レティシアも続いて飛鳥に同意する。彼女の意見は箱庭に来て日が浅い飛鳥とは違い戦う者としての直感と理解が多分に含まれていたが、飛鳥自身がその言い方に納得している以上彼女らには少なくともそう映ったのだろう。

 

「そうですか。飛鳥さんが真剣に悩んでいらっしゃるようですし、私も出来る限りのお手伝いはします。なので聞きたい事があれば是非とも私や同志達を頼ってください」

 

「ええ、恩に着るわ」

 

「耀さんも、ですよ。私も白夜叉様も、ましてや"契約書類"にも一人で勝ち抜けとは言及していません。明日の決勝トーナメント、決闘のルールにあるサポーターを使っては?」

 

と、そこで話題は飛鳥が出会ったサーヴァントから耀に変わる。

 

今日行った"造物主の決闘"の予選、耀は順当に勝ち上がって決勝トーナメントの四人の内一人に名を連ねたのだ。所詮"名無し"と高を括っていた者もいたが、それでも彼女に実力がなければここまで来るのは不可能だっただろう。

 

「必要ないよ。私、やれるから」

 

黒ウサギの提案を否とする耀。白夜叉にゲームの提案をされた時もそうだったが、彼女は二の句を言わせない程の力強い眼をしている。

 

「本人がいらないと言うのなら無理に手助けする必要はないんじゃないか? 血気に盛るのは若者の特権だ」

 

「レティシア様……しかしですね」

 

「黒ウサギ、お前はどうにも善意を押し付けようとするきらいがある。献身の象徴、帝釈天の眷属……確かにその名に相応しい程皆を想っているのは事実だ。だがそれも度が過ぎると独り善がりになるぞ。なにせそれは本質的には"自分が正しいと思った事を相手の意見を押し退けてやらせる"という事だからな。……まぁ、その点で言うなら我が主も似たようなものだが」

 

要は互いに譲歩する事を覚えると世渡りが上手くなる、という訳だとレティシアがアドバイス。飛鳥はなんとなくばあやみたいだ、と思いながら有り難く話を聞いている。

 

「ジャックもだぞ。自分はこうだと思っていても他の者達がそうとは限らないからな」

 

「う? ……うんっ」

 

とりあえず返事といった風の反応だ。まぁいずれ解るだろうとレティシアはゆっくり考えていたから特に気にしてはいなかったが。

 

「まぁそういうわけだ、耀。一人で大丈夫と思うのなら私は止めはしないが、その結果は善きにつけ悪しきにつけ、一人でやる以上は自分一人だけに帰って来るぞ」

 

「……覚えとく」

 

その言葉を最後に次々と浴場から出ていく女性陣。飛鳥は普段より汚れた身体を気にして何時もより長風呂を洒落込むのだった。

 

◆◇◆

 

一同が浴場から上がって少しの事、白夜叉の私室には"ノーネーム"の七人と白夜叉、とんがり帽子の精霊、そしてやはり部屋に似合わないソファに腰を掛けるジキルの十人が集っていた。

 

「それでは皆の衆、第一回黒ウサギの衣装をエロ可愛くしよう会議を始めようと」

 

「始めません」

 

「始めます!」

 

「始めません!」

 

ムカー! とウサミミを立てて怒る黒ウサギ。白夜叉はその姿に満足したようで珂珂、と笑う。

 

「まあまあ、冗談だよ黒ウサギ。それはそれとしてだな、おんしには"造物主の決闘"の審判をやってもらいたいのだよ」

 

「あや? それは構わないのですが……いやに唐突ですね」

 

「うむ……それにはある事情があるのだがな、それが少し面倒な事になっていてのう……」

 

はぁ、と露骨な溜め息を吐く。余程面倒な案件だという事はその所作一つでよく解る。

 

「警備に配置した者がのう、何人か行方不明になったのだよ。幸いにも比較的すぐに発見されたのだが……二、三不可解な事があるのだ」

 

「と、言いますと?」

 

「うむ、行方不明になった者達はそれぞれ連続的に行方が知れなくなったのだが、妙な事に発見された時は"全く同じ時間に、それぞれが消えたと思われる場所で、不思議な霧を伴って発見された"のだよ」

 

「ふぅん、まるで神隠し……いや、この場合は天狗隠しだな」

 

「私はこれを不法侵入……即ち魔王の一派がこの誕生祭に紛れ込んでいると考えている」

 

この誕生祭は招待状を受け取っていない"主催者権限"所有者は正攻法では通れないようになっているからな、と付け加える。

 

「あるいは祭りをいい事に便乗して騒ぎを起こした馬鹿者の仕業か。後者であればまだいいのだがな……面倒な事にこんな物もあっての」

 

白夜叉の取り出した紙片、そこには短く簡潔に『北の誕生祭にて魔王襲来の兆しあり』と刻まれていた。

 

「"サウザンドアイズ"は知っての通り"眼"の能力者を多く募らせる傾向にあるコミュニティでの、そのうちの一人は予言の魔眼、それも小規模ではあるがノウブルカラー(運命干渉)級の能力があってだな……と、これは蛇足か」

 

━━━ノウブルカラー。十六夜達のような魔術にはあまり深く関わらない人間には知り得る事ではないが、大概の場合"魔術的な先天的能力"を指す。特に他者への運命干渉を可能とするモノは確実にノウブルカラーとされている。

 

サーヴァント召喚をはじめとした魔術学においては魔眼も立派な魔術である。それこそ以前戦ったライダー、メドゥーサの持つ"石化の魔眼"(キュベレイ)も魔術というカテゴリに含まれる。

 

"眼"の力を持つサーヴァントは生まれながらにして高い魔術素養を持つのと同じ。よってある程度魔術方面に理解のある者が多いのだ。

 

あくまで蛇足のためこの辺りで一旦切りとするが。

 

「まぁかいつまんで言えば予言のギフトを持つウチの者がこういう内容の予言をした、という事だ」

 

「もし魔王の手の者が"造物主の決闘"に紛れ込んでいたとするのなら、連中は何をするのか解らない。だから白夜王は"審判権限"を持つキミに審判を務めてもらいたいと思っているんだよ」

 

「そういう事ですか……では改めて了解しました。"造物主の決闘"の審判を務めさせて戴きます」

 

「うむ、それでは審判用にこのシースルーのビスチェスカートを」

 

「着ません」

 

「じゃあジャックの着てるボンテージスーツを」

 

「着るわけがないでしょう!? そもそもサイズが合いません!」

 

「あげないよ?」

 

「貰いません!」

 

そんな事をしているとそれまでほぼ無関心だった耀が突然思い出したように白夜叉にそう言えば、と問う。

 

「白夜叉、私の明日の対戦相手って誰だか解る?」

 

「解るが、それを主催者が教えるのはアンフェアであろ? 決勝トーナメントに参加するコミュニティの名前くらいなら教えられるが」

 

ピッ、とまた別の"契約書類"を取り出す。

 

そこに書かれた二つのコミュニティ名を見て飛鳥は驚いたように呟く。

 

「"ウィル・オ・ウィスプ"に━━━"ラッテンフェンガー"ですって?」

 

「うむ、この二つのコミュニティは珍しい事に一つ上━━━六桁からの参戦でな。格上と思った方がいい。覚悟しておけよ」

 

真剣な白夜叉の言葉に耀もコクリと頷く。

 

一方、十六夜は参加コミュニティが書かれた"契約書類"を見て面白気な表情を浮かべている。

 

「ふーん、"ラッテンフェンガー"ね……さしずめ相手は"ネズミ取りの道化師"(ハーメルンの笛吹)だったりするのかね」

 

えっ━━━という飛鳥の驚きの声。だがそれはほぼ同時に発生した白夜叉と黒ウサギの声に掻き消された。

 

「い、十六夜さん、今のは」

 

「おい、どういう事だ小僧。詳しく説明してもらおうか」

 

しかし当の十六夜本人はあん? とよく解っていない様子。

 

それを見たジキルは白夜叉と黒ウサギの二人を諫めて彼女の出した質問を具体化する。

 

「すまない。箱庭に来て日が浅いキミ達には解らなかっただろう。……僕もそこまで長い訳じゃないし、あくまで白夜王に聞いた話だ。━━━"ハーメルンの笛吹"というのはある魔王の下部コミュニティだったものなんだ」

 

「何?」

 

「魔王の名は"幻想魔導書群"(グリムグリモワール)。全二百篇以上に及ぶ魔導書から悪魔を呼んだ驚異の魔術師コミュニティ……らしいよ」

 

「しかも一篇から呼ばれる悪魔は複数。何より驚異的なのはその魔導書の一つ一つに異なる強制力を持ち、独自のゲーム盤を持っていました」

 

「━━━へぇ?」

 

面白そうな玩具を見つけた童児のようか眼光を光らせる十六夜を余所に、黒ウサギは説明を続ける。

 

「しかし、盛者必衰と言いますか。"幻想魔導書群"はとあるコミュニティとのギフトゲームに敗北し、この世を去った筈なのです。……しかし十六夜さんは"ラッテンフェンガー"が"ハーメルンの笛吹"だと言いました。童話の類は黒ウサギも詳しくはありませんし、万一に備えご教授していただきたいのです」

 

もしもに備えるという事だろう。何より黒ウサギのその顔が事の重大さを示している。

 

「なるほど、そういう事ならここは我らが御チビ様にご説明願おうか」

 

「え? あ、はい」

 

突然話題を振られたため思わず生返事をしてしまったが、いざ視線が集まるとなると緊張してしまう。なんで先刻白夜叉に啖呵を切った時はあんなに冷静でいられたのだろうか。

 

「……ふぅ」

 

一つ深呼吸。大丈夫、自分なりに答えを見つけて努力したじゃないか。

 

「……"ラッテンフェンガー"とはドイツという国の言葉で、意味はネズミ取りの男。このネズミ取りの男というのはグリム童話の魔導書にある"ハーメルンの笛吹"を指す隠語でしゅ……です」

 

少し噛んでしまったが詰まって何も出ないよりマシだ。話を続けよう。

 

「大本のグリム童話には創作の舞台に歴史的な考察が内包されているモノが複数存在します。"ハーメルンの笛吹"もそのうちの一つで、ハーメルンというのは舞台になった都市の事なんです」

 

グリム童話の"ハーメルンの笛吹"の原型となった碑文にはこうある。

 

━━━一二八四年 ヨハネとパウロの日 六月二六日

あらゆる色で着飾った笛吹き男に一三○人のハーメルン生まれの子供らが誘い出され、丘の近くの処刑場にて姿を消した━━━

 

この碑文はハーメルンで実際に起きた事件の一つを表すモノであり、一枚のステンドグラスと共に飾られている。

 

後にグリム童話の一つに連ねる"ハーメルンの笛吹"の原型である。

 

「ふむ、では何故その隠語がネズミ取りの男なのだ?」

 

「グリム童話の道化師が、ネズミを操る道化師だったとされているからです」

 

滔々と白夜叉の質問に答えるジン。だがそれとは裏腹に飛鳥は静かに息を呑んでいた。

 

()()()()()()()()()……ですって……?)

 

アーチャーに救われる少し前を思い出す。そういえば襲われた際、不協和音のような笛の音色を聞いた事を思い出したのだ。

 

「ふーむ、"ネズミ取り道化"(ラッテンフェンガー)と"ハーメルンの笛吹"か……となれば、やはり悪餓鬼の所為ではなく滅んだ魔王の残党が忍び込み、なんらかの騒ぎを起こしたと見るのが正解……なのか? いやしかし、態々忍び込んだとするのならそのような事をする理由は……」

 

「白夜王、今はそれを考えるよりも誕生祭を穏便に終わらせる事こそが先決だろう。後で僕が"サラマンドラ"に話を着けてくる」

 

「であるな。ジンよ、その情報は有益であった。しかしゲームを勝ち抜かれたのはやや問題あり、か。サンドラの顔に泥を塗らぬよう監視をつけておくが━━━万一があればおんしらの出番だ。頼むぞ、対魔王コミュニティ"ノーネーム"」

 

"ノーネーム"の一同━━━話が長くなったせいで寝ていたジャックを除いてだが━━━は頷いて返した。しかし飛鳥の胸中には依然不安の影が渦巻いていた。

 

("ラッテンフェンガー"が魔王の配下……? なら、この子も━━━?)

 

膝の上でジャック同様すやすやと眠るとんがり帽子の精霊。彼女もまた"らってんふぇんがー"と言っていた。

 

だが、彼女はそんな邪悪な存在には露程にも見えなかった。皆にその事を伝えようかと何度も思ったが、この精霊の安らかな姿を見ては伝えられず、結局その場は解散となった。

 

丁度そんな時、ガラリと襖を開ける音がした。一同の注目が集まると、其処には誰もいなかった。

 

「……誰もいない……?」

 

飛鳥がそう呟くと彼女の真横に一人の女性が面白そうなものを見るように座っていた。

 

「きゃっ」

 

「きゃっ━━━ふふ、聞いたかしらヘンリー、白夜叉。彼女、私が其処にいたんでビックリしたのよ?」

 

心臓が止まるかと思った、なんて思いながら女性を見る。

 

一目で解るような大和撫子だ。幾分華美な格好をしているが、まるでその感想だけはあらゆる人間に共通して抱かせるかのような不思議な佇まいである。

 

「……キミは毎回毎回、普通に出てくる事を知らないのかい?」

 

「知ってるわ。でも普通を追い求めているようじゃダメなのよ。それが私だもの」

 

はぁ、とジキルは溜め息を吐く。自由にクスクスと笑う女性に着いていけなくなっており、どう説明したものかと頭を悩ませる。

 

「……えーと、彼女はサーヴァントだ。クラスはキャスター」

 

「白夜叉やヘンリーから話は聞いているわ、"ノーネーム"。はじめまして、私は"清少納言"。キャスターよ。清少納言とかキャスターとかよりは清原ちゃんと呼んで貰った方が嬉しいわ」

 

清少納言、その名前を聞いて三人は一斉に強張る。日本人である三人にとってその名には聞き覚えがあるなんてどころの話ではない。日本人にとっては知らなくてはならないというレベルの有名人だ。

 

「私、貴方達にとても興味があるの! 没落したコミュニティを再興させ、"そのついでに"世界を脅かす魔王を打倒する異世界からの訪問者━━━とても王道だけれど、主人公達はむしろ一見して王道を外れている! 一目で解る素行最悪の少年と人付き合い最悪の少女に高飛車な箱入りお嬢様! そして何よりも伝説級の殺人鬼! 最高の素材よ!」

 

耀に詰め寄ってキスをしてしまいそうになるくらいの距離で喋りかけてくる。突然そんな奇行をする日本最大級の偉人に人付き合い最悪の少女(耀)は若干引きながらうんうんと相槌を打つ。

 

「……こういう人間なんだ。まぁ、悪いヤツじゃない。けどなんていうか、自分と作品が大好き過ぎて他の事が何も目に入っていないんだ……下手なバーサーカーよりも厄介だよ」

 

「これ納言ちゃんや、耀が困っておるだろ」

 

「白夜叉、何度もいっているでしょう。納言という人間はいないわ。私の清少納言という名前は"清原さん家の少納言"という意味があると。つまりそこは納言ちゃんではなく少納言ちゃんが適切よ。あるいは清原ちゃんね」

 

清少納言の注意が白夜叉に向いた一瞬を突いて耀は全速力でその場から離れる━━━が、気付けば目の前に清少納言が立ちはだかっていた。

 

「えっ」

 

「はっ……?」

 

十六夜ですら困惑した。今清少納言は突然耀の目の前に現れた。先程まで彼女がいた場所を見ても素早く動いたような畳の乱れは見られないし、十六夜の目が正しければ彼女は"まるで霞のように消えて耀の目の前に現れた"のだ。

 

「逃がさないわよ……貴方達は私の作品の苗床になってもらうの! さぁキリキリと"ペルセウス"や"フォレス・ガロ"での出来事や蛇神との事も喋ってもらうわ!」

 

有無を言わせない視線が問題児三人に突き刺さる。ていうかショックで動けなかった。

 

ペルセウスの末裔があんなダメ人間だったとか、伝説的殺人鬼の切り裂きジャックがあどけない幼女だったとか、そんなのより彼女━━━偉大な先人として十六夜ですら少なからず尊敬していた清少納言が、こんな今まで出会った人物の中でもトップクラスの変人であったショックで……動くことができなくなっていた。

 

 






というわけでオリジナルサーヴァントこと清原ちゃんでした! 納言ちゃんって言ったら鬼の質問責めが待ってるゾ!

突然飛鳥さんの真横に現れたり春日部さんの目の前に現れたりとした理由はちゃんとあります。かなりこじつけですけど。連想ゲームが素晴らしい(白目)


以下、FGOトーク

まずは聖杯転臨が実装されましたね。皆様は誰に使ったでしょうか。推し鯖に使ったりガチ鯖に使ったり、伝説のサムライ(ドラゴンスレイヤーレベル100)やレベル100ステラといったネタ(愛ともいう)に走ったり、あるいはまだ実装されない推し鯖のために温存したりとあるでしょう。

僕は実装された日、目覚めて二時間で種火集めまくって嫁の沖田さんと愛娘のジャックをレベル100にしました。とうとうZeroイベで貯めた3億QPが尽きそうです。

続いて水着イベント。堪らないですね! なんかこう色々、たまんねーよ! あとジャックはもう水着だから水着お預けなんでしょうか? かわいいから普通の水着着せよう。あと沖田さんの水着も見たい(欲望駄々漏れ)

第二弾に来るであろう我が王やマルタ殿に備えて一周年で10枚のうちの一部の呼符とログボ分の系六枚を回しました。


水着玉藻がやって来た


勝ったぞ読者様方……この戦い、私の勝利だ……!(第一弾の本命は水着アンメアだったとは口が裂けても言えない)


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。