Fate/Problem Children 作:エステバリス
今年は試練の年なので、早くとも年度末までは月一更新になってしまうかもしれません。
それともうひとつ、前に言っていたオリジナルサーヴァントについてです。
アンケートはだいたい拮抗していました。僕はこういうところヘタレなので保身に走るべきかと考えていましたが、ある方に「それが必要な事ならば出してもいいのでは?」と実体験やその時のその方の考えていた事などを踏まえてアドバイスをくださりまして。おかげで吹っ切れました。
名前は伏せさせていただきますが、この場でその方への感謝とオリジナルサーヴァント一騎の参加を表明させていただきます。
拙文失礼しました。それでは、本編Fate/Problem Childrenをどうぞよろしくお願いします。
突然だが、話は暫く日にちを遡る。
「幾度幾度と繰り返し、夢見て
何処とも知れぬ屋内に黒いロリータ服を纏う少女、アリスがまるで子供の落書きのようなタッチで描かれた魔法陣の中で一つの題名が記された絵本を広げて言葉を紡ぐ。幼い外見には不釣り合いな程、女性特有の抑揚のついた声音で絵本を読み耽る。
アリスの周囲には殿下とその従者、そして二人のサーヴァントがいる。
一人はランサー、そしてもう一人は青い髪の嫌味ったらしいキャスター。基本工房に籠りきりの彼もこの光景には興味があるのか、はたまた面白い物が見られると引っ張り出されたのか。
いずれにせよアリスには関係がない。
「━━━告げる。汝の身は我が物語に、我が命運は汝の厄災に。物語の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。誓いを此処に。我は常世総ての善と成る者、我は常世総ての悪を敷く者。汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ━━━」
その言葉を聞いた途端、一同の目が一斉に見開かれた。アリスが唱えた言葉はまさしく、多少違いがあるものの"能動的にサーヴァントを召喚する"のに使う呪文だ。
そう、彼女は今━━━サーヴァントを呼ぼうとしている。
アリスが言葉を紡ぎ終えると、魔法陣を中心にして突風が巻き起こる。肌にざわつくような不愉快な風で、ともすると命をも奪いかねないと危惧してしまう程の風だ。
やがて風が止むと、魔法陣━━━正確には絵本が置いてあった場所に小さな少女が立っていた。斑の衣服に身を包み、若干背丈に合わない袖を振りながら少女は挑発的にアリスに問うた。
「サーヴァント、アヴェンジャー……真名ではないけれど、ペストと呼んで貰えれば結構よ。問いましょう、貴女が私のマスターかしら?」
◆◇◆
「ハッ、まさかキャスターとはいえサーヴァントがサーヴァントを呼ぶとはな! 前代未聞が過ぎる! いいや、条件次第ではコルキスの魔女といった大物魔術師ならば可能か? どちらにせよこの展開は面白い、実に筆が乗るなぁ!」
不満たらたらな表情と声音で我を忘れ、場所を忘れ、とても楽しそうに羽ペンを走らせる少年がいる。
彼はアリスとは別のもう一人のキャスター。真名を"ハンス・クリスチャン・アンデルセン"。マッチ売りの少女や人魚姫といった童話を描いた世界的作家の一人であり、その時代では珍しい『完全オリジナル』の童話作家でもある。
「お褒めに預り光栄よハンス。なんといっても皮肉屋で、おめでたいくらいに正直なお父さんにそんな評価を賜ったら
「それはどうも雑種娘。俺はお前達を娘だと認識している覚えはないし、俺が物語を書くのはお前達や読者のためじゃない。単に面白いからだバカめ!」
「……親に興味がないとハッキリ言われるのも癪ね」
ふぅ、と溜め息をついて巻き上がった突風のせいでついた誇りをパタパタと払う。
そうしていると斑の少女━━━アヴェンジャーがアリスに視線を送る。
「何かしら」
「いえ。まさかサーヴァントがサーヴァントを呼ぶ、だなんて思っても見なかったから。疑わしかったのだけれど、その手にある令呪を見れば一目瞭然ね」
「あら、令呪、浮かんでたのね。てっきり形式上は殿下がマスターなのかと思っていたけれど」
まぁ、彼女を使役するというのなら殿下でなくアリスがマスターに選ばれたというのもあながち間違ってもいないかもしれない。彼女の宝具は彼女の出自に深く関係しており、恐らくこのアヴェンジャーを含めた"一部のサーヴァント"ならばアリスは
しかし出自の大部分を喪失し、自覚はしているもののある少女の経歴と混同して把握している今のアリスにはそれも理解できない話である。
能力に関する知識は覚えているものの、
「いいわ。いずれにせよ私は貴女の正体にさして興味はないもの、よろしく頼むわマスター」
「ええ、アヴェンジャー……と、このクラスは聞いた事がないわ。説明してもらってもいいかしら」
「構わないわ。……そうね、そこにいる、殿下? 達も知っておくべきでしょう」
「俺達もか。別段予定が詰まっているわけではないから構わないぞ」
さぁ話せ、と殿下は後ろに控えた魔術師風の女性が何処からか持ってきた椅子に座って無自覚で尊大な態度を取る。
アリスが
「アヴェンジャー、というのはその名の通り"復讐者"という意味を持った
「それじゃ、ペスト……アヴェンジャーちゃんもそういう復讐に相応しい過去、ないし生前があるって事?」
黒髪の快活そうな少女━━━確か名前はリン━━━が手を上げて質問する。アヴェンジャーはそれに若干気を悪くしたようだが、そうよ。と答えた。
「正確にはこのペストという肉体を構築する主人格がそれに当て嵌まる、と言う感じよ。だいたいアヴェンジャーの能力は、復讐という後ろめたい概念を植え付けられている程よ。大半が人類種に対して有利な能力といった所ね」
「ふむふむ……ペスト、"復讐者"、人類種への天敵。成る程」
アヴェンジャーの説明に納得と答えを得たような表情を見せる。余計な部分を喋り過ぎたかと思ったが、個人的な部分はほとんど喋っていない事にすぐ気付いてペストは彼女の推測力に若干呆れた。因みにその後ろで「"復讐者"と来るか! 次々と俺にとって未知の現象が起きて筆が進んでしまうだろうが少しは休ませろ鬼共め!」と楽しそうに悪態を吐くアンデルセンがいたとも追記しておく。
「それで、アヴェンジャーとだけ言わずにエクストラクラスとも言ったんだ。俺の推測が正しいのなら、まだいるんだろう? エクストラクラス」
殿下の指摘にアヴェンジャーはうんと頷く。きっと話の本題は其処なのだろう。味方として可能な限り未知を既知に変えるという意図がある筈だ。
「勿論あるわ。うち一つが
自身がエクストラクラスとして呼ばれた副産物なのだろう、通常の聖杯戦争ではまず与えられる事のない、普通のサーヴァントよりも深い知識がアヴェンジャーにはある。それがアドバンテージになるかは兎も角話せと言われれば話す。
「他には
そうか、という殿下の首肯でこの話は終わった。暫くだんまりな空気だったが、突然現れた従者の一人にある報告を受けた殿下はほう、と少し口を吊り上げる。
「……アヴェンジャー、アリス。サーヴァントとしての初仕事だ」
「何かしら。私今働いたところよ」
「召喚してすぐ仕事だなんて、随分とブラックなリーダーね」
二人の嫌味を軽く流すと殿下は従者に受け取った一枚の羊皮紙を二人に見せる。
「━━━あら、殿下。貴方どうやってこんなこと取り付けたの?」
「色々と、な。兎に角二人の仕事はそれに書いてある通りだ。頼めるか」
二人共問題ない、といった風に頷き返す。
殿下はそれに少し機嫌を良くして横にいたランサーに顔を向ける。
「ランサー、お前はアリスの護衛だ。ただし余程の事がない限り戦うな。お前はこちらの最強の戦力だ。無闇に情報を開示する事は避けたい」
「承知した」
そう言うとランサーは一足先に部屋を立ち去っていった。恐らくはまだ暫く先の仕事にも関わらず己の見直しや準備、といったところだろう。
「アリス、手筈はお前に委ねる。
「お任せを殿下。
芝居がかった動作で応えるアリス。そうしてアリスは幾日かの間出立の準備や必用な物品を揃え、ランサーと
そして、今に至るのである。
◆◇◆
こんばんは、━━━━。貴女と出逢ってから
こんにちわ、━━━。貴女と出逢ってから私の世界は独りよがりの光から、誰かを求める闇になったよ。
ありがとう。
ありがとう。
だから私達は、あの子の為に殺し合うと決めたんだ。
━━━━━━女の物語を語りましょう。
しんしんと降り積もる雪の中で、海より深く、連なる山脈よりも果てしなく、灯りの無い夜のように寒く暗い物語を。
━━━━━━女達の物語をしよう。
時を越えた因縁に結ばれた、燃え盛る焰のように激しく、終わった物語から続く次なる物語を。
━━━━━━━━━━━━彼らの話をしようではないか。
後悔と思い出が導いた、祝福された闇と祝福する光の、互いを求め合う荒れ狂う
その三つの物語全てを乗り越える時少女は、運命を導くであろう。
その物語を、
僕はこういう「一方その頃」的な話は断片的に描く派なのですが、問題児もFate/もこういう話こそ必要なものではないか? と思っての過去話です。あとはアリスの異常性を早めに示すべきかとも。
次回からジャック視点に戻りますよっ。お風呂回なので前回同様のほのぼのジャックです。
以下、いつものFGO茶番トーク
静謐さえ出れば結果が爆死でも構わないという不屈の覚悟でガチャを引きました。new表記が一切出ない上に☆4以上保証枠が死霊魔術でした。
爆死でも構わないと言ったけどこんな爆死望んでないっ……!
……さて、では明日か明後日かに☆5確定ガチャを引いてきますよ。後日ここか活動報告にでも書きますとも! 狙いは獅子上とインド!
結果はジャンヌでした。耐久よりのキャラがぜんっぜんいないので正直使いこなせる気がしませんが、シールダー以外で初のエクストラクラスなので嬉しいものは嬉しいです。