オーバーロード ~破滅の少女~   作:タッパ・タッパ

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2016/1/18 ユリの髪型が『シニヨン』となっていたのを『夜会巻き』に訂正しました
2016/3/24 魔法詠唱者のルビが「スペル・キャスター」だったのを「マジック・キャスター」に訂正しました
2016/5/21 「頼みごと」と表記されていたところを「頼み事」に変更しました
2016/10/5 ルビの小書き文字が通常サイズの文字になっていたところを訂正しました
2016/11/13 「共の者」→「供の者」、「立たないのに」→「経たないのに」、「沸き立つ」→「湧き立つ」、「言う」→「いう」訂正しました


第9話 ナザリックへの招待

「え、ええと……こんな感じでいいよね……」

「お姉ちゃん、早くー」

 

 ネムが急かすように声をかける。さすがにいつまでも身だしなみを整えているのに焦れてきたようだ。

 実際、先ほどまでと今とでエンリの容姿はほとんど変わっていない。そもそも、普通の村人生活なので特にきれいな服など持っていないし、化粧なんてなおさらだ。せいぜい髪に櫛をあてたり、服の汚れを取ったりする程度だ。

 出来ることなど限られている。

 

 しかし、だからといって、そういう事をおろそかにできない状況なのだ。

 これから、自分たちを救ってくれたゴウン様達の住居へと招かれているのだから。

 

 

 あれから二日が経った。

 村はまだ被害の痕がまざまざと残っている。ようやく埋葬や遺品等の整理が終わったばかりだ。亡くなった村人の畑をどうするか、襲撃で殺戮された者たちの遺族がどのようにして生計を立てていくか、まだまだこれから話し合って決めなければいけない。

 カルネ村は辺境の村だ。村全体が一つの大きな家族ともいえる。モンスターの襲撃、過酷な環境などに耐えて生き抜くためにも、全員で助け合わねばならない。

 むしろ、これからが大変だともいえる。現況で、貧しくはないがそれなりに生きていくことが出来る程度の状態だったのが、先の襲撃で労働力が大幅に減ったのだ。

 このままでは村そのものが成り立たなくなる可能性もある。そのうち、エ・ランテルなどで開拓民を募集しなくてはなるまい。

 うまく人が集まればいいが、集まらないときは――

 ――村を捨てなくてはならないかもしれない。

 

 

 そんな暗い状況の中、唯一と言っていい明るい話題もあった。

 

 村を助けてくれた魔法詠唱者(マジック・キャスター)のアインズ・ウール・ゴウン様。

 この方がこの後、しばらくこの村に関わってくださるそうなのだ。

 関わってくださるという微妙な表現なのは、アインズ・ウール・ゴウン様本人が村に滞在するのではなく、先だってゴウン様と一緒に来てくださった女の子、ベル様をはじめとしたゴウン様のご友人の方々が村に留まられるそうなのだ。

 

 先の襲撃の際、王国戦士長様並びに村長宅の壁の隙間から覗いていた者達の話では、ベル様はあの外見に似合わずものすごく強いらしい。そんな方が村に留まってくださるならば、これほどの幸運はない。再び、騎士たちが襲ってきても退治してもらえるだろうし、もう時折トブの大森林から降りてくるモンスターに怯える必要もないだろう。

 

 

 だが、あくまでこれからも留まってくれるならばだ。

 

 はっきり言って、この村にはゴウン様がたに見返りを与えられるようなものはない。

 ゴウン様はお優しいお方のようだ。しかし、だからと言って、いつまでも無償で助けてくださるとは考えられないだろう。ただ、こちらから寄りかかるだけの存在。いつかは愛想をつかすかもしれない。そうなったとき、この村はどうなるか……。

 そして、その『いつか』というのは来週か、来月か、来年か――それとも、今日この時なのかもしれない。

 

 そう考えた時、これからゴウン様の住居におもむくというのは、とんでもない大役なのだ。ここで不興をかえば、ゴウン様はこの村からいなくなってしまうかもしれない。何としても、好意をもっていただかないと。

 せっかく助けてくれた相手に、こんな打算的な事を考えている自分にうんざりする。だが、これは村長からもきつく念を押された事なのだ。

 

 

 そう考え、忸怩たる思いに悶々としていると――

 

「お姉ちゃーん。ベル様が来たよー」

 

 ネムの声で、ハッと気を取り直した。

 

 慌てて外へ出る。

 

 そこには前に会った時のとおり、不思議な高級そうな衣装に身を包んだベル様。そして、髪を夜会巻きにまとめ、レンズの入っていない不思議なメガネをかけた女性と、輝くような金髪を縦ロールにした肉感的な魅力を持つ女性の二人のメイドが待っていた。二人とも、エンリが生まれて初めて見るような美しさの女性だ。

 同性ながら、その美しさに言葉も出ない。

 王侯貴族は各地から目麗しい女性を集めているというが、もしやゴウン様はそれに匹敵するほどの人物なんだろうか。

 

 硬直するエンリとは裏腹に、ネムは大はしゃぎで話しかけている。「お姉ちゃんたち、きれー!」「ありがとうございます」「あらあら」幸いにも不快には思われてはいないようだが。

 

「ちょ、ちょっと! こら、ネム! 失礼でしょ」

「ははは。まあ、いいんじゃない?」

 慌てるエンリに、ベルは気楽に声をかけた。

 

「さってと、それじゃ行こうか」

 そう言って、一軒の家へと足を向ける。

 先の襲撃で一家全員が死亡したため空き家となった家だ。ゴウン様から、供の者たちが留まる家屋が欲しいという話だったので、比較的大きめなこの家が提供された。大きめとはいえ、あくまでカルネ村基準の話であり、豪華な衣装を着るゴウン様らには決してふさわしい家屋とは言えないが、当の本人らがそれでいいと言ったため、そのままになっている。

 しかし、今日はゴウン様の住居に行くという話だったのに、なぜこの家に行くのだろう? ゴウン様の方が、一時的にこちらに来られているのだろうか?

 

 不思議に思いながらも後をついていくと、家の中には大きな姿見の鏡があった。縁は金色の金属で出来ており、エンリにはよくわからないがなにか不思議な模様が描かれている。そしてその表面には目の前にいる自分たちの姿ではなく、どこか別の世界が映し出されていた。

 エンリの頭の中が疑問符だらけになっていると、ベルは「こっちこっち」と手招きして、鏡の方へと向かっていく。

 そして、鏡の中へと足を踏み入れた。

 ぶつかるかと思われた足は、鏡面をそのまますり抜け、まるでそこに何もないかの如く進んでいった。続くメイドたちも当然のように鏡の向こうへと消えていく。

 その様子を見て、エンリは一瞬躊躇したものの、ネムの手を握り同じように足を踏み入れた。

 

 

 その先は別世界であった。

 広く荘厳たる通路。磨き抜かれた大理石の上には絢爛たる絨毯が敷かれている。頭上にはキラキラと輝くシャンデリアが並んでおり、左右には今にも動き出しそうな像が並んでいる。

 両脇には、同性から見ても見目麗しいメイドたちが並んで深々と頭を下げており、自分たちがこの前を歩いていいのかと冷や汗をかく。

 そして、そのメイドの列の向こうには黒いローブを着た人が。いや、人と呼ぶのはふさわしくないかもしれない。なぜなら、あの人は白い骸骨のアンデッドなのだから。

 

 アインズ・ウール・ゴウン様。

 偉大な魔術の秘儀を使いこなし、強大な力を誇る人物を仲間とし、困った人たちを見返りもなく助ける心優しきアンデッド。

 

 自分とネムだけなら、足がすくんで動かせなかっただろうが、何の物怖じもせず前を行くベルと二人のメイド、それらにつられて前へと歩いていった。

 

 そしてアインズの前へとたどり着くと、ベルはその脇にならんでこちらを振り返り、二人のメイドは左右に分かれて立ち頭を下げた。

 結果、アインズとベル二人に対してエンリとネムが向かい合う形になる。

「ようこそ。エンリ、ネム。我らのナザリックへ。君たち二人を歓迎しよう」

「ひゃ、ひゃい! ゴウン様! お招きいただきマシてアリがとうございますっ!」

「ははは。そう緊張しなくてもいいとも。君たちは愚かな侵入者などではなく、招待されたお客様の身なのだから」

 そう言って陽気に笑う。

「まあ、そうだね。ここではなんだから、応接室で飲み物でも飲みながら話をしようじゃないか。私としてもいくつか頼みたい事があるからね」

 

 頼みたい事?

 一体なんだろう?

 あれほどの力を持つゴウン様でも、普通の村娘に頼む様な事柄……。

 身体だろうか、と思ったが一瞬でその考えを打ち消す。そもそもそういうのが欲しければ、ここに仕えているメイドたちからいくらでも選べるだろう。自分は顔も十人並みだし、身体つきにいたっては比べることすら……。

 横目で覗き見るメイドの女性たちとの圧倒的な差に一人うなだれる。

 

「じゃあ、こちらへ」

 アインズが先導して歩き出す。慌ててついていくと、自分たちの後ろにメイドたちがぞろぞろとついて来た。後ろを見ると緊張で左右の手と足が同時に出そうになるため、努めてそちらは見ないようにして、視線を前へと固定する。それに対して、ネムはキラキラと目を輝かせながら、周囲をきょろきょろと見回していた。

「面白いかな?」

「うん。凄ーい!」

「そんなに凄いかね?」

「凄い! 凄すぎるよ!」

 ネムが興奮して叫ぶ。

 妹の語彙が少ないのは顔が赤くなるが、エンリも正直、凄いとしか表現のしようがない立派な建物だ。

「ここはゴウン様が御造りになられたのですか?」

「私の友人たちとだよ」

「そうなんですか。ご友人の方々も凄い人だったんですね」

「凄ーい! ゴウン様のお友達も凄ーい!」

「はっ――ははははは!」

 朗らかな笑い声が響き渡る。

 骸骨なために表情は分からないが、明らかに上機嫌な笑いだった。

 

 そうしているうちに豪華な扉へとたどり着く。細かな金細工が施された白い扉が開け放たれると、中はまた言葉もないほど華美で豪奢な内装だった。正直、ここに来てから数分も経たないのに、驚く事に疲れるくらいだ。

 部屋の中央に鎮座する高価な黒檀のテーブルをはさんでアインズ、ベルとエンリ、ネムが向かい合う。

 腰かけようとしたらメイドが椅子を引いてくれ、更には美しい装飾の入ったガラスのコップに何か果物のジュースを注いでくれる。まるでどこかの貴族のような扱いに、エンリはもう震えが出そうなほど恐縮してしまっている。

「緊張しているようだね。さあ、まずは飲んでくれたまえ」

 促されて、コップの液体に口をつけると、さわやかな甘さが口の中に広がった。酸味と甘みのバランスがちょうどよく、また、妙な後味が口に残らない。そして、何か身体の奥から湧き立つものと、逆に心が澄み渡るように落ちつくのを感じた。生まれて初めて飲む美味に思わずがぶ飲みしたくなるが、なぜか同時に、そういう礼儀に外れたことはしてはならないと心に静止をかけるものがある。隣で口にしたネムも驚いたように顔を見合わせた。

 

「さて、落ち着いたようだし、本題に入ろうじゃないか」

 そう口にしたアインズに、エンリはつばを飲み込み姿勢を正した。

 その様子を見て、アインズは安心させるように柔らかな声を出す。

「なに、そう身構えることはないよ。先ほども言った頼み事だ。私の頼み事を聞いてくれたら、代わりに君にも利益を与えよう。つまり取引をしたいという話さ」

 

 取引?

 もちろん命の恩人。それも自分一人ではなく、妹のネム、さらにはカルネ村全てを救ってくれた方の頼みだ。どんなものでも差し出す覚悟はある。だが、一体何を差し出せばいいのか……。

 

「まあ、私が君たちに頼みたい事は3つばかりある。まずはこれだ」

 そう言って自分の頭を撫でまわした。

「ごらんのとおり、私はアンデッドだ。このことは君たち以外には知られていない。ほかのカルネ村の住人、王国戦士長にもだ。当然、私がアンデッドだと知れたら、それだけで誰も私のいう事は聞かずに退治しようと考えるだろう。だから、私がアンデッドだという事は秘密にしてもらいたいのさ。これが頼み事の一つだ。まあ、これについては以前も口外しないように頼んでいたことではあるがね。あくまで私は一介の魔法詠唱者(マジック・キャスター)という事で頼むよ」

 

 確かに数日前も同様の事を頼まれた。通常、アンデッドとは生者を憎み、殺そうとする存在らしい。実際に見たりしたことはないが、話に聞く分にはそうらしい。だが、こうして目の前で話しているゴウン様は生きている存在を憎むなんてそぶりは見せない。自分たちを始め、ベル様やメイドたちなど普通に生きている存在に囲まれて生活している。それに、そもそも危機にさらされていたカルネ村をわざわざ助けに来てくれたではないか。アンデッドだからといって、全てが悪い人だという訳でもないのだろう。

 しかし、そんな心優しいゴウン様でも、よく知らない人間からしたらやはりアンデッドなのだ。ゴウン様のお優しさを理解してくれる前に、剣を振るってしまうだろう。無用なトラブルを引き起こすよりは隠してしまった方がいいんだろう。

 

「そして、二つ目なんだが、君たちの知識が欲しいのだ」

「え?」

 知識?

 こんなにも立派なお屋敷に住み、魔術にも精通した方が、ただの村娘の知識が欲しいとは?

「ああ、実はだね。私はずっとこのナザリックに閉じこもって魔術の研究をしていたのだよ。つい最近になってようやく外に出てみたら、なんだか外の様子が私の知っているものとは全く異なっていてね。それで、今現在のこの世界の知識が欲しいんだ」

 

 なるほど。そういう意味だったのか。

 しかし――

 

「あ、あの……お言葉ですが、私は旅もしたことがない村娘ですので、あまり世の中の事は……たまにカルネ村にやってくる徴税官や商人の方、エ・ランテルに行った人などとかから話を聞くくらいで……」

 すっとゴウン様は一枚の金貨をつまみ上げた。

「エンリ。これは金貨でいいかな?」

「は、はい。金貨……ですよね?」

「では、これは?」

「? 銀貨です……」

「ふむ。では聞くが、おそらく銀貨より金貨の方が価値が高いと思うが、どのくらいの交換レートなのかな?」

「え? ええと、銀貨十枚で金貨一枚ですね」

「そういうことだよ」

 言われて、目をぱちくりさせる。

「君が当然のように知っている硬貨の交換レート。そういうものも私は知らないのだ。そういった事などを知識として教えてほしいのだよ。そうした常識を知らずにほかの人間と話をした場合、私がどれだけ不利益をこうむるかは言うまでもないだろう? ああ、これも秘密で頼むよ」

 なるほど。それもすとんと胸に落ちた。

 ゴウン様は偉大な魔法詠唱者だ。これから広く名が知られるだろう。そうすれば、様々な人物と交流することになる。そうした時、本当に基本的なことすら知らないという事が分かれば、相手に侮られるだろうという事は想像に難くない。

 そう考えると、そういった一般的な知識がないことは、あくまでただの村人である自分たち二人のみにしか知られない方がいい。

 

「そして、三つ目だが、まあ君たちには我々がこちらに関わっていくうえで、カルネ村での窓口になってほしいという事だ。ベルさんを始めとした何名かの人間がカルネ村には逗留するつもりだが、人が入れ替わりになったり、もしくはちょっと出かけて誰もいなかったりもするだろうから、連絡の仲介をしてほしいのだよ」

 それについても異論はない。頼まれなくとも、その程度の事はするつもりだ。

 

「私からの頼み事というのはこの三つだな。さて、これを頼むにあたって私から君たちへのメリットだが、まず村の復興に手を貸そうと思う。それと君たち個人への援助だな。さしあたっては、これを君にあげようと思う」

 そう言って、二つの見すぼらしい角笛を差し出した。

「これは子鬼(ゴブリン)将軍の角笛というマジックアイテムで、吹けばゴブリンの軍勢が現れて召喚者に付き従うというものだ。約束のしるしとして、とりあえずこれを君にあげよう」

 

 ゴブリン――人間より体躯は小さいが集団で人を襲う凶暴な魔物だ。カルネ村でも薬草を取りにトブの大森林に行った者が襲われたりもしている。エンリも遠目から見たことがあるが、その姿は戦うことが出来ない身にはとても恐ろしく、遠くへ去っていくまで震えながら息を殺していた。

 そんなモンスターが召喚されるというアイテムを手のひらの上に置かれ身を固くする。もう頭の中はパンク状態だ。とりあえず、ゴウン様が下さったものだから大丈夫だろうと頭の中で納得させ、ポケットにしまっておくことにした。

 

「さて、とりあえずはこんなところだな――おっと、食事の準備が整ったようだ。色々とこの地の話を聞くというのはそのあとにしよう」

 そう言って立ち上がった。

「私たちがいると気が抜けないだろうから、ちょっと席を外すよ。二人で食事を楽しんでくれたまえ」

 

 そうしてゴウン様とベル様は部屋から出ていった。居並ぶメイドたちも、数名を除いて、それに続く。

 

 

 一気に人の減った部屋で、エンリは息を吐いた。

 ようやく興奮が少し落ち着いてきた。

 村を救ってくれた英雄からの招待。魔法の道具で見たこともない凄い宮殿にやってきたこと。出されたとんでもなく美味しい飲み物。ゴウン様から提示された取引。渡されたマジックアイテム。

 今日だけ、というかわずか一時間ほどで一生分の体験をした気がする。

 そうしていると、横からネムに袖を引かれた。

「お姉ちゃん。帰ったら村の人に、こんなに凄い人に救われたんだって教えてあげようね」

「うん」

 

 伝説って本当なんだ……。物語じゃないんだ……。

 

 

 

 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

 

 

《こんな感じでいいですかね?》

《はい。いいと思いますよ》

 

 ナザリックの廊下を執務室へと歩きながら、アインズとベルは〈伝言(メッセージ)〉で話していた。

 

《まあ、ただで手を貸すと言うより、何かの交換条件として提示した方がかえって相手も安心するし、約束を守ろうとするもんですよ》

《ああ、村での件はすいませんでしたね》

《いえ。その結果、あの村や王国戦士長からの好意は受けられましたから、結果的には良かったですよ。ただ、恩義だけというのは相手と場合によって良し悪しなので》

《そんなものですか。……そういえば、ガゼフは後で報酬を持ってくるといっていましたけど、持ってきますかね?》

《どうでしょうね? 彼本人はそれなりに信頼できそうですが、話に聞く分に仕えている王国とやらに色々ありそうですからね。なんのかんのといちゃもんをつけて、報酬を渡すのを阻止するとかもあるかもしれませんよ。なんせ、彼本人を実質暗殺の場へと送り出すような有様ですし》

《……報酬が払われないだけならいいですが、我々がそのごたごたに巻き込まれたくはないですね》

《ええ。ですので、村には復興の手助けという恩を与えつつ、アインズさん本人ではなく俺が表に出ることによって、いざという時は何があっても俺の独断という形に逃げれるようにしておきましょう》

《なんだか、泥をかぶせる形で悪いですね》

《いえいえ、幸い今子供の姿ですから何か面倒ごとになっても、子供のやる事だから~で誤魔化せますし》

《子供の姿になってよかったですね》

《はっはっは》

《はっはっは》

《はっはっは》

《すみません》

 

《……ええと、エンリとネムに私がアンデッドだって事を言わないように口止めしましたけど、約束を守れますかね》

《うーん。それは大丈夫だと思いますけど……まあ、ぽろっと言ってしまう可能性は無きにしも非ずですが、仮に言ってしまってもそうたいしたことにはならないはずですよ。村の人たちはアインズさんに感謝してますから、今更アンデッドだったからなんて反意を示すなんてことはないでしょうし。外から来た人にうっかり話した場合は、アインズさんが出ていって幻覚で作った顔を見せてやればいいですし》

《魔法で記憶を消してしまうというのもありますが》

《いや、実験無しでいきなりあの二人にやるのはまずいでしょう。下手したら、余計な記憶まで消えて廃人になりますよ》

《やっぱり、この世界で出来ることの実験が必要ですね》

《そうですね。後でどこかのならず者なりを攫ってきて、色々実験してみましょう。あの法国の連中がちょうどよかったんですけど、戦士長の手前、みんな捕まえずに殺しちゃいましたからね。あの隊長は引き渡しちゃいましたし。……この世界で生きていくのにはやる事がいっぱいで大変ですね》

《ええ、でも、未知を埋めていくっていうのはユグドラシルみたいで楽しいじゃないですか》

《……ああ、そう考えればそうですね》

《ええ、この世界をせっかくですから楽しみましょう》

《なんだかすごいポジティブですね。……そういえば、アインズさん?》

《何ですか?》

《アルベドから聞いたんですけど――我々の目的が世界征服ってなんです?》

 

「えっ!?」

 

 突然響いた主の驚愕の声にその場にいた者達は目を見開いた。

 

 




WEB版のエンリたちがナザリックに行くシーンも好きなので混ぜてみました。


これで書籍1巻分は終了です。
おまけと繋ぎをはさんで2巻分に行こうと思っていますが、書き溜め分がほぼ尽きかけているので、更新は不定期になると思います。

お読みいただきありがとうございました。

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