Fate/Aristotle   作:駄蛇

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PC故障のアクシデントで一週空いてしまいましたが、各回戦中はほぼ毎週更新という目標達成です

あとがき含めていつもより少し長いです


戦闘続行

 緑が生い茂る決戦場に鮮血が飛散する。

 血の量からして無事では済まないのは確実。

 しかし、それを直接『視る』ことができるのはこの場で俺一人。

 致命傷を受けながらも認識を阻害させる夢想朧影を維持しているアサシンには敵ながら天晴れと言うほかない。

 今もなおライダーがダメ押しと言わんばかりに追撃を行うが、俺の指示ではワンテンポ遅れ、血の匂いなどでライダーが自力で相手の位置を察知しても、次の動作がわからないためか寸前のところで避けられる。

 姿が見えていたならばすでに首を切り落としているだろうに、その最後の一手が決められずにいた。

 二回戦で戦ったアーチャーも原理は違うが今回のように自分の姿を透明化させる宝具を持っていたが、あの時のライダーは今よりももっと戦えていた気がする。

『自分の姿を隠す相手』と『自分の姿を認識させない相手』では勝手が違うのだろうか?

 だとしても、ライダーがアサシンに致命傷を与えたことには違いない。

「遮那王……やはりあのサーヴァントは源義経……」

「今確信に変わってももう遅い。勝負ありだ、ユリウス」

 普通に受ければ内臓にまでダメージが及ぶ男の拳を受け流してから押さえつけ、そして宣言する。

「いいやまだだ。まだ終わらん!」

「っ!?」

 一応関節を極めて押さえつけていたはずなのだが、ユリウスは自ら自分の肩を外して拘束を解き、肩が外れたまま鞭のように腕をしならせて裏拳を放った。

 肩を外してまで攻撃してくるとは思わず、反射的に必要以上に距離を取ってしまう。

 ユリウスの追撃を警戒して瞬時に身構えるが、当の本人は外した肩をはめ直しただけで襲ってくる様子はない。

「これではまだ死ねないのだ!!

 オレは……オレは……!」

 自分に言い聞かせるようにブツブツと呟くユリウスはまるで何かに憑りつかれているかのようだ。

 やがてゆっくりと掲げた男の右手が、グローブ越しに淡く光り始める。

「最後の令呪をもって命ずる!

 ライダーを殺すまで死ぬことは許さん!」

「令呪をっ!?」

 令呪一画を消費した命令。

 たしかサラの遺したデータによれば、昨日ユリウスは令呪を一画使っていたはず。

 二回戦の時点でアサシンを諫めるために一画使っているのだから、ここで使えば三画すべて使ったことになる。

 この聖杯戦争に参加する資格となる令呪を、だ。

 そしてそこまでの暴挙を行っても、霊核が限界のアサシンには気休めの延命処置にしかならない。

 今すぐ死ぬのが数分伸びた程度のはず。

 実際、俺の左目にのみ映るアサシンの姿が令呪の行使によって一瞬痙攣したように跳ねるが、傷が全快する様子はない。

 だがユリウスの暴挙は収まらない。

 息を荒げながら血走った目で自分の右手首を掴む。

「あ、がっ……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!」

 雄叫びとともに肉の繊維が千切れる音をたてながら、ユリウスは自分の右手を引きちぎった。

 手首から先がなくなった右腕はもはや出血すらせず黒いノイズに包まれ始める。

 自暴自棄になったのではないと思うが、その行為を警戒半分心配半分で見守る。

「……心配、か」

 さっきまでユリウスに対して並々ならぬ憎悪があったはずだが、勝利がほぼ確定したおかげかその憎悪は治まりつつあった。

 その影響か、ユリウスの行為を目の当たりにして彼を心配している自分がいる。

「ユリウス、いったい何をするつもりなんだ?」

 俺の問いに黒衣の男は答えず、ただ荒い呼吸を繰り返すのみ。

 自分の右手だったものをゴミでも扱うように乱雑に投げ捨て、代わりに懐から取り出したのは全体的にすらっとした右手。

 親指と小指だけ指が露出した特徴的なグローブに包まれたそれは……。

「まさかサラの右手!?」

「こんなところで使うつもりはなかったが、お前を殺せるのならばなんでもいい!」

 その殺気に呼応するように周囲に複数のディスプレイが展開され、解読不可能な文字の羅列が記されていく。

 おそらくは違法術式(ルールブレイク)

 手首を引きちぎって激痛が走っているだろうに目の前の男は止まらない。

「他のマスターどもに倒されるのならいい。だが、お前はダメだ! 絶対に!!

 他のどんな無意味な死を受け入れても、お前に倒されることだけは!!!」

 どす黒い憎悪に身を滅ぼされた人間の末路がどういうものか……一歩間違えば自分もなっていたかもしれない姿に寒気がする。

 異変を察知したライダーがアサシンへの追撃を諦め俺のもとまで戻ってくる。彼女もユリウスの姿には驚きを隠せないでいるようだ。

「腕が……繋がった」

「なんという執念。壇ノ浦で最期まであがいて迫ってきた平教経めを思い出します」

 失っていた手を繋ぎなおす光景は前にサラが同じこと行っている。

 だからユリウスの覇気に気圧されはしても行為自体には驚かない。

 問題はその繋ぎなおした右手に刻まれているものだ。その右手には未だ三画の令呪が刻まれている。

 もしそれが使えるようになっているのであれば……

「ライ――」

「令呪三画すべてを用いて命ずる。

 全ての宝具を用いて目の前の敵を葬れ!!」

 俺の指示がユリウスの声でかき消された。

 わざわざ繋ぎなおした手に刻まれてた令呪を早々に三画使った命令。三画一気に使ったからなのか、今まで見た令呪の消費とは輝きが違う。

 様子を伺うべきかもしれないが……

「ライダー、今すぐアサシンを倒して。早く!」

「し、承知!」

 アサシンのほうを見れば、夢想朧影を一旦解除したらしく、右目でもその姿をはっきりと確認できた。

 彼女はまだ直立不動で動く様子はない。

 チャンスだ。そして、このチャンスを逃すと後がないかもしれない。

 ライダーは少し戸惑いながらも理由を尋ねることなくアサシンへと迫る。

 おそらくライダーはこう考えているはずだ。

 セトの雷で宝具は封印しているのだから、今更宝具をすべて使用する令呪を行使しても効果は薄いのではないか、と。

 確かに一見正しい。あの礼装は指定した行動を数日間封じることができるほど強力な効果を持つのだから。

 だがその拘束は完璧ではない。

 そもそも、セトの雷が持つ行動制限の効果は決して行動を強制的に封じるものではない。

 あくまで行動を起こそうとすると魔術回路に激痛が走るだけ。行動の封印は激痛による連鎖的なものに過ぎない。

 であるならば、仮にだ。

 たとえ狂いそうな痛みを受けてもそれを耐えることさえできれば行動自体は行うことができる。

 ……内臓をぐちゃぐちゃにかき混ぜられるにも等しい痛みに耐えることができれば、だが。

「バーサーカーのクラスが持つ狂化は、痛みを麻痺させる……」

 以前戦ったバーサーカー――エリザベートが持っていた狂化のランクはEと最低値ではあるのだが、痛みが麻痺しているがゆえに痛みによる牽制が通じない厄介な相手だった。

 それがもし、それ以上の狂化を付与されれば……

 狂うほどの痛みも、最初から狂っていれば気にならないのかもしれない。

 酷いの一言に尽きるが、残念ながら即効性がある対策の中では非常に効果的なものだと言える。

「■■■■■■――ッ!!」

 一瞬それが人から発せられた声とは判別できなかった。

 人語として判別不可能な咆哮を上げるアサシンの首がぐるりと不気味に回り、ライダーをとらえる。

「■■■■■■■■■――――ッ!」

 再度雄叫びを上げると、彼女の身体が質量保存の法則を無視して巨大になった。……と錯覚するほど宝具の同時使用で彼女の身体が異形のものへと変貌を遂げた。

 背中から生えているのは妄想心音で用いられるシャイターンの左腕。

 右腕から歪な槍のようなものが飛び出しているのは狂想躯体による骨の改造。

 頭部から触手のように蠢くのは狂想閃影による髪の操作。

 バチバチと周囲で放電しているのは妄想感電による発電。

 脚部が異様に肥大化しているのも、雄叫びがライダーの動きを鈍くしているのもおそらくすべてが彼女が模倣した歴代ハサンが生み出した奇跡(ザバーニーヤ)の数々。

 昨日サラが封印したはずの宝具まで使っているのを見ると、やはり俺の考えは正しかったらしい。

「なるほど、バーサーカーのクラスを獲得して二属性持ち(マルチタスク)に変化したか。面白い!」

 すさまじいプレッシャーを放つアサシンに臆せず迫るライダー。

 ライダーの言葉が本当であれば、あのアサシンには俺の予想通りバーサーカーのクラスと狂化が付与されているらしい。

 ただその影響か、夢想朧影や観想影像のような絡め業を展開していないのは不幸中の幸いだ。

「――――――――」

 ……と、少しだけ気を緩ませた次の瞬間、ライダーの身体が遥か後方へと吹き飛ばされた。

 いったい何をされたのかまったく理解できなかった。

 妄想疾走によって肥大化した脚部で跳躍し、ライダーに体当たりをした……?

「ライダー!!」

 反射的にアイテムストレージからエーテルを取り出し使用するが、遠くに吹き飛ばされたせいで彼女の容体を正確に把握できない。

 それに俺もライダーを心配している暇はない。もはや比喩ではなく本当に死神なのではないかという殺気を放つユリウスがすぐそこまで迫っている……!

「がああぁぁァッ!!」

 右ストレートからの左フック、からの右脚での上段蹴り……はフェイクで腹部に左足の回し蹴り。

 以上の攻撃が瞬きを一回する間に繰り出される。

 獣のような荒々しい動きのはずなのにその動きは非常に効率的で洗礼されている。

 サラ曰く、俺は殺気のある攻撃に対して反射的に防御姿勢を取れるらしいが、ユリウス相手ではとてもじゃないが全てをさばくのは厳しい。

 だからこそ自分が出血していないことを確認しつつ、あえて吹き飛ばされることでユリウスから距離を取る。もちろん体勢は崩されすぎないようにして。

 そういった小休止を挟むことでなんとかしのげていた。黒鍵は握っているが攻撃なんてしている暇がない。

 ライダーの援護どころか確認すら行う余裕がない。

 それに俺の不思議な体質は骨や内臓にダメージがないだけで痛みはある。

 本来は折れるレベルの拳を受け過ぎれば普通に死ぬほど痛いし、その痛みで思考が阻害されれば余計にダメージを受けてしまう。

「令呪を使っても治った様子はなかったはずだけど、アサシンの治療しなくてもいいの?

 そういうの治療するルールブレイクとかないとか?」

「そんなことに魔力を使うぐらいならお前を殺すために使うほうが価値がある……!」

 一瞬でも気をそらせないかと苦し紛れに質問を投げかけてみると、返ってきたのは予想外の回答だった。

 一回戦の頃から何かと目をつけられていたが、それはどこか事務的なものだった。

 何度か戦ううちに私的な殺意も向けられ始めた気もするが、それは目の前をしつこく飛び回る羽虫に向けるような嫌悪感なのだと思ってた。いや、たぶんつい最近まではそうだったはずだ。

 それが今日になって明確に俺を排除するべき敵と認識し、そしてどす黒い憎悪へと変化している。

「……ユリウス、昨日誰に何を吹き込まれた?」

「っ!?」

 全身を使ってユリウスの拳を包み込むようにして押さえ込み、お互いの鼻先が触れそうなほど接近した状態で問いかける。

 カマかけだったが彼の動揺の仕方を見ると正解を引き当てたらしい。

 この戦闘が始まって初めてこちらが反撃に転じられるほどの隙を見せるが、ここで反撃するべきではない。

 したら最後、俺がユリウスと会話を交わす機会を永遠に失ってしまうと直感が告げていた。

 それは、ダメな気がする。少なくともユリウスの持つ情報を手に入れるまでは。

 目の前で動揺している死神から言葉が返ってくるまで根気強く待つ。

「…………のような」

「?」

「貴様のような作り物に、同情される筋合いはない!」

 紛い物に作り物。

 どちらもこの決戦場でユリウスが俺に向けて放った言葉だ。

 俺がサイバーゴーストであることを指していると考えられなくもないが、それならば『亡霊』というワードのほうが自然なはず。

 ならばいったい……

「づっ……やばっ!?」

 鋭い痛みと自分の失態に思わず眉をひそめる。

 見れば、打撃を受けた左腕の皮膚が薄く裂け、じんわりと赤い液体がにじみ出ていた。

 ……考え込みすぎたせいで、受け方を間違えたらしい。

 ユリウスが再び刃物を仕込んでいたわけではない。さきほどナイフを取り出したのは偶然で、ユリウスは俺の体質が出血によって解除されることは知らないのだから。

 ただの拳が俺の皮膚を裂いたのだ。

 これは、グローブで目蓋が切れないようにボクシングではワセリンを塗ることがあるのを想像すれば分かりやすいか。

 ただの拳でも肌同士が擦れる際の摩擦熱で皮膚が裂けることだってある。

 グローブと拳を比べれば摩擦係数は違うし、殴られた際の出血のほとんどは内出血だと思うが、ユリウスの拳は規格外ということだろう。

 そして休む暇なく必殺の拳が繰り出される。

 そのすべてを受け流して無理なものは右腕で防ぐが、最後の一発だけは左腕でまともに受けてしまった。

「が……ぁあ……っ!」

 メキメキと鈍い音が響き、骨がきしむ。

 全身から冷や汗が噴き出しているのに、拳を受けた左腕だけは焼けるように熱い。

 間違いなく、折れた。

 右腕の力を使って肉体を再生させるべきか……

「オオオオッ!!」

 考える暇もなく、迫るユリウスの拳をぎりぎりで避ける

「そんな隙見せてくれるわけないか……ああ、もう! 勘弁してほしいよホント!」

 痛みを誤魔化すために大声で気を紛らさせつつ黒鍵でユリウスの追い打ちをけん制する。

 きちんと受け流しているというのに、一撃ごとに単純な威力で黒鍵の刃が軋み、今にも砕けそうだ。

 今までのユリウスは本気ではあっても全力ではなかったらしい。

 死を覚悟したこの男は、おそらく一番の強敵だ。

「これは、俺も腹をくくるしかないかも……」

 なまじアサシンに致命傷を負わせるまでがあっさり行き過ぎたため、この戦いでは安全に、と無意識に考えてしまっていた。

 やはり俺はどこまで行っても弱者だ。

 使えるものをすべて使い、そのうえでまだ地面を這いずり回って生きることに貪欲になる。

 そこまでしてようやく勝利に届く()()()()()()のだ。

 再度接近してきたユリウスの拳を首を振って避ける。

「づ……っ!」

 わずかに頬をかすり皮膚が裂けるが、気にせずアイテムストレージから取り出した礼装を握る。

「ライダー! 光!」

 丁寧に説明している暇もない。声が届くかもわからないが、俺の見えないところで戦っているはずのライダーにキーワードだけ叫ぶ。

 そして火傷を負っているうえに折れている左腕を無理やり動かして、その礼装をユリウスの目の前に突き出す。

「――発光(emit)!」

「――――」

 短い詠唱と共に再び周囲から影が消し去られた。

 その代償は決して軽いものではない。

 先ほどよりもひどく皮膚が焼かれていく感覚。

 特殊な体質が機能していないせいなのか、皮膚の裏側の筋肉も焼かれている気がする。

 おそらくこの決戦が終わるまでもう左腕は使い物にならない。

 だが、その代償に見合う成果は得られたはず。

「あ……があああ、あ゛あ゛あ゛っ!?」

 俺の目の前でこの灼熱の光に巻き込まれた男が絶叫する。

 俺よりも近く、そして直接光を目にしたのだ。眼球内の水分が沸騰していてもおかしくない。

「あとは――」

「が、ああ……この、程度で……怯むと思うな!」

 怨念のような声が光の向こうから聞こえる。

 直後、バキンッと音とたてて俺の左手の中から感触がなくなる。

 ……何が、起こった?

 左手が切り落とされた?

 いや違う。

 何かが壊された?

 何が?

 考えつくのは……礼装。

 ラニから託され、サラが手を加えてくれた礼装が……お守りが……彼女たちが生きていたという証が――

「――か、はっ」

 腹部がつぶれ、強制的に肺の空気が押し出される。

「見えないが、手ごたえは確かだ」

 全身を焼かれ、俺よりも重症の男はどこか遠くを見ながら語る。

 その目に光はない。超至近距離で瞼を閉じる暇もなく閃光を受けた影響だろう。

 そんな盲目と化した男の拳が、俺の腹部に深々とめり込んでいた。

 肋骨が肺に刺さったのか、はたまた胃のほうが損傷したのか、呼吸とともにどす黒い血が自分の口から吐き出され、口の中に鉄臭いにおいが充満する。

 痛みで視界が揺らぐ。

 

 ――まだ終われない。

 

 意識がだんだん遠くなる。

 

 ――止まるな。

 

 膝に力が入らずその場に崩れ落ちる。

 

 ――進め。

 

 それでも、右手に握る黒鍵だけは決して離さない。

 

 ――それが■■■■の生き方だ。

 

「ぐ……っ!」

 右手に握った黒鍵を地面に突き刺し、倒れこまないように踏ん張る。

 息を吸っても息苦しさが改善される様子がなく、視界もぼんやりしている。

 だが俺の目の前にはまだユリウスがいるはず。こんな無防備な姿を晒していては危険だ。

 今にも途切れそうな意識の中、この状況を打開する案を考えろと自分に言い聞かせるが、身体が全然動かない。

 右腕の感覚だけは異様なほど鮮明にわかるが、その右手を振るう気力がない。

 死刑執行直前のような、これから起こることがわかっているのにどうすることもできないもどかしさを感じていると、目の前に黒衣の男が受け身も取らずにあお向けに倒れた。

「……え?」

 なぜそうなったのかわからない。

 もしかすると情報は揃っているかもしれないが、頭が働いていない今の状態では状況を整理できない。

 

『――――に損傷を確認。応―――を開始し――』

 

 霧がかかったようにぼんやりした脳内に不自然に鮮明に響くアナウンス。

「――っ!?」

 直後、今まで朦朧としていた意識がまるで電源を入れられたかのように瞬時に鮮明になる。

 真っ先に視界に飛び込んできたのは虫の息で仰向けに倒れたユリウス。

 

『――ムーンセルへの不正なアクセスを確認。スキャンを開始。

 決戦場にて規定違反のコードキャストの使用を確認。直ちに対処します』

 

 そしてその状況を飲み込む前に立て続けにムーンセルによる無機質なアナウンスが決戦場内に流れる。

「何が……いったい……」

 状況がまったく整理できない。

 ひとまず、俺がユリウスにトドメを刺される前にユリウスが倒れたという事実だけは理解できた。

「それにさっきのアナウンス、どこかで……ぐっ!?」

 意識ははっきりしたが全身ボロボロで満身創痍なのはそのままらしい。呼吸をするだけでも全身を走る激痛に金縛りにあったように硬直する。

 そして運がいいのか悪いのか、その激痛によって先ほどのアナウンスの既視感の正体がわかった。

 あれはたしか四回戦のとき、サラが意図的に違法術式をムーンセルに感づかせることで、不死身に近かった謎の生命体を撃退できたときに流れたアナウンスだ。

「……そうか、サラはこの違法術式(ルールブレイク)を令呪に……」

 サラの右手に宿った令呪には、三画を同時使用することでムーンセルから不正に魔力を抜き取れるように細工していたのだ。

 それをユリウスは利用しようとしたのだろう。

 しかし、その手法はすでに四回戦でムーンセルに学習されたため、以降同じ手法をとると瞬時にバレてしまうとサラは言っていた。

 そのペナルティがユリウスに襲い掛かったのだ。

 さらに、細工は無力化されても『全ての宝具を使え』という命令自体は健在。

 ムーンセルから魔力を不正に供給できない状況でその命令が続行されればいくらユリウスでも魔力切れは免れない。

 ここにきて、再びサラに助けられたらしい。

「ほんと、感謝してもしきれな……づっ!」

 身体を支えることができずそのまま仰向けに倒れこむ。

「ライダーは……?」

 首さえ動かすことができないため視線だけを動かしてライダーを探す。

 アサシンにバーサーカーのクラスが付与されてから彼女たちの姿が見当たらないのだ。

 マスターの権限を使うことでわかるライダーのバイタルはそこまで深刻ではないはずだが……

「ライ、ダー……」

「はい、ここに」

 まるで近くで待機していたかのように、足元まで伸びる黒髪をなびかせて一人の女性が舞い降りた。

 その姿は俺ほどではないにしろボロボロだ。

 透き通るような肌は泥にまみれ、無数の傷が痛々しい。

 それでも俺を心配させないようにしているのか、微笑みだけは決して崩さない。

「よかった。無事だったんだ」

「はい。無傷とはいきませんでしたが、この通り。

 ……もう少しお待ちください」

 ゆっくりとした動きで立ち上がり、ライダーは背後へ向き直る。

 その視線の先にはもはや異形の化け物と化したアサシンの姿。しかしその足元は覚束ない様子で、展開している宝具もところどころ崩れ始めていたりと、見るも無残な状況だ。

「最初の体当たりだけは強力でしたが、そのあとの攻撃は見掛け倒しと言ってもいいものでした。

 おそらく魔力が十分に込められていないのでしょう。むしろ宝具として展開できているのが不思議なくらいです」

 これが、魔力切れがわかっていてもマスターの命令のせいで解除できないサーヴァントの末路か。

「あ゛……が、ああ……こ……して……殺して……くれ……」

 ほとんどうめき声のような声を絞り出すアサシン。

 それは苦痛から解放されたいがために絞り出された懇願か、はたまた図書室で目を輝かせて語った歴代のハサンの宝具をこんな不完全な状態で展開してしまった自分への罰か。

 狂化でほとんど理性がない状況でもこれだけは伝えたい、という意思を感じる言葉。

「ライダー……楽にしてあげて」

「承知しました」

 一呼吸おいてからライダーは得物を握りなおす。

「■■■■■■■■■――ッ!!」

 ライダーが動くよりも先にアサシンの黒髪が蠢き、ライダーへ襲い掛かる。

 今まで何度も見た業だが、その勢いはかなり遅い。だというのに、ライダーはこちらを一瞥するのみで避けるそぶりを見せない。

 直後、無数の黒い刃がライダーを襲った。

 まさか、俺を庇って……っ!?

「ご心配なく」

 血の気が引いていく俺の表情を察してか、直立不動のライダーはそう告げる。

 刃と化した鋼鉄の髪が鞭のようにしなり、ライダーの身体をえぐろうと何度も襲い掛かる。

 しかしその刃はライダーの目の前に立つ大男に阻まれ、彼女の柔肌をえぐることはない。

「遮那王流離譚が三景。弁慶・不動立地。

 そのような弱体化した刃で弁慶の肉体を貫けると思うな」

 たしかこれは、昨日ガウェインの宝具の余波から俺を守るために展開した宝具。

 その名の通り弁慶の肉体を疑似的に再現することで強固な盾とする宝具。

 ……自分の部下を盾にしている絵面は少々酷いが、まあライダーならやりかねない気がする。

 そして盾に使うために呼び出した自分の部下を飛び越え、その肩を蹴ってアサシンに肉薄する。

「オ、オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!」

 対抗するようにアサシンは咆哮とともに脚部に魔力が集束し、爆発が起こったかと錯覚するほどの衝撃とともに異形と化した彼女の身体は遥か上空へと上昇する。

 続いてまるで雨のように降り注ぐ黒い束。その正体はアサシンの狂想閃影によって伸びた彼女自身の髪の毛だ。

 それがライダーの行き場を奪うように展開される。

 しかし……

「この業では私の弁慶・不動立地を貫けないのはわかっているはず。

 バーサーカーだから学習できていないのか? それとも足止めとでも言うのか?」

 ライダーの言う通りこれではただの足止めだ。いくら上空に逃げようともそれだけならいつかは落ちてくる。

 むしろ落下の衝撃で自滅する可能性も……

「っ、退避……だ!」

 叫べば激痛が走るが、そうせずにはいられなかった。

 しかし俺がアサシンの行動の真意に気づく前に相手のほうが先に動いた。

 はるか上空でもわかるほどの魔力の圧力。岩と見間違うほどの巨大な物体がゆっくりと自由落下をしてくるのがわかる。

 サラが遺してくれたデータの中にあった『ザバーニーヤ』の中で、この状況だからこそ最も効果的な業。

「妄想膨張……」

 曰く、おのれの体重と体積を増加させることで、その肉体がもたらす自由落下のエネルギーで相手を圧殺する業。

 非常にシンプルゆえに誤魔化しようのない威力を持つ宝具。

 そしてその衝撃に耐えられるように断想体温ほどではないにしろ肉体の強度も増していると記されてあったため、力業での反撃も難しい。

 唯一、自由落下ゆえに相手に察知されると容易に避けられてしまうという致命的な弱点があるが、それを狂想閃影による檻で補っている。

 魔力不足で弱体化しているらしいが、髪を複雑に絡ませることで狂想閃影の強度を高めているようだ。

 ライダーも相手の目論見をわかっているだろうに一向に出てくる様子がないのがそれを物語っていた。

(コードキャストさえ使えれば……!)

 右手に握る黒鍵を睨みつける。

 右腕でなら黒鍵を振ることができるが、右腕以外で起動しなければ礼装のコードキャストは使用できない。なのに、今の状態では右腕以外はピクリとも動いてくれない。

 筋力強化のコードキャストを使えば、もしかすれば突破できるというのに……!

 ただただ無意味に黒鍵を握りしめることしかできない自分を悔いる。

 今の俺にはそれしかできなかった。

「っ!?」

 そんな状況でさらに上空からの圧が強まり、思わず身体がこわばる。視線を上に向ければ、さきほどまで自由落下をしていた巨体がその速度を急激に上げている。

 おそらく妄想疾走で空気の壁を蹴ったのだ。

 普通ならありえないスピードにアサシンの身体が空気抵抗による摩擦で赤く熱を帯び始めている。その姿はもはや隕石だ。

 これではたとえあの檻の中で弁慶・不動立地を展開しても防ぎきれない……!!

「心配いりませんよ、主どの」

 不意に聞こえてきたのは、ライダーの落ち着いた声。しかし声の方角からして彼女はいまだ漆黒の檻にとらわれているはず。

 だというのに彼女が慌てる様子はない。

「遮那王流離譚が五景外伝――」

 静かに唱えたのは、五つの奥義からなる彼女の宝具『遮那王流離譚』の……外伝?

「――宗谷・一刀切」

 静かな声から繰り出されたそのひと振り。

 そのひと振りが、漆黒の檻を切り裂いた。

 まるでバターでも切るかのように滑らかに。いっそのこと、音すらも切り裂いたかのかと錯覚するほど静かに。

 慌てた様子もなくライダーは己が作った脱出路から悠々と飛び出し、俺の元まで戻ってきた。

「心配おかけしました、主どの」

「今、のは……?」

「誠に恐縮ですが、詳しい話はあとで。今は私の背中へ」

 とは言われても自力で立てない俺はライダーにされるがままに背負われる。

 ふと、倒れたままのユリウスが視界に入る。

「主どのの頼みであれば、あのものも背負うことはできますが?」

「……それじゃあライダーの動きを鈍らせることになる。

 今の俺たちに相手へ情けをかけられる余裕はない」

 その決断に俺自身の胸がズキりと痛む。

 ……いや、これは俺ではなく『誰か』の感情だ。そうに違いない。

 間もなく、隕石と化したアサシンが決戦場の地へと直撃した。

 爆発でも起こったかのような衝撃に地面が割れ、吹き荒れる防風は周囲の木を容赦なくなぎ倒していく。

 その衝撃が俺やライダーの元まで届く直前。

「遮那王流離譚が一景――」

 穏やかなライダーの声が響き……

「――自在天眼・六韜看破」

 身体が引っ張られるような感覚と共に視界に映る風景が一変した。

 見渡す限りの青。遅れて、そこが地上数十メートルの上空であることに気づいた。

 ゆっくりと自由落下を始めたところに、下から吹き荒れる暴風で割れた地面が俺たちがいる場所まで持ち上げられ、俺たちの身体も一瞬重力を忘れて空中で静止する。

 もしこの暴風を地上で受けていれば決戦場の果てまで地面を転がりながら吹き飛ばされていたかもしれない。

「これはいい」

 そんなもしもの可能性を気にすることなく、ライダーは周囲に浮遊する割れた地面を見てそう呟く。

「トドメを刺します。主どのはしっかり掴まっていてください!」

 言いながらライダーは一番近くを浮遊していた地面を足場にして次の足場へと移動する。

 次第にその速度が増していき、地上で埋まっているアサシンへと接近していく。

 本来なら浮遊した地面では十分な足場にはならないが、ライダーの奥義があればその程度の足場でも十分だ。

「壇ノ浦・八艘跳!」

 今度は俺の魔力消費を考慮してか、船の出現はない。

 だがアサシンに迫るのに必要な足場は十分に浮遊している!

 アサシンが砕いて浮遊する地面を螺旋状に蹴り進み、どんどん速度を上げていく。

「■■■■■■■――ッ!!」

 対するアサシンは妄想膨張を解除しつつ、ライダーを迎撃するべくバチバチと帯電し始めた。

 ……本来であれば浮遊する足場をほぼ垂直に蹴り進めることで、アサシンが対応する前にトドメを刺せていたはず。

 そうせず螺旋状に進んでいっているのは、間違いなく俺に気を使っているからだ。

 俺に負担がかからない程度に速度を上げているが、このままでは相手の宝具発動前にトドメを刺せるかは怪しい。

 高確率で相打ちになる。

「させ、るか!」

「主どの!?」

 激痛が走る身体に鞭を打ち、ライダーの背中から離れる。

 ライダーの背中から離れても残っていた慣性で通常の自由落下よりはやく落ちていくが今は気にしない。

「最後くらい、マスターらしくサポートしないとね!

 hack(64);>key!」

 力が入らない左手に右手を添えて黒鍵を無理やり握らせ、魔力を流しながらぎこちない動きで振るう。

 起動条件を満たしたコードキャストが斬撃となり、宝具開放前のアサシンに直撃し……。

「ぎ、がっ!?」

 残念ながらスタンは入らなかった。

 だが、予想外の攻撃を受けたことでアサシンの標的がライダーから俺に変更される。

「それだけで十分。

 ライダー、決めるんだ!」

「~~~~っ!! あとでお話がありますからね、主どの!」

 少し怖い返答を返されたがライダーは進行方向を螺旋状から垂直方向へ変更し、一気にアサシンに迫る。

 アサシンも瞬時に俺とライダーどちらが脅威かを判断して対応するも、すでに音速近くまで加速したライダーを止める術はない。

 断想体温で防御される可能性もありえるが、わざわざ妄想膨張を解除したのを見ると、もはや複数のザバーニーヤを同時展開する余力は残っていないのだろう。

 展開したままの狂想閃影で苦し紛れに盾を展開しようとするも、それさえもライダーは足場にしてアサシンの懐へと潜り込んだ。

「静かに眠れ。名もなき暗殺者」

 横に一閃。

 あまりの速さで振るわれた一振りは、斬られたことを相手に悟らせないほど見事なものだった。

 遅れて鮮血が噴き出すが、その光景を見届けることなくライダーは踵を返し、地上に激突直前だった俺を寸前のところで受け止める。

「えっと、ナイスキャッチ」

「いろいろと言いたいことはありますが、さきほどの援護は感謝します」

 ……これは本気で怒らせてしまったらしい。このあと待ち受けている説教は覚悟しなければならないかもしれない。

 ひとまず彼女の肩を借りて地面に降りる。

 肩を借りても歩くのは難しいが、ライダーに身体を預けていれば立つことならできそうだ。

 決して少なくない出血だけでなく霊核まで砕かれたアサシンと向かい合う。

「――――」

 言葉を交わすこともなく彼女の身体は崩れ落ちるが、ほんの一瞬彼女と目が合い、そして彼女の口がかすかに動いたのがわかった。

 声はなかったが、口の動きからある程度の予測はできる。

「あ……り……が……と……う……?」

 見間違いかもしれない。だがもう真実を問うことはできない。

 糸の切れた操り人形のように暗殺者の身体はその場に崩れ落ちた。

「バカ、な……」

 そして、割れた地面の陰から覚束ない足取りで現れたユリウスからそんな言葉が漏れる。

 浅い呼吸を繰り返しているが、アサシンが落下してきた際のすさまじい衝撃をまともに受ける位置にいたはずなのに目立った外傷がない。

 自力で防壁を張っていたのだろうか?

 閃光で視力を失っているはずなのに気配だけで俺たちを察知してまっすぐ歩いてくる姿といい、彼の執念には驚かされてばかりだ。

 だが勝敗は決した。

 その現実を突きつけるように半透明な壁が出現する。

 勝者と敗者を隔てる赤い壁が。

 見えないながらも現実を理解したユリウスは脱力してその場に座り込む。

「……お前にだけは殺されたくないと思っていたのに、このざまか」

「最期に聞かせてくれ。

 あなたは昨日誰に何を吹き込まれたんだ?」

 先ほどと同じ質問。

 一度目は聞く耳を持たないといわんばかりに拒絶されたが、勝敗が決した今のユリウスは非常に穏やかだった。

「いいだろう。最期にお前に真実を教えてやる。

 お前は自分の肉体が今も地上にあると夢見てるかもしれないが、本当はそんなものは存在しない。

 お前は、このムーンセルの中で第三者によって作られた生命体だ。いや、生命体なんて名乗ることさえおこがましい。

 元のアバターに複数のアバターデータを詰め込まれた結果生まれた合成獣(キメラ)だ!」

「…………」

 ユリウスの言葉が癇に障ったのか抜刀しかけるライダーを片手で制する。

 燃やしきれなかった残りの憎悪を吐き出すように、なおもユリウスは続ける。

「今を生きる人間どころかNPCやサイバーゴーストですらない。地上の生命体を模したものでもない化け物なんだ、お前は!」

「……そっか」

 自分でもびっくりするほど、ユリウスの告げた真実に関しての感想はそれだけだった。

 他人事のように感じているのではない。今までの経験や自分の体質、あらゆる要素から俺が人間じゃないことははっきりしていた。

 今回『人間じゃない何か』という漠然なものから『複数のアバターの寄せ集め』という正体が発覚しただけ。

 謎が一つ解けただけに過ぎないのだ。

「お前、なぜ冷静でいられる?」

「サラにも同じこと言われたよ。

 理由は強いて言うなら、今までの経験から考えて人間じゃないと言われたほうがしっくりくるから、かな。

 むしろ今は自分の正体より、俺の正体をユリウスに話したのが誰なのかの方が気になる」

 だから話して、とユリウスに話を振る。

「……………………」

 しかし答えない。俺の正体について話したのは親切心ではなく、真実を知って錯乱する姿でも望んでいたのだろうか。

「舞……購買部のNPCとか?」

「…………」

 さすがに何も言ってくれないか。

 ひとまずそういう存在がいるということだけ頭の隅に置いておく。

 話が途切れるとそのタイミングを見計らったようにユリウスたちのデリートの速度が速まった。

 赤い壁が出現する前からボロボロだったユリウスたちは見る見るうちに黒いノイズに侵されていく。

「あなたとは、何かが違えばお互いの理解者になれたかもね」

「……俺が、お前の? ありえない」

「俺もそう思う。けど、頭の中でそんな光景がチラつくんだ。

 あなたを助け、助けられる関係になる未来が」

「ありえん。妄想もそこまで来ると逆に同情するぞ」

「可能性の話だ。だから否定はできないよ。肯定もできないけどね。

 今はっきりしているのは、『俺』はあなたとは分かり合えない。これだけだ」

「……ふん」

 これ以上は付き合ってられない、とでも言うように鼻で笑ったのを最後に、ユリウスたちの身体は完全に霊子の海に溶けていった。

 その最期を目にして胸が苦しくなった気がするが、おそらくこれは俺ではない『誰か』の感情だ。

 俺に、そんな感情を抱く資格はないのだから……




これにて五回戦終幕です
岸波白野と違い、天軒の場合はラニの仇という立ち位置でユリウスと対峙させましたので、友人となるルートにはなりませんでした

サラと狂信者、義経のマテリアルは近日更新予定ですが、六回戦はまた毎週更新ができる程度にストックが溜まるまで更新とまります
以前は半年ぐらい空いてしまいましたが、来年の2月ぐらいからは再開したいなと思います

ちなみに五回戦を通してのサブタイトルですが、対戦相手が暗殺者ということで死に由来する言葉の漢字を変換したものを各話に入れてみました。テーマを決めるとサブタイトルもつけやすいですね
遠逝→怨声
斃死→兵士
蓋棺→外観
訃報→不法
示寂→(泰然)自若
死霊→史料
轢死→歴史
縊死→意思
鬼籍→奇跡
夭逝→要請
一死→一矢(報いる)
長逝→調整
死命→使命
属絋→続行

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