Fate/Aristotle   作:駄蛇

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父娘の歴史

 日付は変わりモラトリアムも五日目に差し掛かった。

 五回戦が始まってからというものの、新たにわかった自分の体質の謎や舞にかけられた疑いなど、頭を悩ませることが増える一方であることに堪らずため息が漏れる。

「気分が落ち込んでるみたいだな」

「まあ、聖杯戦争に関係ない問題まで山積みだからね。俺やライダーに害がある可能性がなさそうなだけ少しはマシに感じるけど」

 愚痴をこぼしてみるが気分が晴れることはない。一度忘れてユリウスとの戦いに集中した方がいいかもしれない。

「サラ、対アサシン用の礼装の使い方教えてくれる?」

「使い方は簡単だ」

 言いながら傍に立てかけていた礼装を持って調子を確かめるためかバトンのように軽く回す。

 先は小さく二又に別れ、反対側には鳥の頭のような装飾が取り付けられた、1メートルほどの杖の形をしたそれは直感的にエジプトに由来するものだとわかる。

「ラニは『セトの雷』と呼んでたな。モチーフは名前の通りエジプト神話のセト神などが持っていたウアス杖だろう。

 効果は行動の制限ね」

「つまり、それをアサシンに使って宝具を封じるってこと?」

「そういうことだ。ただまあ使用条件がかなりシビアでな。

 予め特定の動作を設定しておいて、その動作を行なっている相手にこの杖を叩きつける必要がある。

 宝具を食らう危険があるのは重々承知だが、その分効果は折り紙つきだ。

 この手の効果はコードキャストでも珍しくないんだが、この概念礼装なら少なくとも数日は特定の動作を封じることができる。

 ライダーが万全で臨めるように手を加えたのもこのためだからな。

 本気で殺しにくるアサシンの宝具をさばき切れるようにね」

「けど、結局礼装を使うのは俺なんだし、俺がアサシンに近づけなきゃ意味ないんじゃ……」

 それだと、どれだけライダーが善戦しても良くて封じれるのは一種類だけだろう。その後は確実に警戒されるし、下手をすれば俺が返り討ちにあって終わりだ。

「その点は心配しなくていい。礼装を接続するのは天軒由良の魔術回路だが、それを使うのはライダーでも構わない。

 ただ、その分礼装を魔術回路に深く接続する必要があるから、相手の行動を封じた分その数に比例して魔術回路に負荷がかかる。

 丸一日休めば治るが、戦闘中はお前の動きは鈍くなるうえ、コードキャストを使おうとすれば激痛が走るだろう。

 使い所はしっかり見極めなさい」

「丸一日休養にあてないといけないってことは、今日やらないと決戦に響くってことか。

 気を引き締めないとね」

 サラから手渡された概念礼装を受け取り、一応握り心地を確認してから端末経由で装備を切り替える。

 代わりに強化スパイクを外すことになるが、サラに代わりに装備してもらえれば常時は無理でも適宜解放することはできるだろう。

 装備の切り替えが完了したのを確認したのちライダーに託すと、彼女は彼女で握った感触や振り心地を確認し始めたので彼女からは視線を外してサラの方へ向ける。

「とりあえずアリーナ内でユリウスと会うまで待機かな」

「だな。問題は今日もアリーナに入ってきてくれるかどうかだ。

 お前の場合は鍛錬も兼ねてほぼ毎日アリーナに潜っているが、モラトリアム中はトリガーさえ入手したらあとは何してても自由だ。

 相手の情報を探るためにアリーナで戦闘をけしかけることもあるが、あいつは殺人の腕もさることながら頭も切れる。

 致命的な情報は与えてないとはいえ、小さな情報……例えばライダーの身につけている鎧や刀の名称もしくは似たものが使われていた時期、三次元的な動きをするライダーの戦闘スタイル。

 そういったものからおおよそのあたりは付けていてもおかしくないでしょう」

「史実では男ってことになってる牛若丸が実は女だったっていうのはかなりミスリードな情報の気もするけど……」

「あくまで史実は言い伝えだからな……

『男のように振舞っていた』が複数人の伝言ゲームの末『男だった』として言い伝えられた、なんてのもありえる。

 私の1回戦の相手は傍若無人の語源にもなった暗殺者だったが、あれもなぜか女だったしな……

 参考までに言っておくと、さっきいった服装と戦闘スタイルで私は義経の名前にたどり着いてたぞ。

 チンギス・ハンと混同されているうえ幼名の方とは思わなかったけれど」

 1回戦ではシンジがライダーを女性という部分を重視した結果、甲斐姫という間違った真名にたどり着いた。

 しかしここまで勝ち上がったマスターは性別ではなく、確固たる情報から導きだすノウハウがあるらしい。

 ここはサラの言う通り、ユリウスもこちらの真名を把握していると考えた方がいいだろう。

 

 

 場所は変わってアリーナの内部。

 逃げ道と戦いやすさのどちらの観点から見ても適している空間にてユリウスを待つ。

 サラにアリーナはもちろん校舎もモニタリングしてもらっているのだが、今のところどこにも姿を現していないらしい。

 最悪の場合は想定しつつ意図してそのことには触れないでいると、思ったより間が持たない。

 魔力の消費を抑えるためにエネミーとの能動的な戦闘も控えなければいけないため、自然とこの状況とは関係ない会話で時間を過ごす流れになった。

「ところで、サラの父親ってどんな人だったの?」

『どうしたいきなり』

「いや、なんとなく。サラが聖杯戦争に参加してまでもう一度会いたいって思えるほどの人っていうのが気になって」

 こんなこと暇つぶしの話題に挙げていいのかかなり迷ったが、サラは特に気にした様子もなく語り始めた。

『一言で例えるならお人好しな人だな。西欧財閥の傘下に入ったことで聖堂教会の在り方が変わってなお、エクソシストとして私のような悪魔憑きになった人たちを助けていたぐらいだ。

 まあ聖堂教会からバックアップがない状態では自分の下に尋ねてくる人の対応をするのがやっとだから、ほとんど個人のボランティアに近い規模だったがな。

 それでも町医者のような立ち位置で、助けを求める人やただ話し相手が欲しいだけの人が代わる代わる尋ねてくる程度の認知度と信頼度はあったようだが。

 そんな人だから、私みたいなのを引き取るなんてことが出来たんでしょうね」

 父のことを語るその声色は普段では聞かないような優しいものだが、若干気恥ずかしそうに感じた。それだけで彼女が自身の父のことをどう思っているかよくわかる。

 ただ、気になることが一つ。

「引き取るって……じゃあサラはハンフリーの養子なの?」

『言ってなかったか? まあ正式な手続きは踏んでないがな。

 生まれてすぐこの体質が発覚して生みの親に捨てられる予定だった私をそのまま拾ってくれただけ。

 あまり必要と感じなかったから気にしてないが、私の戸籍が地上にあるのかも怪しいわね』

 予想していなかった関係性に驚きはしたが、それならレオたち西欧財閥がサラの存在を認知していないことも納得だ。

「もしかして、サラが使ってる鏡を使った結界魔術って……」

『これはハンフリーが死んだあと、蘇生魔術や降霊魔術なりの文献をあさっているときに学んだものだ。

 ハンフリーから聞いた話では、私の実親の研究は生命の研磨……いやこの情報は必要ないだろう。

 聞いても気持ちのいいものじゃないでしょうし』

「……ごめん。触れられたくない過去だったよね」

『残念ながらこれっぽっちも気にしてないのが現実だ。物心つく前に引き取られて以降、一切接点がなかったおかげで顔すら知らないからな。

 というか、謝るぐらいなら最初からこんな質問しないことね』

「ごもっとも。

 でも……うん。なんでサラがハンフリーを求めるのか分かった気がするよ。

 たぶんサラと同じ立場だったら俺も似たようなことしてたと思うし」

『……私が言うのもなんだが、この感情が理解できるってことはお前そうとうヤバいぞ。

 私がハンフリーの背中を追い続けてるのは、孤独が嫌いなくせにあの人が死ぬまで他の人とまともに接してこなかったからだ。

 もしも聖杯戦争で勝ち残って降霊に成功していたとしても、開口一番に怒られるのは目に見えてる。

 それだけ馬鹿なことをしてるってお前だってわかる、で……しょう…………』

「サラ?」

 なぜか最後歯切れの悪いまとめ方をしたのだが、尋ねても反応がない。通信が途絶えた様子ではないのだが……

『いや……なんでもない。

 それより、ユリウス・ベルキスク・ハーウェイの動向が気になって少しだけ違法行為で行動履歴(ログ)を探ってみたんだが、まずいことになったぞ。

 あいつ、もう今日の日付を終えているわ』

 違法行為という言葉が若干聞き捨てならないが、今重要なのはそれではない。

 ラニとサラが作ったセトの雷という礼装は、使えば使うほど俺の魔術回路に負荷をかけるらしい。その休養期間を含めてのタイムリミットが今日だったのだ。

「一応聞くけど、どうすればいい?」

『策はないわけではないが……

 念のために下準備しておく必要があるな。

 天軒由良、今からアイテムストレージに入れるアイテムを今いる場所に設置しなさい』

 こればかりはサラも想定外だったらしく、ひどく動揺しているのが声だけでわかった。

 それでも即座にその対策を立てられる対応力はさすがと言える。

 そしてアイテムストレージを確認する。見慣れないアイテムが新たに加わっており、彼女の言ってるアイテムがなんなのかはすぐにわかった。

「……鏡?」

『今はそれをその場所に置くだけでいい。お前はこのあとトリガーも回収しないといけないだろう?

 心配しなくても詳しい説明は帰ってからするわよ』

 どうしようかと隣に佇むライダーの方を見るが、彼女も小さく肩をすくめるのみ。

 サラの思惑がイマイチわからないが、それを考えたところで時間の無駄なのは理解できた。

「じゃあ設置したらトリガーを取りに行こうか」

「承知しました、主どの」

 

 

 マイル―ムに戻ると、工房の中でサラは神妙な面持ちで虚空を見つめていた。トリガーを入手するまで特にオペレートしていなかったので、俺とライダーがトリガー入手に向かったあの瞬間から今までずっと悩んでいたのだろう。

 遅れてこちらに気づいたサラが疲れた様子で出迎えてくれる。

「……鏡とトリガーは?」

「問題なく」

 そうか、と短いやりとりでトリガーの話題は打ち切って立ち上がる。

 不思議とその場の全員が同じことを思っていたらしく、誰が言うでもなく自然と俺たちは机を囲って向かい合った。

「これからどうするかだが、やることは変わらない。アサシンの宝具を封じるために『セトの雷』を使う。

 問題なのはその前提条件であるアサシンとの戦闘がこのままじゃ行えないことね」

 言いながら全員が見える位置にディスプレイを表示させ、そこに規則的な文字と数字の羅列を列挙していく。

 おそらくこれがユリウスの行動履歴(ログ)なのだろう。それぞれこのSE.RA.PH内にある施設の名称とそこに訪れた時間と滞在時間を現しているようだ。

 こうして見てみると、ユリウスの行動はかなり効率的だ。

 初日と四日目に少し長めにアリーナ探索しているのはトリガーを回収するため。

 二日目にアリーナへ向かっているのは俺たちの情報を得るためだろう。そのあとに図書室に向かっているので間違いない。

 それ以外の日はアリーナに向かうことなく、ほぼずっとマイルームに籠っている。

「改めて見てみると、びっくりするほど動いてないな。情報が手に入ったんだろう二日目以降は戦闘するつもりがないからかアリーナにも入ってない。

 暗殺者じゃなくて引きこもりなんじゃないかしら」

「けど、それって三回戦のときのサラも似たようなことしようとしてたような……」

「あ?」

「なんでもない」

 どうやら触れてはいけない部分だったらしい。ガラ悪くガンを飛ばしてくるサラに無理やり黙らされた。ベタな脅しだとは思うがやはり怖いものは怖い。

 視線を合わせないように明後日の方向を見ていると諦めたのか、サラは少しだけ不機嫌そうに息を吐いてからディスプレイの方に視線を戻す。

「必要最低限の行動しかしない、というのはわかりましたが、ではなぜほぼ毎日何もないはずの場所へ向かっているのでしょう?」

 打開策に頭を悩ませていると、隣でジッとディスプレイを眺めていたライダーがそんなことを呟いた。

 言われてみてみると、確かにユリウスはわずかな時間だが、マイルームでもアリーナでもない場所へ足を運んでいる。

 ここは……校庭を挟んだ反対側にある別館か?

 二人して首をかしげると、それを待ってましたと言わんばかりに向かいに座っている女性が小さく笑った。

「二人が気づいた通り、あいつはマイルームで休息に入る前になぜかこの何もないところに向かっている。

 昨日まで同じ行動をしているからといって断言はできないが、賭けてみる価値はあるはずよ」

「なら、そこからどうにかしてアリーナに誘い込むことができれば……」

「ですが相手も相当な手練れ。もし誘い込まれているとわかればマイルームに籠られることもありえます」

「あ、そっか……

 別館も敷地内であることには変わらないから、そこで戦闘すればペナルティはあるだろうし……」

 光明が見えたと思ったら新たな壁にぶつかってしまった。

「なら、その両方を解決すればいい」

「もしかして、ユリウスがマスター殺しやってたときみたいに不正行為(ルールブレイク)でアリーナを作成するの?」

「そこまでちゃんとしたものを作る必要はないさ。戦闘ができて、なおかつその戦闘がペナルティとして判断されなければいい。

 私の得意分野は魂の扱いだが、それとは別に鏡を使った結界魔術も扱える。まあ見てのとおりだがな。

 そしてその結界魔術の下準備が、さっき天軒由良に設置してもらった鏡型の礼装だ。あの鏡は設置した場所の環境を複製して保管することができる仕組みでな、私の構築した結界と組み合わせることで結界内の空間を上書きすることができる。

 所詮はまがい物だが、SE.RA.PHの目を誤魔化すならこれで十分。アリーナそのものを悪用したわけじゃないから違法ではない。

 だけど機能はアリーナと同じだから戦闘も可能。

 どうだ、問題ないでしょう?」

「限りなくアウトなセーフだね。ほとんど屁理屈だし」

「屁理屈も立派な理屈だ。なによりこの聖杯戦争を取り仕切っているのはあの神父だぞ。

 鼻で笑って容認するに決まってるわ」

 その姿が容易に想像できるのがなんとも……

 この清々しいほどの力技は最初の頃なら意外に感じたかもしれないが、2週間足らずサラと共に行動してきた今となっては逆に安心感すらある。

「結界を作るのは別館だよね? ってことは今から準備してくればいいの?」

「……いや、別館に来るってことまでしかわかってないから、ピンポイントで設置するのはリスクが高い。

 それに万が一とはいえ結界がバレたら本末転倒だ。明日ユリウス・ベルキスク・ハーウェイの位置を直接確認してから結界の構築を行う方がいいだろう。

 幸い今回使う結界はそれ単体に効果はなくただ空間を区切るだけ。魔方陣が基本的に円で囲んであるのは空間を区切ることで術式の効果を高めるため、というのと理屈は一緒だ。

 だから起動までの速さと隠密性はかなり高い。

 ……とまあ、メイガスの知識をウィザードに説いても意味はないか。

 ともかく、今日やれることは終わったからもう休みなさい」

 そう言ってサラは席を立ち、また自分の工房へと戻っていく。その途中、思い出したように立ち止まってこちらに振り返った。

「『セトの雷』の礼装を装備から外しておいてくれ」

「どうせまた装備するんじゃ二度手間じゃない?」

「それはほら、負荷が少しでも軽減されるように調整を試してみるつもりなんだ。

 宝具封じても決戦でコードキャスト使えないなんて意味ないでしょう?」

「……?」

 サラの様子が少し変に感じるが、言ってることはもっともらしいので素直に装備から外しておく。

 それを確認したサラは今度こそ工房へと戻っていき、なぜかサラのいる空間が遮断されてしまった。

 何も言わなかったが、遅くまで作業するつもりだから俺たちに配慮したのだろうか……?

 残された俺たちは広さが教室一つ分に縮小された空間でお互いに顔を見合わせたのち、示し合わせたように床に就いた。

 

 

 照明が落ち、就寝状態へと移行したマイルーム。ライダーと共に布団に入り体感では約一時間。いつもならすでに眠っている時間だが、今日は眠るまでに少しだけ時間がかかっていた。

 それでもばっちり目が覚めているというわけでもなく、うとうとしている時間が長いだけ。心配しなくてもほどなくすれば睡魔に耐えられなくなるはずだ。

 だからといって、この時間が退屈でないといえばまた別の問題。

 人口の明かりがなくとも月明かりがカーテンの隙間から差し込むマイルームは若干明るく、夜目でも天井の模様がぼんやりと確認できる。

 すでに左目のデバイスはスリープモードにしてあるため、仰向けで天井と向かい合っているこの体勢では少し首を向ける程度では左側で眠っているライダーの様子を確認できない。

 それでも肌越しに感じる自分以外の体温が確かに彼女がそこにいることを伝えてくれている。

「……そういえば、今日アリーナ探索してるときにライダーの宝具見せてもらえばよかったね」

 退屈さに負けて隣で横になっている女性に声をかける。しかし返事はなく、代わりに静かな寝息が返ってきた。

 どうやら先に寝てしまったらしい。

 思い返してみると、ライダーが俺より早く寝てるのはキャスターの呪いに蝕まれていた時ぐらいではないだろうか……?

 まだ霊基に負荷がかかってるのかもしれないと不安になり、ライダーと向かい合うように寝返りを打った。

 鼻先が触れそうなほど近くにある彼女の整った顔立ちは、非常に穏やかな表情で規則的な呼吸を繰り返している。

 苦しそうではないことはわかりホッとしたが、やはり確認しないことには完全には安心できない。

 寝ている相手に許可を取らずにというのは気が引けたが、布団から覗く彼女の右手にゆっくりと触れる。

 一瞬身じろぎはしたが、起きる様子はない。

 こうしてちゃんと彼女の手に触れるのは初めてだが、絹のように滑らかな肌と細い指は、彼女が一騎当千の英霊である前に一人の女性であるということを改めて実感させられた。

 ……寝ている相手になんてことをしてるんだと自己嫌悪に陥りそうになるので、これ以上観察するのはやめておこう。

「えっと……どうしよう」

 完全にその場の思いつきで行動したため次どうするべきかが浮かんでこない。

 とりあえず繋いだ手に意識を集中させてライダーの体調をより詳しく見てみるが、どこもおかしいところはない。

 霊基に異常がないのであれば、単純に疲労が溜まっていただけだろうか……?

「サーヴァントの疲労回復となると、魔力供給すればいいのかな?」

 とはいえ令呪を通じたパス経由で魔力はちゃんと供給されている。これ以上の魔力供給となると……

「体液交換か、粘膜の接触……っ」

 想像しただけで顔が赤くなるのがわかる。

 さすがにハードルが高すぎるし、なにより寝ている相手にやっていいことではない。

「……これぐらいなら、迷惑にならない、よね」

 考えた末に、繋いだ彼女の手の甲に口づけをすることに決定した。微々たるものだが、一応これでもライダーへ魔力が余分に供給されているのは確認できる。

 これで一安心と胸をなでおろすと、その息を吐く動作につられるように急に睡魔が襲ってきた。安心できたことで緊張感が緩んだのだろう。

 ライダーの手に口づけをしたままで大丈夫かと一瞬脳裏によぎったが、結論が出るまで睡魔に抗うことができず、海の底へと沈む感覚とともに意識が遠のいていった。




四回戦もようやく折り返し地点に来ました
逆に言うとまだ半分です

三回戦であまり掘り下げられなかったサラのパートも入ってるので仕方ないと言えば仕方ないですが

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