皆さんはチャレンジミッションいかがでしょうか。私はモチベーションがデストラクションで去年のも今年のも全然やってないです
日付が変わりモラトリアムの二日目。相手不在の聖杯戦争が今日も始まる。
相変わらず俺が起床したときにはすでに二人とも各々活動を始めていた。
ライダーはサーヴァントでありこれまでの経験から少ない睡眠時間でも問題ないのはわかっているが、つい先日まで普通の人間として寝起きしていたサラは十分に休息が取れているのが不安になる。
右手は問題なく機能しているようで、その点に関しては安心しているが……
そんな心境から端末を操作する彼女を眺めていると、こちらの視線に気づいたサラが怪訝そうに眉をひそめた。
「何か用か?」
「いや、サラはちゃんと寝てるのか気になってね。右手だって今は動いてるけどくっついたばかりだし」
「心配しなくてもこれでも十分休みは取っている。それから右手に関してはリハビリも兼ねていろいろと作業をしておきたいからこれでいいんだ。
しばらく切り落とされていた状態だったからか、まだ右手に違和感が残っているのよね……」
作業の合間合間に右手の調子を確かめるように握ったり開いたりを繰り返してはいるが、作業そのものの手は一向に止める様子はない。リハビリと言われてしまうと、こちらからは無理をしないように注意を促す程度しかできない。ここは彼女が満足するまでしたいようにさせるのが最善か。
「それにしてもかなり真剣みたいだけど、一体何の作業ををしているんだ?」
「礼装の作成だ。先日のランルーくんとかいうピエロとの戦闘で、こちらに妨害手段がないことの不自由さを痛感させられた。マスター同士の戦闘は黒鍵で対応できるとしても、さすがにサーヴァント戦を今後もライダーのステータス上昇と治療だけで勝ち抜くのは厳しいだろう?
私が使っていた棺桶型の礼装はピーキーすぎてお前が使うのは無理だが、幸い今の私が依り代にしているのは元が守り刀だった礼装だ。コードキャストの参考にするにはもってこいだろう。
ひとまずこの礼装をベースに似たような礼装を作っているところよ」
「それは助かるよ。5回戦までには間に合いそうかな?」
「やっているのはベースになるコードキャストの出力を弄っているだけだからな。普通ならそんなことしたら礼装の容量が足りずに自壊してただろうが、私が礼装と同化したことで容量が拡張されたようだ。思っていたより難しくはないし、この程度なら明日にはできるだろう。
モニタリングはしっかりしておくから、お前はさっさとトリガーを取ってきなさい」
まるで追い出されるようにアリーナへと向かう。出迎えてくれたのは昨日と同じ薄暗い深海の風景。しかしその足取りは昨日よりも軽い。ラニや舞との会話は思っていた以上に、自分の中にあった不安を軽減させてくれたらしい。
ライダーとの連携も問題ない。昨日噛み合わなかったのは必要以上に神経質になっていたのが原因かもしれない。
昨日の時点でトリガーがあるだろう通路は特定できていたのもあって、思いの外あっさりと目的の場所までたどり着くことができた。
「これでこの層の目的は達成だ。サラのコードキャストもすぐに試せるわけじゃないし、今日はここまででもいいかな?」
「では、最寄りの出口へ向かいましょう。ここら一帯のエネミーはすでに取るに足らない雑魚ですが、この階層で初めて見る敵も存在します。決して油断なさらぬよう……」
不意にライダーの言葉が詰まった。どうしたのかと尋ねる前に彼女は刀を構え、まっすぐ前を見据える。遅れて彼女の視線を追うと、『それ』は曲がり角から姿を現した。
対戦相手のいないアリーナで遭遇するのはエネミー以外存在しない。だから目の前にいるのはエネミーで間違い無いのだが、一瞬本当にそうなのか疑ってしまった。
左腕が異様に肥大化した左右非対称な腕を持つ人型のエネミー。これまで非生物的な姿がほとんどで、それ以外だと蜂のような小型の生物しか現れなかったのもあって、ここにきて異色を放つエネミーを目にすると嫌でも警戒してしまう。
『あれは……レアエネミーの類だな。
文字通り遭遇することが稀なエネミーで、サーヴァントほどではないにしろ強敵だ。その分倒したときに得られる
今のライダーなら苦戦はしても負けるほどではないはずだし、資金集めも兼ねて倒してみたらいいんじゃない?』
「そうだね。ライダー、人型のエネミーだから他のエネミーよりサーヴァントとの戦い方をベースにした方がいいと思う。
通路の壁を使って背後を取る戦法で行こう」
「承知。では、参ります!」
腰を落とし、一気に加速したライダーは通路の壁を蹴り、レアエネミーの頭上から背後に移動しつつその手に握る愛刀を振り下ろした。
確実に死角からの一撃を与えたのにライダーが眉をひそめたように見えたのは、不自然に揺れる敵相手に目測を見誤ったからか、はたまた予想以上の硬さだったからか……何にしても満足のいくダメージを与えられなかったようだ。
一撃で仕留められなかったのなら、次に来るのは相手の反撃。レアエネミーは身体をコマのように回転させ、その肥大化した左腕を振り回し始めた。その予備動作を察知したライダーは素早く敵の間合いから距離を取る。
「な、腕がのび……っ!?」
見切ったとライダーが予想していた間合いからさらに1メートルほど腕が伸び、その拳がライダーを捉えた。
とっさに刀で防いだライダーだが、伸びた分の遠心力が加わったことで完全には抑え込めず、彼女の身体は後方へと吹き飛ばされる。
それでも空中で体勢を整えて着地したライダーの技量はさすがと言うべきか。しかし予想外の一撃によるダメージは持ち前の俊敏な動きを鈍らせている。その微かな隙にレアエネミーは追い打ちをかけるべく体勢を低くし、ライダー目がけて疾走する。
「突進が来るぞ!」
慌てて遅れて注意を飛ばすが、相手の動きに対してライダーが次どんな行動を取ればよいかを指示し忘れたことに後で気が付いた。
ライダーが自己判断で真横に回避することで事なきを得るが、無理な回避行動による隙がさらにレアエネミーの攻撃を助長することになった。
『どうしたんだ天軒由良。指示のレベルが下がってるぞ!』
「わかってる! とりあえず俺が牽制して……はダメだ」
前線はライダーに任せ、自分は後方支援に徹する。そうすると今できる手段は礼装によるライダーの強化のみ。最適な礼装の選択をしなければならないのに、焦りが思考を鈍らせ的確な指示の妨げとなっている。
……正確には、『そう思っていた』と言うべきか。
思わぬ苦戦を強いられ、ライダーも疲弊してきたところで自分の中で疑問が浮かぶ。
「俺、
『……………………は?』
疑問を言葉にしたことで自分に起こっている異変が明るみに出る。
自分が後衛に徹する戦い方は一回戦や二回戦で経験してるはずなのに、どんな指示を出せばいいのか頭に浮かんでこない。
未知の敵だから、なんて理由ではないはずだ。どんな相手だろうと今まではライダーが危機に陥らないような指示をしてきたはず。だというのに、全然思い出せない。
最適な答えが出てこない……!
『ああくそっ! お前が後衛にいる前提条件そのものが最適じゃないって思考で固まってるのか!?
AIみたいなロジックエラーはじき出してる場合じゃないわよ!』
「ご、ごめん。でも、本当にわからないんだ……」
『ちっ、仕方ないがここは撤退だ。
ライダー、気絶させてでもいいからこのバカと一緒にアリーナを出なさい!』
「しょ、承知!」
刀を納めたライダーはレアエネミーの追撃が襲って来る前に俺を持ち上げ、アリーナを疾走する。
それは、聖杯戦争を勝ち進んできた20日余りの中で初のエネミーに対する黒星となった。
「で、どうするんだ?」
アリーナから校舎へ、そしてマイル―ムへと無言で帰還した俺たちを出迎えたのは、不機嫌そうに眉をひそめている女性の、シンプルかつ容赦のない問いだった。彼女のカソックベースの服装も相まって、懺悔でもしなければいけないような空気になる。
だがついさっき露見した問題なのに、そんな簡単に解決するなら先ほどの戦闘を撤退する必要なんてない。
それは彼女も重々承知だろうが、わざわざ礼装の作成を止めてまで尋ねてくるのだ。それだけこの問題は早急に解決しなければならない、ということだけはひしひしと伝わってくる。
「……自分で考えろ、と言いたいところだが、モラトリアム中の今はそんなにじっくり時間をかけていられないか。明日はよくてもそれ以降は二つ目のトリガー入手のためにアリーナへ向かう必要がある。問題が解決する前にアリーナへ行ってやられたんじゃ笑い話にもならないからな。
仕方ないから、現状私がわかる限りの情報を伝えておくわ」
眉をひそめてため息をつく。ただ、その言葉はまるで本人すら把握してない俺の心境が理解できているかのように聞こえる。
「サラは俺が今どんな状況なのかわかるのか?」
「アリーナでの会話でなんとなくな。お前いつも言ってただろう。『無い物ねだりはしない。今できる最善策を考える』って。
一回戦、二回戦は後衛に徹することがライダーの邪魔をせずに全力を引き出せる最善策だった。
それが私のキャスターとの戦闘で自分が前衛に立つ経験を得たことで、無意識にそれを含めて対策を講じようとしていたんでしょうね」
「でも、ランルーくんのバーサーカーのときはまだそれなりに指示は出せていたはずなんだ。
……最後は自分を囮に使う手段しか思いつかなかったけど」
「考えられるとすれば、サーヴァントとエネミーで線引きをしてる可能性だな。サーヴァントには敵わないが、エネミーならそれなりに立ち回れるって感じにな。
あのレアエネミー、他のエネミーに比べれば確かに強いけど、さすがにサーヴァントとは比べれば見劣りするでしょう」
サラが言っているのが本当かはわからないが、確かにその理論だとあの戦闘時の思考の低下も頷ける。
「なら、それも踏まえて戦術を組むようにしたら……」
「それはダメです! アリーナのエネミーは我々サーヴァントにしてみれば取るに足らない相手ですが、マスターには十分脅威になりえます。
主どのが前線に出る必要などありません。戦闘は私がすべて受け持てば問題ないでしょう!?」
ここまで沈黙を貫いていたライダーが身を乗り出してこちらの言葉を阻む。やはりわからない。彼女がここまで俺の戦闘を拒む理由はなんなのだろうか?
さすがにサラもこれはおかしいと思ったのか、ライダーを見る目が変わる。
「ライダー、私の勘違いならそれでいい。ただどうもお前の言動には違和感がある。
三回戦の初日、私に対して言い放ったお前の言葉はマスターへの絶対的信頼ゆえのものだったと断言できる。
でも今のお前の言葉は信頼より不信感の方が強く感じるわよ?」
いや、とサラは自分の言葉を否定する。そして一層ライダーを見る目が鋭くなり――
「今考えがまとまった。
お前、怖いんでしょう?」
「――――――――」
サラの一言にライダーの表情が揺らぐ。返答はないが、その表情が言外に語っていた。
しばしの沈黙を挟んだのち、観念したように肩をすくめる。そして、一言一言確かめるようにライダーは胸の内に秘めた思いを打ち明け始めた。
「そう、ですね。確かにサラどのがおっしゃる通りです。
今の私は必要以上に恐怖しているのでしょう。主どのが傷つくこと。そして、主どのの役に立たつことなく散ることに……
生前、私は兄上のために全力を注いできました。
なぜか最終的には兄上に嫌われることとなりましたが、それでも兄上の国が栄えるのであれば私は喜んで自ら首をはねました。
しかし英霊となり、その後の出来事も知った今、どうしても考えてしまうのです。大陸から兄上の国へ軍勢が押し寄せてきたときに私がいたならば、と」
それは、心の底から敬愛する兄、頼朝への思い。
兄のためならばどんなひどい仕打ちも気にならない。いや、そもそもひどい仕打ちなどと感じてすらいないのだろう。
「すでに我々の生きた時代は終わり、今どれだけ悔いようともそれは後の祭り。過去に縛られるような愚行はしませんが、同じ思いをしたくないのも事実。兄上のときのように、私のいないところで主どのに傷ついてほしくないのです。
見捨てられることは怖くありません。私が不要とあれば、いつでも切り捨てて頂いても構いません。自害しろと言われれば、主どのが令呪を使わずとも自ら命を断ちます。
ですが、私は主どののサーヴァント。前にも言いましたが、主どのに勝利を捧げるのが私の義務です。なので、せめてこの聖杯戦争を終えるまで……私の手が及ぶところまでで構いません。どうか、主どのは私ではなく我が身を第一に考えてください」
それがライダーの心のうちに秘めていた言葉。主のために自分の命を捧げる源義経という武士の掟。
ならば、それを尊重するのがライダーのためなのだろうか。
「――そんなの、俺が我慢できるわけないだろ!」
そこまで強く言うつもりはなかったのだが、気づけば怒鳴る勢いで声を荒げていた。
これにはライダーはもちろん、サラすら物珍しそうにこちらを見ている。だが今はそんな視線は気にならない。目の前にいる自分のパートナーをきっちりと叱ることが最優先事項だ。
「ライダーの気持ちはしっかり受け取った。そこまで思い詰めていたなんて知らなくてごめん。
でもそれを許容することはできない」
「ど、どうしてですか!
失礼ですが、主どのは戦闘面ではサーヴァントより大きく劣ります。
三回戦でサーヴァントと戦闘を行って生き残れたのは例外中の例外。直接見ていないので推測で話すことになりますが、キャスターは手を抜いて遊んでいた可能性が高いです。普通ならあの竜の娘のときのように為すすべなく殺されそうになるのが当たり前なのです!」
「うん、たしかにそれは事実だ。思いあがっていた部分があるから、それは俺も反省して今後は自重するように頑張る。
でも、今の俺とライダーの問題はそこじゃないんだよ」
「そ、そこではない……ですか?」
「1回戦終了後に言った言葉、覚えてるかな?」
「……私の心を殺したままで勝ち進むのはだめ、という言葉でしょうか?
なら問題ありません。これは私が望んでしていることです。あの時の言葉に反してはいません」
「そのあとだよ。……2回戦が始まる前、っていう方が正しいかな。
ライダー言ってくれたよね。俺の心を殺しては元も子もない、って」
「――――あ」
その瞬間、確固として譲れないといった様子のライダーの表情が揺らぐ。
「ライダーの意見はもっともだ。ライダーを心配させるなんてマスター失格だと思う。
でも、俺だってライダーには傷ついて欲しくないと思ってる。それが難しい望みなのだとしても、俺が前線に出ることで緩和できることがあるならそうしたい。
それでもライダーの意思を尊重しないといけないのなら、ライダーは俺に心を殺してくれって言うのかな?」
我ながら意地の悪い返し方をしていると思う。ライダーの言葉にライダー本人の言葉を利用して反論しているのだから。しかも彼女の言葉を意図的に歪曲させて、だ。
彼女の性格からして自分の言葉を撤回することはないだろう。それにどちらもマスターである俺を気遣っての言葉であるならば、どちらかを撤回なんてことは万が一にもありえない。
自らの言葉が生んだロジックエラーに、みるみるうちにライダーの顔が歪んでいく。
心苦しいが、ライダーが逆転の一手を思いつく前にさっさとケリをつけよう。
「さすがに意地の悪い返しだったと思う。けどこれで俺の意見もわかったよね?」
「そ、それは……ですが、話が進みません!」
「ならしかたないな」
わざとらしくため息をつき、サラが俺たちの注目を集める。
「本当はお前たちでじっくり話し合って落としどころを決めた方がためになるんだろうが、今のこの状況は何かがおかしい。できれば今すぐにでもこの状況を改善しておいた方がいい。
だから、今回は私の方でお前たちの意見に沿った落としどころを提案してあげるわ」
彼女の言う『何かがおかしい』ということが何を指しているのかわからないが、この状況が改善してくれるなら願ったり叶ったりだ。
とはいえ、何でもないように言ってるがサラが行おうとしているのはもはや読心術と言ってもいいレベルの技術だ。これが起源の影響力なのか、それとも彼女の努力の賜物なのかはさておいて、だが。
どんな提案であろうと、ライダーのためならば実現させて見せる。そう覚悟を決めてサラの言葉を待つ。
「今の話だと、天軒由良はライダーのためにも状況によっては自分も前に出て戦いたい。ライダーはマスターの身を案じて前には出てほしくない。まとめればこれだけだ。なら話は早い。
天軒由良がもっと強くなればいいだけじゃない」
……………………。
………………………………………………。
一瞬時間が止まったかのような錯覚さえした。
恐る恐る、自分の中に浮かんだ言葉を素直に口にしてみる。
「……それだけ?」
「それだけだ。お前がエネミー相手に後れを取らないとライダーが判断すれば、お前が前に出ようがライダーの心配の種にはならない。今のところサーヴァント相手には比較的無茶しない思考回路みたいだし、今後もそれを維持することは前提にする必要はあるがな。
あとはライダーに鍛えてもらって、彼女が許可を出すまでは前に出ないってことにすれば問題は解決するだろう。
ライダーもそれで問題ないわね?」
「え、あっ、はい……」
あっさりとした言葉に一瞬理解が追いつかなかった。ライダーも目を白黒させて反射的に返事したような状態だ。
別にサラの提案が無理難題だったわけでも、言葉の意味が難解だったわけでもない。そして彼女の提案は理にかなっている。
「……こんなあっさりと解決するものなのか?」
「するだろう?
基本的に口論が長引くのはその原因がわからないか、その落としどころが見つからないかのどちらかだ。
なら、その二つが解決したらならそれ以上いがみ合う必要なんてないでしょう?」
「た……確かに」
なんだか釈然としないが、サラの言葉には説得力があった。ライダーも納得しているなら納得してもらえるように頑張るしかないか。
「……これでしばらくは大丈夫か」
「えっ?」
サラの口が微かに動いたのが見えた。てっきり彼女の発言を聞き逃したのかと思って聞き返す。
「いや、気にしなくていい。ただの独り言だ。
それより、今回のライダーの思考回路がいつもと違うのが気になるな。
私の理解が正しいのなら、普段のライダーは天軒由良が危機に陥りそうな場合、そうなる前に相手を全員殺すって言いかねない性格だと思うわよ?」
かなり物騒なことを言っているはずだが、不思議とその指摘に納得してしまった。たしかにここ最近のライダーの行動には不可解な点が見られる。てっきり俺が無茶をした報復行為なのだと思っていたが、先ほどサラが言っていた『何かがおかしい』というのはそのことだったのか。
銀髪の隙間から覗くジトっとした視線を向けられたライダーは肩をすくめる。
「たしかに、言われてみるととそうですね。
ここ最近いろいろありましたので、てっきり少し神経質になっていたたけだと思っていましたが……
思い返してみれば、何故かここ数日妙に主どのの行動に不満を持つようになっていた気もします」
やっぱりな、と呟いてサラの視線が鋭くなる。しばらく視線を巡らせて、虚空を人睨みしてからため息をつく。
「普段と何かが違うと感じたのなら、何かしら第三者の手が加わっていたと考えるのが妥当だろう。一人心当たりがあるんだが、そいつの仕業じゃあこれは手ぬるすぎる。
天軒由良、お前また変なやつと関わってないでしょうね?」
「まあそうなるよね」
俺だって心当たりはないが、完全にこの件に無関係であると言い切れないマスターがいないわけではない。
「現状は警戒を続けるしかないか。
まあ大して害はなかったし、今すぐどうにかするものでもないでしょう」
手を叩き、そう締めくくるとサラはさっさと自分の定位置である工房へ戻って行く。
残された二人で顔を見合わせると、自然と笑いがこみ上げてきた。
この四回戦、相手がいないからと言って油断できないことは理解している。
それでも、ライダーとの間にあったわだかまりが解消された。それだけで、これからもどうにかなると思えてきた。
四回戦は相手がいないかわりにレアエネミーが一つの大きな障害として立ちはだかります。ちょうど四回戦から現れますしね。今作では遭遇するタイミングは原作と同じよていですが、出現位置までは一緒じゃないです
今回のいざこざはきちんと理由はありますが、サラの能力が使い勝手よすぎて逆に使いづらくなりそう……