…忙しいんですよ?(言い訳)
前回までのあらすじと現在
八雲紫によって幻想入りを果たした『呉爾羅』こと『蒲田進』。
その先で妖怪、ルーミアと出会うが、森の奥深くへと消える。
そして蒲田進は、今の今まで、誰にも姿を見られていない。…見つかってはいけないのだ。下手に騒ぎを起こしてはいけないのだ。
〜現在地〜
呉爾羅(…まだ誰にも見つかってないだろうな。こんな奥深く、誰が来るだろうか…)
ガサガサッ…
呉爾羅(ッ!?誰かいるのか…?いや、いてはいけないのだ。誰かに…見られてはいけないのだが…)ス…
呉爾羅は着ていたパーカーのフードを深く被り直し、様子を伺いに向かう。
〜視点変更、魔理沙の家前〜
魔理沙「ふぅ…たくさん採れたな…。」
その手には大量のキノコ。今日も大漁魔理沙ちゃん。
家に戻ろうとドアノブに手を掛けた。
魔理沙(誰か…見ているな…。)チラッ
〜再び視点変更、呉爾羅〜
呉爾羅(あの人間…手に何を持っている…?…食料のようにも見えるが。)
呉爾羅は草むらの隙間からその様子を伺っていた。
…が。
呉爾羅(動きが…止まった?)
その人間は、片目でこちらをちらりと見ているではないか。
呉爾羅(物音も気配も、完全に消しているはず…。まさかッ!?)
呉爾羅の目線の先にはでは自分の尻尾。
呉爾羅(まさか尻尾と背鰭で見つかったというのか?)
魔理沙「おい、そこにいるやつ。誰だか知らんがこんな森の奥深くに何の用だ。それとも…私に用があるのか?隠れていたようだが、その背鰭と尻尾が見えてちゃバレバレだぜ?」
そして、その黒い背鰭の主と、人間が対峙する。
呉爾羅「……。」
魔理沙「…なんか言えよ。何しに来たか、とりあえず名前ぐらい言ってくれ。私は霧雨魔理沙。おまえは?」
呉爾羅「…蒲田。蒲田進。」
魔理沙「お?妖怪じゃないのか?その背鰭と尻尾を見れば明らかに人間でもなさそうだな?」(こいつ…外来人か?)
呉爾羅「…霧雨魔理沙だったか。おまえが言えるような立場ではないだろう。その服装から見てな。」
魔理沙「まぁ、そうだな。…あともう少しデカイ声で話してくれ。聞こえづらいんだぜ。男だろ?」
呉爾羅「……。」
魔理沙「で、ここへ何しにきた。」
呉爾羅「……。」
魔理沙「おぉ、そうかい。言わないなら力尽くで吐かせてもいいんだぜ?人間にも妖怪にも見えない怪しい奴を放っておくわけにはいかないしな。」
呉爾羅「……。」
魔理沙「答えない…ということは吐かせてほしいんだな?」スチャッ
呉爾羅(…来る。)
魔理沙「この八卦炉と私の魔法で、吐かせてやるから覚悟しろよ?」
呉爾羅(…マホウ?)
魔理沙「いけっ!」ジュジュジュジュ…!
霧雨魔理沙が手を出すと、周りから無数の弾幕が飛んでくる。
呉爾羅(鉛玉…どこの世界でも同じか。)ヒュンッ
呉爾羅はそれを静かに避ける。次々と、当たることなく音も立てず静かに避けていく。
魔理沙「結構やるじゃんか。なら、これはどうだぜ?」シュババババ……!
呉爾羅「…鉛玉を増やしたところで無意味だ。」シュンシュンッ
魔理沙「やっと喋ったな!じゃあ、これでどうだ!」スチャッ
魔理沙「マスター……スパーーークッ!!!」シュォォォォォ…!
呉爾羅(ッ…これは!?)シュォォォォォ…
魔理沙「…これなら流石に吐く気になっただろう…。さて、煙が消えたらその顔を見させてもらうぜ。」
黒煙からでも分かる。その高身長とその影。
魔理沙「ん?まさかマスタースパークを真面に受けて倒れてない訳な…い……」
呉爾羅「………。」シュゥゥゥ……
魔理沙「おまえ…真面に喰らったよな?私のマスタースパーク。片目が隠れていてさらにフードで顔が覆われている。避けることもしなかった。それでも平気なのはやっぱり妖怪だからか?」
呉爾羅「…俺は、妖怪でも人間でも何者でもない。」
魔理沙「じゃあなんだ?神様か?笑わせるなよww」
呉爾羅「…おまえがそう思うならそうかもな、霧雨魔理沙。」
魔理沙(こいつ…何者なんだ…?)
呉爾羅「 少し…本気を出さないとな…。」ゴゴゴゴゴ…
魔理沙(気が…雰囲気が変わった…!?)
その姿は、禍々しいオーラを放つかのよう。背鰭は先ほどよりも長くなった気がする。そして何よりも…
魔理沙(あいつ…フードを外した…?)
フードで覆われていたその顔、前髪も少しながら横に寄った。隠されていた右眼が見えた。その両眼は…獣の眼。確かなのは、『ヤバイという雰囲気』である。
呉爾羅「……ッ。」
魔理沙(来るッ…!)
呉爾羅「……。」クルッ
魔理沙(ッ?…後ろを向いた?)
彼は今、敵に背中を向けている。彼は右腕を前に出した。何をするのか…と思っていた魔理沙の目に映ったのは彼の背鰭。
魔理沙(紫色に…光っている?)
呉爾羅の手にはみるみる紫色の炎が。
魔理沙「…まさか、おまえ…!?」
止めようとした魔理沙の想いも届くことなく、その手から火炎が放たれた。緑に満ちていた草は一瞬で紅い焔に包まれた。それは火炎状のものからマスタースパークと同じようなレーザー状へと変わった。
森は一瞬で焼き払われた。
魔理沙「貴様…なんでこんなことをした…森を…緑を返せッ!!どうするんだよこの火事!!」
呉爾羅「…魔法というもので元には戻せないのか。」
魔理沙「そういう問題じゃあないだろ…。」
みるみる背鰭は縮んでゆき、色も元に戻った。前髪も、フードも。
呉爾羅「……。」ザッザッ…
魔理沙「…蒲田…進、だったか。逃げようとしても無駄だ。いつかおまえのもとに異変解決の、妖怪退治のプロ、私の友人の『博麗の巫女』が、おまえを退治しにくるだろう。こんな騒ぎを派手に起こしたんだ。妖怪の山にいる新聞記者の鴉天狗が、おまえを取材しにくるだろう。断ってもしつこく食らいつく天狗だから厄介だろうと思うぜ。」
呉爾羅「……。」
魔理沙「このまま生きていくのなら、いつかこの『幻想郷』の住民全てが敵になるだろうな。私も、博麗の巫女も、鴉天狗も。人間も妖怪も神も、誰も味方してくれなくなるだろうぜ。」
呉爾羅「……例え全てが敵になったとしても、だ。…俺は全てを破壊し尽くすまで倒れないつもりだ。」
魔理沙「…その余裕と自信に満ちた顔が崩れるのを楽しみにしておくぜ。…だからさっさと消えてくれ。」
呉爾羅「…ひとつだけ忠告しておく。」
魔理沙「…なんだぜ。」
呉爾羅「…俺は『虚構』だ。この世界での虚構でしかない。元々存在しない。だが俺は生きる。例えおまえの仲間が、敵が来たとしても…生きるために俺は遠慮なく潰させてもらう。今度は火事だけでは済まない。この世界が…崩壊してもなお破壊し続ける存在、『怪獣』となるだろう。」
…如何でしたか。いきなり重い先行きですね。
魔理沙のマスタースパークを受けてもなお立っているシン・ゴジラこと蒲田進くん。
騒ぎを起こしたくないと言っていたのにいきなり火事w
…多分彼が行く先には敵しかいないかも?