サウザー!~School Idol Project~   作:乾操
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Chapter5・君臨せる魔拳!

 ライブ会場は修羅の国で最も賑やかな場所の一つである武老怒通り(ブロードウェイ)である。
 ステージが開演するのは陽が落ちてからであるが、まだうすら明るい頃から舞台の前には数えきれないほどのボロと修羅たちが押し寄せ、異国の剝空琉愛弗(スクールアイドル)を一目見ようとしていた。
「すごい人数だよ」
 客席を見ながらことりが言う。
 単純な数だけ見ればラブライブ本選より客数は少ない。しかし、客の一人一人が発する圧迫感が日本の比ではないため、実数の数倍に感じてしまう。
「大丈夫かなぁ」 
 凛が心配げに言う。モヒカン共が客に混じっていたことはいくらかあったが、このような状況は初めてである。
 が、そんな彼女の肩を叩きながら穂乃果は、
「心配いらないって。こんな感じの状況前に経験したけど何とかなったし」
 穂乃果、ことり、海未の三人が初めて開いたライブは観客の九分九厘が聖帝軍の世紀末モヒカン野郎という凄まじいものだった。それでもうまく行ったのだから、いくつもの修羅場を潜り抜けて、仲間の数も九人プラス五人となった今、苦戦しようはずがない。
「もうすぐ開演ですよ」
「よぅし、じゃあいつものかけ声いこっか!」
 穂乃果はピッと手を差し出した。他の面々もそれに掌を重ね、円陣を組む。
「1!」
「2!」
「3!」
「4!」
「5!」
「6!」
「7!」
「8!」
「9!」
「10! フハハハハ!」
「サウザーちゃんは5MENでやってろよ! μ's、ミュージック……スタート!」
 
 武老怒通りのライブはμ's、5MENが交互に歌い踊る。このケーキとステーキをひたすら交互に食べさせられるような状況は下手をすれば胃もたれを起こすような内容である。事実、このライブは衛星放送的なアレで日本でも流されているわけだが、画面の前の一般下郎は奇妙な膨満感に襲われた。生でライブに参加したら立っていることすらままならなかったであろう。
 しかし、今回の観客は修羅の国に生きる者共である。絵面的に何かと濃い方々が暮らす国に住まうものとしてはこの程度朝飯前の事であった。
「フハハハハ! 楽しんでいるか下郎!」
「オォーッ!」
 ライブも終盤に差し掛かり、μ'sも5MENも残すところあと一曲となっていた。客の盛り上がり具合から見て、今回の修羅の国ライブは大成功と言っていいだろう。
「ククク……それではこのまま『Angelic Angel』行っちゃおうかな?」
「人の曲とるんじゃないわよ!」
 ステージ上で調子に乗るサウザーに抗議の声を上げる絵里も、どことなく声が弾んでいた。このライブの成功はラブライブ、スクールアイドルの更なる発展につながるのだ。
 だが、しかし。
「ん?」
 ふと、穂乃果が遠方から近づく影に気が付く。
「海未ちゃんことりちゃん、なんか向うのほうおかしくない?」
「え? ……おや、ほんとうですね」
「陽炎みたいな……なんだろ?」
 彼女たちが異変に気付いたのとほぼ同時、観客席にもライブの盛り上がりとは明らかに違うざわめきが起き始めていた。
 ステージ上で異変の正体に真っ先に気付いたのは花陽であった。
「あ、あれは……!」
「花陽ちゃんはあの陽炎みたいなの何か分かるの?」
 観客の向こうに立ち上る陽炎は夜の星を歪ませながら徐々に近づいてくるように見えた。花陽は慄きながらそれが何なのか断言する。
「空間をも歪ませるあれは、魔闘気!」
「まとうき?」
「北斗琉拳において、魔界に足を踏み入れた者の身体から発せられる禍々しい黒の闘気……! そして、あれほどの魔闘気を噴出させるのはただ一人、第一の羅将、『カイオウ』!」
 彼女の言葉を裏付けるように観客の修羅が口々に叫ぶ。
「だ、第一の羅将だ!」
第一の剝空琉愛弗(ナンバーワンスクールアイドル)、カイオウさまだ~!」
 禍々しい魔闘気の発生源は観客を巨馬で蹴散らしながらμ'sと5MENの前まで突撃してきた。カイオウは全身に鎧をまとっていて顔は見えない。しかし、鎧の隙間から噴出する魔闘気の見せる鬼神の影が、カイオウの姿そのもののように錯覚させた。
「きさまらがμ'sと南斗DE5MENか……」
 地獄の底から響くような声……声一つだけでも、そこらの修羅とは桁が違うことが理解できる。
「そう言うきさまが第一の羅将、カイオウか。フフフ……そのナンセンスな仮面、さては相当シャイだな?」
「絶対違うと思うぞ」
 シュウの指摘を無視しつつ、サウザーは続ける。
「第一の羅将……この間第三の羅将とか名乗る濃き男と戦ったが、大したことは無かったな?」
(ハン)は純粋に戦いだけを求める故魔闘気も纏わぬ酔狂な男よ」
「ていうか『第二の羅将』は? いきなり第一の羅将が出てくるとか飛ばしすぎでしょ」
 ニコがカイオウに問いかける。
 第二の羅将……ヒョウのことである。
「ヒョウは部下共と慰安旅行に行っておるわ」
「そ、そう……」
「とにかく、きさまの首を取ればこの国は5MENのものと言うわけだな?」
「ちょっとサウザー、話をややこしくしないでください」
 海未が注意するが、意味のないことである。
 そしてカイオウ自身、最初から5MEN、μ'sと事を構えるつもりであったようだ。
「この国の土を踏み、スクールアイドルを名乗るからには生きて帰ることができるとはよもや思うまい」
「いやいやそっちが招いたんじゃ――」
「フハハハハ!」
 穂乃果の突っ込みを掻き消すようサウザーは高笑いを始めた。
「世紀末のナンバーワンアイドルはこの聖帝を置いて他にない! 下郎が図に乗るでないわ!」
「笑止!」
 カイオウの魔闘気はより一層強くなる。
 ところで、このカイオウだが、μ'sの面々はどこかサウザーと似たような空気を感じていた。
「なんでしょうか、あの二人の間にある調和された空気は」
「アレね、カイオウも愛ゆえに愛を捨てた気があるっていうし。あと器が小さいところもそっくり」
 マキの分析に一同はなるほどと頷いた。
 そんなことを言っている場合ではない。
「我が羅威舞を受けてみるがよい! ぬぅ~ん!」
 カイオウは腕をかかげ、掌をサウザーに向けた。
「フワハハ! 闘気を使うつもりかもしれんが、このおれには秘孔も破孔もきかぬわ!」
 だが、カイオウの放った技はサウザーたちの常識を凌駕していた。
南無(フーム)!」
 瞬間、サウザー達の身体を急激な浮遊感が襲った! 
「むう!?」
「わわっ!?」
 それは、まるで天地を喪失したような……否! 実際に一同は天地を喪失していた! 
「これは、暗琉天破!」
「かよちん知ってるの!?」
「強力な魔闘気で相手の天地を喪失させる、北斗琉拳の奥義! 魔界に達したものだけが使える、究極のゼロGパフォーマンス!」
「知っているなら早く言え!」
 5MENとμ'sはすでにカイオウの必勝パターンにはまっていた。
 通常のライブならしれないが、これは修羅の国の『羅威舞』。無重力化でぐるぐるするだけでは終わらない。
「わはぁ~!」
 完全に無防備となったサウザーらにカイオウは魔闘気の塊を放った。この魔闘気……暗琉霏破(あんりゅうひは)と呼ばれる技だが……は、寸分たがわずサウザーに命中、彼を吹き飛ばした。
「ぐふぉ!」
「サウザー!?」
「うわっ、一撃で伸びてるし!」
 無駄なタフネスさを誇るサウザーを一撃で黙らせる技、ただものではない。
「これはいかん! 逃げるぞ!」
 シュウが伸びたサウザーを肩に担ぎながら言うと、残りの面々も異議なく従い逃走の態勢に入った。ちょうど近くを通りかかったトラックの荷台に飛び乗る。
 だが、カイオウはサウザーが気に入らなかったのか追撃の態勢に入り、巨大な馬と共にトラックを追いかけてきた。
「しつこいなーもー!」
「だめでもともと、ここは一つラブアローシュートを撃ってみましょう」 
 これでカイオウをうまく骨抜きに出来ればそのすきにホテルへ行って荷物をまとめた後、修羅の国から脱出すればいい。
 海未は後方から迫るカイオウに狙いを定めた。
「いきます! ラブアロー☆シュート!」
 海未の放った闘気の矢は寸分たがわずカイオウに向かい飛翔する。
 しかし、やはりと言うべきか、濃厚な魔闘気の壁に阻まれ、カイオウ本体に到達する前に闘気の矢はかき消えてしまった。
 そればかりか、海未が攻撃してきたのを認めたカイオウは今度は彼女に暗琉霏破を放った。
「はぁっ!」
「ふぉっ!?」
「海未ちゃん!」
 幸い、色々な補正のおかげで海未の肉体にそれほどのダメージはない。だがしかし、着ていた衣装が魔闘気に耐えきれず、胸元などの布以外がお色気バトル漫画よろしく全て吹き飛んだ。
「破廉恥! ぬふしっ!」
 そんな自分の姿にびっくりして海未は昏倒した。
「海未ちゃーん!?」
「やばいやばい、全員脱がされるよコレ!?」
「とんだ変態野郎やんけ!」
「ていうか、いつまでも荷台に乗ってるんじゃなくてこの際トラック奪うのもやむなしじゃないの!?」
 絵里が5MENの面々に進言する。しかし、レイとシンが、
「すまん、免許を持っていないのだ」
「免許取る前に世界が核の炎に包まれたからな」
「この状況で免許云々いる!?」
「まぁ、仮にも強敵(とも)枠が無免許運転するのもアレやしねぇ?」
「そういえば、ユダ、おまえ免許取ったと言っていなかったか?」
 シュウがユダに指摘する。
「おぉ、さすがは南斗の美と知略を司る妖星!」
「ユダさん、おねがいしますっ!」
 シュウの言葉に穂乃果とことりも喜びと称賛の声を上げる。 
 しかし、ユダは気まずそうに眼を逸らすばかりである。
「どうしたのだユダ」
 シュウが不思議そうに声を掛ける。するとユダはボソボソと、
「…………だから………」
「む……?」
「AT限定だから、MT車は運転できんのだ……!」
「…………」
「やはりウダね」
 ニコがため息交じりに呟いた。
 それと同時、カイオウの三度目の暗琉霏破が一行を襲う。
「ぬわ~!」
 μ'sと5MENは吹っ飛ばされて宙を舞った。



 その後なんやかんやあって一行はカイオウの執拗にも程がある追撃をふりきり、荷物をまとめて帰国の途に就いた。さすがの羅将も空を自由に飛びまわれるわけもなく、これで一安心である。
 飛行機に乗って、機内食を食べた後は泥のように眠り、穂乃果が目覚めたのは羽田まであと一数時間というところであった。
「……!?」
 ケンシロウアイマスクのせいでこちらを凝視しているように見える窓際のことりに驚きつつ、窓のシェードを開ける。
「ふわぁ……」
 外には水平線の向こうまで広がる雲海が広がっており、その絶景に思わずため息が出た。
「うーん……?」
 穂乃果の気配を感じてか、少し身じろぎした後ことりも目を覚ました。
「あっ、起こしちゃった?」
「ううん、ちょうど起きただけだよ。ずっと起きてたの?」
「私も今起きたとこ」
 目を醒ましたことりは穂乃果同様窓の外を見て、感嘆の声を上げる。
「わぁ……!」
「ライブ、総合的に見てまぁ楽しかったね」
 穂乃果の言葉にことりは微笑んで「うん」と答えた。穂乃果は続けて、
「またいつか行こうね」
「わたしはもういいかな?」
「えー?」
  
 
「帰国! フハハハハ!」
「サウザー、静かにしてください」
 羽田につき、入国手続きを済ませた一同は荷物を受け取って到着ロビーを後にしようとしていた。
「ねぇ、ライブの中継、すごい評判よかったみたいだよ!」
 荷物を受け取りながら花陽が呟きの画面を皆に見せてくれた。
「ほえ~、最後は滅茶苦茶だったのにねぇ」
 穂乃果が意外そうな言葉に花陽は、
「アレを含めても面白かったみたいだよ」
「ところで、機内で変な夢を見たのだが?」
 サウザーがウーンと首を傾げながら訊いてきた。
「どんな夢?」
「カイオウとか言う下郎にコテンパンにされる夢なのだが」
「夢じゃないわよそれ」 
 不思議がるサウザーに絵里が現実を突き付ける。
「ほう……絢瀬絵里よ、まさかこの聖帝サウザーがあのような下郎に負けると言いたいのか?」
「事実なんだからしょうがないでしょうが。衛星中継されたわよ」
「じゃああれだな? ライブ前ドキドキしてお昼ご飯ちゃんと食べられなかったからだな?」
「お代わりまでしてたくせによく言うわね」
「お二人さん相変わらず元気やねぇ」
「それより、もうバスが来るぞ?」
 シュウに言われ、一同は荷物を取ると出口へ向かって他愛無い話をしながら歩いていった。
 と、到着ロビーから出ようとした直前で、海未が周囲の様子がおかしいことに気が付く。
「……なんだか、私達見られてませんか?」
「えっ?」
 海未に言われて穂乃果は辺りを見回す。
 ……言われてみれば、確かにこちらを注目している人影がいくらか……いや、かなりの人数が見えた。制服を着た学生から、妙齢の女性、モヒカンの無法者まで、男女問わずこちらを見ている。
「私達の自意識過剰……ってわけでもないわね」
 マキが髪の毛をくるくるしながら呟いた。
「もしかして、凛たちの命を狙うスナイパー的な!?」
「ぴゃああ!?」
「大丈夫、かよちんは凛が護るから!」
「凛ちゃん……!」
「いやいやなんでアタシたちが命狙われなきゃならんのよ? 5MENならいざ知らず」
 ニコの言う通り、5MENのメンバーの内少なくとも3人は相当に恨みを買う程度には悪行を尽くしているため、ありえない話ではない。
「サウザーの自業自得ね。ざまぁみろ」
「フフ、この聖帝がこのような下郎に負けるはずがなかろう? 蹴散らしてくれるわ!」
 そうこう話していると、こちらを注視していたセーラー服の中学生の一人が意を決した様子で近づいてきた。
「フハハ! ガキなぞターバンのガキでもない限り虫けら同然!」
 来るがいい! と仁王立ちするサウザー。
 しかし、その中学生はサウザーを見向きもせず一目散に穂乃果の方へ向かった。
「うぇえ!?」
「穂乃果!」
「穂乃果ちゃん!」
 穂乃果を守るべく海未とことりは彼女の前に南斗聖拳顔負けの素早さで移動した。
 女子中学生は肩から下げていた鞄の口を開け、中から何かを取り出す。
「銃的なアレですか!?」
「やっぱりスナイパーだったにゃ!」
 緊張に包まれるμ's。
 しかし、中学生が取り出したのは何の変哲もない厚紙……それもサイン色紙だった。
「あのっ、μ'sの高坂穂乃果さんですよね!?」
「えっ!? は、はい、そうです」
「穂乃果! 無暗に名を明かすのは――」
「ファンです! サインしてください!」
「……え?」
 呆気にとられる穂乃果らを他所に、中学生は頭を下げながら色紙とサインペンを両手で差し出してきた。
 彼女を皮切りに、連れと思われる中学生二人も近づいてきて、
「南ことりさん!」
「園田海未さん!」
と名前を呼ぶと同様に「お願いします!」と色紙とペンを差し出してきた。
 
 ゲート側でのサインは迷惑になると思い、とりあえずμ'sと5MENは到着ロビーを後にした。すると、先ほどまでこちらを見ていた群衆がゾロゾロと近づいてきて、サインをもらうべく自然と列を成し始めた。
「えっと……はい、どうぞ」
「わぁ……! ありがとうございます!」
 穂乃果に声を掛けた中学生はサインを受け取ると嬉しそうにお辞儀をして、恥ずかし気に顔を赤くしながら友達と去っていった。
 彼女たちが去ると、また別な人がサインを求めてくる。
 穂乃果だけではなく、μ'sメンバー、更に5MENのメンバーも同様の状況になった。
「シュウ様~!」
「レイ様~!」
「これは、どういう状況なんだ?」
 サインしつつ、レイは頭の上に疑問符を浮かべながら誰にでもなく問いかける。
「さぁ……はっ!? もしかしてこれは夢!?」
 穂乃果が声を上げる。
「どのへんから夢なんだにゃ」
「えっと、いざ修羅の国へ! のところ……まさか、『学校が廃校に!?』のところから!?」
「長い夢だにゃ!」
「なるほど、これが夢ならこのおれがカイオウごときに後れを取った理由も説明がつくな?」
「現実を直視なさいサウザー。あなたは一撃で無様にも伸びてしまったのよ」
「ぬっく……」
「でも、なんでこんなことになっとるんやろ……ん?」
 サインしながら希はふと聞き覚えのある曲が流れているのを耳にした。
 この曲は……間違いない。修羅の国で歌った曲の一つだ。それがいったいなぜ羽田のロビーで……。
「………!? エリチ!? えりち!」
「へぇ、わざわざ静岡から……ちょっと何よ希今取り込み中……!?」
 希に言われた絵里は顔を上げて驚愕する。 
 その驚愕は、瞬く間に他のメンバーにも伝播した。
 ロビーに設置された大小のテレビモニター。それら全てに、昨日の修羅の国ライブの映像が流れているのだ。
 若さと鮮血がはじけるライブ映像。以前からのファンを初め、この映像で新たにμ's、そして5MENの虜になった人々が是非一目見ようと羽田にお仕掛けたのだ。
 羽田のロビーでもこの状況である。
「もしかして、街中であれが流れてるのとちゃう?」
 下手すれば日本中である。
 修羅の国で歌い踊りカイオウに吹っ飛ばされた映像が、日本中で大絶賛されているのである。
「ライブ、凄かったです!」
「あ、ありがとうございます」
 憧れの眼差しを向けられながら、海未は震える手でサインをこなしていく。
(うぅ……だれか助けてください)
 彼女は胸中そう訴えながら仲間たちを見回した。しかし、誰も彼もサインに忙殺され、助けどころの話ではない。
 ……いや、一人だけ忙殺されていないのがいた。
「ユダさん……」
「…………」
 5MENの他のメンバー……サウザーでさえもそこそこの人数がサインを求めているのに、ユダは一人もいなかった。
「…………」
「あ、あの」
「ぬふぉああああ!!」
「!? どうしたのだユダよ!?」
「ぬくぅぅぅおのれぇぇぇ! おれも無想転生にさえ入っておればあぁぁぁーっ!」
「あっ! ユダ!」
「ユダさん!」
 慟哭と共に、ユダは一人仲間たちの声を振り切り駆け出し、去っていった。
「ユダ……リボルテック化もされないばかりか……」
 シュウがさすがに憐れんで呟いた。
 と、そこへ。
「あの……」
「む、どうしたのだ?」
 シュウに声を掛けてきたのは小学生か中学一年生くらいの少女であった。彼女はサイン色紙とペンを持ちながら、
「あの、ユダ様ってどこにいますか」
「……ユダのファンか」
「フハハ。物好きもいるものだな?」
「というかユダの間の悪さが凄い。ニアミスにも程があるぞ」
 シンが呆れたように言った。

 南斗六聖拳が一人、『妖星』のユダ。
 彼は誰よりも強く、そして美しい(彼談)。


つづく



作者もAT限定だったり